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No.15
冷め切った約束事【ゆかれいむ】
冷め切った約束事【ゆかれいむ】
pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。
お題:犯人はオンラインゲーム[15m]
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お茶を一口飲み、溜め息一つ。先ほどからこればかり繰り返しているのは、霊夢自身も気が付いていた。けれどもそれを止めることはまだできない。待ち人はまだ来ないのだから。
紫は毎日同じ時間に現れる。遅れたことなんてなかった。なにせあちらが「必ず来るわ」と言ったのだから。紫は適当そうに見えて約束はしっかり守るヒトだということを霊夢は知っていた。きっと、紫のそんな姿を知るのは霊夢と幽々子、それと従者の藍ぐらいだろう。
またお茶を一口。溜め息一つ。その繰り返しばかりだ。自分でも呆れる。
「遅いわねぇ」
「ごめんなさい」
霊夢はどこか寂しげに呟くと、すぐ隣から申し訳なさそうな声が聞こえた。驚いてそちらを見ると、紫がいた。泣きそうな顔をしていた。
「……遅いじゃない」
「ごめんなさい。ちょっと用事が」
「うそ」
その目は若干泳いでいた。普通ならば気付かないが、相手は博麗の巫女である霊夢だ。妙に勘のいい彼女を誤魔化すのはなかなかに難しいことだ。
「で、本当の理由は?」
「……ちょっと、ゲームに夢中になっちゃって」
「げぇむ?」
紫が時々何かの機械をいじっていることがあった。それを隣で眺めることはよくあった。
「こっちに持ってきてやればいいじゃない。いつも通りに」
「オンラインゲームっていってね、特別な機械じゃないと遊べないのよ」
反省しているのか、紫の表情は暗い。なにせ自分で「必ず」と言った約束を初めて破ったのだ。完璧主義者に近い彼女にはなかなかのダメージだった。
霊夢もそれを察しているが、「ふぅん」と呆れたように言った。また紫の顔が情けないものになる。
「ごめんなさい」
「寂しかったんだから」
「え?」
きょとんとした紫の顔。その顔はだんだんと明るくなる。
「うそよ」
ばーか、とふざけるように言って霊夢はまた茶を飲む。本心なんて言うつもりは毛頭無い。特に、そんな『くだらない』理由で約束を破ったのだから。それでも紫は霊夢の本心など分かっているだろう。知っているからこそ言わない。勝手に察して、勝手に一喜一憂するといいのだ。
ふふん、と霊夢は機嫌よさそうに笑った。二つ並んだ湯呑の中身は、既に冷め切っていた。
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東方project
2024/1/30(Tue) 00:00
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お茶を一口飲み、溜め息一つ。先ほどからこればかり繰り返しているのは、霊夢自身も気が付いていた。けれどもそれを止めることはまだできない。待ち人はまだ来ないのだから。
紫は毎日同じ時間に現れる。遅れたことなんてなかった。なにせあちらが「必ず来るわ」と言ったのだから。紫は適当そうに見えて約束はしっかり守るヒトだということを霊夢は知っていた。きっと、紫のそんな姿を知るのは霊夢と幽々子、それと従者の藍ぐらいだろう。
またお茶を一口。溜め息一つ。その繰り返しばかりだ。自分でも呆れる。
「遅いわねぇ」
「ごめんなさい」
霊夢はどこか寂しげに呟くと、すぐ隣から申し訳なさそうな声が聞こえた。驚いてそちらを見ると、紫がいた。泣きそうな顔をしていた。
「……遅いじゃない」
「ごめんなさい。ちょっと用事が」
「うそ」
その目は若干泳いでいた。普通ならば気付かないが、相手は博麗の巫女である霊夢だ。妙に勘のいい彼女を誤魔化すのはなかなかに難しいことだ。
「で、本当の理由は?」
「……ちょっと、ゲームに夢中になっちゃって」
「げぇむ?」
紫が時々何かの機械をいじっていることがあった。それを隣で眺めることはよくあった。
「こっちに持ってきてやればいいじゃない。いつも通りに」
「オンラインゲームっていってね、特別な機械じゃないと遊べないのよ」
反省しているのか、紫の表情は暗い。なにせ自分で「必ず」と言った約束を初めて破ったのだ。完璧主義者に近い彼女にはなかなかのダメージだった。
霊夢もそれを察しているが、「ふぅん」と呆れたように言った。また紫の顔が情けないものになる。
「ごめんなさい」
「寂しかったんだから」
「え?」
きょとんとした紫の顔。その顔はだんだんと明るくなる。
「うそよ」
ばーか、とふざけるように言って霊夢はまた茶を飲む。本心なんて言うつもりは毛頭無い。特に、そんな『くだらない』理由で約束を破ったのだから。それでも紫は霊夢の本心など分かっているだろう。知っているからこそ言わない。勝手に察して、勝手に一喜一憂するといいのだ。
ふふん、と霊夢は機嫌よさそうに笑った。二つ並んだ湯呑の中身は、既に冷め切っていた。
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