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No.95
熱を求めて【ライレフ/R-18】
熱を求めて【ライレフ/R-18】
夜中に思いついた短文。
やらしいことに無縁そうな子がやらしいこと言うのとってもやらしいねという話。
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ぬるりと怒張が去っていく。抱きしめていたものを失う感触に、シーツに放り出された身体がふるりと震えた。
汗に濡れた腕が、引き締まった腹を擦る。熱に満たされるはずだったナカは、暴き尽くした雄を失った今は空っぽだ。肚に注がれるはずだった熱は、薄いゴム生地の中へと吐き出されてしまった。欲望が形となったものは、ゴミとして捨てられる運命にある。
何も成さないという意味では、肚に出すのもゴムに出すのも変わらないことだ。それでも、同じならばこの肚の中に吐き捨ててほしいと思ってしまう。何とも幼く、何とも浅ましいなわがままだ。
「だいじょーぶ?」
不安げな声が降ってくる。腹に乗せられた手に、熱い手が重なった。
未だぼやけた視界に映ったのは、鮮烈な朱だ。愛しい人を示すそれは眇められ、ゆらゆらと揺れていた。手遊びのようなものだった動きは、不調を訴えるものだと受け取られてしまったらしい。赤い眉は端が下がり、抱える憂慮を明確に表していた。
大丈夫。その言葉を口の中で唱える。たしかに身体に不調はない。けれども、声帯はそれを音にはしなかった。正常な身体は何も訴えずとも、心が飢えを叫ぶ。満たされぬ肚が慟哭する。熱が欲しい、と。
何もないから大丈夫で、何もないから大丈夫ではない。矛盾する感情を、どう表すべきだろう。
「だいじょうぶでは、ありません」
長考の末生まれた言葉は、否定の意味するものだった。欲望に身を任せた、否定の言葉だ。
「おなかが、……寒くて」
「あ、そっか。そうだよな。布団――」
「そうじゃなくて」
どうにか身を起こし、ベッドから飛び降りそうな兄の腕を掴む。ふえ、と可愛らしい声が薄暗い部屋に落ちた。
「おなかの中、寒くて……、空っぽなのが、寂しくて」
わだかまる感情を、緊張で強張った声と拙い言葉で表していく。心臓がバクバクと脈打つ。あまりにも身勝手で、あまりにも淫らな要求だ。こんな淫猥な姿を見せては、呆れられるのではないか。気持ち悪がられるのではないか。不安が碧の胸に靄をかける。けれど、吐き出してしまった言葉はもう撤回しようがない。
朱は片手で顔を覆い俯く。碧は目を伏せ身体を縮こませる。重く長い沈黙が二人を包んだ。
「………………えっと、それって…………、中出しがいいってこと……?」
沈黙を破ったのは、混乱に揺れた声だった。弟の湾曲な表現が、兄によって直球的な言葉に訳される。あまりにもストレートな言葉に、碧の顔がぶわりと赤で染まった。
兄の言葉は正しくその通りであるが、ドストレートに言われるのは、己の淫らさを突きつけられているようで――紛うことなき事実であるのだが――恥ずかしいったらない。浅ましいわがままを言った自分が悪いとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。ぁ、ぅ、と意味をなさない声が喉からこぼれ落ちる。蒼玉は、羞恥に薄く水が膜張っていた。
再びの沈黙の末、碧は小さく頷く。正解を引き当てた驚きに、紅玉が目一杯見開かれた。
「え? で、も、いいの? 腹とか大丈夫?」
「大丈夫ですってば」
未だおろおろと惑う朱の言葉を遮る。己の身体を第一に慮ってくれるのは優しい彼の好きな部分なのだが、今はまどろっこしくて仕方がない。こうなればもう自棄だ。
「ぜんっぜん足りないんです! もっと……、なかにいっぱいください!」
掠れた声で、欲望をそのまま声にする。ここまではっきり言えば、さすがの兄でも分かるはずだ――こんないやらしい要求を受け入れてくれるかどうかは別だが。
ベッドから片足を投げ出した兄は、再び一切の動きを止める。掴んだ腕がふるふると震える。やはり、このような言葉は気持ちが悪かったのだろうか。あまりにも浅ましい様に呆れたのだろうか。不安が心の柔い部分を食い散らかしていく。最後のひとかけらが食われるより先に、視界が陰った。
「――烈風刀が大丈夫なら、オレもシたい」
驚きにぱちぱちと瞬きをする中、震える声が降り注ぐ。いつの間にか反転した身体、天を見上げた先には、瞳に熱を宿した紅玉があった。
えっと、あの、気持ち悪いかもだけど、と淀ませながら、朱は言葉を続ける。その視線は気まずげにゆらゆらと泳いでいた。
「ナカに出すの気持ちいいし、……烈風刀全部をオレのにしてるって感じがして、好きだから……」
だから、いいならナカに出したい。
視界いっぱいに映る愛おしい人の顔は、その髪の如く紅に染まっていた。己の内に秘めた思考を、しかも性的嗜好を言葉にするのは恥ずかしいのだろう。自分も先程同じことをしたのだ、気持ちは痛いほど分かる。
「……僕も、全て雷刀のものにされている感覚がして、好きですよ」
心を声に紡いでいく。同じ感情を抱いていたこと、事実征服されていたのだという喜びが胸を満たした。
手を伸ばし、目の前の頬にそっと触れる。紅瑪瑙が幸いを表すようにきゅうと細められた。触れた手に手が重なり、絡め取られる。手のひらと手のひらを合わせ、指を絡めて手を繋ぐ。そのまま、柔らかなベッドへと縫い付けられた。
「……でも、本当にいい? 身体だいじょぶ?」
「良いと言っているでしょう」
するりと兄の腰に足を絡める。もう逃さないぞ、という強い意思表示だ。絶えず何回でも受け入れ、注がれたものを一滴もこぼさぬためにも必要な動作でもある。愛する雄がナカから去らなければ、愛おしい熱はずっとこの肚に在るのだから。
「お腹、いっぱいにしてくださいね」
そう言って、碧はコケティッシュに笑う。口元は、歓びと期待に緩んでいた。
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#ライレフ
#腐向け
#R18
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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何も成さないという意味では、肚に出すのもゴムに出すのも変わらないことだ。それでも、同じならばこの肚の中に吐き捨ててほしいと思ってしまう。何とも幼く、何とも浅ましいなわがままだ。
「だいじょーぶ?」
不安げな声が降ってくる。腹に乗せられた手に、熱い手が重なった。
未だぼやけた視界に映ったのは、鮮烈な朱だ。愛しい人を示すそれは眇められ、ゆらゆらと揺れていた。手遊びのようなものだった動きは、不調を訴えるものだと受け取られてしまったらしい。赤い眉は端が下がり、抱える憂慮を明確に表していた。
大丈夫。その言葉を口の中で唱える。たしかに身体に不調はない。けれども、声帯はそれを音にはしなかった。正常な身体は何も訴えずとも、心が飢えを叫ぶ。満たされぬ肚が慟哭する。熱が欲しい、と。
何もないから大丈夫で、何もないから大丈夫ではない。矛盾する感情を、どう表すべきだろう。
「だいじょうぶでは、ありません」
長考の末生まれた言葉は、否定の意味するものだった。欲望に身を任せた、否定の言葉だ。
「おなかが、……寒くて」
「あ、そっか。そうだよな。布団――」
「そうじゃなくて」
どうにか身を起こし、ベッドから飛び降りそうな兄の腕を掴む。ふえ、と可愛らしい声が薄暗い部屋に落ちた。
「おなかの中、寒くて……、空っぽなのが、寂しくて」
わだかまる感情を、緊張で強張った声と拙い言葉で表していく。心臓がバクバクと脈打つ。あまりにも身勝手で、あまりにも淫らな要求だ。こんな淫猥な姿を見せては、呆れられるのではないか。気持ち悪がられるのではないか。不安が碧の胸に靄をかける。けれど、吐き出してしまった言葉はもう撤回しようがない。
朱は片手で顔を覆い俯く。碧は目を伏せ身体を縮こませる。重く長い沈黙が二人を包んだ。
「………………えっと、それって…………、中出しがいいってこと……?」
沈黙を破ったのは、混乱に揺れた声だった。弟の湾曲な表現が、兄によって直球的な言葉に訳される。あまりにもストレートな言葉に、碧の顔がぶわりと赤で染まった。
兄の言葉は正しくその通りであるが、ドストレートに言われるのは、己の淫らさを突きつけられているようで――紛うことなき事実であるのだが――恥ずかしいったらない。浅ましいわがままを言った自分が悪いとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。ぁ、ぅ、と意味をなさない声が喉からこぼれ落ちる。蒼玉は、羞恥に薄く水が膜張っていた。
再びの沈黙の末、碧は小さく頷く。正解を引き当てた驚きに、紅玉が目一杯見開かれた。
「え? で、も、いいの? 腹とか大丈夫?」
「大丈夫ですってば」
未だおろおろと惑う朱の言葉を遮る。己の身体を第一に慮ってくれるのは優しい彼の好きな部分なのだが、今はまどろっこしくて仕方がない。こうなればもう自棄だ。
「ぜんっぜん足りないんです! もっと……、なかにいっぱいください!」
掠れた声で、欲望をそのまま声にする。ここまではっきり言えば、さすがの兄でも分かるはずだ――こんないやらしい要求を受け入れてくれるかどうかは別だが。
ベッドから片足を投げ出した兄は、再び一切の動きを止める。掴んだ腕がふるふると震える。やはり、このような言葉は気持ちが悪かったのだろうか。あまりにも浅ましい様に呆れたのだろうか。不安が心の柔い部分を食い散らかしていく。最後のひとかけらが食われるより先に、視界が陰った。
「――烈風刀が大丈夫なら、オレもシたい」
驚きにぱちぱちと瞬きをする中、震える声が降り注ぐ。いつの間にか反転した身体、天を見上げた先には、瞳に熱を宿した紅玉があった。
えっと、あの、気持ち悪いかもだけど、と淀ませながら、朱は言葉を続ける。その視線は気まずげにゆらゆらと泳いでいた。
「ナカに出すの気持ちいいし、……烈風刀全部をオレのにしてるって感じがして、好きだから……」
だから、いいならナカに出したい。
視界いっぱいに映る愛おしい人の顔は、その髪の如く紅に染まっていた。己の内に秘めた思考を、しかも性的嗜好を言葉にするのは恥ずかしいのだろう。自分も先程同じことをしたのだ、気持ちは痛いほど分かる。
「……僕も、全て雷刀のものにされている感覚がして、好きですよ」
心を声に紡いでいく。同じ感情を抱いていたこと、事実征服されていたのだという喜びが胸を満たした。
手を伸ばし、目の前の頬にそっと触れる。紅瑪瑙が幸いを表すようにきゅうと細められた。触れた手に手が重なり、絡め取られる。手のひらと手のひらを合わせ、指を絡めて手を繋ぐ。そのまま、柔らかなベッドへと縫い付けられた。
「……でも、本当にいい? 身体だいじょぶ?」
「良いと言っているでしょう」
するりと兄の腰に足を絡める。もう逃さないぞ、という強い意思表示だ。絶えず何回でも受け入れ、注がれたものを一滴もこぼさぬためにも必要な動作でもある。愛する雄がナカから去らなければ、愛おしい熱はずっとこの肚に在るのだから。
「お腹、いっぱいにしてくださいね」
そう言って、碧はコケティッシュに笑う。口元は、歓びと期待に緩んでいた。
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