401/V0.txt

otaku no genkaku tsumeawase

TOP
|
HOME

No.211

降りこめる本能【ライレフ/R18】

降りこめる本能【ライレフ/R18】
20250422184627-admin.png
雨で薄暗い中暑いのも忘れて致す右左が見たかっただけ。

 ぬかるみに足を突っ込んだような粘ついた音が鼓膜にへばりつく。現実は違う。そんな無邪気な子どものような動きによるものではない。粘膜と粘膜が擦れあい、潤滑油ではしたなく濡れそぼった穴がみっともない声をあげているのだ。身体が動く度、粘り気のある液体がこねくられる湿った音が、引き締まった肉と肉がぶつかりあう乾いた音が薄暗い部屋に響く。日常とはかけ離れた淫らな合奏が部屋を満たしていた。
 業務も課題も無い休日で。テストは終わったばかりで急いで勉強する必要性も薄くて。有り体に言えば暇で。外は雨で。二人きりで長く過ごせるのは久しぶりで。
 互いにごく普通の、年齢相応に健全な男子高校生だ。つがいを求める欲望など、つがいと触れあう欲望など、腹の底にずっと抱えている。見ないふりをしているだけで、いつだって燻っている。暇な土曜日の昼下がりにそれが燃え上がり爆発して発露することは必然的とも言えた。
 そうやって時間も場所も常識も捨て去りソファに雪崩れ込んで、行儀が悪いと指摘するのも馬鹿らしく服を脱ぎ捨て、肌と肌とを直接触れあわせて、粘膜と粘膜で繋がる今に至る。
 ぐじゅ、ぶちゅ、と濁った淫猥な音があがる。耳を塞ぎたくなるような響きが鼓膜を震わす度、凄まじい勢いで脊髄を電気信号が駆け抜けていく。快楽と命名されたそれは、脳味噌をぶん殴り烈風刀のまともな思考を奪っていった。ゴリゴリと常識ぶった部分が削れていく頭は、『きもちいい』の五音節を理解することで手一杯だ。
 きもちよくて、きもちよすぎて、閉じる機能を忘れた口から声が漏れる。上擦ったそれは、少女のものだと勘違いされても仕方が無い響きをしていた。恥ずかしいと思う機能すら失われた頭は、我慢することを忘れた脳味噌は、本能が赴くままに甘い声を――今まさに繋がっている恋人の情欲を煽る音色を奏でた。
 肉の悦びから逃れるようにぎゅっと閉じられていた目が薄く開いていく。涙をたたえた瞳は、大切に手入れされ澄み切った池を思い起こさせた。こんこんと湧いて出て溢れる水が、紅潮した肌に透明な線を引いていく。熱に浮かされとろけきった瞳は、本能に炙られて色付いた肌は、整ったかんばせを塗らす涙は、耳をも溶かすような嬌声をあげる口は、欲望の炎に薪をどんどんとくべていく。獣の本能に支配されつつ雷刀は、衝動がままに腰を打ちつけた。同じく獣欲に蝕まれる弟も、湧き出る衝動がままに甘ったるい声をあげた。
 目の前の首に回した腕、汗ばんだ肌と肌がくっつきあって何とも言い難い感触を生み出す。雨で気温が下がって涼しいから、と今日は冷房を消していたのを頭のまともな部分がかろうじて思い出す。雲で隠れて日が差さないとはいえ、部屋は生ぬるい空気で満たされているだろう。その上激しく動いているのだから、汗を掻くのは必然であった。普段ならば暑いだなんだと文句を垂れる口は、意味を持たない音をこぼすだけだ。耐えられずリモコンを取るであろう手は、己の腰をがしりと掴んで離そうとしない。汗と体液で濡れた肌は、今は不快感を遙かに上回る快感と幸福感を生み出した。
 涙でけぶった視界の中、ギラつく鮮やかな唐紅だけが浮き上がる。恋人の象徴である色。恋人が目の前に存在しているという事実。恋人が己だけを見つめているという証左。全てが馬鹿みたいに拍動する胸の奥に、愛する人を迎え入れた腹の底に更なる火を灯す。ぁッ、とソリッドな声が部屋に落ちた。
 耳障りな水っぽい音が、赤みを増した耳に、淫悦でとかされた脳味噌に叩きつけられる。常ならば表現し難いほどの羞恥を覚えるはずのそれは、ひたすらに本能を煽って身体を昂ぶらせていく。悦びを謳い上げる口が、らいと、らいと、と愛する人の名をどうにか形作る。きもちよさに支配された脳味噌は、大好きな人を求める声を発せさせた。愛を抱えた心も飢えた身体も満たされているはずなのに、碧い少年は足りないとばかりに拙く音を紡いでいく。それがつがいにこれ以上無く効くことなど知らずに。
 れふと、と吼えるような声。同時に、ごちゅん、と身体全てに響き渡るような衝撃。情欲を煽られた朱い少年は、丁寧に解され柔らかになった内部に一気に自身を突き入れる。閉じた肉を掻き分けられ、めいっぱいに刺激され、快楽信号がキャパシティオーバーになりそうなほど叩きつけられ、烈風刀は悲鳴めいた嬌声をあげた。それもまた、雷刀の腹に秘めたる獣欲を煽る。エナメル質が軋む高い音が卑猥な合奏の中に落ちた。
 ぁ、あ、と突き上げられる度に掠れた細い声が開きっぱなしの口から吐き出される。まるでちゃちいおもちゃのようだ。おもちゃめいた単純な動作しかできないほど、少年の身体は快楽に支配されていた。ただひとつ、腹の中身を除いて。
 ぐっ、と雄肉が這入ってくる。突き進むそれを逃すまいと、もっと奥へと誘わんと、ナカはぐねぐねとうねる。快楽を、子種をねだるようにまとわりついて絡みつく。まだ果てまいと、もっとつがいを貪らんと、更なる快楽を求めんと、剛直はそれを振り切り去っていく。まだ足りない、なんてわがままを通そうと、肉色の粘膜が蠢いてすがりつく。全ての動作がはしたないピンク色の悦びを生み出し、幾重にも重なった理性の皮を剥がして本能だけを剥き出しにしていく。雨天で陰った部屋に獣めいた声がどんどんと積もっていく。
 腹の奥底を小突かれる度、身体から力が抜けていく。快楽ばかりを受容して言うことを聞かない脳味噌は、筋肉にもろくに指令を出さずにいた。汗ばんでうっすらと濡れた腕が、同じく汗ばんだ首をなぞるようにして解けて落ちる。上手く着地できなかった右腕が、だらりとソファの座面から垂れた。普段ならばすぐに上げて戻すが、今ばかりはそんな余裕がなど無い。腹の底から響き渡る法悦を味わうのに必死な身体は、ろくに動くことができなかった。
 ハ、ぁっ、と呼吸なのか声なのか分からないものだけが口から漏れる。腕から伝わる温もりが無くなった分、腹が切なくてたまらない。欲しくて、触れたくて手を伸ばしたいのに、快楽に浸りきった脳味噌は能動的に筋肉へ電気信号を送ることなどとうに諦めていた。突かれる度、落ちて垂れた腕が揺れる。ソファの生地が擦れては心地良さなど覚えないはずだというのに、今ばかりはそれすらも快感を生んだ。腹の奥に突き込まれたものに全身を作り変えられてしまったようだ、なんて馬鹿げたことが頭の隅に浮かぶ。突かれた瞬間、それは弾け飛んで消えた。
 ごちゅん、なんて漫画めいた音が聞こえるほど、行き止まりを強く穿たれる。瞬間、世界が止まった。
「――ァっ、あっ!」
 一拍遅れて、凄まじい情報が――快楽が全身を駆け巡る。どうやら、許容量を超えたそれは脳味噌を焼け付かせたらしい。受容しきれぬそれを逃がすように、組み敷かれた身体が大きく跳ねる。喉仏が浮かぶ首がぐっとしなって、形の良い頭が固く作られているはずのソファの肘掛けに沈み込んだ。濃い布の上に鮮やかなが若葉が散る。額に張り付いていたそれも、衝撃のあまりに宙に浮かんでまた落ちた。
 ままならない呼吸の合間、囀るように目の前の愛し人を呼ぶ。さいこうにきもちいいのに、おなかが寂しくて、腕が寂しくて、ぬくもりが足りなくて。けれども、快楽に融かされてろくに動かない身体は声を発するので精一杯だ。言葉だけでも兄を掴もうと、兄に縋りつこうと、弟は何度も名前を繰り返す。三度目を発するところで、ひぁ、という己自身の高い声が遮った。声も身体もどろどろに融けて、彼に融かされて、形を成さなくなっていく。それがきもちよくてたまらない。
 腰の右側をひやりと空気が撫ぜる。代わりに、左頬に温かなものが訪れた。頬に触れられているのだと気付くより先に、唇に熱。口内に熱。触れる度に痺れるようなそれに、はしたない声が際限なく湧いて出てくる。全て、雷刀の口内に吸われてくぐもったものになってしまった。
「ァ、う……、ッ、ゥ……」
 絡もうとする舌はどちらも溢れるほど唾液をたっぷりまとっていて、捕らえられることができない。それでも、ぬめる表面を熱いものが掠めていく感覚は腰を重くするには十分な刺激だった。痺れを切らしたように舌が離れていく。追いかけてだらしなく伸ばされた己のそれが、温かなものに包まれる。ぢゅう、と行儀の悪い音。同時に、凄まじい電気信号がシナプスを殴った。舌を吸われ扱かれる快楽が、その間も絶えずナカを穿たれる快楽が、脳味噌をダメにしていく。食らわれる碧にできることなど、もう甘ったるい――つがいを煽り、焚きつけ、昂ぶらせる声を漏らすぐらいだ。
 張り出した傘がゴリゴリと内部を削るように去っていく。追いかけるように締め付ける内壁を、見事な先端が勢いよく突き進んだ。熱ときもちよさでとろけた肉は、張り裂けんばかりに法悦を叫んだ。連動するように、弟の口からも淫悦に染まりきった嬌声があがる。垂れ下がった目元から透明なものが流れて赤く染まった頬を静かに彩る。
 ずるぅ、とされるがままだった己の舌が愛しい人の口から力無く抜ける。元の場所にしまわれるはずのそれは、喘ぎ声とともに突き出され天を向いた。興奮で湧いて出る唾液が口から溢れて、肌をしとどに濡らしていく。赤く熟れた粘膜が濡れてつやめくのはあまりにも刺激的な光景だ。食らう者が短く低く喘ぐぐらいには。
 きもちよすぎて、もう口を動かすだけで精一杯だ。脳味噌は快楽を受け取るばかりで肉体を動かす信号を送ることなどとうに忘れていた。また愛しい人に触れたいのに、腕はもう指一本動かす余裕など無い。代わりと言わんばかりに、兄の腰に軽く回された足がしがみつくように、抱き締めるように絡みついた。本能に支配されているのだろう、振りほどかんばかりに突き出されるその身体に、烈風刀は鍛えられた足で縋りつく。汗ばんだ肌同士ではすぐに滑り落ちてしまうだろうに、外でも中でも恋人を抱き締めた。とうの昔に肉欲に溺れてダメになった脳味噌を本能が動かしてたのだ。
 腰を掴まれる力が強くなる。ただでさえ激しかった腰つきが更に早まり、大胆な、重いものになる。上から降り注ぐ獣めいた吐息が唸りめいた嬌声へと変わっていく。何度も見てきた光景だ。何度も体験してきた動きだ。だからこそ、それが何を意味するかなどすぐさま分かる。この腹に精を吐き出し、種を植えつけようとしているのだ。は、ァッ、と艶めいた声が、どこか笑みを含んだ声が漏れる。だって、そんなの最高に決まっているではないか。期待が声に表れないわけがない。
 れふと、と名を呼ばれる。ぼやけた視界の中に映るのは、険しげに眉を寄せ、目を細め、こわばったように口を開く恋人の顔だ。どれもが肉の悦びにとろけていて、どれもが己の欲望を焚きつけるものだった。視線に、声に、雄を迎え入れた腹が反応する。みっともなく大口開いて咥えこんだ場所が、きゅうと収縮するのが己でも分かった。あ、と濁った、熱で焼けた声が落ちてくる。彼がきもちよくなっている証拠だ。それが嬉しくて、また腹が勝手に蠢く。諫めるように一発ぶちこまれた。悲鳴めいた喘ぎが仰け反った喉から奏でられる。
 暗い部屋のはずなのに、視界に白いものがちらつく。細かなパーティクルが何度も散る様は、己の限界を――頂点に上り詰めつつあることを示していた。腹に渦巻く熱を吐き出したくて、一番きもちいいところに行きたくて、内部は雄肉を煽るように細かに締めては撫でてを繰り返す。全くの無意識であるが、効果はてきめんだったようだ。腹を穿つ動きが更に重いものになった。
 ぐ、ぁ、と降ってくる嬌声が数を増していく。ごちゅん、と耳に、骨に音が響く。掠れた短い音が聞こえた瞬間、腹の中で熱が爆発した。一番奥から熱いものが広がっていく。内臓全部を融かしてしまいそうな凄まじい温度に、目の前で、頭の中で、何かが弾けた。
「――ッ、ぅ、あっ!」
 ビクン、と身体が跳ねて背が反る。頭が反る。盛大な、艶やかな、とろけた声がみっともなく開かれた口から跳ね出る。部屋に喜悦溢るる嬌声を響かせる。瞠られた目から涙が弾け飛んでソファの生地を濡らす。
 腹の中も外も熱い。どちらも精によるものだ。どちらもきもちよくてたまらないものだ。ねだるように、達したばかりの内部がうねって硬度を失いつつある剛直を撫でて回る。うぁ、と上擦った声が聞こえた。更に腹の中に熱いものが――精が、種が、愛が注ぎこまれる。何もかもを焼きつくすその感覚に、横たわった身がまた大きく震えた。あ、ぁ、とはしたない、悦びに満ち満ちた声が開きっぱなしになったままの口から漏れる。熱に浮かされたそれは、腹を満たす欲望と同じほどどろりとしていた。
 腹に、胸に、腕にぬくもり。耳の横を少し湿った柔らかなものが掠めていく。その感覚は分かれど、達したばかりの身体は反応する余裕すらなかった。あー、と少しだけ上擦った、満足げな声が耳朶を撫でる。兄が覆い被さってきたのだと気付くには随分と時間を要した――天上まで放り上げられた頭ですぐに状況を理解しろという方が無理なのだ。
 短く、どこか甘さの残る呼吸が次第に落ち着いてく。やっとまともな量の酸素を取り入れた頭は、ゆっくりと現実の輪郭を辿り寄せていった。のしかかり触れる身体が重い。汗ばんで湿った肌が触れて気持ちが悪い。空調が効いていない部屋が暑い。貪るようにまぐわっていた間は快楽でしかなかったそれらは、今は不快感しか生み出さない。常人の思考回路を取り戻した脳味噌は快不快を正常に認識しだしたのだ。
 パタパタ。軽い音が荒い呼吸の間を縫って部屋に落ちる。雨はまだ止んでいないようだ。朝から降っているのに。どれほど降り続くのだろう。明日には晴れるだろうか。洗濯物が。現実に足を付けた頭の中を所帯じみた考えが巡っていく。
 そうだ、洗濯しなければいけないのだ。雨で部屋干しをするしかないのだから数は少ない方が良いに決まっているのに、何故わざわざ洗濯物を増やすようなことをしてしまったのだろう。しかもソファなんて後始末が大変なところで。冷静さを取り戻しつつある少年の頭の中に後悔ばかりが降り積もっていく。それほどまで溜まっていたのだ、なんて片割れが使いそうな言い訳がちょっとだけ動きの鈍い思考の底から湧いて出てくる。あまりにも稚拙すぎる言い様に、自己嫌悪は募っていくばかりだ。
「れふとー?」
 頬に柔らかな、温かな感触。いつの間にか閉じていた目を開けると、そこにはこちらを覗き込むように見つめる兄の姿があった。涙というフィルターが消え失せた視界の中、朱い瞳がうっすらと部屋に差し込む光を映して輝く。つい数分前までは獣めいてギラついていたというのに、今はすっかりと穏やかな、けれどもまだ熱が残って輪郭がとろけたものになっていた。興奮で溢れた唾液でつやめく唇がゆっくりと動く。
「だいじょぶ?」
「だいじょうぶです」
 同じほどの調子で弟は返す。声を出すことで、ようやく長く息を吐き出すことを思い出した。音が聞こえそうなほど深く呼吸を繰り返す。キックと同じほど重く響いていた鼓動はだんだんと速度を落とし、普段のものへと戻っていく。一気に押し寄せてきた疲労に、はぁ、と重く深い嘆息が漏れ出た。
 互いに汗やらなんやらでどろどろだ。シャワーを浴びなければ。閉め切って運動したから身体も部屋も暑い。もう冷房を点けてしまった方がいいだろう。放り出した服をまとめておかねば。ソファの後処理も早い内にしないと。ほんの数秒考えただけでタスクがどんどんと積み上がっていく。どれも疲れ切った身体でこなすにはあまりにも重労働だった――全て自業自得なのは重々承知なのだけれど。
 パタパタ。バタバタ。サァ。ザァ。窓ガラス一枚隔てて鈍くなった音が静かな部屋に転がっていく。雨の日の湿ったぬるい空気が二人を包んでいた。
畳む

#ライレフ#腐向け#R18

SDVX


expand_less