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No.104

書き出しと終わりまとめ7【SDVX】

書き出しと終わりまとめ7【SDVX】
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あなたに書いて欲しい物語でだらだら書いていたものまとめその7。ボ6個。毎度の如く診断する時の名前がちょくちょく違うのは気にしない。
成分表示:はるグレ1/ニア+ノア+レフ1/レイ+グレ2/ハレルヤ組1/プロ氷1

愛するだなんて/はるグレ
葵壱さんには「愛したこともないくせに」で始まり、「来年の今日もあなたといたい」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字)以内でお願いします。


 何かを愛したこともないくせに、と誰かが指差して嘲笑う。頭に響く不快な声に、少女は目を閉ざした。
 グレイス。すぐ横で名前を呼ばれる。開いた柘榴石が音を追う。少し首を動かすだけで、こちらを覗き込む虎目石とぶつかった。
 なに、と問いかけてみる。普段通りの声を作ったはずだが、彼にそんな稚拙な嘘は通用しない。首を傾げ、始果は口を開く。どこか不安な音色をしていた。
「苦しいのですか?」
「……そんなことないわ」
 それでも少女は虚勢を張る。見透かされているのは分かっていても、弱い部分ばかりを見せるのは嫌なのだ。腹に回された腕に小さく力がこもる。まるで逃がさないと言わんばかりに。
 何かを愛したこともないくせに。
 誰かが指差して嘲笑う。その『誰か』が『己』であることなどとっくに分かっている。そして、それが真実であるということも嫌というほど分かっている。
 生まれた時には誰もいなくて、冷たい世界で一人で生きて、自己を求めて闘って。誰かを愛する暇など、機会など無かった。こうやって、心を交わすことなど無かった。ただバグを従え、己の都合が良いように操るだけの日々だった。
 だからこそ、今この背にある愛が怖かった。愛をよく理解していない自分に、同じだけの愛を返すことができるのか。抱えているはずの拙い愛を伝えられているのか。この愛が途切れてしまう日が来るのではないか。恐怖が少女の根底にずっと張り付いて消えない。与えられる分だけ心が満たされ、与えられた分だけ憂慮が募る。
 何とも面倒くさい、と己でも思う。それでも、知らなかったものに対する恐怖は未だ拭えずにいた。理解しきれないものに振り回されていた。
 大丈夫ですよ、と少年は囁く。苦しくなるほど確かで、怖くなるほど力強い響きだった。
「来年も、今日も、ずっと君といますから」




果てを夢見て/ニア+ノア+レフ
葵壱さんには「宇宙の果てには何があるのでしょう」で始まり、「なぜか目が離せなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば13ツイート(1820字)以内でお願いします。
参考サイト
質問6-2)宇宙の果てはどうなっているの?
宇宙の果てには何があるの? 専門家に聞いてみた



「宇宙の果てには何があるのかなっ」
 窓の縁に身を乗り出し、ニアは弾んだ声で言う。紺碧の瞳には、ガラスの向こうで輝く星々が映り散りばめられていた。
「宇宙の果て、ですか」
 言葉を繰り返し、烈風刀は窓の向こう側へと目を向ける。浅葱の瞳にも星が散る。分厚いガラス窓から、目視などできないほど遠くへと思いを馳せる少女の頭へと視線を移す。青い頭の上に伸びる長いリボンカチューシャが、彼女の動きと連動して揺れた。
「宇宙に果ては無い、という話は聞いたことがありますね」
「えー!?」
 どこかで聞きかじった知識を口にしてみる。少年の言葉に、ニアは驚嘆の声をあげる。隣にいたノアも、彼の言葉に瑠璃の瞳をまあるくした。兎たちの視線は、窓の外から翡翠の瞳へと向けられた。
「無いの!?」
「一説ですよ。他にも色んな説があります」
 驚きに満ちた顔で少女は問う。慌てて手を振り、注釈を入れる。それでも、今しがた知ってしまった一つの解に双子兎はつぶらな瞳をいっぱいに開き顔を見合わせた。
「『果てが無い』ってことは、どこまでもずっと続いてるってこと?」
「そう……なるのでしょうか……」
 こてんと首を傾げるノアに、烈風刀は言葉を濁す。いつ聞いたか分からないほど前に聞きかじった情報なのだ。詳しいことなど分からない。かといって、答えられずに終わってしまうのも申し訳ない。
「調べてみましょうか」
 そう言って、ポケットから携帯端末を取り出す。『宇宙』『果て』の短い二ワードを検索窓に打ち込むだけで、何万もの答えが弾き出される。その一番上に出てきた文字列をタップする。二色三対の瞳が小さな液晶画面に吸い込まれた。
「百三十八億光年……光年?」
「光が一秒間に進む距離です。ものすごく遠いということですね」
 へー、と声が二つ重なる。小さな文字列を、蒼と碧が追う。短いページだ、数分足らずで読み終わる。ウェブサイトに記された文章ではいくつもの説をあげていたが、最終的には『無い』との結論を出していた。
「ずーっと遠くで途切れちゃってるってことかぁ……」
「観測できないことですから」
「見えないってことだよね?」
「はい。今はまだ、という話のようですが」
 人類の技術は日々進歩している。現時点では観測できずとも、数年後には更なる遠くを見られるようになってもおかしくはない。それこそ、この幼い少女たちが大人になる頃には観測できるようになっていてもおかしくはないのだ。
「二人が大人になる頃には観測できるようになっているかもしれませんよ」
「そうかな?」
「そうだといいなぁ!」
 烈風刀の言葉に、少女らは楽しげな声をあげる。まだ見ぬ果てが解明される楽しみに、長いリボンカチューシャが揺れる。
「早く見えるといいな」
「ねっ」
 青い兎たちは揃って背伸びをし、窓の縁に身を乗り出す。その小さな手が伸ばされ、ガラスに触れる。まるで星を掴もうとするような姿だった。果ての空を夢想し、少女らはきゃいきゃいと談笑する。月明かりに照らされる顔は気色に満ちていた。
 その可愛らしい背に、少年はふと目を細める。まだ見ぬ未来を望むその小さな身体から目が離せなかった。




内緒の寄り道/レイ+グレ
AOINOさんには「ふたりぼっちになりたかった」で始まり、「秘密を分け合った」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。


 気がつけば、ふたりぼっちになってしまった。
 つい先ほどまでいたはずの嬬武器の兄弟はどこにも見えない。唯一いるのは、隣に立つレイシスだけだ。ちらりとそちらに目をやる。彼女は全く気にしていないのか、機嫌の良さそうな顔で袋を持っていた。
 幸い、学園祭用の買い出しは既に済ませており、あとは荷物を学園に持って帰るだけだ。未だネメシスの地理に詳しくないグレイスだけならまだしも、レイシスがいるのだ。はぐれたところで問題は無いだろう。結論づけ、少女は足を動かした。
「ねぇ、グレイス」
 一歩踏み出し、レイシスは妹の名を呼ぶ。なに、と問いかけると、突然手に温かなものが触れる。気がつけば、空いている方の手を彼女に握られていた。
「な、何よ」
「こっちデス」
 慌てて真意を問うも、姉はにこりと笑いかけるだけで何も言わない。振りほどこうにも、駆けるように手を引かれては抵抗もろくにできない。ただ、彼女が進むままについていくことしかできなかった。
「ここデス!」
 そう言って、唐突にレイシスは足を止める。何だ、と桃色の瞳が見つめる方に目をやれば、そこには『鯛焼き』と大きく描かれた赤い幟が立っていた。この店が何なのだろうか、とグレイスは訝しげな目で姉を見る。桜色の目が柔らかな弧を描く。
「ちょっと休憩していきマショウ?」
 美味しいんデスヨ、とキラキラと瞳で語る桃の少女に、躑躅の少女は未だ眇目で姉を見る。だから何だ、と言いたいところだが、こうなった彼女を止められる者はいないことぐらい、短くない付き合いで理解していた。
「アッ。グレイス、あんこ平気デシタヨネ?」
「大丈夫、だけど」
 ヨカッタ、と笑みを浮かべ、少女は店の方へと歩みを進めていった。店主らしき者と対話をする姉をぼんやりと眺める。程なくして、彼女は包み紙二つを抱えてこちらへと帰ってきた。
「ハイ、ドウゾ」
 そう言って、レイシスは包み紙の片方をグレイスに手渡す。両手で受け取ったそれは温かい。四角形の紙からは、魚を模した生地の頭が顔を覗かせていた。おそらく、幟に書いてある通り鯛焼きなのだろう。
 いただきマス、と言って、薔薇色の少女は茶色い頭に大きくかぶりつく。頬がもぐもぐと動き、嬉しそうな声があがる。つられるように、躑躅も小さな口でかぶりつく。瞬間、優しい甘みが口の中に広がった。懐疑で細められていた尖晶石がぱぁと輝く。その姿を見て、紅水晶がふわりと細められた。
「雷刀たちには秘密デスヨ?」
 ネ、とレイシスはマゼンタの瞳を見つめる。確かに、二人だけで寄り道して菓子を食べたなんて話してはいけないことだ。こくりと頷き、グレイスは鯛の頭にまた一口齧り付いた。
 ある日の放課後、姉妹は秘密を分け合った。




数字読み解き/ハレルヤ組
AOINOさんには「嫌なことは数えても減らない」で始まり、「その言葉を飲み込んだ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。


 悲しいことに、嫌なものは数えても減らない。何度数えても事実としてそこにあり続けるのだ。
「あと何問やればいいんだよ……」
「五問ですよ」
「もうちょっとデスネ。頑張ってくだサイ」
 机に肘を付き頭を抱える雷刀に、烈風刀は涼しげに答える。横からレイシスが激励の言葉を投げかけた。
 三人が今いるのは、普段ゲーム運営に使っている会議室でなく放課後の教室だ。授業が終わってから少し経った今、空は少し赤らんでいる。ここ最近、日は次第に短くなっている。じきに真っ赤に染まっていくだろう。
 少年は目の前に広がる問題集を見る。基礎問題の横にはミミズがのたくったような文字で数式と解が書かれている。紛れもなく自分の文字だ。ここまで解いたはいい。問題はこの先の文章題だ。元々読解力の低い自分では、どこをどう読み解けばいいかすら分からない。とりあえず文章内にある数字を書き出してみても、使用方法はさっぱり思いつかない。もう両手を上げ降参したい気持ちでいっぱいだ――隣に座る弟がそれで逃げさせてくれるわけなんてないのだけれど。
 テスト勉強をしましょう、と言い出したのは烈風刀だった。今日返ってきた小テスト、兄の答案用紙に書かれた一桁に近い数字を見ての発言だ。いいデスネ、とレイシスが乗った時点で己に拒否する理由は無くなってしまった。愛しい彼女の言葉は己たち兄弟にとっては絶対なのだ。たとえ、対象が『勉強』という天敵でも、だ。
 文章の下に教科書から引っ張り出した公式を書いてみる。やはり、どの数字を代入すればいいかさっぱり分からない。うー、と濁った音が喉から漏れた。
「れふとぉ……」
 縋るように弟の名を呼ぶ。問題集の上に乗った腕を払い、少年は無言で文章の部分部分にアンダーラインを引いていく。
「これはここに代入して、こっちはここに代入するのです。ここまでは分かりますか?」
 隣から伸ばされたシャープペンシルが、目の前の問題集の上を走る。なめらかな文字が、公式に数字を当てはめていく。見覚えのある姿になった数字群を見て、雷刀はぱっと表情を輝かせた。
「おう! んで、解いていけばいいんだよな」
 言葉より先に手が動く。拙いながらも数式はいくつにも姿を変え、最終的に一つの数字を弾き出した。
 解答欄に記入したところで、碧い視線が計算式を追っていく。最後に記された数字を見て、烈風刀は口元を緩めた。
「合っていますね」
 弟の言葉に、小さくガッツポーズをする。すごいデス、と前から弾んだ声が飛んできた。
「普通の基礎問題は解けているのに何で文章題ができないのですか」
「だってどこ読みゃいいか分かんねーもん……」
 呆れた調子の声に、拗ねたような声が返される。文章題はどこにどの数字が必要なのかという部分から考えねばならないのだ。タスクが一つ増えるだけで脳味噌のキャパシティは限界を迎えてしまう。
「ほら、残り四問ですよ。早く解きましょう」
 そう言って碧は己の手元に視線を戻す。彼の目の前にある問題集は、自分のそれの数ページ先が開かれていた。
 へーい、と返し、手元を見る。新しく現れた文章題は相変わらず何を言っているか分からない。とりあえず弟に倣ってアンダーラインを引いてみたが、さっぱりだった。
 これがあと四問もあるという事実に絶望する。しかも、残りは応用問題のはずだ。更にややこしくなった文を読み解く自信などない。
 もうやだ、という確実に怒られるであろう弱音は飲み込んだ。




春と数/レイ+グレ
葵壱さんには「精一杯背伸びをした」で始まり、「君はきっと泣くだろう」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字)以内でお願いします。


 精一杯背伸びをする。ヒールの分もあってか、桃色の頭は少しだけ追い抜かすことができた。
「グレイス? どうかしまシタカ?」
「……何で貴方の方が大きいのよ」
 身体測定結果が書かれた紙を握りしめ、グレイスは不服そうに呟く。赤々とした唇は尖っていた。
 レイシスとグレイスは、実際の稼働年月は別として高校二年生程度の体格を形どっている。そこに差異など生まれなくてもいいはずだ。だのに、レイシスの方が己より数センチ身長が高いのだ。ほんの僅かとはいえ、負けているようで何となく気に入らない。小さい分、妹扱いに拍車が掛かりそうなのがまた懸念だ。
「すぐに伸びマスヨ。成長期なんデスカラ」
「それは貴方もじゃない」
 同じ年頃の形をしているのだ、成長速度もそう変わらないだろう。この差は埋まるか怪しい。
 うー、と音にならない唸りが喉から漏れる。何度測定結果を見ても、やはりそこにはレイシスよりも小さい数が書かれている。事実は覆りそうにない。
 成長期により彼女の身長を遥かに超えた己を想像してみる。今より妹らしさは減るだろう。それが目標だ。
 まぁ、実際に背を越したならば、大きくなりマシタネ、なんて言って姉を主張する彼女はきっと泣くのだろうけれど。




優しい貴方/プロ氷
葵壱さんには「ぱちりと目が合った」で始まり、「もう上手に生きられます」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば8ツイート(1120字程度)でお願いします。


 ぱちりと目があった。鮮やかな夕焼け色が瞬く。瞬間、その口元が綻んだ。安全靴がコンクリートを打つ音が近づく。あっという間に、あの美しい橙が己の目の前にやってきた。
「氷雪ちゃん。こんにちは」
「こ、こんにちは」
 柔らかな笑みで挨拶をする識苑に、氷雪は強張った声で何とか返す。編入時から何かとこちらを気にかけ世話を焼いてくれる彼だが、少女は未だ慣れずにいた。あの輝く夕日色の瞳を見られるのは、自分の弱い部分を全て見透かされるようで少しだけ怖い。否、とうに見透かされているのだろう。だからこそ、彼はこんなに優しくしてくれるのだ。
「どう? クラスにはもう慣れた?」
「す、少しだけ、慣れた……と思います」
 問いに対する答えは、どんどんと尻すぼみになっていく。途中編入故最初は一人ぼっちだったが、優しい人が多いおかげか少しずつ話すことのできる人も増えてきている。本当なら自信を持って答えるべきところである。けれども、心の暗い部分がそれを阻んだ。それは全部本当なのか、と。情けをかけられているだけではないのか、と。
「お、お友達も、できました、から」
 心を覆わんとする薄闇を払おうと、少女は言葉を続ける。桜子という大切な友人ができた。この事実は絶対に覆らない。何よりも嬉しいことで、何よりも識苑に報告したいことだった。こう言えば、彼はきっと安堵してくれるだろうから。
「本当!? 良かったねぇ!」
 そっかそっか、と青年は笑う。幸せそうな笑みだった。心から少女のことを案じているのが分かるものだ。その優しさが、それだけ彼に負担をかけているという事実が、胸に刺さる。雪の少女はその小さな手をそっと胸の前で握った。
「今から帰るの?」
「はっ、はい」
「そっか。最近日が暮れるの早いし、気をつけてね」
 じゃあね、と手を振り、識苑は校舎の方へ駆けていく。はためく白衣に向けてさようなら、と言う。細いそれは、絶対に届いていないだろう。挨拶すらろくにできない自己嫌悪が心を蝕む。
 はぁ、と無意識に溜め息がこぼれ落ちる。心優しい彼が無理に気に掛けることがなくなるくらい、もっと上手に生きられたらいいのに。

畳む

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SDVX


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