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消夜【ゆかれいむ】
消夜【ゆかれいむ】
即興二次小説で気になるお題があったので第二弾。今回は時間制限なし。
ジャンル:東方Project お題:1000の交わり 文字数:952字
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眠りの底から意識が現実へと浮上する。長い睫毛で縁取られた目がふわりとゆっくり開く、まだ頭が働かない。眠気を消すようにごしごしと目をこすり、幾度か瞬きをしてやっと焦点が合い周りを見回すことができた。
寝転んだ隣を見る。昨晩共に過ごした彼女の姿も、その見た目よりも高い体温も残っておらず、ただ綺麗に整えられた白いシーツがあるばかりだ。いつもと変わらぬその風景を霊夢は冷めた目で見つめた。
夜を共にした日、紫は自分が眠っている間に必ず消える。何の跡も残さず、夢だったのではないかと錯覚しそうなほど綺麗に姿を消す。いっそ怒りが湧いてくるほどだ。
紫にとって、自身はただの代替品であることを霊夢は知っている。どんなに優しくされても、どんなに甘い言葉を与えられても、幾度も肌を重ねても、彼女の瞳には霊夢ではない別の誰かが映っている。それが書き換えられることなどないのだろう。それほど瞳の奥の『誰か』の存在は強く見えた。
きっと彼女はこうやって数々の代替品と夜を過ごしたのだろう。妖怪の生は人のそれとは比較できないほど長い。『誰か』がどれほど前に出会ったものかは知らない。自身と同じ『代替品』が何人いたのかなど想像できない。けれど、自身に与えられてきたそれを他者に与えていないはずがないことぐらいは分かる。同列の存在なのだから当たり前だ。
知らない『誰か』や『代替品』に嫉妬しているわけではない。紫の瞳に自身ではない『誰か』しか映っていなくとも、八雲紫が博麗霊夢を愛しているという形に変わりはない。形だけのそれでも、霊夢にとっては確かな事実だった。
ほっそりとした白い指が赤々と下唇をなぞる。そこに彼女の温度はない。けれども、忘れることなどできない数えきれないほど与えられた感覚が霊夢の中にはしっかりと残っている。
「……さむ」
ふるり、と小さな身体が震える。温かな布団の中にいるのに、どこか寒い。風邪でも引いたのだろうか。あいつ心配するだろうなぁ、と考えて目を伏せる。優しくされるのは嬉しいが、心配されるのは少しうっとおしい。『代替品』なのに、本物の『誰か』のように接するのだから性質が悪い。
足を折りたたみ、胎児のように身体を丸める。肌をなぞる彼女の感覚が揺らめく意識の中にしっかりと残っていた。
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#ゆかれいむ
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東方project
2024/1/31(Wed) 00:00
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消夜【ゆかれいむ】
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ジャンル:東方Project お題:1000の交わり 文字数:952字
眠りの底から意識が現実へと浮上する。長い睫毛で縁取られた目がふわりとゆっくり開く、まだ頭が働かない。眠気を消すようにごしごしと目をこすり、幾度か瞬きをしてやっと焦点が合い周りを見回すことができた。
寝転んだ隣を見る。昨晩共に過ごした彼女の姿も、その見た目よりも高い体温も残っておらず、ただ綺麗に整えられた白いシーツがあるばかりだ。いつもと変わらぬその風景を霊夢は冷めた目で見つめた。
夜を共にした日、紫は自分が眠っている間に必ず消える。何の跡も残さず、夢だったのではないかと錯覚しそうなほど綺麗に姿を消す。いっそ怒りが湧いてくるほどだ。
紫にとって、自身はただの代替品であることを霊夢は知っている。どんなに優しくされても、どんなに甘い言葉を与えられても、幾度も肌を重ねても、彼女の瞳には霊夢ではない別の誰かが映っている。それが書き換えられることなどないのだろう。それほど瞳の奥の『誰か』の存在は強く見えた。
きっと彼女はこうやって数々の代替品と夜を過ごしたのだろう。妖怪の生は人のそれとは比較できないほど長い。『誰か』がどれほど前に出会ったものかは知らない。自身と同じ『代替品』が何人いたのかなど想像できない。けれど、自身に与えられてきたそれを他者に与えていないはずがないことぐらいは分かる。同列の存在なのだから当たり前だ。
知らない『誰か』や『代替品』に嫉妬しているわけではない。紫の瞳に自身ではない『誰か』しか映っていなくとも、八雲紫が博麗霊夢を愛しているという形に変わりはない。形だけのそれでも、霊夢にとっては確かな事実だった。
ほっそりとした白い指が赤々と下唇をなぞる。そこに彼女の温度はない。けれども、忘れることなどできない数えきれないほど与えられた感覚が霊夢の中にはしっかりと残っている。
「……さむ」
ふるり、と小さな身体が震える。温かな布団の中にいるのに、どこか寒い。風邪でも引いたのだろうか。あいつ心配するだろうなぁ、と考えて目を伏せる。優しくされるのは嬉しいが、心配されるのは少しうっとおしい。『代替品』なのに、本物の『誰か』のように接するのだから性質が悪い。
足を折りたたみ、胎児のように身体を丸める。肌をなぞる彼女の感覚が揺らめく意識の中にしっかりと残っていた。
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