No.91
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「私が犯人です!」「俺が犯人だ!」、全員犯人です! 社長室で社長が殺された。それに「関わる」メンバーが7人ある廃墟に集められる。未亡人、記者、社員2人、運転手、清掃員、被害者遺族ーー。やがて密室のスピーカーからある音声が流れる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」。犯人以外は全員毒ガスで殺す、と脅され、7人は命をかけた自供合戦を繰り広げるがーー。 (https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9... より)
雑記 2024/8/12(Mon) 22:06 edit_note
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下村敦史「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」(幻冬舎)という本。
TLで流れてきた紹介ツイートがあまりにも面白そうで買ってしまった。あと表紙の装丁が綺麗だったので。
タイトルの時点で面白いのにあらすじまで面白い。買うしかないでしょ。
ということで感想。ある程度はぼかすけどネタバレあるので注意。
まさか本当に全編通して全員が犯人で被害者で探偵だとは思わないじゃん!!!!! え? よく成立したな?
あらすじの通り、ある自殺事件に関わった七人がとある廃墟に集められ、閉じ込められる。(登場人物の言葉を借りて表現するなら)『ゲームマスター』は七人に告げる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」と。
まぁそりゃ全員死にたくない。じゃあどうすればいい? 自分が犯人だと名乗り出ればいいんだよ! 狂ってんのか? 狂うわな殺されるって分かってるんだから。
初めは一人の参加者が「自分の行動が被害者を追い詰めた。自分が間接的に殺した」と自白し出す。けれどもそれを鵜呑みにすれば全員自分が『犯人』ではなくなる。このまま殺されてしまう。じゃあどうすればいい? それを越える罪を言って自分が『犯人』だと主張すればいいんだよ! 狂ってる。でも死にたくないならしょうがない。
もちろん全員黙っているわけがない。俺がより被害者を追い詰めた犯人だ、いやいや私の方が酷いことをしたのだから犯人だ、と自白をしていく。皆で皆の罪を上書きして、己が『犯人』になろうとする。マジでギッスギス。しんどくなる程度にはギッスギス。そりゃそうだこれはデスゲームなんだから。ギスギスした話が好きな人は読んだ方がいい。
皆が「自分の行動が被害者を追い詰めた」「被害者が死んだのは自分の責任だ」と『犯人』であることを主張する中、黙っていた一人が口を開く。「自分が被害者を直接、この手で殺した」と。
まぁそこからは全員でその殺害方法の穴を突いていく。これが「全員探偵」という言葉通りだった。皆が『探偵』となり、矛盾点や曖昧な部分を突いていく。そして語り出す。「こいつよりもより現実味がある手段で殺した。自分が犯人だ」と。狂ってんのか? 狂ってるよ。
そこからあれよあれよと「自分がどんなに完璧なトリックで被害者を殺したか」と話は進んでいく。そして、ある一人が全く穴の無い推理を披露する。それはそうだ、『探偵』が推理した矛盾点を埋めていけば完璧なトリックが出来上がる。
この流れが本当に美しく、着地点がすごかった。いや全員で推理して穴埋めしていったら完璧なトリックが出来上がるんだ? マジで? まぁ若干の穴はあるけどそれを指摘できないほどに疲弊しているのが怖い。全員が「自分がより酷い方法で殺した」って言い出してんだから尚更怖い。人は生きるためならどれほどだって残酷になれるしどれほどだって酷い嘘を吐ける。
そうやって犯人が決まり、生き残り……と思ったら大どんでん返しが来て声が出そうになった。は? え? そんなのあり? いやたしかに今までの奇妙な表現、奇妙な出来事、そしてとある章題のおかげで辻褄が合う。いやでもそれは無いだろ!!!!!!!! どうやったらこんなの思いつくんだよ!!!!!!!!!!
ここまで明かされてやっと『被害者』の意味が分かる。これ『被疑者』の間違いじゃないの?と思いながら読み進めていっていたが、これは確実に『被害者』だ。『被害者』以外の何物でもない。
もうそのタイトル回収と大どんでん返しで放心状態になったのに、最終章で更に明かされる真実と更なるどんでん返しでずっと混乱してた。は? そんなのあり? いやでも辻褄合うな? 開示されていた情報と一致するし矛盾点が無いな? え? でもこんなことある?????
畳む
そんな感じでめっっっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃくちゃ面白かった。デスゲーム系をちゃんと読んだのは初めてだが、めちゃくちゃ面白かった。特に中盤から展開が狂いに狂ってて面白かった。モラルって何なんだろうな。
ギスギスした話やどんでん返しが好きな人は読んだ方がいい。一生ギスギスしてるし一生どんでん返しが襲ってくる。何この本? 面白すぎない?
ただ地の文の改行が多い、一文字しかない行が多い部分がかなり引っかかった。話にのめり込んでいったら気にならなくなるけど序盤はどうしても気になった。商業だとそういうの考えて版組んだりしないのかね。まぁ同人誌みたいに作者が版面決めるわけじゃないから仕方ないんだろうけど……。
あんまりにも面白すぎたので今度図書館に行って作者の別作品を読もうと思う。『同姓同名』という作品が有名らしいのでそれから探して読もう。
#読書記録