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No.22
交わった平行線【ライレフ】
交わった平行線【ライレフ】
pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。
お題:1000の交わり[30m]
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隣に座る弟をちらりと見やる。点けっぱなしのテレビには興味を示す様子はなく、手元の参考書を眺めていた。時折赤いシートで紙面を隠しているあたり、今日の復習しているのだろう。自室でもできる、むしろ自室の方が集中できるであろうそれをわざわざリビング、それも自分の隣でやるのだから可愛らしい。言葉ではほとんど伝えることはないというのに時折態度で示すのは無意識なのかそれともわざとなのか。後者ならば口でも示して欲しいなぁ、なんて考えるのは贅沢だろうか。
弟は頭がいい。いかなる時も物事を冷静に判断する彼にはいつも助けられている。器量もよく、初等部の子達の面倒を見ている姿もよく見かける。料理だってこなせる。そんな彼なのだ、一緒にいるときに女子の視線を感じるのは当たり前だろう。
その視線は尊敬なのか、それとも。
高等部に進学してから『関係』が変化した。家族という枠を無理矢理乗り越えて、二人だけの秘密である現在に落ち着いている。誰も知らない、誰にも言えない、二人だけの『関係』だ。
これでよかったのだろうか、とたまに考えることがある。
互いに想いあっているとはいえ、彼をこちら側に引き込んだのは自分だ。それは紛れもない事実で、書き換えることなどできない現実だ。
自身の想いによって、彼をこちら側に引きずり込んでしまってよかったのだろうか。普通の道を歩むはずだった彼を引きずり踏み外させててしまったこの状況は本当に良いものなのか。
きっと、自分達兄弟は平行に歩いていくはずだったのだろう。適度な距離を保って、交わることなどなくそれぞれの道を歩んで行くはずだったのに。その距離を壊してしまった、重なるはずのない道を交差させてしまったのは本当に良かったのだろうか。許されることなのだろうか。
「雷刀?」
名を呼ばれ、意識が現実に戻る。目の前には不思議そうな顔をした烈風刀がいた。手に持っていた参考書は机の上に置かれている。もう今日の分は終わったのだろうか、なんてどうでもいいことを考えた。
「どうしたんですか、小難しい顔をして」
「んー? 考え事」
「貴方らしくありませんね」
「オニイチャンだって色々考えることあるっての」
「そうですか?」
不思議そうに烈風刀は首を傾げる。本気で疑問に思っているらしい。確かに考えるよりも先に行動する人間だけれど、その反応は流石に傷つく。思わず拗ねたような声を出してしまう。
「馬鹿にしてるだろ」
「いいえ。ただ、変に難しく考えるのは貴方らしくありませんよ」
そう言って、烈風刀は参考書を手に取り立ち上がる。今日の復習を終えたのだから部屋に戻るのだろう。隣にあった温もりが失われるのは寂しいが、そこまで拘束するのは流石にまずい。
ぽすん、と頭に何かが置かれた。視線を上にやると、烈風刀がこちらに腕を差し出し、頭に手を載せていた。そのまま優しく撫でられる。彼らしくもないいきなりの行動に身体が固まった。
「れ……ふと?」
「……こういうとき、貴方はいつもこうするでしょう」
間抜けな声で名を呼ぶと、恥ずかしいのか烈風刀は視線を逸らす。照れ隠しなのかぐしゃぐしゃと強く撫でられ、思わず目を伏せた。
「一人で悩むなといつも私に言うのに、貴方が一人で抱え込むのはずるいですよ」
烈風刀は再び隣に腰を下ろす。じっと見つめられるのは恥ずかしい。確かに彼が塞ぎ込んでいる時はいつもこうやって正面から見つめるのだ。きっと日頃のお返しなのだろう。
「ごめん」
「大丈夫ですから」
私がいますから、抱え込まないでください。
そういって烈風刀は笑った。その柔らかい笑みに、こちらも笑みを零す。けれども、上手く笑えない気がする。いつものように笑えていない気がするのだ。
彼のその優しく幸せそうな笑みが、なんだか痛かった。
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#ライレフ
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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交わった平行線【ライレフ】
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お題:1000の交わり[30m]
隣に座る弟をちらりと見やる。点けっぱなしのテレビには興味を示す様子はなく、手元の参考書を眺めていた。時折赤いシートで紙面を隠しているあたり、今日の復習しているのだろう。自室でもできる、むしろ自室の方が集中できるであろうそれをわざわざリビング、それも自分の隣でやるのだから可愛らしい。言葉ではほとんど伝えることはないというのに時折態度で示すのは無意識なのかそれともわざとなのか。後者ならば口でも示して欲しいなぁ、なんて考えるのは贅沢だろうか。
弟は頭がいい。いかなる時も物事を冷静に判断する彼にはいつも助けられている。器量もよく、初等部の子達の面倒を見ている姿もよく見かける。料理だってこなせる。そんな彼なのだ、一緒にいるときに女子の視線を感じるのは当たり前だろう。
その視線は尊敬なのか、それとも。
高等部に進学してから『関係』が変化した。家族という枠を無理矢理乗り越えて、二人だけの秘密である現在に落ち着いている。誰も知らない、誰にも言えない、二人だけの『関係』だ。
これでよかったのだろうか、とたまに考えることがある。
互いに想いあっているとはいえ、彼をこちら側に引き込んだのは自分だ。それは紛れもない事実で、書き換えることなどできない現実だ。
自身の想いによって、彼をこちら側に引きずり込んでしまってよかったのだろうか。普通の道を歩むはずだった彼を引きずり踏み外させててしまったこの状況は本当に良いものなのか。
きっと、自分達兄弟は平行に歩いていくはずだったのだろう。適度な距離を保って、交わることなどなくそれぞれの道を歩んで行くはずだったのに。その距離を壊してしまった、重なるはずのない道を交差させてしまったのは本当に良かったのだろうか。許されることなのだろうか。
「雷刀?」
名を呼ばれ、意識が現実に戻る。目の前には不思議そうな顔をした烈風刀がいた。手に持っていた参考書は机の上に置かれている。もう今日の分は終わったのだろうか、なんてどうでもいいことを考えた。
「どうしたんですか、小難しい顔をして」
「んー? 考え事」
「貴方らしくありませんね」
「オニイチャンだって色々考えることあるっての」
「そうですか?」
不思議そうに烈風刀は首を傾げる。本気で疑問に思っているらしい。確かに考えるよりも先に行動する人間だけれど、その反応は流石に傷つく。思わず拗ねたような声を出してしまう。
「馬鹿にしてるだろ」
「いいえ。ただ、変に難しく考えるのは貴方らしくありませんよ」
そう言って、烈風刀は参考書を手に取り立ち上がる。今日の復習を終えたのだから部屋に戻るのだろう。隣にあった温もりが失われるのは寂しいが、そこまで拘束するのは流石にまずい。
ぽすん、と頭に何かが置かれた。視線を上にやると、烈風刀がこちらに腕を差し出し、頭に手を載せていた。そのまま優しく撫でられる。彼らしくもないいきなりの行動に身体が固まった。
「れ……ふと?」
「……こういうとき、貴方はいつもこうするでしょう」
間抜けな声で名を呼ぶと、恥ずかしいのか烈風刀は視線を逸らす。照れ隠しなのかぐしゃぐしゃと強く撫でられ、思わず目を伏せた。
「一人で悩むなといつも私に言うのに、貴方が一人で抱え込むのはずるいですよ」
烈風刀は再び隣に腰を下ろす。じっと見つめられるのは恥ずかしい。確かに彼が塞ぎ込んでいる時はいつもこうやって正面から見つめるのだ。きっと日頃のお返しなのだろう。
「ごめん」
「大丈夫ですから」
私がいますから、抱え込まないでください。
そういって烈風刀は笑った。その柔らかい笑みに、こちらも笑みを零す。けれども、上手く笑えない気がする。いつものように笑えていない気がするのだ。
彼のその優しく幸せそうな笑みが、なんだか痛かった。
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