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No.225
温度を上げるソースの味【ヒロ←ニカ】
温度を上げるソースの味【ヒロ←ニカ】
意識するタイプのニカちゃん見たいよね……(ろくろ回し)の結果がこちらになります。可愛いじゃないすか。
遅いお昼ご飯食べるヒロニカの話。
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薄い包み紙を音を憚ることなく破っていく。薄焼きの生地が剥き出しになったところで、ベロニカはあぐりと大きな口をめいっぱいに開いた。黄色い舌覗く口の中にマキアミロール360°が吸い込まれていく。一息に囓ると、野菜の心地良い青臭さが鼻腔を抜けていった。シャキシャキとした野菜の食感、ソースの絶妙なしょっぱさ、ほろほろと崩れる蒸し魚が口を、胃を満たしていく。大きく動いた喉は、満足げな息を続けざまに吐き出した。
時刻は昼時を過ぎておやつ時。ちょうどスケジュールが変わる時間だ。最近になって出てきたステージを目当てにヒトが集まっていたロビーは、やっと波が引いたところだ。選出ステージが変わったのもあるが、朝からバトルに興じていた者皆の腹が限界を迎える時間だからだ。おかげでロビー隅やロッカールームに備え付けられているソファはどこも埋まっている。今日の食事は二人で壁に背を預けて摂るしかない状態だ。歓談する暇も無く、隣り合ってサンドを口の中に放り込んでいく。
「……野菜じゃ足んねーな」
モシャモシャと食事を続けていた少女は、はたと動きを止めて呟く。胃の中で膨らませようと、もう片手に持ったジュースの缶を煽った。炭酸の小さな泡が弾けて柔らかな口腔を刺激する。甘ったるい作り物の香りが鼻の奥に広がった。
普段はアゲバサミサンドを好んで食べている。けれど、運が悪いことにチケットを使い切ってしまっていたのだ。残っていたチケットを使って腹を満たしているものの、やはり生野菜に蒸し魚と脂っ気が薄いこれは味気ない。育ち盛り、食べ盛りの舌には素材の味は優しすぎるのだ。
「僕の食べますか?」
隣から柔らかな声。急いで音の方へ目をやると、そこには彼の昼食であるアゲバサミサンドを差し出すヒロの姿があった。揚げ物とソースでたっぷりと彩られたそれは、まだ半分ほど残っている。存在感の強いエビの虚ろな目がこちらをじっと見つめてきた。
「いいのか!?」
「どうぞ。どうせならエビ食べちゃってください」
向日葵の目がキラキラと輝いて、紅梅をじぃと見つめる。丸い赤がすぃと細くなって穏やかな弧を描いた。声とともに、サンドと己の距離が狭まる。ソースの芳しい香りが優しい味で満たされつつある胃を刺激した。
サンキュー、とベロニカは満面の笑みを浮かべる。同じぐらい華やかな笑みが返ってきた。慈悲深く差し出されたそれに手を伸ばそうとして、少女ははたと動きを止める。伸ばした右手には食べかけのロールサンド、左手には缶ジュースが握られてたままだ。つまり、塞がっている。壁にもたれて食べている今、どこかに置くこともできない状態だ。元気にピンと伸びた腕が、喜色満面に光を宿していた瞳がうろうろと宙を彷徨った。
「あぁ、そのままかじっちゃってください」
ガサガサと包み紙が取り払われていく。己の方へ向けられた部分が、更に姿を剥き出しにした。目と鼻の先に、衣を身に纏ったエビの頭。半分ほど残ったソース一色の麺。密かなアクセントとして重要なレモン。どれもたくさん食べてきた、美味しくてたまらない品だと分かっている。食事も半ばだというのに、腹が小さく鳴き声をあげた。
「悪ぃな」
眉を八の字にして、ベロニカは苦く笑う。気にしないでください、と穏やかな声が続いた。しばしして、いただきます、と丁寧な声。綺麗に磨かれたカラストンビがまた露わになった。
大きな口が黄金の生地に吸い寄せられ、がぶりと一息にかじりつく。醤油ベースの香ばしい匂い、舌を刺すようでどこかまろやかな塩味、何より揚げ物の油っ気が口の中を満たしていく。先ほどまで食べていたヘルシーな味とは正反対のそれに、思わず高い声を漏らした。
存在感たっぷりの食材たちを飲み下し、少女はちらりと少年を見やる。同じく缶のジュースを持った左手が、どうぞどうぞと言うように動いた。小さく頭を下げ、またぐありと口を開ける。灰色の目をしたエビの頭に食らいつく。そのまま、丁寧に挟まれた生地から抜き取った。行儀が悪いのを承知で、一口、また一口と器用に口を動かしてエビフライを食べていく。処理されたパキパキの殻の香ばしさ、ザクザクの衣の食感、少しだけ付いたレモンの風味、何より塩と油の味。どれもが食べ盛りの子どもの心を奪うものだった。ごくん、と飲みこんで、インクリングは息を吐く。油の香りが漂うそれは、これ以上に無く満足げなものだった。
「悪ぃな。ヒロも食うか? それかジュース」
「いいですよ。ベロニカさん、お腹空いてるでしょう? 自分のお腹をいっぱいにしてください」
缶とロールサンドを差し出すベロニカに、ヒロは小さく首を振る。彼の優しさはありがたいけれど、施されっぱなしは己の性に合わない。悩んだ末、今度奢る、と短く返した。期待しておきます、とどこかいたずらげな声が返ってくる。
少女はまたロールサンドを頬張っていく。野菜の水分と優しい甘さが、油だらけの口を洗っていくようだった。こちらも美味しいことは間違いは無い。けれど、舌はあの強い味ばかりを求めてしまう。今度は切らさないようにせねば、と心に決めて、最後の一口を放り込む。尖った牙が野菜をシャクシャクと噛み砕いていった。
本日の食事を飲み込み終え、空っぽになった口がごちそうさま、と言葉を紡ぐ。小さく息を吐いて、インクリングは缶ジュースを口に運んだ。弾ける炭酸と強い甘さが舌を刺激する。ちらりと視線をやると、隣にいるヒロはまだ食事を続けていた。残りはもう少ないから終えるのも時間の問題だろう。その間に飲んでしまおう、と缶を更に傾けた。
ん、とジュースを飲みこむ喉が小さな音を漏らす。先ほど、ヒロにもらったアゲバサミサンドは美味しくてたまらなかった。最後の一匹のエビも美味しかった。そう、彼が食べている途中だったサンドは――彼が口を付けていたそれは、とても。
喉がおかしな運動をする。瞬間、流れていた液体が変に跳ねて気道へと飛び込んだ。必死に口を押さえ、どうにか中身を飲み下し、ゲホゲホとむせ込む。何度息を吐き出しても、炭酸ジュースはなかなか出ていってくれなかった。無理矢理動く喉も。顔に、頬に感じる温度も。
「だっ、大丈夫ですか!?」
「だいじょぶだ……」
慌てた声が飛んでくる。今にも飛びついてきそうなそれを、こちらを一心に見つめる朱い目を、包み紙を握った手で制す。むせただけだ、と少女は咳き込みながら返す。大丈夫なんですか、とやはりどこか慌て調子の声が聞こえた。
「落ち着いて飲んでくださいね?」
「だいじょぶ、だよ」
口を押さえるふりをして俯き、心配で彩られているであろう目から逃げる。それでも、心臓はまだ脈打つ速度を下げてくれなかった。頬に感じる温度も一向にひきやしない。これだけで、己が随分と情けない顔をしているのは容易に想像が付く。そんなの、彼に見せられるはずがなかった。見せたくないに決まっていた。
食べ物を共有することぐらい普通ではないか。彼の食べかけのものをもらうくらい普通だったではないか。口を付けたそれを意識することなんて無かったではないか。無いのだ、今だって。でも。心臓はやはりおかしく動いて。頭も顔も熱くなって。心は掻き乱されて。
情けねぇ、とようやく落ち着きを取り戻した喉が吐き出す。ピカピカに磨いたブーツの表面が反射する己の顔は、やはり情けなくてしょうがないものだった。
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#Hirooooo
#VeronIKA
#ヒロニカ
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#ヒロニカ
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スプラトゥーン
2025/9/2(Tue) 22:53
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温度を上げるソースの味【ヒロ←ニカ】
温度を上げるソースの味【ヒロ←ニカ】意識するタイプのニカちゃん見たいよね……(ろくろ回し)の結果がこちらになります。可愛いじゃないすか。
遅いお昼ご飯食べるヒロニカの話。
薄い包み紙を音を憚ることなく破っていく。薄焼きの生地が剥き出しになったところで、ベロニカはあぐりと大きな口をめいっぱいに開いた。黄色い舌覗く口の中にマキアミロール360°が吸い込まれていく。一息に囓ると、野菜の心地良い青臭さが鼻腔を抜けていった。シャキシャキとした野菜の食感、ソースの絶妙なしょっぱさ、ほろほろと崩れる蒸し魚が口を、胃を満たしていく。大きく動いた喉は、満足げな息を続けざまに吐き出した。
時刻は昼時を過ぎておやつ時。ちょうどスケジュールが変わる時間だ。最近になって出てきたステージを目当てにヒトが集まっていたロビーは、やっと波が引いたところだ。選出ステージが変わったのもあるが、朝からバトルに興じていた者皆の腹が限界を迎える時間だからだ。おかげでロビー隅やロッカールームに備え付けられているソファはどこも埋まっている。今日の食事は二人で壁に背を預けて摂るしかない状態だ。歓談する暇も無く、隣り合ってサンドを口の中に放り込んでいく。
「……野菜じゃ足んねーな」
モシャモシャと食事を続けていた少女は、はたと動きを止めて呟く。胃の中で膨らませようと、もう片手に持ったジュースの缶を煽った。炭酸の小さな泡が弾けて柔らかな口腔を刺激する。甘ったるい作り物の香りが鼻の奥に広がった。
普段はアゲバサミサンドを好んで食べている。けれど、運が悪いことにチケットを使い切ってしまっていたのだ。残っていたチケットを使って腹を満たしているものの、やはり生野菜に蒸し魚と脂っ気が薄いこれは味気ない。育ち盛り、食べ盛りの舌には素材の味は優しすぎるのだ。
「僕の食べますか?」
隣から柔らかな声。急いで音の方へ目をやると、そこには彼の昼食であるアゲバサミサンドを差し出すヒロの姿があった。揚げ物とソースでたっぷりと彩られたそれは、まだ半分ほど残っている。存在感の強いエビの虚ろな目がこちらをじっと見つめてきた。
「いいのか!?」
「どうぞ。どうせならエビ食べちゃってください」
向日葵の目がキラキラと輝いて、紅梅をじぃと見つめる。丸い赤がすぃと細くなって穏やかな弧を描いた。声とともに、サンドと己の距離が狭まる。ソースの芳しい香りが優しい味で満たされつつある胃を刺激した。
サンキュー、とベロニカは満面の笑みを浮かべる。同じぐらい華やかな笑みが返ってきた。慈悲深く差し出されたそれに手を伸ばそうとして、少女ははたと動きを止める。伸ばした右手には食べかけのロールサンド、左手には缶ジュースが握られてたままだ。つまり、塞がっている。壁にもたれて食べている今、どこかに置くこともできない状態だ。元気にピンと伸びた腕が、喜色満面に光を宿していた瞳がうろうろと宙を彷徨った。
「あぁ、そのままかじっちゃってください」
ガサガサと包み紙が取り払われていく。己の方へ向けられた部分が、更に姿を剥き出しにした。目と鼻の先に、衣を身に纏ったエビの頭。半分ほど残ったソース一色の麺。密かなアクセントとして重要なレモン。どれもたくさん食べてきた、美味しくてたまらない品だと分かっている。食事も半ばだというのに、腹が小さく鳴き声をあげた。
「悪ぃな」
眉を八の字にして、ベロニカは苦く笑う。気にしないでください、と穏やかな声が続いた。しばしして、いただきます、と丁寧な声。綺麗に磨かれたカラストンビがまた露わになった。
大きな口が黄金の生地に吸い寄せられ、がぶりと一息にかじりつく。醤油ベースの香ばしい匂い、舌を刺すようでどこかまろやかな塩味、何より揚げ物の油っ気が口の中を満たしていく。先ほどまで食べていたヘルシーな味とは正反対のそれに、思わず高い声を漏らした。
存在感たっぷりの食材たちを飲み下し、少女はちらりと少年を見やる。同じく缶のジュースを持った左手が、どうぞどうぞと言うように動いた。小さく頭を下げ、またぐありと口を開ける。灰色の目をしたエビの頭に食らいつく。そのまま、丁寧に挟まれた生地から抜き取った。行儀が悪いのを承知で、一口、また一口と器用に口を動かしてエビフライを食べていく。処理されたパキパキの殻の香ばしさ、ザクザクの衣の食感、少しだけ付いたレモンの風味、何より塩と油の味。どれもが食べ盛りの子どもの心を奪うものだった。ごくん、と飲みこんで、インクリングは息を吐く。油の香りが漂うそれは、これ以上に無く満足げなものだった。
「悪ぃな。ヒロも食うか? それかジュース」
「いいですよ。ベロニカさん、お腹空いてるでしょう? 自分のお腹をいっぱいにしてください」
缶とロールサンドを差し出すベロニカに、ヒロは小さく首を振る。彼の優しさはありがたいけれど、施されっぱなしは己の性に合わない。悩んだ末、今度奢る、と短く返した。期待しておきます、とどこかいたずらげな声が返ってくる。
少女はまたロールサンドを頬張っていく。野菜の水分と優しい甘さが、油だらけの口を洗っていくようだった。こちらも美味しいことは間違いは無い。けれど、舌はあの強い味ばかりを求めてしまう。今度は切らさないようにせねば、と心に決めて、最後の一口を放り込む。尖った牙が野菜をシャクシャクと噛み砕いていった。
本日の食事を飲み込み終え、空っぽになった口がごちそうさま、と言葉を紡ぐ。小さく息を吐いて、インクリングは缶ジュースを口に運んだ。弾ける炭酸と強い甘さが舌を刺激する。ちらりと視線をやると、隣にいるヒロはまだ食事を続けていた。残りはもう少ないから終えるのも時間の問題だろう。その間に飲んでしまおう、と缶を更に傾けた。
ん、とジュースを飲みこむ喉が小さな音を漏らす。先ほど、ヒロにもらったアゲバサミサンドは美味しくてたまらなかった。最後の一匹のエビも美味しかった。そう、彼が食べている途中だったサンドは――彼が口を付けていたそれは、とても。
喉がおかしな運動をする。瞬間、流れていた液体が変に跳ねて気道へと飛び込んだ。必死に口を押さえ、どうにか中身を飲み下し、ゲホゲホとむせ込む。何度息を吐き出しても、炭酸ジュースはなかなか出ていってくれなかった。無理矢理動く喉も。顔に、頬に感じる温度も。
「だっ、大丈夫ですか!?」
「だいじょぶだ……」
慌てた声が飛んでくる。今にも飛びついてきそうなそれを、こちらを一心に見つめる朱い目を、包み紙を握った手で制す。むせただけだ、と少女は咳き込みながら返す。大丈夫なんですか、とやはりどこか慌て調子の声が聞こえた。
「落ち着いて飲んでくださいね?」
「だいじょぶ、だよ」
口を押さえるふりをして俯き、心配で彩られているであろう目から逃げる。それでも、心臓はまだ脈打つ速度を下げてくれなかった。頬に感じる温度も一向にひきやしない。これだけで、己が随分と情けない顔をしているのは容易に想像が付く。そんなの、彼に見せられるはずがなかった。見せたくないに決まっていた。
食べ物を共有することぐらい普通ではないか。彼の食べかけのものをもらうくらい普通だったではないか。口を付けたそれを意識することなんて無かったではないか。無いのだ、今だって。でも。心臓はやはりおかしく動いて。頭も顔も熱くなって。心は掻き乱されて。
情けねぇ、とようやく落ち着きを取り戻した喉が吐き出す。ピカピカに磨いたブーツの表面が反射する己の顔は、やはり情けなくてしょうがないものだった。
畳む
#Hirooooo #VeronIKA #ヒロニカ