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No.27

時と夢の比例【魔理沙】

時と夢の比例【魔理沙】
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pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。

お題:大人の夢[15m]

 ぐ、と息を詰め足先に力を籠め腕を目一杯伸ばす。そうしても棚の上に積み上げられた本に指先すら届かない。
 何故届きもしないこんなところに片づけたのだ、と呆れたように溜め息を吐き、大人しく諦めて椅子を運ぶ。あれほど遠い位置にあったそれはすぐに手の内に収まった。なんだか負けたようで腑に落ちない。
 もっと身長が高ければ。そう思うことは多々あるが、身長が伸びる気配はない。徹夜する以外は健康的な生活を送っているというのに何故なのだ、とむくれる。見た目が小さいというのは生きる上で不便なのだ。
 もっと成長すればどんなところにも手が届くだろうか。
 もっと時が経てば今以上に魔法に近づけるだろうか。
 大人になれば。
 そう考えることはあるが、結局は机上の空論だ。たらればは物事のきっかけにはなれど、ただ囚われるだけではろくなことにならない。
 そもそも、だ。大人になれば身長が高くなるなんて保障はない。大人なんて夢に憧れて悪戯に時を過ごすだけで心身共に成長できるはずがない。大人になるということは、有限である時間が着実に減っていることを意味する。今ですら足りないというのに、これ以上減るなんてごめんだ。
 大きな夢を追うために、大人になるのはまだ早い。
 抱えた本を机の上に載せる。重いそれは音を立てて着地した。
 戻した椅子に座りその内の一冊を開く。遠い昔の大人達が残した知識を、夢を、願いを吸収し、幼い魔法使いは成長を遂げるのだ。

畳む

#霧雨魔理沙

東方project


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