No.91
favorite THANKS!! SDVXグランブルーファンタジー 2024/1/31(Wed) 00:00 edit_note
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書き出しと終わりまとめ3【SDVX/GBF】
書き出しと終わりまとめ3【SDVX/GBF】あなたに書いて欲しい物語でだらだら書いていたものまとめその3。ボ5個とグ1個。CPごっちゃごちゃ。大体暗い。
毎度の如く診断する時の名前がちょくちょく違うのは気にしない。成分表示:プロ氷1/はるグレ1/レイ+グレ1/ライレフ1/ノア+(ライ←)レフ1/グラルリ1
春姿/プロ氷
AOINOさんには「ぱちりと目が合った」で始まり、「その声がひどく優しく響いた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば11ツイート(1540字程度)でお願いします。
若草色とぱちりと目が合った。
愛しいその瞳を見つめ、識苑は相好を崩しひらひらと手を振る。交わった柑子色に、氷雪の細い肩が小さく跳ねた。それでも、初夏の草葉を思い起こさせる瞳は、逸らされることなくこちらを見つめたままだ。
彼女の視線で気付いたのだろう、共に並んでいた少女らも青年を捉える。そのまま、全員で彼の元に駆け寄ってきた。識苑先生、と桜色に彩られた唇が己の名を紡ぐ。少し上ずった声に、夕日色の目がふと細まった。
「三人とも、卒業おめでとう」
祝いの言葉に、ありがとうございます、と可愛らしい三重奏が響く。少し硬い畏まった音色に、識苑は音もたてずに笑う。
春の日和に包まれた本日、ボルテ学園中等部の卒業式が執り行われた。卒業生である氷雪達は、普段の着物ではなく、正装である学園の制服をまとっている。胸元は淡い色のコサージュで彩られており、細い腕で卒業証書が詰められた筒を抱えていた。教師である識苑も、今日ばかりは普段の作業着ではなくスーツを着ている。
「皆大きくなったね」
「おじさん臭いわよ」
しみじみとした声に鋭く返し、恋刃は眉を顰める。否定しようのない厳しい言葉に、青年は苦笑いを浮かべた。
その隣、黒い筒をぎゅうと抱えた雪色を見て、橙の瞳が眩しそうに細められる。愛おしさに満ちたその目に、緊張に強ばっていた氷雪の表情が少し和らいだ。
「……うん、本当に、ね」
噛みしめるように呟く声は震えていた。目の奥がじんと熱をもつ。式典前にしっかりと手入れしたはずなのに、眼鏡越しの世界はどんどんと曇り滲んでいく。何故だ、と思うより先に、せんせい、と慌てた声が飛び込んできた。
認識出来ない世界の中、軽い足音が響く。そっと目元に柔らかなものがあてられる。じわりと広がる水気に、ようやく己が泣いていることに気付いた。
「あの、大丈夫です。私達、そのまま高等部に進学しますから。だから――」
これからも、毎日会えます。
識苑にしか聞こえないように声を潜め、氷雪は潤む夕日色を見つめる。翡翠の瞳には慈しみの色が浮かんでいた。
分かってるん、だけど、ね、と青年は吐き出すように返す。嗚咽にも似た声を発する度、ボロボロと涙がこぼれた。
ボルテ学園はエスカレーター式であり、よほどのことがなければ皆そのまま高等部へと進学する。教師という身なのだから勿論理解しているし、氷雪本人からもそのことを伝えられていた。
けれども、いざその姿を目の前にして、青年の心は大きくさざめいた。彼女の成長への喜びと、愛し子が新たなる世界へ進む祝福と、学園という唯一の繋がりが切れ離れてしまうのではないかという不安が一気に膨らみ、胸の内を塗り潰していく。とめどなく湧き出る感情が、涙となって外に溢れてしまう。いい年した大人がこんなにも泣くだなんて、何と恥ずかしいことなのだろう。それでも、愛する人の晴れ姿を前に、識苑は己の感情を制御することができなかった。
熱を持つ目元を、すべらかな布が絶えず撫で拭っていく。落ち着きましたか、との問いに、うん、と萎れた声でどうにか返す。少女の甲斐甲斐しい世話により、青年の世界は元の姿を取り戻しつつあった。
「……ごめんね」
「気にしないでください」
今一度目元を拭われる。すんと鼻をすすると、微かな笑声が鼓膜を震わせた。大袈裟ですの、涙もろいにも程があるわよ、と呆れた声も飛び込んでくる。もっともな酷評に、再び鼻の奥が痛んだ。
「高校生になってからも――これからもずっと、よろしくお願いします」
未来を約束する言葉とともに、水底色のまあるい目がふわりと細められる。甘く柔らかなその声が、酷く優しく響いた。
華奢な歩み/はるグレ
あおいちさんには「ぴたりと足が止まった」で始まり、「ゆっくりでいいよ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字程度)でお願いします。
ぴたりと足が止まったのが見え、始果は急いで歩みを進める。数歩先にいる躑躅の少女は立ったままふらふらと揺れており、非常に不安定に見える。立ち止まるというよりも、動けずにいるというのが正確だろう。
「グレイス」
「大丈夫だって言ってるでしょ」
応えるというよりも、続く言葉を切り捨てるかのような鋭い響きでグレイスは言う。今日何度目かの問答に、始果は眉間に小さく皺を刻む。グレイスはそれ以上に深く眉を寄せていた。眇められた柘榴石には、悔しさが強く滲んでいた。
「こんなの、すぐに慣れるわよ」
今日だけで数えられないほど口にした言葉は、まるで自身に言い聞かせるようなものだ。事実そうなのだろう。固く細い声は、彼女の苦悩をよく表していた。
重力戦争が終わり、グレイスたちがネメシスに迎え入れられて少し経った。まるまる再構成された彼女の身体もようやく安定し、最近では元の大きさで問題なく過ごせるようになっている。これならば大丈夫だろう、と学園側の判断の元、少女は来年度からボルテ学園に編入することが決まったのだ。
先に制服作っちゃいマショウ、という姉の提案の元、彼女には世界とともに新しくなった制服が支給された。丈の短いセーラー服とショートパンツで構成されたそれは動きやすいものだ。足を飾る白のパンプスはヒールが高く華奢なデザインをしている。
早速身に着けたのだが、ここで問題が一つ発生した。グレイスはヒールで歩く感覚をほとんど忘れてしまっていたのだった。
元々ヒールの高いロングブーツを履いていたとはいえ、彼女は基本的に宙を浮いていることが主で歩く機会は少なかった。加え、幼い身体でいた頃は安全を考慮し踵の低い靴を履いていた。その期間が思ったより長かったのもあるだろう。
すぐ慣れるわよ、と心配する姉を突っぱね、練習にと廊下に出た彼女だが、案の定バランスが取れず覚束ない足取りになってしまう。危なっかしい姿に、始果が飛んできたのは無理もないことだ。
また慎重に歩み始める少女を見て、少年は口を真一文字に引き結ぶ。本当ならば、怪我をする前に止めてしまいたい気持ちでいっぱいだ。しかし、そんなことは彼女のプライドが許さないに決まっている。けれど、でも、と、形容し難い思いが渦巻く。口下手な彼には、どう伝えればいいか分からずにいた。
「……グレイス」
引き結ばれていた口が愛しい人の名を紡ぐ。返事よりも先に、狐の少年は少女の正面へと周り、その細い両手を握った。途端、キッと射殺さんばかりに鋭い視線が、頭一つ分上の満月を睨む。受け止めた彼は、同じく頭一つ下の躑躅をじぃと見つめた。
「……手が繋ぎたいです」
「だから、大丈夫だって――」
「繋がせてください」
彼らしからぬはっきりとした声で少年は乞う。ぐちゃぐちゃになった感情の内、唯一言葉に成った『手を繋いで支えたい』という思いをまっすぐにぶつけた。
いきなりの願いに、躑躅色の瞳が驚きに幾度も瞬く。丸く可愛らしい目が眇められ、少女は唸る。しばしの沈黙の後、強く握る少年の手がそっと握り返された。
「……仕方ないわね」
大袈裟なほど深い溜め息が吐き、グレイスは諦めの言葉を口にする。根負けしたといった様子だ。けれども、その声音には仄かに安堵の色があった。
少女の言葉に、始果は口元を綻ばせる。そっと細められた目は喜びで満ちていた。
解けぬよう、少年は細く白い手を今一度握る。向き合い手を繋ぐ様は、ダンスを踊るかのようだった。
「……一緒に行きましょう。ゆっくりでいいですから」
怖がりと温もり/レイ+グレ
葵壱さんには「優しい嘘なら許されますか」で始まり、「そして眠りにつく」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば8ツイート(1120字)以内でお願いします。
優しい嘘なら許されるとでも思っているのだろうか。
温もりを背に、グレイスは心の中で呟く。眠気でけぶった躑躅の瞳は、不服そうに歪められていた。
夜も更けてきた頃合い、姉と二人で夕食の片付けを終わらせた少女は何気なしにテレビを点ける。たまたま放送されていた映画は、二人とも名は耳にしたことがあるが内容は知らないものだ。良い機会だし見てみよう、と姉妹並んでソファに座ったのが全て悪かった。
画面に流れる映像は、爽やかなタイトルやCMに反し薄暗くホラー要素が非常に強いものだった。ただでさえ恐ろしい物語は、巧みなカメラワークと鬼気迫る演技により更に引き立てられ、見る者の恐怖を十二分に煽る。自然なCGと巧みな特殊メイクにより人間が怪物へと変貌していく様が脳裏を過り、少女は反射的に身を縮こまらせる。細い体躯が胎児のように丸まった。
地獄のような二時間弱を耐え、風呂に入りベッドに潜り込んだのが数十分前。暗闇の中、ひやりとした布団に包まれる感覚に、目は冴えゆくばかりで到底眠れそうにない。どうしよう、と考えていたところで、ドアを叩く硬い音が耳に飛び込んできた。突然の響きに、ビクリと少女の肩が大きく跳ねる。次いで、ドアノブが回される音と、グレイス、と少し潜められた声が鼓膜を震わせた。
あの映画、思ったよりも怖クテ。ダカラ、一緒に寝てくれマセンカ?
少し開いた扉の隙間から覗くレイシスは、困ったような笑みを浮かべていた。その腕には、彼女が愛用している枕が抱えられていた。
レイシスは怖がるものの、それをコンテンツと割り切って楽しむタイプだ。なのに、そんなことを言って訪れるなどおかしい。明らかな嘘だ。
子供扱いされている。暗闇の中、グレイスは強く眉を寄せる。確かに己は彼女よりも幼いといえど、子供扱いされるほど年が離れているわけではない。こんな扱いをされるのは心外だ。けれども、姉の来訪に陰がさした心がわずかに軽くなったのも事実だ。
幼子のように扱われる不服さと、闇に一人取り残される寒さ。二つを天秤に掛けた結果、シングルベッドの中二人で眠る現在に至る。
嘘とはいえ、レイシスの方からこちらに訪れたのだ。意地になって跳ね返すのも幼稚だ。ここで受け入れてやる方が大人だ。仕方ない。仕方がないことなのだ。己に言い聞かせるように、少女は一人頷く。怖いなんてことはない。ただ、何となく普段よりも寒くて暗く感じただけだ。
背から伝わる体温と穏やかな呼吸に、とろりと瞼がゆっくりと落ちてくる。あんなにも寒さに包まれていた身体は、今は柔らかな温もりに埋まっていた。
怖くなんてない。全部、世話焼きで嘘が下手で優しい姉のわがままをきいてあげただけ。もう怖くなんてない。
音も無くこぼし、グレイスは口元まで布団に潜る。安堵が浮かぶ躑躅の瞳が瞼の裏に隠れ、少女は眠りについた。
触れて繋いで/ライレフ
葵壱さんには「いつまでもこの手をはなせずにいる」で始まり、「つまり私は恋をしている」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字)以上でお願いします。
いつまでもこの手を離せずにいる。
日が陰りゆく帰り道、何となく触れあった手を互いに合わせ、静かに繋いだそこはうっすらと汗ばんでいた。不快感が無いといえば嘘になる。それに、あと数分もしないうちに家に着くのだから、そろそろ離してしまう方が自然だ。けれども、この温度を手放してしまうことは何だか寂しく思えた。
そこまで考えて、烈風刀はぱちりと大きく瞬きをした。そうだ、寂しいのだ。兄の温もりを失うことも、この小さな甘やかな時間を終えてしまうことも嫌なのだ。
子供っぽいにもほどがある、と少年は内心自嘲する。それでも自ら手を離そうとしないのだから、事実自分は子供でわがままなのだ。
そもそも、ずっと繋いだままで迷惑なのではないのだろうか。不安を覚え、碧は隣に並ぶ朱をそっと見やる。沈みゆく陽をを背負った横顔は穏やかなもので、その頬はほのかに赤らんで見えた。
視線に気付いたのか、それともたまたまなのか、すぐに水宝玉と紅玉がかち合う。美しい紅瑪瑙がぱっと大きく見開かれ、ふわりと細められる。夕暮れ色の睫毛に縁取られた目は柔らかな弧を描いており、口元はへにゃりと幸せそうに緩んでいた。
はにかむ雷刀の姿に、烈風刀もそっと目を細める。蒼天の色をした瞳は、見つめ合う朱と同じかたちをしていた。ほとんど沈んでしまった陽に照らされる顔は、薄らと紅が浮かんでいた。
普段よりもゆっくりな足取りの中、繋がれた手にやわく力が込められる。驚きに硬くなった碧も、そっと指を深く絡め応えた。
たまたま触れあい、何となくで繋いだ手は、互いの確かな意思を持って離さないまま。
あぁ、つまり僕たちは恋をしている。
おとなのおにいさん/ノア+(ライ←)レフ
葵壱さんには「大人は泣かないものだと思っていた」で始まり、「優しいのはあなたです」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。
大人は泣かないものだと思っていた。
「烈風刀……?」
旧校舎の階段下、俯き立ち尽くしている少年を背を見上げ、ニアはその名を呼んだ。目の前の細い肩がビクリと跳ねる。ズ、と鼻を啜る音が人気の無い空間にやけに大きく響く。急いで袖口で目元を擦るのが見えた。
「……ニア、ですか。どうしたのですか?」
振り返った碧は、笑顔で問う。しかし、その眦と鼻先はわずかに赤らんでおり、声もどこか濡れたものだった。彼は必死に隠そうとしているが、今の今まで泣いていたということは明らかだ。
「えっと……、ノアちゃんたちとかくれんぼしてて、こっち探してたら烈風刀がいて、それで……」 しどろもどろになりながら、少女はどうにか言葉を紡ぐ。日頃入ってはいけないと言われている場所で人に会うなど――その上、兄のように慕っている烈風刀が泣いている場面に出会うことなど、一切考えていなかった。考えることなど難しいだろう。少女にとって烈風刀は『大人』のひとりであり、自分たち『子供』の前では常に冷静であろうと努めていたのだから。
「こんなところでどうしたのかな、って……」
怒られるのではないかという不安と、あの烈風刀が泣いているということへの動揺で、青い兎の声はどんどんと尻すぼみになっていく。彼女にとって、烈風刀はずっと年上の『大人』とも言える存在だ。レイシスひいてはこの世界を支える気丈な少年がこんなにも泣いていることなど、想像すらしなかった。こんな滅多に人が来ない場所で泣いているなど、誰かに見られたくないからに決まっている。そんな場所に逃げ込むほど、追い詰められているのだということが分かる。
「ただ掃除をしていただけですよ」
埃っぽいから目が痒くて、と烈風刀はあたりを見回し言う。たしかに人の出入りが少ない旧校舎は埃が多いが、彼の言葉が本当ならば近くに掃除用具など見当たらず、埃が積もったままの現状は明らかに不自然だ。聞いてもいないことをわざわざ口にするのは、『これ以上踏み込んでくるな』と言外に言われているようだった。
「そっ、か」
そう言ってニアは俯く。それ以上の言葉が出てこなかった。今は赤らんだ目と鼻について触れないことが、彼女が考えうる中で一番の選択だった。
「心配しなくても大丈夫ですよ」
不意に、少女の頭に何かが触れる。顔を上げなくとも、烈風刀が頭を撫でてくれているのだと分かった。優しい彼は、いつも不安そうにしている自分をこうやって撫でて癒やしてくれた。さらさらとした青いロングヘアを、大人の形になりつつある手が頭の形に添うように優しく撫でる。いつもと同じ、温かな手つきだった。
ニアは優しいですね、と少年は言う。子供なりの拙い慰めを、聡い彼は汲み取ってくれたのだろう。大人びた言葉も手つきも、泣きたくなるほど優しかった。
自分なんかが泣いてはいけない、と少女はぎゅっと唇を噛み締める。幼い己に負担を掛けまいと無理矢理涙を止めている彼の前で泣くことなど、絶対にできない。してはならないのだ。
そんなことない、と少女は胸中で呟く。自分はただ幼いだけで優しくなんてない。優しいのはあなただ。
ひとかけらの嘘/グラ→ルリ
あおいちさんには「小さな嘘をついた」で始まり、「指切りしよう」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。
小さな嘘を吐いた。
蒼髪に包まれた幼い背を眺め、グランは密かに胸を押さえる。罪悪感が心を苛んだ。
談話室に置いてる菓子が無くなってしまって。僕お菓子とかに詳しくないから。皆依頼に行ってて他に頼める人がいないから。
そんな言葉を並べ立てて、嬉しそうに目を輝かせた蒼と艇を出たのが一時間程前。現在、少年の胸には喜びと後ろめたさとが複雑に渦巻いていた。
嘘ではない。事実、団員は依頼や休暇などで大半が出ており、自身は菓子の類には詳しくない。ただ、備蓄が切れていることを知った上で、買い出しに適した団員に意識的に依頼を振り、二人きりで買い出しに行ってもおかしくない状況を作り上げただけだ。
それを嘘だというのだ、言い訳をするな、と良心が責め立てる。否定しようのない正論に、少年は苦々しげに目を伏せた。
「どうかしましたか?」
すぐ目の前から響く愛らしい声に、胡桃色の目が開かれる。罪悪感が滲む瞳に、こちらを覗き込む蒼が映った。
「い、や。何でもないよ」
焦りに声が上ずる。心優しいルリアのことだ、こんな調子の自分を見てはきっと気に病んでしまうだろう。美しい空色が不安で陰らぬよう、グランはすぐさま言葉を紡いだ。
「どれがよさそう?」
問いに、少女は小さく唸る。色とりどりの焼き菓子が並ぶ店先をちらりと見やり、困ったように笑った。
「全部美味しそうで……なかなか決められません」
菓子が好きな彼女にとって、沢山の種類の中から一部だけ選ぶことは至難の業だろう。菓子に疎いグランにも全て魅力的に映るそれらから絞り込むのは難しい。
「いっそ全種類買っちゃう?」
「でも、そうしたらいっぱい買えませんし……」
団員は二人の両手を使っても数え切れないほどの人数だ。予算を考えると全てを買って帰るのは不可能である。
「……じゃあさ」
菓子を眺める少女の背に、少年は問いかける。その声はわずかに震えていた。
「今日は全部少しずつ買っていって、皆にどれが好みか聞いて明日また買いに来るのはどう?」
皆が好むものを二人だけで選ぶのは難しい。ならば、好みを聞いてから改めて買いに来ればいい――というのは、全て言い訳だ。ただ、明日も想いを寄せる少女と共に過ごしたいだけだ。
「それがいいですね!」
提案に、ルリアはぱぁと顔を輝かせ手を合わせた。己の言葉を純粋に受け止める彼女の姿に、再び罪悪感が心を刺す。こんな嘘で騙すなど、最低にも程がある。けれども、想いを宿した心は勝手に言葉を紡いでしまった。もう戻すことなどできない。
少年の胸の内を知らない少女は、歓喜に満ちた笑顔を浮かべ小指を立てる。そのほっそりとした白い指を命の片割れの目の前に差し出した。
「約束です! 指切りしましょう!」
畳む
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