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No.107
烈風刀「大丈夫? おっぱい揉む?」【ライレフ/R-18】
烈風刀「大丈夫? おっぱい揉む?」【ライレフ/R-18】
お題ガチャ
で出てきたネタがツボったので膨らませた結果。
インターネッツの悪い冗談に惑わされて疲れ切ったオニイチャンを元気づけようと「大丈夫? おっぱい揉む?」って言った結果美味しくいただかれる弟君の話。
なんだか右が疲れてへとへとになっていたので「お疲れさま。…おっぱい揉む?」と言ってしまった左。その瞬間元気になる右。
本文を読む
「おかえりなさい、補習お疲れ様でした。……お、おっぱ…………胸、揉みますか?」
暗く濁った紅緋を見つめ、烈風刀はたどたどしく言葉を紡ぐ。ドサ、と鞄が地面に落ちる音がリビングに響く。それ以降、声が、音が続くことはない。静寂が二人を包んだ。
数日前、勉強の合間の気分転換に行っていたネットサーフィンで、烈風刀は気になる文章を見つけた。
――男を元気にさせるなら「大丈夫? おっぱい揉む?」と言えばいい。
そんな趣味の悪い冗談でしかない一文だが、少年の頭には引っかかるものがあった。具体的には、己たち兄弟、特に兄の性的嗜好についてだ。
兄との性行為では女側の役割を果たす烈風刀であるが、れっきとした男である。女体への興味は人並みにある。特に女性の豊かな胸部に目が吸い寄せられてしまうことは密かながらもよくあることだった。相手にあまりにも失礼なのでできるだけ隠してはいるが、やはり女体の中でもその部位への関心は一際高い。それは兄も同様であることは、同じ男として分かっていた――デリカシーの無い彼がその嗜好を包み隠さず口にするのが原因なのだけれど。
そんな彼相手ならば、この文言はてきめんだろう。事実、彼は女性の豊満なそれだけでなく恋人である己の胸にも多大なる興味を持っている。行為中にまさぐられないことは無いと言っても過言ではないほどだ。肉付きの薄い男の胸など触って何が楽しいのかはさっぱり分からないが、いつも上機嫌で捏ねくり回すのだからよっぽど好きなのだろう。
だから、彼が連日の補習授業で疲れ果てているであろう今日、試してみようと思ったのだ。補習を受けるのは全て兄の日頃の行動によるものであり自業自得だが、疲労困憊といった様子で日々を過ごしている恋人を少しでも元気づけたいと思うのは自然なことだろう。それに、今日はその補習の最終日だ。ひとつのご褒美、疲れを癒やす一助になれば、と少年は件の文言を口にしたのだった。
その結果、目の前に広がる光景は後悔を引き起こさせるものだった。
真ん丸な緋色は更に丸く見開かれている。口も同じくぽかんと開かれており、彼のチャームポイントである八重歯が覗いていた。肩に掛けていた鞄はずり落ち、床にへたり込んでいる。先程まで鞄の取っ手を握っていた腕は、身体の横に力無く垂れ下がっていた。身体は硬直し、棒立ちのまま動く様子は無い。呆然という言葉を体現したような姿であった。
やはり、こんなこと冗談でも言うべきではなかった。少なくとも、ようやく帰宅した者に対して開口一番で言うことではない。胸を揉むか問うなど、あんまりにも淫らではないか。下品だと叱られても当然の物言いである。そんなことを突然言われては、呆然とするのも必然だ。
あぁ、なんて愚かなことをしたのだろう。いくら兄の性的嗜好に合致しているからと言って、口にしていい言葉ではなかった。反省と後悔の念が胸を襲う。猩々緋から視線が逸れ、徐々に床へと向かっていく。己の愚かさに無意識に唇を引き結んだ。
「……すみません、冗談です。突然こんな馬鹿なことを言ってすみませ――」
「いいの!?」
精一杯謝罪の言葉を並べ立てようとするも、それは肩を掴む手によって阻まれた。あまりの勢いの良さに、思わず身体がぐらんと揺れる。力加減など一つもしていないのか、指が食い込んだ箇所が痛みを訴えた。鋭いそれに、思わず顔をしかめる。一体どうしたのだと顔を上げると、キラキラと輝くルビーと視線が交わった。
「え!? マジ!? おっぱい揉んでいいの!?」
燦然と光る炎瑪瑙が、後悔と動揺で淀む藍玉を見つめる。先ほどまで疲労で暗く濁っていたのが嘘のようだ。呆けて開かれていた口の端は上がり、咲き誇るような笑みを形どっている。色濃い陰が差していたその顔は、疲れなど微塵も感じさせない喜色で彩られたものに移り変わっていた。問い質すように、掴まれた肩を強く揺さぶられる。ぐらんぐらんと身体が前後に揺れた。
彼が口にした『おっぱい』という俗っぽい名称に思わず顔をしかめる。しかし、途中までとはいえ先にその後を口にしたのは己だ。咎める資格など持ち合わせていない。ぅ、と喉が詰まったような音を漏らした。
本当ならば胸を揉まれるなど、しかも自ら揉まないかと提案するなど、強い羞恥を呼び起こす行為だ。けれども、言ってしまったものは仕方ない。自ら決意したのだ。今日ばかりは彼の好きにさせよう、と。
「え……、いえ、いい、ですけれど……」
「やったー!」
肩をがっしりと掴んでいた手が離される。そのまま、朱は大きくばんざいをした。天へと手を大きく広げる様は、その胸の内に溢るる喜びを鮮明に表しているように見えた。欲しかったおもちゃを買ってもらった子どものように、やったやったと繰り返す。そのまま小躍りでもしそうな勢いだ。
「立ったままだとやりにくいよな? ソファ行こうぜ!」
聞いたことがないほど弾む声と宝石のように輝く瞳が、動揺で固まった少年を捕らえる。再び肩を掴まれ、くるんと身を反転させられる。そのまま背を押され、ソファの方へと歩みを進めることとなった。
「ぅ、え? あの、ご飯とお風呂は――」
「そんなの後!」
未だ心が乱れ揺れる烈風刀のことなど知らぬとばかりに、雷刀はその広い背を押す。ぐいぐいと押し進める力は強く、歩調が乱れよろけそうになるほどだ。どうにか押す調子に歩みを合わせ、ソファの前へと辿り着く。背に当てていた手を離し、兄は一足先に柔らかな座面に腰を下ろした。足を大きく開き、その中心をポンポンと叩く。ここに座れ、ということだろう。決意の通り素直に従い、彼の足の間へと腰を下ろした。浅く腰掛けるも、すぐに腹に回された手がぐいと引き寄せる。あっという間に己の背と彼の胸との距離がゼロになった。
「ほんとにいいの?」
「…………いい、ですよ。お好きにどうぞ」
最終通告のように問う兄に、弟はしゃんと姿勢を正し答える。背が丸まったままの姿勢では触りにくいだろうと思っての行動だ。変に恥ずかしがって縮こまる方が己の中の羞恥を煽るということは学習している。もちろん、それが兄の性的興奮を煽る要因になることも学習済みだ。今日は性行為をするためではない、彼の疲労を癒やすために行うのだ。変に性欲を煽るのはよろしくない。
「んじゃ、触るな」
ガッチリと腹をホールドしていた腕が離され、そろそろと上がっていく。しばしして、しなやかな指が胸部に触れた。鍛えられ薄く盛り上がった胸筋を、服の上から大きな手が包み込む。まるで胸当てのように全体を覆われた。
宛てがわれていた手がゆっくりと動き出す。薄い肉を掴むように指を曲げ、そのまま徐々に閉じていく。第二関節が少し曲がったところで、指が元通りに伸ばし戻されていく。指が動く度、胸筋の上に乗ったわずかな脂肪が、むにりむにりとやわこく形を変える。フェザータッチとでも言うのだろうか、行為の大胆さに反し動きは酷く優しく、緩慢と言っていいものだ。動きに合わせるように柔らかな布地に皺が寄っていく。胸部にのみ皺が生まれる様はどこかいかがわしいものだった。
ふ、と吐息が漏れ出る。服の上から与えられているとはいえ、刺激は刺激である。胸というすっかり敏感になってしまった部位にこうもじっくり触れられては、どうしても反応してしまう。けれど、この程度の動きで熱を孕んだ反応を示すなど淫乱でしかない。疲れを癒やすのに、そんな淫猥な要素など必要無い。く、と唇を噛んだ。
抵抗しないことから大丈夫だと判断したのか、胸部を包み込む手の動きはだんだんと勢いを増していく。鷲掴むように指が肉に食い込む。すぐさま離され、また強く掴まれる。まるでパン生地を練るかのように、胸筋と薄い脂肪を揉みしだかれる。動きは大胆なものの、痛みは無い。ひたすらに優しいものだ。まさに行為中、前戯を想起させる動きだった。
そんなことをされて、開発されきった身体が反応しない訳がない。声帯が震え、上擦った声をあげそうになる。そんなものを聞かせまいと、少年は両の手で己の口を押さえた。それでも鼻を抜ける甘い呼気を隠すことはできない。ん、と甘えるような音が服が擦れる音の中に紛れた。
刺激に震える烈風刀の様子に気付いたのか、雷刀は小さく笑みをこぼす。己の手によって恋人が可愛らしいリアクションをしているのが嬉しいのだろう。ふふ、という漏れ出るような笑声は、非常に機嫌の良い音色をしていた。
突如、胸部を揉んでいた手が離れていく。もう気が済んだのだろうか。これで少しでも疲れが癒えたならばいいのだけれど。そんな思いは、数秒も経たない内に破られた。
「――んぅ!?」
ぐに、と胸の中心部を押し潰される。とろ火で炙るように刺激されていたためか、胸の頂はすっかりと立ち上がっていた――もちろん、性的興奮によって。そんな状態で敏感な部位を、それも不意打ちで強く刺激されたのだ。声をあげてしまうのも仕方のないことだろう。口元を押さえてなければ悲鳴のような嬌声があがっていたことは必至だ。
尖ったそこを摘まれる。そのまま、ダイヤルを回すようにくりくりと転がされる。服の下にある乳輪をなぞるように、くるくると尖りの周りを指が回る。立ち上がった先端をカリカリと爪で引っかかれる。どれも、前戯で行うもの――性的興奮を煽り、快感を与えるための動きだ。『揉む』という行為からは完全に逸脱していた。
「ちょっ、と! ぁッ、揉むだけじゃないのですか、ぁ!」
「えー? ふつーに、いつもどーりに揉んでるじゃん」
どこがだ、という言葉は短い悲鳴に掻き消された。胸の中心部を摘まれ、そのまま引っ張られたのだ。強い衝撃――快感に、アッ、と甘い声を漏らす。こんな声二度と聞かせまいと、少年は素早く口元を強く手で覆った。
その様子が気に入らないのか、胸元をいじる手はどんどんと過激さを増していく。すっかりと主張する先端を捕らえられ、指先で捏ねるようにぐりぐりと刺激される。指を上下に動かし、尖りを弾く。コーヒーをスプーンで掻き回すように、くるくると周囲をなぞられる。立ち上がったそこを、咎めるようにトントンと爪を立てられる。兄の手によって作り変えられた敏感なる部位が、柔らかい布地の上から嬲られる。明らかに性行為を目的とした動きだった。
どう強く意識しようとも、肉体はそう簡単に言うことを聞いてくれない。耐えようとする理性に反して、ん、ふ、と甘い音が鼻を抜ける。かすかなそれに雄の本能に火をつけられたのか、胸部をもてあそぶ手は止まることを知らない。指の間に尖りを挟まれ、そのまま強く揉みしだかれる。方向性の違う二つの刺激に、脳の奥がぴりぴりと痺れた。
「きもちいい?」
必死に声を抑える中、耳元で兄は囁く。クスクスという心底愉快そうな笑い声付きだ。腹立たしいことこの上ない。
そんなことを問われても、肯定することなどできない。こちらは疲労回復を目的としてこの行為を許したのだ。だのに、こんないやらしい触り方をするなど冗談ではない。それに感じ入ってしまっている自分も然りである。事実がどうであれ、肯定できるわけがなかった。そも、今は口を強く封じ込めているのだ。声を出して返答することなど不可能だ。
なぁ、と問いかける声。含まれた吐息は確かな熱を孕んだものだった。
「直接触ったらもっときもちいいと思うんだけどさ」
どう、と尋ねる声に選択肢など用意されていなかった。直に触らせろという要求、否、命令だ。確かに揉んでいいと言ったが、そこまでさせる気も道理もない。けれども、胸部を覆う手はむにむにと全体を刺激し、思考能力を奪っていく。きもちがいいことばかりを求めるよう、意識を塗り替えていく。気付けば、小さく首を縦に振っていた。
胸部をいじめる手が離される。何で、と無意識に問おうとするより先に、視界がぐらりと揺れた。世界が横倒しになる。すぐさま肩を押され、上に半回転する。完全に座面に背を預ける形となった。
広がった先、視界いっぱいに朱が映し出される。目は愉快そうに三日月型に歪んでおり、大きな口の端は不気味なまでに吊り上がっている。細まった瞳の奥には、確かな情欲の炎が燃え盛っているのが見えた――行為中に見せる、雄の表情そのものだ。
ごくり、と白い喉が上下する。食われる、と本能が訴える。同じく本能は――被食者として幾度も貪られた本能は、食われたいとはしたなく叫んだ。
少し捲れた裾の部分、覗く肌に胼胝が浮かぶ手がそっと添えられる。そのまま、中へと侵入してくる。侵入者は肌をなぞりあげ、服を上へ上へと持ち上げていく。熱が肌を伝い撫で上げていく感覚に、思わず息を呑んだ。
途中で痺れを切らしたのか、裾を掴み、一気に首元まで押し上げられる。現れたのは、日に焼けていない真っ白な肌だ。ところどころ隆起する筋肉が男らしさを感じさせる。盛り上がった筋肉が薄く影を落とす様は、どこかインモラルに見えた。
鍛えられた筋肉と薄い脂肪で盛り上がった胸の頂は、可哀想なほど赤く染まり、ぴぃんと尖っていた。雪の中咲き誇る椿を思い起こさせる光景だ。服の上から散々嬲られた結果である。一連の愛撫に身体が確かな快感を覚えていた証左でもあった。
かぁ、と顔に熱が宿る。直接見なくとも、己の胸部が情けないことになっているのは嫌でも分かる。あれだけ情欲を起こさせるほどいじくられ、兄の手によってすっかり作り変えられた身体が淫らな反応をしないはずがないのだ。現に、己の中心部はボトムスで戒められる苦しさを覚えるほど勃ち上がっていた。たかが、胸部を刺激されただけで。
雷刀もとっくに気付いているだろうに、そこについては全く触れない。触れる気がないのだ。なにせ、今の彼には己の薄っぺらい胸しか映っていないのだから。
覆い被さった顔が近づく。口付けでもされるのだろうか。思わず身構え、目を閉じる。しかし、いつまで経っても唇に何かが触れる様子はない。何故だ、と疑問を覚えるよりも先に、強い性感が身体を襲った。
「っ、ぁ、あッ!?」
胸部、その頂点が熱いもので包まれる。手なんか比ではない。温かな湯に身を浸した時の感覚が近かった。じゅ、と残り少ないジュースをストローで吸い上げるような音が鳴る。同時に、熱を持った部分から甘い痺れが走った。
胸を吸われている。あまりにも突然のことに気付くまで随分と時間を要してしまったが、ようやく現状を把握する。羞恥に顔が赤く染まっていくのが自分でも分かった。
「やっ、雷刀! やめてくださ――ぁアッ!」
抗議のために両の手で朱い頭を押してみるが、どういう理屈なのかびくともしない。どうにか退けようと奮闘する最中、咎めるように頂に柔く歯が立てられた。強い刺激に、目の前がスパークする。快楽信号が脊椎を駆け抜け、脳に叩き込まれる。頭の中が一気に官能に染まった。
先ほどの痛苦を癒そうとするように、舌でぺろぺろと舐められる。舌で押し潰され、弾かれ、転がされる。剥き出しになったもう片粒を寂しがらせないように、空いた手が触れる。舌で行うそれとは違う刺激が脳髄に叩き込まれた。
同時に二箇所も、それも違う風にいじくられ、快楽漬けにされた脳味噌が処理しきれるはずがなかった。許容量を超えた淫悦を逃がそうと、口からとろとろと甘い嬌声があがる。あまりにも卑猥なそれは聞き難いもので、思わず耳を塞ぎたくなる。もうそんな音は漏らすまいと、再び両手で口を強く塞いだ。
それが男心に火をつけたのだろう。攻め立てる手はどんどんと強くなっていった。口が離され、今度はもう片方の頂点を吸われる。わざと聞かせているであろうちゅうちゅうという音が、耳から思考を犯す。つい先ほどまで口で愛し唾液でぬるついた赤い粒を、指がぐにぐにと潰し転がす。ピン、と指で弾かれた瞬間、呼吸のために開け放たれた鼻から、ン、と高い音が抜ける。その反応に気を良くしたのか、ふ、と笑い声を漏らしたのが聞こえた。その些細な振動すら、今の身体は快楽を拾った。
きゅう、と肚が鳴き声をあげる。内で燃え盛る情火はどんどんと勢いを増し、天を衝かんとする。下半身に集まった欲望が、限界を叫ぶ。もう吐き出してしまいたい、と。
嘘だ。絶望が少年を襲う。ただが胸を捏ねくり回されただけで、ここまで官能に支配されるなど初めてだった。直接触れられずにここまで張り詰めるなど初めてだった。限界を訴えるなど初めてだった。赤くなった顔から血が引いていく。天河石の瞳が大きく見開かれた。
胸だけで達する。未知への恐怖が、快楽で染め上げられた頭に芽吹く。口を塞ぐ両手を離し、烈風刀は引き剥がそうと己が胸に顔を埋める兄の頭をぐいぐいと押す。反対に、しがみつくように顔を押しつけられるだけだった。ならば蹴飛ばそうと試みるが、足と足との間に入られた現状ではそれは叶わなかった。
「やっ、やだっ、らいとっ! や、め……ァっ、やだ……、だ、めぇ、です! も、むりぃ!」
駄目だ。これ以上は駄目だ。頭が悲鳴をあげる。悦びの声を殺すのも忘れ、碧は叫び限界を訴える。翡翠の瞳から、恐怖と快楽に染まった雫が流れ落ちた。
そんなことなど知るかと言わんばかりに、雷刀は攻める手をやめない。乳飲み子のように吸い付き、おもちゃで遊ぶように指を動かす。キャパシティが限界を迎えようとしている少年を追い立てるのは容易だった。
生温かいものに包まれた粒に歯が立てられる。唾液でぬめる尖りにぐいと爪が押し当てられる。瞬間、視界が真っ白に染め上げられた。脳の奥の方がバチバチと音をたてる。きゅん、と肚の奥が悦びの鳴き声をあげた。
「ぁ、あ、あァッ!」
ビクン、と身体が跳ねる。背が弓なりにしなる。図らずとも、兄に胸を押し付ける形となってしまった。まるでもっといじめてくださいと主張するような動きだ。応えるように、じゅ、と今一度強く吸われる。恐ろしい追撃だった。身体中を電流が走り抜ける。涙で滲む視界が白んだ。
中心部に生温かいものが広がっていく。気をやったのだ、と呆けた頭で理解した頃には、胸部から雷刀は去っていた。再び視界が朱に染まる。にまりと歪んだ弧を描く口元は、涎でベタついていた。
「おっぱいだけでイった?」
ニマニマと憎たらしい笑みを浮かべた口が言葉を紡ぐ。わざといやらしい言葉を選んで問うてくるのが腹立たしい。しかし、答えるのも、不快さを訴えるのも、今の烈風刀にはできなかった。長時間じっくりと胸をまさぐられ、容赦なく官能を叩き込まれた脳は、再起動まで時間を要した。
答えを聞かぬまま、雷刀は弟のボトムスに手をかける。そのまま、下着ごと全て剥ぎ取った。濡れた股ぐらが顕になる。精液が滴るそれは淫らの一言に尽きた。
不快感が取り払われるとともに、寒気を覚える。濡れた場所がいきなり外気に晒されたのだから当たり前だ。同時に、危機感を覚える――否、これは期待感だ。まだ足りないと泣き叫ぶ肚が満たされるであろう未来への想望だ。
「ら、らいと……、だから、もむだけ、じゃ――」
「これだけで足りんの?」
呂律の回らない口で、抗議の声をあげる。形式ばかりのものだ。胸に宿るこの先の行為へのときめきは隠しきれていないというのに、頭にしぶとく残っている素直でない部分は体裁を取り繕おうとするのだ。なんとも愚かであった。
そんなことなどとうに見破っている朱は、再び問いかける。どこか嘲るような響きだった。答えを分かっていての問いだ。足りるはずないだろう、もっと先が欲しいだろう、頭から爪先まで全て食い散らかされたいだろう、と。情欲の焔が燃え盛る瞳はそう訴えていた。
濡れそぼつ雄茎に手がかけられる。そのまま、揉むように上下に擦られる。鮮烈な快感が一気に脳に叩き込まれた。ヒ、と喉が引きつった音をたてる。ぬちぬちと水っぽい音がリビングに響く。日常を過ごす場に相応しくない卑猥な響きだった。
「オレは足りねーし、もっと欲しい。シたい」
分かりきった答えを聞くより先に、雷刀は宣言し行動に移す。顕になった白い足を割り開き、膝を折り曲げさせる。そのまま、座面につくほど深く押さえつけた。腰が持ち上がり、必然的に眼前にゆるく勃ち上がり始めた己自身が晒される。ライトの光を受けてらてらと輝く姿に、顔に血が上ってくるのが分かる。お前はこれだけ淫乱なのだぞ、と見せつけられているような心地だった。
節の目立ち始めた指が、真っ赤な口の中に吸い込まれる。数秒、唾液をたっぷりとまとったそれが姿を現す。これから何が起こるかなど、何をされるかなど容易に分かる。だって、何度も見た光景なのだから。
秘められた――今は兄の目の前にはっきりと晒されている蕾に、ぬるつく指が押し当てられる。幾度も兄自身を飲み込んだそこは、期待するようにひくついていた。
濡れた指先がくるくると縁をなぞる。皺一つ一つを伸ばすような動きに、羞恥が込み上げる。欲望に忠実な窄まりは、誘うようにはくはくと口を開けた。
つぷ、と淫靡な音をたてて指がナカへと這入っていく。隘路が割り開かれていく感覚に――待ち望んだ感覚に、白い身がふるりと震えた。
侵入者はゆっくりとした足取りで奥へと進んでいく。第一関節まで潜り込み、爪の根元まで戻る。また潜り、退いていく。解すための丁寧な動きだが、浅い部分を何度も繰り返し擦られ、身体は従順に反応を示す。待って、行かないで、と泣き縋るようにきゅうきゅうと指を締め付ける。あやすようにとんとんと内壁を突かれ、ぁ、あ、と細い声が漏れ出た。
時折雷刀は口を開け、だらしなく舌を垂らす。つつ、と滴る唾液が指を受け止めた秘所に落ちる。何度も潤滑油代わりのそれを継ぎ足していく。くちくちと小さな水音が部屋に響いた。
第一関節、第二関節と段階を踏んで潜っていく侵入者が、とうとう根本まで這入りこむ。奥を暴かれる悦びに、内部はぎゅっと抱きしめ歓待した。応えるように、鈎状に曲がった指がうちがわを擦る。イイ部分を直接刺激され、碧は法悦の涙をこぼした。もっと、とねだるように無意識に腰がくねる。あまりにもはしたなく、あまりにも猥褻であった。
一人だった侵入者が、二人、三人と数を増やしていく。三人揃って弱い部分をぐっと強く押される。バタ足をするようにバラバラと動き、内部を掻き回される。曲がった指先が、内壁を同時に三箇所擦り上げる。達したばかりの身体にはあまりにも強い刺激だった。雄を受け入れるために解す行為、つまり準備段階でしかないというのに、すっかり敏感になった身はそれだけで気をやってしまいそうな心地だった。反対に、これだけでは足りない、というはっきりとした意識もあった。こんな指なんかじゃ足りない、もっと逞しいモノに蹂躙されたい、と浅ましい肚が叫んだ。
「ぁっ、やっ、らいと、ぉ」
待ちきれないとばかりに愛おしい人の名を紡ぐ。快楽から逃れようと、藻掻くように座面を引っ掻く。そんなものに意味などない。ただ、恋人を煽るには十分だったらしい。ぐ、と息が詰まる音が降ってきた。
侵入者が性急にナカから去っていく。未練がましく締め付けていたためか、抜き出る瞬間、つぷん、といやらしい音がたった。短く小さなそれは、二人の荒い吐息に掻き消された。
ゴソゴソと衣擦れの音。しばしして、折った膝を強く押された。ぐ、と腰が持ち上がる。眼前に涎をこぼす己自身と解れきった秘蕾が晒された。浅ましいにも程がある光景に思わず目をつむりそうになる。けれども、差し込んだ影がそれを阻んだ。
ひくつく後孔に、熱いものが触れる。雷刀自身だと気付くのはすぐだった。なにせ、宛がわれている光景が目の前に広がっているのだ。硬く勃ち上がった雄の象徴が、柔らかに綻んだ秘めたる場所にずりずりと擦り付けられる。今からここに挿入れるのだぞ、と宣言されているようだった。
はー、はー、と荒い息が漏れる。涙で濡れた碧は、先走りを塗り込むように動く肉茎に釘付けになっていた。とろけきった瞳には、愛する人に蹂躙されることを待ち望む色がはっきりと浮かんでいた。
はくはくと綻ぶ狭穴に、剛直の先端が宛がわれる。熟れきった切っ先が、ゆっくりと中へと這入り込んでいった。
「ぅ、あ……」
入念に解されたとはいえ、先ほどまでの侵入者は所詮細い指であった。そんなものとは比べものにならないほど太いモノが、狭い道を拓いていく。身体の中を無理矢理拡張されれば、多少なりとも苦しみを感じるはずだ。しかし、今の烈風刀の頭には官能と幸福しかなかった。空白がどんどんと埋められていく感覚に、少年は無意識に口元を緩めた。
細い肉の道が、一番太い部分まで飲み込む。頭に続き、幹が内部をゆっくりと埋めていく。先端が弱い部分を掠め、少年は悦楽にとろけた声をあげる。縋るように強く締める肉を、逞しい茎が割り開かれていく。長い時間をかけ、巨大なる侵入者がやっと根本まで這入りこんだ。それでも足りないとばかりに、ぐっと腰を押し付けられる。上から体重をかけて突き立てられ、碧はぁっ、と短く声を漏らす。涙が白い頬に透明な筋を作った。
ずず、と欲望が徐々に去っていく。張り出た部分がごりごりと内壁を擦る。内部を刺激される快びと埋められたものがいなくなる寂しさが胸を襲う。再び座面に爪を立てる。引っかかれた布地がかすかな音をたてた。
雄の証は隘路の半ば頃で動きを止めた。中途半端に埋められた感覚に、もどかしさに、細い腰がゆらゆらと揺らめく。卑猥なる光景を前に、目の前の赤い口が三日月を描いた。
「ッ、ひっ、ぃ! あっ!」
しゃくりあげるように雷刀は腰を動かす。コツンコツンと腹側の弱い部分を硬い先端で突かれ、烈風刀は淫悦の泣き声をあげた。敏感なる粘膜を擦り上げられる度、膨大な快楽が生まれる。悦びを示す電気信号が、次々と頭に叩き込まれる。受容する器官がバチバチと危機感を覚える音をたてた。弱点とすら言える箇所を執拗に攻め立てられ、少年は耐えられないとばかりに頭を振る。浅葱の髪がバサバサと乱れる。汗ばんだ肌に美しい碧が張り付く様は艶めかしいものであった。
膨れた部分をひたすらに擦り上げていた槍が動きを止める。ずずず、と去り、傘の部分が縁に引っかかるような位置で停止する。突如止んだ猛攻に、怒張が引いた位置に、少年は身を固くする。快楽にとろけた頭でも、これから何が起こるかぐらい簡単に分かる。ボロボロと涙をこぼし、拙い動きで頭を横に振る。思考とは正反対に、薄い肚は与えられるであろう快楽を待ちわびきゅんきゅんと疼いた。
ばちゅん、と肉と肉が打ち付けられる音がリビングに響く。ずぬぬぬ、と肉の刃が一気に鞘の中へと収まっていく。ナカ全体を勢いよく刺激され、碧は悲鳴をあげる。苦しみや痛みによるものではない、悦びに溢れたものだった。
張り詰めた先端が秘められた襞をこじ開けるように小突く。真上からの体重を掛けたピストンは一撃一撃が重く、身体中に響くようだった。鍛えられた腹に杭の形が浮かんでしまいそうなほどの勢いと衝撃だ。突き破られてしまう、とあり得ない恐怖が頭の片隅に生まれる。すぐさま官能が塗り潰し消し去った。
「ぁっ、あ、ぅ……ぅあ、あっ」
浅海色の瞳は、目の前の光景に――己が孔穴に恋人自身が幾度も出入りする光景に釘付けになっていた。普段なら目をつむって逃げてしまうそれから、今は目が離せない。丹念な愛撫で昂ぶった身体は、コントロールが効かなくなっていた。ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な音があがる。この肚に兄の体液がたっぷりと塗り込められているという証である。
ぷちゅん。ぬちゅん。非日常な淫音が日常を過ごす空間に響く。その背徳感は興奮を煽るスパイスでしかない。ソファという普段と違う場所で睦み合っているという事実も、服を着たまま獣のようにまぐわっているという事実も、二人の情欲の炎に薪をくべるだけだった。
聴覚、視覚、触覚。五感の内の三つも支配されている現状は、脳の処理能力を超えていた。できることなど、とろけた嬌声をあげるぐらいだ。快楽の解放先を求め、カリカリと座面に爪を立てる。見かねたように腕を取られ、目の前の首へと回される。ようやく縋るものを見つけ、少年はぎゅっとその首に抱きついた。汗の、兄の匂いが鼻先を掠める。それだけで肚の奥で燃え盛る火が大きくなった。
ばちゅん、ぐちゅん、と猥雑なる響きがどんどんと激しさを増していく。兄の腰使いも勢いづき、早くなっていく。柔らかな肉洞が、雄の形に広げられ、擦られ、法悦を叫んだ。
知っている。何度も経験したことだ。つまり、射精が近いのだ。この肚に種を植え付けられる時が迫っているのだ。待望の時間に、きゅんと肚の奥底がときめく。早くくれ、とばかりに、うちがわは蹂躙者に絡みついた。ぅあ、と熱のこもった吐息が耳に直接注ぎ込まれる。兄が確かな性感を覚えている証拠だ。己の硬く薄い身体で愛しい人が快楽を得ているという喜びが胸の内に湧く。
「らいとっ、らい、とぉっ」
歓喜と愛しさを表すように、碧き少年は幾度も愛する人の名前を呼ぶ。溢れる唾液でどろどろになった口は、拙い響きしか奏でられない。しかし、それは雄を煽ったらしい。膝を押さえつける手に更に力がこもった。
れふと、と名を呼ばれる。熱に溺れた声だった。情火が燃え盛るガーネットの瞳が、濡れたエメラルドを射抜く。捕食者のそれに、座面に押さえつけられた背が震える。恐怖だけでない、確かな悦楽があった。愛する雄に残らず食われる悦びは、少年の身体に幾度も刻まれていた。
ごつごつと音が響きそうな勢いで、肉刃が洞の最奥を突き上げる。奥底を守る襞を執拗に小突かれ、少年は上擦った声をこぼす。奥の奥を暴かれる悦びも、とっくの昔に身体に刻み込まれていた。更なる奥地に誘おうと、内部が蠕動する。うねる狭道に誘われるように、締め付ける内壁から逃げるように、雄は肚を穿つ。咥え込んだ後孔がめくれ上がってしまいそうな勢いだった。
ごちゅん、と腰骨がぶつかる重い音が響き渡る。瞬間、最奥を守る襞が硬い切っ先によって打ち破られた。隘路のその先、更に狭き道を張り詰めた頭が割り広げる。蠢く肉道が侵入者を殊更強く抱きしめた。
視界が真っ白に染まる。脊髄を鋭く多大な電流が走っていく。バチン、と脳が限界を迎える音が聞こえた気がした。
「ヒ、ぃっ、あッ――あああああッ!」
完全に許容量を超えた刺激に、烈風刀は高い悦楽の悲鳴をあげる。びゅくびゅくと彼自身から白濁液が吐き出された。服が捲り上げられた胸に、白い化粧が施される。日に焼けていない白い肌を、熟れた赤い果実を濁った雫が汚す様は、卑猥の一言に尽きた。
奥底を暴かれ達した身体は、ビクビクと痙攣する。雄杭を受け入れた肉筒がぎゅうと締まる。最奥の守護者である襞が、熱く柔らかな内壁が、ぷくりと熟れた縁が、雄の象徴を抱きしめる。もうとっくに到達したというのに、更に奥へと誘うように蠢き敏感なる部位を撫で上げた。
ぅあ、と苦しげな声が降ってくる。瞬間、肚の奥に熱いものが注がれた。マグマのような劣情の迸りが、狭き洞を満たしていく。うちがわ全てを焼かれるような心地だった。同時に、言葉にならないほどの多幸感が胸を埋めていく。長らく待ち望んだ温度に、少年はあ、ぁ、とか細い嬌声をこぼす。幸福に満ち溢れた音色は、確かな悦びを謳っていた。
低い喘ぎを零しながら、雷刀はカクカクと腰を細かく動かす。一つ残らず注ぎ込み、奥の奥まで種を塗り込め植え付ける動きだった。その行動が実ることはないと理解している。しかし、雄としての本能がそうさせたのだった。
荒い息が二つ重なる。流れる汗が、溢れる唾液がソファの座面に暗いシミを作る。激しい情交は二人の体力を多大に削っていた。それでも朱の手は未だに碧の膝を鷲掴み、座面に押し付けている。獲物を逃すまいとする捕食者の行動だ。
潤んだ燐灰石が、薄く涙を湛えた柘榴石を見上げる。どこかぼやけながらも熱烈な視線に、朱は笑みをこぼす。何が言いたいのかは言葉にしなくとも分かった。
開いたままの口をべろりと舐められる。人懐っこい犬のような行動に、自然と目元がゆっくりと垂れ下がる。己も舌を出し、ぺろぺろと舐めるそれをちょんと突く。すぐさま赤いそれに絡め取られた。舌と舌とがもつれあい、艶めかしい即興のダンスを踊る。踊り終え離れた瞬間、今度は唇と唇が重なった。即座に熱の塊が口内に這入り込んでくる。愛しいそれを真正面から受け止めた。
くちゅくちゅと水音が合わさった唇から漏れ出る。ん、ふ、と甘ったるい音が鼻を抜ける。幸に染まった響きをしていた。
音をたてて交わっていた唇が離れる。内部で抱きつきあっていた赤たちも、ぬるりと擦れながらも身を離した。透明な糸が愛しあう二人を繋ぐ。頼りないそれは、すぐさま切れて消えた。
「……むねを、もむ、だけって……いったでは、ない、ですかぁ……」
涙でしとどに濡れた水宝玉が、未だ炎灯る紅玉髄を睨めつける。確かに好きにしろとは言った。けれども、それはあくまで『胸を揉む』という行為の中での話だ。そのままもつれこみ、肌を重ねていいなどとは一言も言っていない。だのにこれである。烈風刀が不満を訴えるのも無理はなかった――抵抗せず大人しく食われた己にも責任があるということは、聡明な彼自身気付いているのだけれど。
碧の鋭い視線に、朱はぅ、と言葉を詰まらせる。素直に非を認めたのか、ごめん、としょげた謝罪の言葉が降り注いだ。
「だって烈風刀きもちよさそうだったし……つい……」
「『つい』もなにもありませんよ……」
責任転嫁するような物言いに、烈風刀は呆れの声を漏らす。はぁ、と濡れた口元から重い溜め息が漏れる。うぅ、と唸り声がソファに落ちた。
「でもさぁ、烈風刀だっておっぱい揉まれてきもちよかっただろ?」
こうやってさ、と雷刀は押さえつけていた膝から手を離す。ニィと口角がいたずらげに吊り上がった。
服を捲りあげられたまま、ずっと晒されていた胸元に、大きな手が伸びる。胸に散った白を掬い、塗り込めるように頂をくりくりと転がされる。背筋を走る鋭い性感に、少年はヒッ、と短い悲鳴をあげた。垂れた唾液をまぶすように胸全体を包み込み、むにむにと揉まれる。優しいその手付きはいやらしいもので、晴らされたはずの情欲を再び掻き立てるには十分だった。
「ちょ、と、やだっ、らいと! だめですってば!」
「えー? 『揉む』なら好きにしていいって言ったじゃん」
抵抗の声をあげるも、相手はわざと言葉を歪めて解釈し、手を止めようとしない。盛り上がった胸部全体を手で包まれ、揉みしだかれる。薄い胸が指の通りに形を変えた。
だめ、だめ、と駄々っ子のように首を横に振る。突き飛ばしてしまいたいはずなのに、鍛えられた腕は愛しい人に縋り抱きついた。まったくの逆効果である。
ピン、と膨れ上がった尖りを指で弾かれる。瞬間、視界に光が瞬いた。情火に炙られとろけきった脳が、鋭い電気信号を受けバチバチと火花を散らす。細く上擦った喘ぎがリビングに響き渡った。
肚の奥に炎が宿る。愛しい熱をたっぷり注がれ満足したはずのそこが、もっとくれと泣き声をあげ始める。胸だけでは足りない、もっと熱が欲しい、全て食らい尽くされたい、と淫らな欲望を叫んだ。
気付けば、再び胸部を雷刀の口が包んでいた。乳飲み子が母乳を求めるように、ちゅうちゅうと吸い付く。唾液をたっぷりまとった熱い舌が、ぷっくりと熟れた粒を優しく弾く。次々と与えられる刺激に、碧は淫悦の涙を流すことしかできなかった。
ぷは、とわざとらしく息を漏らし、兄は弟の胸から顔を上げる。藍宝玉を射抜く朱い双眸には、未だ欲望の焔が燃え盛っていた。
どうする、と問う声が真正面から降ってくる。選択肢など与えられていなかった。己自身が再び芯を持っていることも、薄い肚が獣欲を欲していることも、まだ内部に埋め込まれたままの雄が逞しさを取り戻していることも、全て分かっている。分かっていて否と答えられるほど、今の烈風刀に理性などない。先ほどからの性行為で理知的な頭からは理性など削ぎ落とされ、剥き出しになった本能が主導権を握っていた。本能が何を選ぶかなど、自明だ。
腹に力を込め、ぎゅっと豪槍を抱きしめてやる。不意打ちに、アッ、と少し高い喘ぎがリビングに響く。それだけで胸がすく思いがした。ふふ、と得意気な笑声が漏れ出る。ぐ、と獣が唸るような声が鼓膜を震わせた。
胸に当てられていた手が、再び膝にかけられる。ぐい、と押され、また眼前に結合部が晒された。大業物を根本まで咥え込んだ様が明け空色の瞳に映し出される。あまりにも淫らな光景に――欲望を刺激する光景に、頬が上気するのが分かった。
奥底に潜り込んだままの切っ先が、ゆるゆると動かされる。普通ならば暴かれざる秘めたる襞を刺激され、烈風刀はおんなのような高い声をあげる。抉じ開けられた部分を、硬い先端が執拗に攻める。先ほどのいたずらの罰を与えているようだった。
朱い頭を掻き抱く。こうなった元凶は今抱きついている彼であるのに、碧は目の前の愛する者へと助けを求めるように縋り付いた。幼い子どものようなその姿は、可愛らしくも愚かであった。
ぱちゅん。ずちゅん。淫猥なる響きがリビングに落ちては積もっていく。非日常な淫音が止む気配は当分無い。
畳む
#ライレフ
#腐向け
#R18
#ライレフ
#腐向け
#R18
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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烈風刀「大丈夫? おっぱい揉む?」【ライレフ/R-18】
烈風刀「大丈夫? おっぱい揉む?」【ライレフ/R-18】お題ガチャで出てきたネタがツボったので膨らませた結果。
インターネッツの悪い冗談に惑わされて疲れ切ったオニイチャンを元気づけようと「大丈夫? おっぱい揉む?」って言った結果美味しくいただかれる弟君の話。
なんだか右が疲れてへとへとになっていたので「お疲れさま。…おっぱい揉む?」と言ってしまった左。その瞬間元気になる右。
「おかえりなさい、補習お疲れ様でした。……お、おっぱ…………胸、揉みますか?」
暗く濁った紅緋を見つめ、烈風刀はたどたどしく言葉を紡ぐ。ドサ、と鞄が地面に落ちる音がリビングに響く。それ以降、声が、音が続くことはない。静寂が二人を包んだ。
数日前、勉強の合間の気分転換に行っていたネットサーフィンで、烈風刀は気になる文章を見つけた。
――男を元気にさせるなら「大丈夫? おっぱい揉む?」と言えばいい。
そんな趣味の悪い冗談でしかない一文だが、少年の頭には引っかかるものがあった。具体的には、己たち兄弟、特に兄の性的嗜好についてだ。
兄との性行為では女側の役割を果たす烈風刀であるが、れっきとした男である。女体への興味は人並みにある。特に女性の豊かな胸部に目が吸い寄せられてしまうことは密かながらもよくあることだった。相手にあまりにも失礼なのでできるだけ隠してはいるが、やはり女体の中でもその部位への関心は一際高い。それは兄も同様であることは、同じ男として分かっていた――デリカシーの無い彼がその嗜好を包み隠さず口にするのが原因なのだけれど。
そんな彼相手ならば、この文言はてきめんだろう。事実、彼は女性の豊満なそれだけでなく恋人である己の胸にも多大なる興味を持っている。行為中にまさぐられないことは無いと言っても過言ではないほどだ。肉付きの薄い男の胸など触って何が楽しいのかはさっぱり分からないが、いつも上機嫌で捏ねくり回すのだからよっぽど好きなのだろう。
だから、彼が連日の補習授業で疲れ果てているであろう今日、試してみようと思ったのだ。補習を受けるのは全て兄の日頃の行動によるものであり自業自得だが、疲労困憊といった様子で日々を過ごしている恋人を少しでも元気づけたいと思うのは自然なことだろう。それに、今日はその補習の最終日だ。ひとつのご褒美、疲れを癒やす一助になれば、と少年は件の文言を口にしたのだった。
その結果、目の前に広がる光景は後悔を引き起こさせるものだった。
真ん丸な緋色は更に丸く見開かれている。口も同じくぽかんと開かれており、彼のチャームポイントである八重歯が覗いていた。肩に掛けていた鞄はずり落ち、床にへたり込んでいる。先程まで鞄の取っ手を握っていた腕は、身体の横に力無く垂れ下がっていた。身体は硬直し、棒立ちのまま動く様子は無い。呆然という言葉を体現したような姿であった。
やはり、こんなこと冗談でも言うべきではなかった。少なくとも、ようやく帰宅した者に対して開口一番で言うことではない。胸を揉むか問うなど、あんまりにも淫らではないか。下品だと叱られても当然の物言いである。そんなことを突然言われては、呆然とするのも必然だ。
あぁ、なんて愚かなことをしたのだろう。いくら兄の性的嗜好に合致しているからと言って、口にしていい言葉ではなかった。反省と後悔の念が胸を襲う。猩々緋から視線が逸れ、徐々に床へと向かっていく。己の愚かさに無意識に唇を引き結んだ。
「……すみません、冗談です。突然こんな馬鹿なことを言ってすみませ――」
「いいの!?」
精一杯謝罪の言葉を並べ立てようとするも、それは肩を掴む手によって阻まれた。あまりの勢いの良さに、思わず身体がぐらんと揺れる。力加減など一つもしていないのか、指が食い込んだ箇所が痛みを訴えた。鋭いそれに、思わず顔をしかめる。一体どうしたのだと顔を上げると、キラキラと輝くルビーと視線が交わった。
「え!? マジ!? おっぱい揉んでいいの!?」
燦然と光る炎瑪瑙が、後悔と動揺で淀む藍玉を見つめる。先ほどまで疲労で暗く濁っていたのが嘘のようだ。呆けて開かれていた口の端は上がり、咲き誇るような笑みを形どっている。色濃い陰が差していたその顔は、疲れなど微塵も感じさせない喜色で彩られたものに移り変わっていた。問い質すように、掴まれた肩を強く揺さぶられる。ぐらんぐらんと身体が前後に揺れた。
彼が口にした『おっぱい』という俗っぽい名称に思わず顔をしかめる。しかし、途中までとはいえ先にその後を口にしたのは己だ。咎める資格など持ち合わせていない。ぅ、と喉が詰まったような音を漏らした。
本当ならば胸を揉まれるなど、しかも自ら揉まないかと提案するなど、強い羞恥を呼び起こす行為だ。けれども、言ってしまったものは仕方ない。自ら決意したのだ。今日ばかりは彼の好きにさせよう、と。
「え……、いえ、いい、ですけれど……」
「やったー!」
肩をがっしりと掴んでいた手が離される。そのまま、朱は大きくばんざいをした。天へと手を大きく広げる様は、その胸の内に溢るる喜びを鮮明に表しているように見えた。欲しかったおもちゃを買ってもらった子どものように、やったやったと繰り返す。そのまま小躍りでもしそうな勢いだ。
「立ったままだとやりにくいよな? ソファ行こうぜ!」
聞いたことがないほど弾む声と宝石のように輝く瞳が、動揺で固まった少年を捕らえる。再び肩を掴まれ、くるんと身を反転させられる。そのまま背を押され、ソファの方へと歩みを進めることとなった。
「ぅ、え? あの、ご飯とお風呂は――」
「そんなの後!」
未だ心が乱れ揺れる烈風刀のことなど知らぬとばかりに、雷刀はその広い背を押す。ぐいぐいと押し進める力は強く、歩調が乱れよろけそうになるほどだ。どうにか押す調子に歩みを合わせ、ソファの前へと辿り着く。背に当てていた手を離し、兄は一足先に柔らかな座面に腰を下ろした。足を大きく開き、その中心をポンポンと叩く。ここに座れ、ということだろう。決意の通り素直に従い、彼の足の間へと腰を下ろした。浅く腰掛けるも、すぐに腹に回された手がぐいと引き寄せる。あっという間に己の背と彼の胸との距離がゼロになった。
「ほんとにいいの?」
「…………いい、ですよ。お好きにどうぞ」
最終通告のように問う兄に、弟はしゃんと姿勢を正し答える。背が丸まったままの姿勢では触りにくいだろうと思っての行動だ。変に恥ずかしがって縮こまる方が己の中の羞恥を煽るということは学習している。もちろん、それが兄の性的興奮を煽る要因になることも学習済みだ。今日は性行為をするためではない、彼の疲労を癒やすために行うのだ。変に性欲を煽るのはよろしくない。
「んじゃ、触るな」
ガッチリと腹をホールドしていた腕が離され、そろそろと上がっていく。しばしして、しなやかな指が胸部に触れた。鍛えられ薄く盛り上がった胸筋を、服の上から大きな手が包み込む。まるで胸当てのように全体を覆われた。
宛てがわれていた手がゆっくりと動き出す。薄い肉を掴むように指を曲げ、そのまま徐々に閉じていく。第二関節が少し曲がったところで、指が元通りに伸ばし戻されていく。指が動く度、胸筋の上に乗ったわずかな脂肪が、むにりむにりとやわこく形を変える。フェザータッチとでも言うのだろうか、行為の大胆さに反し動きは酷く優しく、緩慢と言っていいものだ。動きに合わせるように柔らかな布地に皺が寄っていく。胸部にのみ皺が生まれる様はどこかいかがわしいものだった。
ふ、と吐息が漏れ出る。服の上から与えられているとはいえ、刺激は刺激である。胸というすっかり敏感になってしまった部位にこうもじっくり触れられては、どうしても反応してしまう。けれど、この程度の動きで熱を孕んだ反応を示すなど淫乱でしかない。疲れを癒やすのに、そんな淫猥な要素など必要無い。く、と唇を噛んだ。
抵抗しないことから大丈夫だと判断したのか、胸部を包み込む手の動きはだんだんと勢いを増していく。鷲掴むように指が肉に食い込む。すぐさま離され、また強く掴まれる。まるでパン生地を練るかのように、胸筋と薄い脂肪を揉みしだかれる。動きは大胆なものの、痛みは無い。ひたすらに優しいものだ。まさに行為中、前戯を想起させる動きだった。
そんなことをされて、開発されきった身体が反応しない訳がない。声帯が震え、上擦った声をあげそうになる。そんなものを聞かせまいと、少年は両の手で己の口を押さえた。それでも鼻を抜ける甘い呼気を隠すことはできない。ん、と甘えるような音が服が擦れる音の中に紛れた。
刺激に震える烈風刀の様子に気付いたのか、雷刀は小さく笑みをこぼす。己の手によって恋人が可愛らしいリアクションをしているのが嬉しいのだろう。ふふ、という漏れ出るような笑声は、非常に機嫌の良い音色をしていた。
突如、胸部を揉んでいた手が離れていく。もう気が済んだのだろうか。これで少しでも疲れが癒えたならばいいのだけれど。そんな思いは、数秒も経たない内に破られた。
「――んぅ!?」
ぐに、と胸の中心部を押し潰される。とろ火で炙るように刺激されていたためか、胸の頂はすっかりと立ち上がっていた――もちろん、性的興奮によって。そんな状態で敏感な部位を、それも不意打ちで強く刺激されたのだ。声をあげてしまうのも仕方のないことだろう。口元を押さえてなければ悲鳴のような嬌声があがっていたことは必至だ。
尖ったそこを摘まれる。そのまま、ダイヤルを回すようにくりくりと転がされる。服の下にある乳輪をなぞるように、くるくると尖りの周りを指が回る。立ち上がった先端をカリカリと爪で引っかかれる。どれも、前戯で行うもの――性的興奮を煽り、快感を与えるための動きだ。『揉む』という行為からは完全に逸脱していた。
「ちょっ、と! ぁッ、揉むだけじゃないのですか、ぁ!」
「えー? ふつーに、いつもどーりに揉んでるじゃん」
どこがだ、という言葉は短い悲鳴に掻き消された。胸の中心部を摘まれ、そのまま引っ張られたのだ。強い衝撃――快感に、アッ、と甘い声を漏らす。こんな声二度と聞かせまいと、少年は素早く口元を強く手で覆った。
その様子が気に入らないのか、胸元をいじる手はどんどんと過激さを増していく。すっかりと主張する先端を捕らえられ、指先で捏ねるようにぐりぐりと刺激される。指を上下に動かし、尖りを弾く。コーヒーをスプーンで掻き回すように、くるくると周囲をなぞられる。立ち上がったそこを、咎めるようにトントンと爪を立てられる。兄の手によって作り変えられた敏感なる部位が、柔らかい布地の上から嬲られる。明らかに性行為を目的とした動きだった。
どう強く意識しようとも、肉体はそう簡単に言うことを聞いてくれない。耐えようとする理性に反して、ん、ふ、と甘い音が鼻を抜ける。かすかなそれに雄の本能に火をつけられたのか、胸部をもてあそぶ手は止まることを知らない。指の間に尖りを挟まれ、そのまま強く揉みしだかれる。方向性の違う二つの刺激に、脳の奥がぴりぴりと痺れた。
「きもちいい?」
必死に声を抑える中、耳元で兄は囁く。クスクスという心底愉快そうな笑い声付きだ。腹立たしいことこの上ない。
そんなことを問われても、肯定することなどできない。こちらは疲労回復を目的としてこの行為を許したのだ。だのに、こんないやらしい触り方をするなど冗談ではない。それに感じ入ってしまっている自分も然りである。事実がどうであれ、肯定できるわけがなかった。そも、今は口を強く封じ込めているのだ。声を出して返答することなど不可能だ。
なぁ、と問いかける声。含まれた吐息は確かな熱を孕んだものだった。
「直接触ったらもっときもちいいと思うんだけどさ」
どう、と尋ねる声に選択肢など用意されていなかった。直に触らせろという要求、否、命令だ。確かに揉んでいいと言ったが、そこまでさせる気も道理もない。けれども、胸部を覆う手はむにむにと全体を刺激し、思考能力を奪っていく。きもちがいいことばかりを求めるよう、意識を塗り替えていく。気付けば、小さく首を縦に振っていた。
胸部をいじめる手が離される。何で、と無意識に問おうとするより先に、視界がぐらりと揺れた。世界が横倒しになる。すぐさま肩を押され、上に半回転する。完全に座面に背を預ける形となった。
広がった先、視界いっぱいに朱が映し出される。目は愉快そうに三日月型に歪んでおり、大きな口の端は不気味なまでに吊り上がっている。細まった瞳の奥には、確かな情欲の炎が燃え盛っているのが見えた――行為中に見せる、雄の表情そのものだ。
ごくり、と白い喉が上下する。食われる、と本能が訴える。同じく本能は――被食者として幾度も貪られた本能は、食われたいとはしたなく叫んだ。
少し捲れた裾の部分、覗く肌に胼胝が浮かぶ手がそっと添えられる。そのまま、中へと侵入してくる。侵入者は肌をなぞりあげ、服を上へ上へと持ち上げていく。熱が肌を伝い撫で上げていく感覚に、思わず息を呑んだ。
途中で痺れを切らしたのか、裾を掴み、一気に首元まで押し上げられる。現れたのは、日に焼けていない真っ白な肌だ。ところどころ隆起する筋肉が男らしさを感じさせる。盛り上がった筋肉が薄く影を落とす様は、どこかインモラルに見えた。
鍛えられた筋肉と薄い脂肪で盛り上がった胸の頂は、可哀想なほど赤く染まり、ぴぃんと尖っていた。雪の中咲き誇る椿を思い起こさせる光景だ。服の上から散々嬲られた結果である。一連の愛撫に身体が確かな快感を覚えていた証左でもあった。
かぁ、と顔に熱が宿る。直接見なくとも、己の胸部が情けないことになっているのは嫌でも分かる。あれだけ情欲を起こさせるほどいじくられ、兄の手によってすっかり作り変えられた身体が淫らな反応をしないはずがないのだ。現に、己の中心部はボトムスで戒められる苦しさを覚えるほど勃ち上がっていた。たかが、胸部を刺激されただけで。
雷刀もとっくに気付いているだろうに、そこについては全く触れない。触れる気がないのだ。なにせ、今の彼には己の薄っぺらい胸しか映っていないのだから。
覆い被さった顔が近づく。口付けでもされるのだろうか。思わず身構え、目を閉じる。しかし、いつまで経っても唇に何かが触れる様子はない。何故だ、と疑問を覚えるよりも先に、強い性感が身体を襲った。
「っ、ぁ、あッ!?」
胸部、その頂点が熱いもので包まれる。手なんか比ではない。温かな湯に身を浸した時の感覚が近かった。じゅ、と残り少ないジュースをストローで吸い上げるような音が鳴る。同時に、熱を持った部分から甘い痺れが走った。
胸を吸われている。あまりにも突然のことに気付くまで随分と時間を要してしまったが、ようやく現状を把握する。羞恥に顔が赤く染まっていくのが自分でも分かった。
「やっ、雷刀! やめてくださ――ぁアッ!」
抗議のために両の手で朱い頭を押してみるが、どういう理屈なのかびくともしない。どうにか退けようと奮闘する最中、咎めるように頂に柔く歯が立てられた。強い刺激に、目の前がスパークする。快楽信号が脊椎を駆け抜け、脳に叩き込まれる。頭の中が一気に官能に染まった。
先ほどの痛苦を癒そうとするように、舌でぺろぺろと舐められる。舌で押し潰され、弾かれ、転がされる。剥き出しになったもう片粒を寂しがらせないように、空いた手が触れる。舌で行うそれとは違う刺激が脳髄に叩き込まれた。
同時に二箇所も、それも違う風にいじくられ、快楽漬けにされた脳味噌が処理しきれるはずがなかった。許容量を超えた淫悦を逃がそうと、口からとろとろと甘い嬌声があがる。あまりにも卑猥なそれは聞き難いもので、思わず耳を塞ぎたくなる。もうそんな音は漏らすまいと、再び両手で口を強く塞いだ。
それが男心に火をつけたのだろう。攻め立てる手はどんどんと強くなっていった。口が離され、今度はもう片方の頂点を吸われる。わざと聞かせているであろうちゅうちゅうという音が、耳から思考を犯す。つい先ほどまで口で愛し唾液でぬるついた赤い粒を、指がぐにぐにと潰し転がす。ピン、と指で弾かれた瞬間、呼吸のために開け放たれた鼻から、ン、と高い音が抜ける。その反応に気を良くしたのか、ふ、と笑い声を漏らしたのが聞こえた。その些細な振動すら、今の身体は快楽を拾った。
きゅう、と肚が鳴き声をあげる。内で燃え盛る情火はどんどんと勢いを増し、天を衝かんとする。下半身に集まった欲望が、限界を叫ぶ。もう吐き出してしまいたい、と。
嘘だ。絶望が少年を襲う。ただが胸を捏ねくり回されただけで、ここまで官能に支配されるなど初めてだった。直接触れられずにここまで張り詰めるなど初めてだった。限界を訴えるなど初めてだった。赤くなった顔から血が引いていく。天河石の瞳が大きく見開かれた。
胸だけで達する。未知への恐怖が、快楽で染め上げられた頭に芽吹く。口を塞ぐ両手を離し、烈風刀は引き剥がそうと己が胸に顔を埋める兄の頭をぐいぐいと押す。反対に、しがみつくように顔を押しつけられるだけだった。ならば蹴飛ばそうと試みるが、足と足との間に入られた現状ではそれは叶わなかった。
「やっ、やだっ、らいとっ! や、め……ァっ、やだ……、だ、めぇ、です! も、むりぃ!」
駄目だ。これ以上は駄目だ。頭が悲鳴をあげる。悦びの声を殺すのも忘れ、碧は叫び限界を訴える。翡翠の瞳から、恐怖と快楽に染まった雫が流れ落ちた。
そんなことなど知るかと言わんばかりに、雷刀は攻める手をやめない。乳飲み子のように吸い付き、おもちゃで遊ぶように指を動かす。キャパシティが限界を迎えようとしている少年を追い立てるのは容易だった。
生温かいものに包まれた粒に歯が立てられる。唾液でぬめる尖りにぐいと爪が押し当てられる。瞬間、視界が真っ白に染め上げられた。脳の奥の方がバチバチと音をたてる。きゅん、と肚の奥が悦びの鳴き声をあげた。
「ぁ、あ、あァッ!」
ビクン、と身体が跳ねる。背が弓なりにしなる。図らずとも、兄に胸を押し付ける形となってしまった。まるでもっといじめてくださいと主張するような動きだ。応えるように、じゅ、と今一度強く吸われる。恐ろしい追撃だった。身体中を電流が走り抜ける。涙で滲む視界が白んだ。
中心部に生温かいものが広がっていく。気をやったのだ、と呆けた頭で理解した頃には、胸部から雷刀は去っていた。再び視界が朱に染まる。にまりと歪んだ弧を描く口元は、涎でベタついていた。
「おっぱいだけでイった?」
ニマニマと憎たらしい笑みを浮かべた口が言葉を紡ぐ。わざといやらしい言葉を選んで問うてくるのが腹立たしい。しかし、答えるのも、不快さを訴えるのも、今の烈風刀にはできなかった。長時間じっくりと胸をまさぐられ、容赦なく官能を叩き込まれた脳は、再起動まで時間を要した。
答えを聞かぬまま、雷刀は弟のボトムスに手をかける。そのまま、下着ごと全て剥ぎ取った。濡れた股ぐらが顕になる。精液が滴るそれは淫らの一言に尽きた。
不快感が取り払われるとともに、寒気を覚える。濡れた場所がいきなり外気に晒されたのだから当たり前だ。同時に、危機感を覚える――否、これは期待感だ。まだ足りないと泣き叫ぶ肚が満たされるであろう未来への想望だ。
「ら、らいと……、だから、もむだけ、じゃ――」
「これだけで足りんの?」
呂律の回らない口で、抗議の声をあげる。形式ばかりのものだ。胸に宿るこの先の行為へのときめきは隠しきれていないというのに、頭にしぶとく残っている素直でない部分は体裁を取り繕おうとするのだ。なんとも愚かであった。
そんなことなどとうに見破っている朱は、再び問いかける。どこか嘲るような響きだった。答えを分かっていての問いだ。足りるはずないだろう、もっと先が欲しいだろう、頭から爪先まで全て食い散らかされたいだろう、と。情欲の焔が燃え盛る瞳はそう訴えていた。
濡れそぼつ雄茎に手がかけられる。そのまま、揉むように上下に擦られる。鮮烈な快感が一気に脳に叩き込まれた。ヒ、と喉が引きつった音をたてる。ぬちぬちと水っぽい音がリビングに響く。日常を過ごす場に相応しくない卑猥な響きだった。
「オレは足りねーし、もっと欲しい。シたい」
分かりきった答えを聞くより先に、雷刀は宣言し行動に移す。顕になった白い足を割り開き、膝を折り曲げさせる。そのまま、座面につくほど深く押さえつけた。腰が持ち上がり、必然的に眼前にゆるく勃ち上がり始めた己自身が晒される。ライトの光を受けてらてらと輝く姿に、顔に血が上ってくるのが分かる。お前はこれだけ淫乱なのだぞ、と見せつけられているような心地だった。
節の目立ち始めた指が、真っ赤な口の中に吸い込まれる。数秒、唾液をたっぷりとまとったそれが姿を現す。これから何が起こるかなど、何をされるかなど容易に分かる。だって、何度も見た光景なのだから。
秘められた――今は兄の目の前にはっきりと晒されている蕾に、ぬるつく指が押し当てられる。幾度も兄自身を飲み込んだそこは、期待するようにひくついていた。
濡れた指先がくるくると縁をなぞる。皺一つ一つを伸ばすような動きに、羞恥が込み上げる。欲望に忠実な窄まりは、誘うようにはくはくと口を開けた。
つぷ、と淫靡な音をたてて指がナカへと這入っていく。隘路が割り開かれていく感覚に――待ち望んだ感覚に、白い身がふるりと震えた。
侵入者はゆっくりとした足取りで奥へと進んでいく。第一関節まで潜り込み、爪の根元まで戻る。また潜り、退いていく。解すための丁寧な動きだが、浅い部分を何度も繰り返し擦られ、身体は従順に反応を示す。待って、行かないで、と泣き縋るようにきゅうきゅうと指を締め付ける。あやすようにとんとんと内壁を突かれ、ぁ、あ、と細い声が漏れ出た。
時折雷刀は口を開け、だらしなく舌を垂らす。つつ、と滴る唾液が指を受け止めた秘所に落ちる。何度も潤滑油代わりのそれを継ぎ足していく。くちくちと小さな水音が部屋に響いた。
第一関節、第二関節と段階を踏んで潜っていく侵入者が、とうとう根本まで這入りこむ。奥を暴かれる悦びに、内部はぎゅっと抱きしめ歓待した。応えるように、鈎状に曲がった指がうちがわを擦る。イイ部分を直接刺激され、碧は法悦の涙をこぼした。もっと、とねだるように無意識に腰がくねる。あまりにもはしたなく、あまりにも猥褻であった。
一人だった侵入者が、二人、三人と数を増やしていく。三人揃って弱い部分をぐっと強く押される。バタ足をするようにバラバラと動き、内部を掻き回される。曲がった指先が、内壁を同時に三箇所擦り上げる。達したばかりの身体にはあまりにも強い刺激だった。雄を受け入れるために解す行為、つまり準備段階でしかないというのに、すっかり敏感になった身はそれだけで気をやってしまいそうな心地だった。反対に、これだけでは足りない、というはっきりとした意識もあった。こんな指なんかじゃ足りない、もっと逞しいモノに蹂躙されたい、と浅ましい肚が叫んだ。
「ぁっ、やっ、らいと、ぉ」
待ちきれないとばかりに愛おしい人の名を紡ぐ。快楽から逃れようと、藻掻くように座面を引っ掻く。そんなものに意味などない。ただ、恋人を煽るには十分だったらしい。ぐ、と息が詰まる音が降ってきた。
侵入者が性急にナカから去っていく。未練がましく締め付けていたためか、抜き出る瞬間、つぷん、といやらしい音がたった。短く小さなそれは、二人の荒い吐息に掻き消された。
ゴソゴソと衣擦れの音。しばしして、折った膝を強く押された。ぐ、と腰が持ち上がる。眼前に涎をこぼす己自身と解れきった秘蕾が晒された。浅ましいにも程がある光景に思わず目をつむりそうになる。けれども、差し込んだ影がそれを阻んだ。
ひくつく後孔に、熱いものが触れる。雷刀自身だと気付くのはすぐだった。なにせ、宛がわれている光景が目の前に広がっているのだ。硬く勃ち上がった雄の象徴が、柔らかに綻んだ秘めたる場所にずりずりと擦り付けられる。今からここに挿入れるのだぞ、と宣言されているようだった。
はー、はー、と荒い息が漏れる。涙で濡れた碧は、先走りを塗り込むように動く肉茎に釘付けになっていた。とろけきった瞳には、愛する人に蹂躙されることを待ち望む色がはっきりと浮かんでいた。
はくはくと綻ぶ狭穴に、剛直の先端が宛がわれる。熟れきった切っ先が、ゆっくりと中へと這入り込んでいった。
「ぅ、あ……」
入念に解されたとはいえ、先ほどまでの侵入者は所詮細い指であった。そんなものとは比べものにならないほど太いモノが、狭い道を拓いていく。身体の中を無理矢理拡張されれば、多少なりとも苦しみを感じるはずだ。しかし、今の烈風刀の頭には官能と幸福しかなかった。空白がどんどんと埋められていく感覚に、少年は無意識に口元を緩めた。
細い肉の道が、一番太い部分まで飲み込む。頭に続き、幹が内部をゆっくりと埋めていく。先端が弱い部分を掠め、少年は悦楽にとろけた声をあげる。縋るように強く締める肉を、逞しい茎が割り開かれていく。長い時間をかけ、巨大なる侵入者がやっと根本まで這入りこんだ。それでも足りないとばかりに、ぐっと腰を押し付けられる。上から体重をかけて突き立てられ、碧はぁっ、と短く声を漏らす。涙が白い頬に透明な筋を作った。
ずず、と欲望が徐々に去っていく。張り出た部分がごりごりと内壁を擦る。内部を刺激される快びと埋められたものがいなくなる寂しさが胸を襲う。再び座面に爪を立てる。引っかかれた布地がかすかな音をたてた。
雄の証は隘路の半ば頃で動きを止めた。中途半端に埋められた感覚に、もどかしさに、細い腰がゆらゆらと揺らめく。卑猥なる光景を前に、目の前の赤い口が三日月を描いた。
「ッ、ひっ、ぃ! あっ!」
しゃくりあげるように雷刀は腰を動かす。コツンコツンと腹側の弱い部分を硬い先端で突かれ、烈風刀は淫悦の泣き声をあげた。敏感なる粘膜を擦り上げられる度、膨大な快楽が生まれる。悦びを示す電気信号が、次々と頭に叩き込まれる。受容する器官がバチバチと危機感を覚える音をたてた。弱点とすら言える箇所を執拗に攻め立てられ、少年は耐えられないとばかりに頭を振る。浅葱の髪がバサバサと乱れる。汗ばんだ肌に美しい碧が張り付く様は艶めかしいものであった。
膨れた部分をひたすらに擦り上げていた槍が動きを止める。ずずず、と去り、傘の部分が縁に引っかかるような位置で停止する。突如止んだ猛攻に、怒張が引いた位置に、少年は身を固くする。快楽にとろけた頭でも、これから何が起こるかぐらい簡単に分かる。ボロボロと涙をこぼし、拙い動きで頭を横に振る。思考とは正反対に、薄い肚は与えられるであろう快楽を待ちわびきゅんきゅんと疼いた。
ばちゅん、と肉と肉が打ち付けられる音がリビングに響く。ずぬぬぬ、と肉の刃が一気に鞘の中へと収まっていく。ナカ全体を勢いよく刺激され、碧は悲鳴をあげる。苦しみや痛みによるものではない、悦びに溢れたものだった。
張り詰めた先端が秘められた襞をこじ開けるように小突く。真上からの体重を掛けたピストンは一撃一撃が重く、身体中に響くようだった。鍛えられた腹に杭の形が浮かんでしまいそうなほどの勢いと衝撃だ。突き破られてしまう、とあり得ない恐怖が頭の片隅に生まれる。すぐさま官能が塗り潰し消し去った。
「ぁっ、あ、ぅ……ぅあ、あっ」
浅海色の瞳は、目の前の光景に――己が孔穴に恋人自身が幾度も出入りする光景に釘付けになっていた。普段なら目をつむって逃げてしまうそれから、今は目が離せない。丹念な愛撫で昂ぶった身体は、コントロールが効かなくなっていた。ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な音があがる。この肚に兄の体液がたっぷりと塗り込められているという証である。
ぷちゅん。ぬちゅん。非日常な淫音が日常を過ごす空間に響く。その背徳感は興奮を煽るスパイスでしかない。ソファという普段と違う場所で睦み合っているという事実も、服を着たまま獣のようにまぐわっているという事実も、二人の情欲の炎に薪をくべるだけだった。
聴覚、視覚、触覚。五感の内の三つも支配されている現状は、脳の処理能力を超えていた。できることなど、とろけた嬌声をあげるぐらいだ。快楽の解放先を求め、カリカリと座面に爪を立てる。見かねたように腕を取られ、目の前の首へと回される。ようやく縋るものを見つけ、少年はぎゅっとその首に抱きついた。汗の、兄の匂いが鼻先を掠める。それだけで肚の奥で燃え盛る火が大きくなった。
ばちゅん、ぐちゅん、と猥雑なる響きがどんどんと激しさを増していく。兄の腰使いも勢いづき、早くなっていく。柔らかな肉洞が、雄の形に広げられ、擦られ、法悦を叫んだ。
知っている。何度も経験したことだ。つまり、射精が近いのだ。この肚に種を植え付けられる時が迫っているのだ。待望の時間に、きゅんと肚の奥底がときめく。早くくれ、とばかりに、うちがわは蹂躙者に絡みついた。ぅあ、と熱のこもった吐息が耳に直接注ぎ込まれる。兄が確かな性感を覚えている証拠だ。己の硬く薄い身体で愛しい人が快楽を得ているという喜びが胸の内に湧く。
「らいとっ、らい、とぉっ」
歓喜と愛しさを表すように、碧き少年は幾度も愛する人の名前を呼ぶ。溢れる唾液でどろどろになった口は、拙い響きしか奏でられない。しかし、それは雄を煽ったらしい。膝を押さえつける手に更に力がこもった。
れふと、と名を呼ばれる。熱に溺れた声だった。情火が燃え盛るガーネットの瞳が、濡れたエメラルドを射抜く。捕食者のそれに、座面に押さえつけられた背が震える。恐怖だけでない、確かな悦楽があった。愛する雄に残らず食われる悦びは、少年の身体に幾度も刻まれていた。
ごつごつと音が響きそうな勢いで、肉刃が洞の最奥を突き上げる。奥底を守る襞を執拗に小突かれ、少年は上擦った声をこぼす。奥の奥を暴かれる悦びも、とっくの昔に身体に刻み込まれていた。更なる奥地に誘おうと、内部が蠕動する。うねる狭道に誘われるように、締め付ける内壁から逃げるように、雄は肚を穿つ。咥え込んだ後孔がめくれ上がってしまいそうな勢いだった。
ごちゅん、と腰骨がぶつかる重い音が響き渡る。瞬間、最奥を守る襞が硬い切っ先によって打ち破られた。隘路のその先、更に狭き道を張り詰めた頭が割り広げる。蠢く肉道が侵入者を殊更強く抱きしめた。
視界が真っ白に染まる。脊髄を鋭く多大な電流が走っていく。バチン、と脳が限界を迎える音が聞こえた気がした。
「ヒ、ぃっ、あッ――あああああッ!」
完全に許容量を超えた刺激に、烈風刀は高い悦楽の悲鳴をあげる。びゅくびゅくと彼自身から白濁液が吐き出された。服が捲り上げられた胸に、白い化粧が施される。日に焼けていない白い肌を、熟れた赤い果実を濁った雫が汚す様は、卑猥の一言に尽きた。
奥底を暴かれ達した身体は、ビクビクと痙攣する。雄杭を受け入れた肉筒がぎゅうと締まる。最奥の守護者である襞が、熱く柔らかな内壁が、ぷくりと熟れた縁が、雄の象徴を抱きしめる。もうとっくに到達したというのに、更に奥へと誘うように蠢き敏感なる部位を撫で上げた。
ぅあ、と苦しげな声が降ってくる。瞬間、肚の奥に熱いものが注がれた。マグマのような劣情の迸りが、狭き洞を満たしていく。うちがわ全てを焼かれるような心地だった。同時に、言葉にならないほどの多幸感が胸を埋めていく。長らく待ち望んだ温度に、少年はあ、ぁ、とか細い嬌声をこぼす。幸福に満ち溢れた音色は、確かな悦びを謳っていた。
低い喘ぎを零しながら、雷刀はカクカクと腰を細かく動かす。一つ残らず注ぎ込み、奥の奥まで種を塗り込め植え付ける動きだった。その行動が実ることはないと理解している。しかし、雄としての本能がそうさせたのだった。
荒い息が二つ重なる。流れる汗が、溢れる唾液がソファの座面に暗いシミを作る。激しい情交は二人の体力を多大に削っていた。それでも朱の手は未だに碧の膝を鷲掴み、座面に押し付けている。獲物を逃すまいとする捕食者の行動だ。
潤んだ燐灰石が、薄く涙を湛えた柘榴石を見上げる。どこかぼやけながらも熱烈な視線に、朱は笑みをこぼす。何が言いたいのかは言葉にしなくとも分かった。
開いたままの口をべろりと舐められる。人懐っこい犬のような行動に、自然と目元がゆっくりと垂れ下がる。己も舌を出し、ぺろぺろと舐めるそれをちょんと突く。すぐさま赤いそれに絡め取られた。舌と舌とがもつれあい、艶めかしい即興のダンスを踊る。踊り終え離れた瞬間、今度は唇と唇が重なった。即座に熱の塊が口内に這入り込んでくる。愛しいそれを真正面から受け止めた。
くちゅくちゅと水音が合わさった唇から漏れ出る。ん、ふ、と甘ったるい音が鼻を抜ける。幸に染まった響きをしていた。
音をたてて交わっていた唇が離れる。内部で抱きつきあっていた赤たちも、ぬるりと擦れながらも身を離した。透明な糸が愛しあう二人を繋ぐ。頼りないそれは、すぐさま切れて消えた。
「……むねを、もむ、だけって……いったでは、ない、ですかぁ……」
涙でしとどに濡れた水宝玉が、未だ炎灯る紅玉髄を睨めつける。確かに好きにしろとは言った。けれども、それはあくまで『胸を揉む』という行為の中での話だ。そのままもつれこみ、肌を重ねていいなどとは一言も言っていない。だのにこれである。烈風刀が不満を訴えるのも無理はなかった――抵抗せず大人しく食われた己にも責任があるということは、聡明な彼自身気付いているのだけれど。
碧の鋭い視線に、朱はぅ、と言葉を詰まらせる。素直に非を認めたのか、ごめん、としょげた謝罪の言葉が降り注いだ。
「だって烈風刀きもちよさそうだったし……つい……」
「『つい』もなにもありませんよ……」
責任転嫁するような物言いに、烈風刀は呆れの声を漏らす。はぁ、と濡れた口元から重い溜め息が漏れる。うぅ、と唸り声がソファに落ちた。
「でもさぁ、烈風刀だっておっぱい揉まれてきもちよかっただろ?」
こうやってさ、と雷刀は押さえつけていた膝から手を離す。ニィと口角がいたずらげに吊り上がった。
服を捲りあげられたまま、ずっと晒されていた胸元に、大きな手が伸びる。胸に散った白を掬い、塗り込めるように頂をくりくりと転がされる。背筋を走る鋭い性感に、少年はヒッ、と短い悲鳴をあげた。垂れた唾液をまぶすように胸全体を包み込み、むにむにと揉まれる。優しいその手付きはいやらしいもので、晴らされたはずの情欲を再び掻き立てるには十分だった。
「ちょ、と、やだっ、らいと! だめですってば!」
「えー? 『揉む』なら好きにしていいって言ったじゃん」
抵抗の声をあげるも、相手はわざと言葉を歪めて解釈し、手を止めようとしない。盛り上がった胸部全体を手で包まれ、揉みしだかれる。薄い胸が指の通りに形を変えた。
だめ、だめ、と駄々っ子のように首を横に振る。突き飛ばしてしまいたいはずなのに、鍛えられた腕は愛しい人に縋り抱きついた。まったくの逆効果である。
ピン、と膨れ上がった尖りを指で弾かれる。瞬間、視界に光が瞬いた。情火に炙られとろけきった脳が、鋭い電気信号を受けバチバチと火花を散らす。細く上擦った喘ぎがリビングに響き渡った。
肚の奥に炎が宿る。愛しい熱をたっぷり注がれ満足したはずのそこが、もっとくれと泣き声をあげ始める。胸だけでは足りない、もっと熱が欲しい、全て食らい尽くされたい、と淫らな欲望を叫んだ。
気付けば、再び胸部を雷刀の口が包んでいた。乳飲み子が母乳を求めるように、ちゅうちゅうと吸い付く。唾液をたっぷりまとった熱い舌が、ぷっくりと熟れた粒を優しく弾く。次々と与えられる刺激に、碧は淫悦の涙を流すことしかできなかった。
ぷは、とわざとらしく息を漏らし、兄は弟の胸から顔を上げる。藍宝玉を射抜く朱い双眸には、未だ欲望の焔が燃え盛っていた。
どうする、と問う声が真正面から降ってくる。選択肢など与えられていなかった。己自身が再び芯を持っていることも、薄い肚が獣欲を欲していることも、まだ内部に埋め込まれたままの雄が逞しさを取り戻していることも、全て分かっている。分かっていて否と答えられるほど、今の烈風刀に理性などない。先ほどからの性行為で理知的な頭からは理性など削ぎ落とされ、剥き出しになった本能が主導権を握っていた。本能が何を選ぶかなど、自明だ。
腹に力を込め、ぎゅっと豪槍を抱きしめてやる。不意打ちに、アッ、と少し高い喘ぎがリビングに響く。それだけで胸がすく思いがした。ふふ、と得意気な笑声が漏れ出る。ぐ、と獣が唸るような声が鼓膜を震わせた。
胸に当てられていた手が、再び膝にかけられる。ぐい、と押され、また眼前に結合部が晒された。大業物を根本まで咥え込んだ様が明け空色の瞳に映し出される。あまりにも淫らな光景に――欲望を刺激する光景に、頬が上気するのが分かった。
奥底に潜り込んだままの切っ先が、ゆるゆると動かされる。普通ならば暴かれざる秘めたる襞を刺激され、烈風刀はおんなのような高い声をあげる。抉じ開けられた部分を、硬い先端が執拗に攻める。先ほどのいたずらの罰を与えているようだった。
朱い頭を掻き抱く。こうなった元凶は今抱きついている彼であるのに、碧は目の前の愛する者へと助けを求めるように縋り付いた。幼い子どものようなその姿は、可愛らしくも愚かであった。
ぱちゅん。ずちゅん。淫猥なる響きがリビングに落ちては積もっていく。非日常な淫音が止む気配は当分無い。
畳む
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