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No.127

書き出しと終わりまとめ12【SDVX】

書き出しと終わりまとめ12【SDVX】
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あなたに書いて欲しい物語でだらだら書いていたものまとめその12。相変わらずボ6個。毎度の如く診断する時の名前がちょくちょく違うのは気にしない。
成分表示:レイ+グレ1/はるグレ1/グレイス1/ライレフ(神十字)3

何もかもを委ねて/レイ+グレ
葵壱さんには「私達は人間でした」で始まり、「それだけで充分」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば13ツイート(1820字)以内でお願いします。


「ワタシたちは人間デスヨ」
 当たり前じゃないデスカ、と彼女は歌うように言う。世界の常識を子どもに教え説くような響きをしていた。
 嘘よ、とグレイスは呟く。人間なわけがない。だって、己はバグの海で生まれ、バグの力で動く身体をしていたのだ。人間であるはずなどなかった。少なくとも、ネメシスという世界の理から生まれた彼女とは違う。
 嘘じゃありマセンヨ、と柔らかな言葉が耳に注がれる。背に回された手が、トントンと細い身を叩く。子をあやす母親の手つきだ。子ども扱いされているという不満と、心地良いリズムと温度がもたらす安堵が胸を渦巻く。不安に荒れ疲労を増した心は、後者に身を委ねつつあった。
「グレイスは人間デス。ワタシが保証しマス」
 だから泣かないでくだサイ。祈りのように呟いて、少女は柔らかく笑いかける。眉の端がほんのり下がった、少し困ったような笑みだ。
 浮かぶ表情に、少女は目を瞠る。鮮やかな紅水晶が、暗く染まっていく。涙をたたえたそれが、ふるふると揺れた。
 また彼女を困らせてる。また彼女に迷惑をかけている。
 自己嫌悪が心を塗り潰していく。ぅ、と再び嗚咽が漏れ出た。マゼンタの瞳から涙が一筋溢れ、寝間着の襟を濡らす。
 大丈夫。大丈夫。妹を抱き込んだ姉は、背を叩くリズムに合わせて幾度も言葉を繰り返す。穏やかながらも、沈みゆく心にきちんと届くようなはっきりしたものだ。
 大丈夫。大丈夫。優しい言葉がリフレインする。痛む頭を癒やすようだった。暗く濁る心を晴らすようだった。不透明度を増した躑躅色が、徐々に元の澄んだ色を取り戻していく。それでも、靄がかる闇は完全に晴れることはなかった。
 世界の理に一番近い彼女が『人間』だと認めてくれる。それだけで充分ではないか。充分なんだ。充分だと思わなければいけないのだ。だって、そうじゃないと、大好きな姉を困らせてしまうのだから。
 泣き疲れた脳味噌が囁く。そうだ。きっとそうだ。そう思わなければいけないんだ。言い聞かせるように繰り返し、少女は瞼を下ろしていく。暗くなった視界でもう一度繰り返す。
 彼女の言葉だけで充分なんだ。




されてばっかりは悔しいじゃない/はるグレ
AOINOさんには「私に少し足りないものは」で始まり、「どうか気付かないで」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字)以内でお願いします。


 自分に少しばかり――否、確実に足りないのは勇気なのだと思う。
 いつだって虚勢を張って、心の底では怯えて、肝心な時に限って逃げてしまう。なんと臆病なのか。なんと意気地なしなのか。自分でも呆れるほどだ。
 けれども、今はそのなけなしの勇気をふるう時なのだ。
「は、るか」
 愛しい人を呼ぶ。掠れて上ずった、みっともない声だ。相手もその異常に気付いたのか、振り返った彼はことりと首を傾げた。
「どうしました?」
 呼ばれた少年は、足音もたてずに少女の元へと素早く辿り着く。瞬間移動ではないかと思うほどの早さだ。忍を名乗る彼は、いつだって不可思議な技を使ってくる。
 始果の顔が迫る。こちらの異常を確認するために覗き込んできたのだ。あまりの近さに、急いで二歩後ずさる。瞬間、強い後悔に襲われる。そういうところが勇気が無いのだぞ、と頭の中で誰かが囁いた。
「……グレイス?」
 ますますの異状に、少年は疑問符を浮かべ少女を呼ぶ。当たり前だ、呼ばれて近寄ってみたら逃げられたのだ。疑問に思うのも無理はない。
「何かあったのですか?」
「な、んでもない。なんでもないわよ」
 問いに急いで答え、グレイスはゆっくりと後ずさった距離を詰める。たった二歩、されど二歩。そんなわずかに近づいただけで心臓は強く脈を打ち始めた。
 目と鼻の先の彼を見上げる。頭一個分上のかんばせは、ほんのわずかに険しくなっていた。好きな人が異常な行動をすれば、心配にもなるものだ。命を捧げるほど愛する人間相手ならば尚更である。
 震える手を伸ばし、白い頬を包む。両手で捕らえた顔は険しさを失い、きょとりとした様子で瞬きをした。
「グレイス?」
「目、閉じなさい」
 呼ぶ声に被せるように命を下す。その声はみっともないほど震え、少しばかりひっくり返っていた。
 瞬き二つ。従順な彼は、その一言で目を閉じる。月色の瞳が瞼の奥に隠れる。瞼を下ろし、口を閉じたその顔に心臓がうるさく脈を鳴り響かせる。落ち着けようと小さく深呼吸。効果など無かった。
 つま先に力を入れ、捕らえた顔に己の顔を近づける。脈拍がどんどんと上がっていく。バクバクと心臓が音をたてた。
 己も目をつむり、きゅっと唇を引き結ぶ。あぁ、このうるさい鼓動にどうか気付かないでくれ、と祈りながら、少女はゆっくりと薄い唇を目指した。




薄雲の向こうに想いを乗せて/ライレフ
葵壱さんには「月の見えない夜だった」で始まり、「それが少しくすぐったかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字程度)でお願いします。


 月の見えない夜だ。見上げた空は光受け輝く衛星で薄ら明るく照らされているが、肝心の姿は雲の裏側だ。心なしか、夜闇は普段よりも深く見えた。
「満月なのに月見えねーな」
 もったいね、と曇り空を見上げ兄は言う。秋のベランダは寒いだろうに、彼は裸足にサンダルでそこにいた。薄雲の向こう側に思いを馳せる姿は、普段の彼からは想像できないものだ。
「開けたら閉める、と言っているでしょう」
 開け放たれたガラス戸に手をかけ、鉄作に肘をつく兄の背に言葉を刺す。夜風が吹き込むリビングは随分と冷えていた。このまま締め出してやろうか、だなんて意地の悪いことを考える。
 朱い頭が振り返る。ニッと笑い、兄は欄干についていた手をこちらに伸ばす。急いでサンダルをつっかけ、弟は引かれるがままにベランダに出た。ほら、と朱は薄闇空を指差す。夜闇に似合わず白く光る雲には、丸く明るいシルエットが浮かんでいた。
 繋いだ手が解かれる。手の平と手の平が合わさり、指が隙間に潜り込む。闇で冷めた手に温もりが灯る。
「『月が綺麗ですね』、なんてな」
 八重歯覗く口が彼らしくもないロマンチックな言葉を紡ぎ出す。覚えたての言葉を自慢気に披露する子供のような様相だ。おそらくレイシスあたりに聞いたのだろう。
「月、見えないのでしょう」
「雰囲気雰囲気」
 呆れた調子の声に、おどけた声が返される。深く繋いだ手を遊ぶようにゆるく振り、朱は笑う。三日月のように弧を描く目と大きく開いた口で形作られた表情は、上機嫌を形にしたようなものだった。
 繋がる手も、幸いに満ちた笑みも、らしくもない愛の言葉も、どこかくすぐったかった。




過去など追い越して/グレイス
あおいちさんには「幻ばかり追いかけていた」で始まり、「だから、見ていて」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば2ツイート(280字程度)でお願いします。


 姉の幻ばかり追いかけていた。
 いつだって明るくて、いつだって可愛らしくて、頑張り屋で、全てを愛していて、皆に、世界に愛される人。
 自分が成るかもしれなかった存在。
 羨ましくないかといえば嘘になる。幻想を見なかったといえば嘘になる。あの子に成りたい、と何度思ったことか。
 それも昔の話だ、と少女はふと息を吐く。新たにネメシスに産まれ、生き、人々と触れた今、その感情は多少薄れていた。皆、自分を『個』として認めてくれている――『グレイス』という存在を受け入れてくれている。もう、幻ばかり見ていられないのだ。
「グレイス、大丈夫デスカ?」
 暑いほどの照明の光から逃れた舞台袖、薄闇の中姉の声が耳に届く。ライブステージの轟音に掻き消されそうなそれは、心配げに揺れていた。整った美しい眉は、端が緩やかに下がっている。口元は心情を表すように強張って開かれていた。
「大丈夫よ」
 ふん、と鼻を鳴らし妹は答える。口角に力を入れ、不遜な笑みを作った。
 大丈夫なわけがない。今日はライブ、しかも初めてのソロでの登壇があるのだ。心臓が痛い。マイクを握る手が震える。表情だって、意識して作らないとすぐに不安で歪んでしまいそうだ。
 けれども、そんなことは言っていられない。だって、皆待ってくれているのだ。自分を、『グレイス』の歌を、パフォーマンスを、存在を。怯えてなんていられない。待つ人々に応えるのが、今の自分にできる全てだ。
 ふっと目を細め、少女は唇を吊り上げて笑う。躑躅の瞳には、確かな覚悟の光が、矜持の光が、高揚の光が宿っていた。
「私を誰だと思ってるの? 完璧にやりきってみせるわよ。だから、見てなさい」




僕らはもう臆することなんてないのだから/ライレフ
AOINOさんには「僕らは臆病だった」で始まり、「私はこの人に惹かれている」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字)以内でお願いします。


 僕らは臆病なのだと思う。
 想いを通わせ合って――所謂『恋人』になったというのに、まだそれらしいことなど一つもできていないのだ。
 これが関係が始まってすぐならばおかしくないだろう。だが、もう付き合ってから一ヶ月以上経つのだ。口づけはおろか、今まであったハグや手を繋ぐことすらなくなった。関係が変わる前までは当たり前のように触れ合っていたというのに、愛しあった途端これだ。より強い繋がりを持ったはずだというのに、より希薄な触れ合いになってしまった。
 互いに触れることを恐れているのだ。もし嫌がられたら。もし嫌われたなら。手を伸ばすだけで、そんな恐怖が襲うのだ。臆病者たちは、いつまで経っても進めない。
「烈風刀ー。風呂上がったー」
 愛しい音が鼓膜を震わせる。視線を向けると、タオルを首に掛けた雷刀の姿があった。湯で温まった肌はほんのりと色付き、どこか艶やかだ。
 短絡的な思考にぶんぶんと頭を振る。こんな姿、見飽きているというのに、『恋人』になってからは妙に意識してしまう。なんと破廉恥か。なんと浅ましいのか。ただが風呂上がりの彼にこんなに胸を高鳴らせるなんて。
「どした? なんかあった?」
「いえ、別に。お風呂入りますね」
「ストップ」
 立ち上がろうとする己の前に、朱い影が立ちはだかる。逆光で陰った目には、薄く憂惧が浮かんでいた。
「まーた一人で考え込んでんだろ」
「そんなこと――」
「嘘吐け。オニイチャンには丸分かりですー」
 おどけた言葉だが、そこにある思慮は確かなものだ。彼はこういう時敏い。そして、誰よりも尽くそうと動くのだ。
「とりあえず言ってみ? 楽になるかもしんねーし」
 隣に腰を下ろした兄がじっと覗き込んでくる。ニッとした明るい笑みの裏には、思いやりが溢れていた。
 あぁ、敵わない。
 自分は、この温かな、何もかもを慈しむ彼に、こんなに惹かれているのだ。
 だから。
「らいと」
 震える声で愛しい人を呼ぶ。吐き出した音は、みっともなく掠れていた。
 胸を巣食う臆病を振り払い、座面に放り出された大きな右手に己の左手を伸ばした。




どんな形でも、貴方と/神十字
葵壱さんには「永遠なんてない」で始まり、「いつか僕を見つけてください」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば12ツイート(1680字)以内でお願いします。


「永遠なんてありませんよ」
 当然の事実を口にする。途端、目の前の紅玉が苦々しげに眇められた。
「さっきはあるっつってたじゃん」
「子どもの前でそんなことは言えないでしょう」
 大体貴方が一番分かっているでしょうに、と呆れた調子で続ける。う、と濁った音が引き結ばれた唇から漏れた。
 ずっといっしょなんだ。えいえんにぼくがまもるんだ。
 己よりもずっと小さい、妹のような存在を抱き締め宣言する幼子に、そうですね、と頭を撫でたのが十数分前。仲間たちと遊びにいった小さな兄貴分の背を見送った後、神は言ったのだ。永遠を信じてるなんて可愛いじゃん、と。
「けどよぉ」
「けども何もないでしょう」
 無意味に食い下がる彼に、ほのかに苦みを含んだ笑みを返す。子どもを諭す時と全く同じだ。悠久の時を生きる存在だというのに、彼は時折こうも幼い姿を見せる。
「子どもにも言やぁいいのに」
「そんなことできるわけがないでしょう」
 馬鹿ですか、と冷たく言い放つと、そこまで言うことねぇじゃん、とむくれた声が返ってくる。
 幼き子どもは『ずっと』『永遠』を夢見る。頬を紅潮させ永久に思いを馳せる姿は可愛らしいものだ。そんな可憐な夢を大人が壊していい訳がない。受け止めて受け入れてやるのが自分たちの務めだ。
「オレには言うのに」
「子ども扱いしてほしいんですか?」
「そうじゃねぇよ」
 いじわる、と頬を膨らませる様子に思わず笑みをこぼす。子ども扱いなどせずとも、反応は子どもなのだから面白い。相手は敬うべき神であることを忘れてはいけないのだが。
「分かってくださいよ。というか、分かっているでしょう? 神様」
「……分かってんよ。分かってんけどさ」
 永遠に一緒にいてーもん。
 ぽつりと呟く声が手入れされたくさはらに落ちる。遠くから聞こえてくる子どもの声が、どこか小さくなったように思えた。
「な、んですか、それ」
 ハハ、と思わず笑いが漏れる。音に反して渇ききった、愉快さなど欠片も無い呆然としたものだ。ほのかな悲哀すら滲んでいた。
「人間が永遠に存在できるはずなどないでしょう。そんなの、貴方が誰よりも知っている」
 突き放すような蒼の言葉に、焔色の瞳が苦しげに歪む。事実を知っているからこそ――経験しているからこその顔だ。変えられないと知っているからこその表情だ。
 力強く唇を噛み締め地を見つめる愛しい人の頭に手を伸ばす。燃え盛る炎のように鮮やかな髪に触れ、丸い頭蓋に沿って撫でた。
「永遠なんてありませんよ」
 歌うように同じ言葉を口にする。ギリ、と歯が擦れる嫌な音が午後の空気に落ちた。
「けど、いなくなるまで一緒にいることはできるでしょう?」
「やだ。ずっとがいい」
「子どもみたいなこと言わないでください」
 唇を尖らせた愛する神に、思わず笑みがこぼれる。先ほどまであった乾きは失せて、あるのは慈しみだ。子どもに対するそれと同じである。
 地に吸い込まれていた顔が突如上がり、紅が蒼を射抜く。黒のロングコートに包まれた腕が伸ばされ、己の背に回された。ぎゅっと潰れそうなほどの力で抱き締められる。
「やだ」
「やだ、じゃありません」
 聞き分けてください、と願いの言葉を口にする。己に言い聞かせる言葉でもあった。だって、こんなにも求められたら応えたくなるではないか。応えられないと分かっているのに、叶えてやりたくなるじゃないか。そんなこと、人間にできっこないのに。
「そうだ。『輪廻転生』という言葉を知っていますか」
「何だよ、突然」
 懐疑と少しの怒りが混じった音が耳に直接注ぎ込まれる。構わず言葉を続ける。
「簡単に言うと、人は生まれ変わるということです」
「だから、何」
「生まれ変われば、ずっと一緒にいられるのではないですか?」
 それこそ、永遠に。
 歌うように、祈るように、言葉を口にする。戯れ言を唱える。そんなの、まやかしでしかない。分かっていても、『永遠』を共にするにはこれぐらいしか思いつかなかった。
 いたずらげに笑い、青年は微笑む。淡いそれには、諦観が浮かんでいた。
「生まれ変わっても、僕を見つけてくださいね」

畳む

#レイシス #グレイス #はるグレ #ライレフ #腐向け

SDVX


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