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No.39
気付かぬ距離【ライレフ】
気付かぬ距離【ライレフ】
オニイチャンが頑張った結果弟君に色々いった感じのあれ。
ファイル名が「糖分高いの目指すライレフ」な辺りから察していただけると幸いですはい。
追記:あとお兄ちゃんしてるオニイチャンが書きたかった覚えもある。
ライレフへのお題は『寂しいからそばにいて』です。 shindanmaker.com/392860
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あんなにも青かった空は太陽の光を失いすっかりと闇色に染まっていた。穴が開いたように浮かぶ月は時折雲に隠れ、その度に闇が深くなる。世界は既に宵闇に支配された時間にあった。
そんな夜道を雷刀は歩いていた。その顔は空に負けずと暗く、足取りも普段のそれと正反対に重い。彼を知る者ならば、らしくないと驚くことだろう。
雷刀の成績は決していいとはいえない。テストは八割方赤点、その上課題もろくに提出せず、授業中は夢の世界に逃げるばかりだ。そんな日頃の行いが積もりに積もって、教員達の許容限界に達した。溜まりに溜まった課題に加え、日頃聞いていない授業の補足するための課題を放課後残ってやることとなったのだ。しかも逃げないようにと教員が必ず傍について教えるという素晴らしい待遇である。家には優秀な弟がいるとはいえ、彼だけではしっかりとコントロールできないことを見越しての策だ。息苦しくて堪らない。今日で四日目だが、課題は追加されたものを含めやっと半分が終わったところだ。あとどれほどかかるのだろう、と考えて頭が痛くなる。
アップデートがあれば逃げれるのに、と雷刀は溜め息を吐く。最近は大きなアップデートやバグ処理もなく、レイシスだけでも問題なく運用できるほど暇だ。そんな余裕がある今だからこそ、教員達はここぞとばかりに畳みかけてきたのだということは周りも彼も分かっている。
幾度目かの溜め息を吐いて雷刀は空を見上げる。烈風刀はもう帰っているだろうか。前述したように今はレイシスを手伝う必要もない。教員がついているのだから雷刀の面倒を見る必要もない。寄り道なんてことはしない優等生の彼は既に帰宅し、夕食を終え自室で勉学に勤しんでいるだろう。おかげでここ数日は彼と過ごす時間が減っていた。朝は慌ただしいし、学内では他者の目もある。では帰宅してたっぷりと、と思えば連日帰りは遅くなるし、じゃれようにもここまでの待遇を受けねばならぬほど情けない兄には鋭く冷え切った視線が送られてくるばかりだ。寂しいの一言に尽きる。
考えている内に足取りはどんどんと重く遅くなっていた。これ以上帰りが遅くなるのは避けたい。早く帰ろう。雷刀は暗い夜道を歩いていく。月はいつの間にか雲に隠れ、出てくる気配がない。
「おかえりなさい」
リビングの扉を開けると、柔らかな声が迎えた。声の主である烈風刀はソファに姿勢正しく座り、手に持った本を読んでいる。目の前にある机にはいくつもの本が積み上げられており、彼が長時間そこにいることを表していた。
その光景に、雷刀はぱちぱちと目を瞬いた。いつもならば、この時間はもう自室にこもっているはずだ。少なくともここ数日はそうだった。勉強の合間の気分転換だろうか、と結論付け、雷刀は扉を閉めて言葉を返す。その声は疲れを滲ませながらも嬉しそうだ。
「ただいま」
「ご飯用意しますね」
「いや、オレがやるよ」
「僕もまだ食べていないのです。ほら、用意しますから早く着替えてきてください」
そう言ってキッチンに消えた烈風刀の背を見つめ、雷刀は更に首を傾げる。普段ならばもう夕食は終えている頃合いだ。ここ最近遅く帰ってきている雷刀はともかく、普段通りに過ごしているはずの烈風刀がまだ食べていないのはおかしい。わざわざ待っていたのだろうか。しかし何故。つい先ほどまで数式を無理矢理詰め込まれた頭では、考えようにも上手くいかなかった。
怒られたりしなければいいのだが。心当たりが無いわけではない、というよりもここ数日の居残り授業含め両手で数えきれないほどたくさんある。苦々しく溜め息を吐いて、雷刀は自室へと向かった。
はぁ、と大きく溜め息を吐いて雷刀はソファに身を沈めた。腕はだらりと垂れ下がり身体の横に投げ出されている。そのまま背もたれに首を預け天井を見やる。
数日振りの二人での夕食は普段通り、いや、いつもよりも和やかだった。柔らかに語りかけてくる烈風刀に疲れすら忘れてここ数日のことを話した。トライプルの教え方は厳しいがこちらのレベルの合わせてくれるので分かりやすい、マキシマは普段よりもずっと暑苦しく単語を覚えることすら一苦労だ、現社はまだ分かるが歴史はさっぱりだ。そんな愚痴にも似たことを漏らしてしまったが、彼は怒ることなく聞き、その上労ってくれた。普段の彼ならば考えられないことだ。
そして片付けも終え、現在である。怒る気配もなく、かといって何か言いたいことがあるという様子でもない。一体どうしたのだろうか、と数学よりも分からない問題に雷刀は小さく唸った。
静かな足音、そしてもう一人分増えた重みにソファが柔らかく沈んだ。烈風刀が隣に座ったのだ。本の続きを読むのだろうか、と横目で見るが、彼は俯いたまま動かない。一体どうしたのだろう、調子でも悪いのだろうか。不安に思っていると、下ろしたままの手に温かな何かが触れた。それが烈風刀の手であることを理解し、雷刀は目を見開いた。烈風刀は手を触ることをあまり好まない。くすぐったいようで苦手だ、と彼は言い、こちらから触れることも、あちらから触れることも避けている様子だ。そんな彼が自ら手を重ねてきたのだ。驚くのも仕方ないだろう。
重ねた手はそのまま、烈風刀は身体を傾け雷刀の肩へともたれかかる。重なる彼の身体は温かく、ふわりと香るその匂いは心地よい。けれども、彼らしからぬ姿に動揺してしまった雷刀にそれらを認識する余裕はない。
「どした?」
「別に」
なんでもありませんという声はどこか拗ねているように聞こえる。子供のようなその姿は、自分にしか見せないものだ。
「なに? オニイチャンいなくて寂しかった?」
動揺を誤魔化しからかうように問うてみるが返事はない。かわりに彼は更に俯き、空いているもう片方の手で雷刀の服の裾を掴んだ。言葉では決して表現しない彼の控えめなその主張に雷刀は柔らかく笑む。
くるりと身体を横に向ける。肩にもたれかかっていた烈風刀の身体は、そのまま雷刀の胸に飛び込んできた。驚いたように小さく声を上げた彼の頭を優しく撫でる。それは心細さに泣き出しそうな子供をあやすような手つきだった。柔らかなそれに安心したのか、烈風刀はより温かさを求めるように雷刀の胸に頭を摺り寄せた。
「さみしー思いさせてごめんな」
「……ばか」
謝る雷刀の声音は優しく、反して返す烈風刀のそれは幼く弱々しい。やはり拗ねているようだ。一緒に暮らしているというのに、ここ数日は家でも学校でもろくに会話する機会がなかったのだ。普段はドライな彼でも寂しいと思うのは仕方ないだろう。
昨日まで冷え切った視線は強がりみたいなものだったのだろうか、と雷刀は思案する。烈風刀は家族であろうが弱った姿を見せたがらない。それこそ、限界に達するまで。そして限界に達した結果がこれである。常々思うがあまりにも極端だ。
「大体、全部雷刀が悪いのですよ」
「あー、うん。ゴメンナサイ」
拗ねたような咎める声に雷刀は謝るしかない。今回の件は全て自身の過失によるものだ。寂しい思いをさせたのも、全て自分が悪い。申し訳なさに雷刀はうぅ、と弱々しく声を上げた。
「…………さっさと終わらせてくださいね」
さみしいです、と聞き取るのが難しいほど小さくくぐもった声が下から聞こえ、彼は更にその胸に身を寄せる。素直な感情表現に雷刀は口元を緩めた。
明日からはもっと頑張ろう。いっそ、明日だけで終わらせるような気持ちで取り組むべきだ。胸に納まる若緑の背をゆっくりと抱き、雷刀はそう考える。
言葉も何もない、けれども安らぐような温かみが彼らを包み込んでいた。
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#ライレフ
#腐向け
#ライレフ
#腐向け
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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気付かぬ距離【ライレフ】オニイチャンが頑張った結果弟君に色々いった感じのあれ。
ファイル名が「糖分高いの目指すライレフ」な辺りから察していただけると幸いですはい。
追記:あとお兄ちゃんしてるオニイチャンが書きたかった覚えもある。
ライレフへのお題は『寂しいからそばにいて』です。 shindanmaker.com/392860
あんなにも青かった空は太陽の光を失いすっかりと闇色に染まっていた。穴が開いたように浮かぶ月は時折雲に隠れ、その度に闇が深くなる。世界は既に宵闇に支配された時間にあった。
そんな夜道を雷刀は歩いていた。その顔は空に負けずと暗く、足取りも普段のそれと正反対に重い。彼を知る者ならば、らしくないと驚くことだろう。
雷刀の成績は決していいとはいえない。テストは八割方赤点、その上課題もろくに提出せず、授業中は夢の世界に逃げるばかりだ。そんな日頃の行いが積もりに積もって、教員達の許容限界に達した。溜まりに溜まった課題に加え、日頃聞いていない授業の補足するための課題を放課後残ってやることとなったのだ。しかも逃げないようにと教員が必ず傍について教えるという素晴らしい待遇である。家には優秀な弟がいるとはいえ、彼だけではしっかりとコントロールできないことを見越しての策だ。息苦しくて堪らない。今日で四日目だが、課題は追加されたものを含めやっと半分が終わったところだ。あとどれほどかかるのだろう、と考えて頭が痛くなる。
アップデートがあれば逃げれるのに、と雷刀は溜め息を吐く。最近は大きなアップデートやバグ処理もなく、レイシスだけでも問題なく運用できるほど暇だ。そんな余裕がある今だからこそ、教員達はここぞとばかりに畳みかけてきたのだということは周りも彼も分かっている。
幾度目かの溜め息を吐いて雷刀は空を見上げる。烈風刀はもう帰っているだろうか。前述したように今はレイシスを手伝う必要もない。教員がついているのだから雷刀の面倒を見る必要もない。寄り道なんてことはしない優等生の彼は既に帰宅し、夕食を終え自室で勉学に勤しんでいるだろう。おかげでここ数日は彼と過ごす時間が減っていた。朝は慌ただしいし、学内では他者の目もある。では帰宅してたっぷりと、と思えば連日帰りは遅くなるし、じゃれようにもここまでの待遇を受けねばならぬほど情けない兄には鋭く冷え切った視線が送られてくるばかりだ。寂しいの一言に尽きる。
考えている内に足取りはどんどんと重く遅くなっていた。これ以上帰りが遅くなるのは避けたい。早く帰ろう。雷刀は暗い夜道を歩いていく。月はいつの間にか雲に隠れ、出てくる気配がない。
「おかえりなさい」
リビングの扉を開けると、柔らかな声が迎えた。声の主である烈風刀はソファに姿勢正しく座り、手に持った本を読んでいる。目の前にある机にはいくつもの本が積み上げられており、彼が長時間そこにいることを表していた。
その光景に、雷刀はぱちぱちと目を瞬いた。いつもならば、この時間はもう自室にこもっているはずだ。少なくともここ数日はそうだった。勉強の合間の気分転換だろうか、と結論付け、雷刀は扉を閉めて言葉を返す。その声は疲れを滲ませながらも嬉しそうだ。
「ただいま」
「ご飯用意しますね」
「いや、オレがやるよ」
「僕もまだ食べていないのです。ほら、用意しますから早く着替えてきてください」
そう言ってキッチンに消えた烈風刀の背を見つめ、雷刀は更に首を傾げる。普段ならばもう夕食は終えている頃合いだ。ここ最近遅く帰ってきている雷刀はともかく、普段通りに過ごしているはずの烈風刀がまだ食べていないのはおかしい。わざわざ待っていたのだろうか。しかし何故。つい先ほどまで数式を無理矢理詰め込まれた頭では、考えようにも上手くいかなかった。
怒られたりしなければいいのだが。心当たりが無いわけではない、というよりもここ数日の居残り授業含め両手で数えきれないほどたくさんある。苦々しく溜め息を吐いて、雷刀は自室へと向かった。
はぁ、と大きく溜め息を吐いて雷刀はソファに身を沈めた。腕はだらりと垂れ下がり身体の横に投げ出されている。そのまま背もたれに首を預け天井を見やる。
数日振りの二人での夕食は普段通り、いや、いつもよりも和やかだった。柔らかに語りかけてくる烈風刀に疲れすら忘れてここ数日のことを話した。トライプルの教え方は厳しいがこちらのレベルの合わせてくれるので分かりやすい、マキシマは普段よりもずっと暑苦しく単語を覚えることすら一苦労だ、現社はまだ分かるが歴史はさっぱりだ。そんな愚痴にも似たことを漏らしてしまったが、彼は怒ることなく聞き、その上労ってくれた。普段の彼ならば考えられないことだ。
そして片付けも終え、現在である。怒る気配もなく、かといって何か言いたいことがあるという様子でもない。一体どうしたのだろうか、と数学よりも分からない問題に雷刀は小さく唸った。
静かな足音、そしてもう一人分増えた重みにソファが柔らかく沈んだ。烈風刀が隣に座ったのだ。本の続きを読むのだろうか、と横目で見るが、彼は俯いたまま動かない。一体どうしたのだろう、調子でも悪いのだろうか。不安に思っていると、下ろしたままの手に温かな何かが触れた。それが烈風刀の手であることを理解し、雷刀は目を見開いた。烈風刀は手を触ることをあまり好まない。くすぐったいようで苦手だ、と彼は言い、こちらから触れることも、あちらから触れることも避けている様子だ。そんな彼が自ら手を重ねてきたのだ。驚くのも仕方ないだろう。
重ねた手はそのまま、烈風刀は身体を傾け雷刀の肩へともたれかかる。重なる彼の身体は温かく、ふわりと香るその匂いは心地よい。けれども、彼らしからぬ姿に動揺してしまった雷刀にそれらを認識する余裕はない。
「どした?」
「別に」
なんでもありませんという声はどこか拗ねているように聞こえる。子供のようなその姿は、自分にしか見せないものだ。
「なに? オニイチャンいなくて寂しかった?」
動揺を誤魔化しからかうように問うてみるが返事はない。かわりに彼は更に俯き、空いているもう片方の手で雷刀の服の裾を掴んだ。言葉では決して表現しない彼の控えめなその主張に雷刀は柔らかく笑む。
くるりと身体を横に向ける。肩にもたれかかっていた烈風刀の身体は、そのまま雷刀の胸に飛び込んできた。驚いたように小さく声を上げた彼の頭を優しく撫でる。それは心細さに泣き出しそうな子供をあやすような手つきだった。柔らかなそれに安心したのか、烈風刀はより温かさを求めるように雷刀の胸に頭を摺り寄せた。
「さみしー思いさせてごめんな」
「……ばか」
謝る雷刀の声音は優しく、反して返す烈風刀のそれは幼く弱々しい。やはり拗ねているようだ。一緒に暮らしているというのに、ここ数日は家でも学校でもろくに会話する機会がなかったのだ。普段はドライな彼でも寂しいと思うのは仕方ないだろう。
昨日まで冷え切った視線は強がりみたいなものだったのだろうか、と雷刀は思案する。烈風刀は家族であろうが弱った姿を見せたがらない。それこそ、限界に達するまで。そして限界に達した結果がこれである。常々思うがあまりにも極端だ。
「大体、全部雷刀が悪いのですよ」
「あー、うん。ゴメンナサイ」
拗ねたような咎める声に雷刀は謝るしかない。今回の件は全て自身の過失によるものだ。寂しい思いをさせたのも、全て自分が悪い。申し訳なさに雷刀はうぅ、と弱々しく声を上げた。
「…………さっさと終わらせてくださいね」
さみしいです、と聞き取るのが難しいほど小さくくぐもった声が下から聞こえ、彼は更にその胸に身を寄せる。素直な感情表現に雷刀は口元を緩めた。
明日からはもっと頑張ろう。いっそ、明日だけで終わらせるような気持ちで取り組むべきだ。胸に納まる若緑の背をゆっくりと抱き、雷刀はそう考える。
言葉も何もない、けれども安らぐような温かみが彼らを包み込んでいた。
畳む
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