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No.114
お祭り騒ぎを君と【レイ+グレ】
お祭り騒ぎを君と【レイ+グレ】
浴衣グレイスちゃんクルーかわいい~~~~~~レイシスちゃんとお祭り行って遊んで~~~~~~!
となったので書いた話。レイグレ姉妹がお祭りで遊ぶだけ。
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おそるおそる目の前の雪色にかじりつく。ふわふわとしたそれは、甘みを残してすぐさま消えた。
初めての感覚に、少女は目を見開く。不思議な感覚を追い求め、もう一口。細い棒にくるくると巻かれた飴の糸は、舌に触れた瞬間しゅわりと解けて消えていく。口内に残る甘さは砂糖の塊らしく強いものだが、不思議としつこさはなかった。
躑躅の瞳をキラキラと輝かせ、グレイスはもそもそと綿飴との格闘を続ける。ふわふわとした柔らかな感触と時折訪れるパリッとした食感に、少女は一瞬にして魅せられていた。
「口の周り、ベタベタになっちゃいマスヨ」
小ぶりな綿菓子が姿を消し始めた頃、隣から優しい声が降ってくる。はっと見上げた先には、穏やかな笑みを浮かべたレイシスがいた。ハイ、と差し出された手には、ウェットティッシュの袋があった。どうやら、夢中になって食べていた様子をずっと見られていたらしい。それも、口の周りを汚すような幼稚な様を。
始終を見られていた羞恥に、少女は頬を赤らめ、笑みから逃げるように視線を下に落とす。ありがと、と呟くように礼を言って一枚受け取る。すぐさま砂糖の残滓が残る口元を強く拭った。
「綿飴食べるのって難しいデスヨネ。すぐにベタベタになっちゃいマス」
ふわりとこぼし、レイシスは手にしたりんご飴を一口かじった。パリッと赤い薄飴が割れる音と、シャクッと硬いりんごが噛み砕かれる音が、雑踏の中に舞って消えた。未だ頬を染めたグレイスも、その色付いた顔を隠すように綿飴にかじりつく。今度は汚さぬように注意し、そっと口に運んだ。白い雲が口内でしゅわっと溶けゆく。何度体験しても面白いものだ。
「あっ、グレイス! アレ! ヨーヨー釣りやりマショウ!」
白い綿菓子と赤いりんご飴が姿を消し、支柱だった割り箸がゴミ箱に放り込まれた頃、はしゃいだ声が己の名をなぞった。返事をするより先に、細く小さな手が強く握られる。そのまま手を引かれ、スピネルの瞳が驚きにぱちりと瞬いた。ちょっと、と制止の声をあげるより先に、妹の手を取った姉は人混みを掻き分け足早に歩みを進める。下駄の軽快な足音が互い違いに響いた。
ひしめく人の間を縫い歩き、少女らは『ヨーヨー釣り』と太い文字が描かれた垂れ幕が下がる屋台へと向かう。辿り着いたそこには、小さなビニールプールが置かれていた。心なしか普通のものより深く見えるそれには、色とりどりの水ヨーヨーが浮かんでいる。いくつもの鮮やかなドットが描かれたもの、夜空を描いたように星が散るもの、流水の中を金魚が泳ぐもの、色とりどりの線が走るもの。様々に彩られた小さな風船が、作られた海の中を漂っていた。
躑躅色が白熱灯に照らされた水風船たちを見つめる。小さな腹いっぱいに水と空気を詰め込んだそれらは、満月のように真ん丸で、ちょうど手のひらに収まるようなサイズが愛らしいものだ。表面に浮かぶ雫が光を受けてキラキラときらめく様は、雨上がりの傘が陽に照らされる様子に似ていた。
二人分お願いしマス、という弾んだ声に、グレイスははっと顔を上げる。急いで向けた視線の先には、にこやかに笑うレイシスがいた。ハイ、という声とともに、細く白い何かが手渡される。反射的に受け取って瞬き数拍、少女はどこか気まずげに礼を述べた。
手渡されたのは、緩くねじられたこよりの先に小さく細いかぎ針が付けられたものだった。一体これをどう使うのだろう。マゼンタの瞳が瞬き、細い首が傾げられる。横目で姉を見やる。購入者である彼女ならば、確実に使い方を知っているだろう。実際に見るのが早い。
桃の少女はこよりの先端を持ち、針の先端をヨーヨーたちが浮かぶプールへそっと沈める。水面に浮かんだ丸いゴム紐に、曲がった針が慎重な様子で通される。そうっと細い釣り竿を持ち上げると、紐の先に繋がった水ヨーヨーが宙に浮かんだ。
ヤッタァ、とはしゃぐレイシスの声と、お嬢ちゃん上手いねぇ、という売り子の声が狭い屋台に響く。薔薇色の少女の手には、白地に緑の縞模様と青い丸が彩られた――学園でよく見かける丸い猫を模したものだ――小さな水ヨーヨーがすっぽりと収められていた。
なるほど、そう使うのか。心の中で頷き、少女も隣で喜ぶ彼女をまねてそっとこよりの先を水に沈める。すすす、と水中をゆっくりと移動し、目当てのものに繋がるゴム紐へと針を引っかけた。きゅ、と紙の釣り竿を持つ手に力が込められる。ゆっくり静かに持ち上げるも、水を吸った頼りない紙紐は音も無く切れてしまった。パシャ、と水風船が水面に落ちる無慈悲な音が大きく響いた。
「もう一回!」
急いで財布から硬貨を取り出し、グレイスは売り子に勢いよく突き出す。はい、と愉快そうな声とともに、頼りなさげな釣り竿と三枚の硬貨が交換された。
真剣な光を宿したアザレアが、水面をじぃと見つめる。先ほどはこよりを水に沈めてから適当に獲物を定めたのが悪かったのだろう。千切れにくくなるよう、水分はなるべく吸わせないのが吉のはずだ。姉のように、取りたいものを選んでからこよりを――否、針部分だけを沈めるのがいいだろう。
色とりどりの水ヨーヨーが浮かぶ海を見渡し、いっとう好みのものを見定める。見初めたそれから伸びるゴム紐は、運悪く多くのそれと交わり紛れてしまっていた。この混線具合では、目的のものをたぐり寄せられるか分からない。一か八かだ。
神経を研ぎ澄ませ、少女はそっと針を水に沈める。刹那の迷いの末、真ん中に浮かぶゴム輪に細いそれを通した。また千切れてしまわぬように、そっと、そうっとこよりを持ち上げる。するすると水面を撫ぜるゴム紐の先には、己が欲していた黒い真ん丸があった。心を落ち着け、ゆっくりと腕を上げていく。今度こそ、透明な海の上から水ヨーヨーが引き上げられた。
こよりが千切れてしまうより先に、店主が小さな風船を器に取り上げる。おめでとう、と差し出されたそれは、水滴をしたたらせキラキラと輝いていた。少女の顔が、同じほどぱぁと輝く。ついに捕まえた愛しの真ん丸を愛おしそうに両の手で包んで受け取った。
「取れた!」
「おめでとうございマス!」
溢れ出る嬉しさのあまり、妹は隣に屈む姉の方へ顔を向ける。妹がこれだけ楽しんでくれたのが嬉しいのだろう、彼女も負けないほど満面の笑顔を咲かせていた。晴れやかなその表情を見て、躑躅ははっと我に返る。なんという反応をしてしまったのだろう。これでは幼い子どものようではないか。湧き上がる羞恥心に、柘榴石の視線は急いで地へと吸い込まれていった。
「お揃いデスネ」
これ以上になく弾んだレイシスの声に、グレイスはぱちぱちと瞬きをする。地面に向けられていた視線が、己の手のひらへと戻っていく。白いたなごころに包まれた水風船は、学園で時折見かける黒く丸い猫を模したもの――姉がつい先ほど吊り上げたそれと色違いのものだ。気づかぬ内に、お揃いのものを選んでしまったらしい。かぁ、と少女の頬に朱が広がっていく。
「……たまたまよ」
「TAMA猫だけにデスカ?」
「違うわよ!」
飛んできた軽口に、勢いよく返す。妹の覇気など気にする様子もなく、姉は楽しげにころころと笑った。無意識にお揃いのものを選んでしまった羞恥と、姉とお揃いのものを手に入れた喜びが、少女の胸をぐるぐると掻き回す。心底楽しげな薔薇に抗うように、躑躅はふん、と鼻を鳴らして顔を背けた。
ありがとうございマシタ、とにこやかな笑みを浮かべた店主に礼を言い、レイシスは浴衣の裾を捌いて立ち上がる。ワンテンポ遅れ、グレイスも立ち上がる。何も言わずとも――言ってもどうしようもないと学習していた――白い手と手が重なった。
「次は何をしマショウカ」
焼きそばニ、たこやきニ、射的ニ、かき氷ニ、とレイシスは指折り数える。食べ物ばっかりじゃない、とのグレイスの指摘に、彼女はえへへとはにかんだ。
「ダッテ、お祭りでしか食べられないじゃないデスカ」
「家で作れるでしょ?」
「お家で作って食べるのと屋台で買って食べるのは違うんデス!」
ぐっと拳を握りしめて力説する少女に、思わず圧倒される。そうなの、と返すのがやっとだった。そうナンデス、と力強く言われては、もう否定する言葉など消え失せてしまった。
「グレイスはどれがいいデスカ? 何でも買ってあげマスヨ!」
「自分で買うわよ。ちゃんとお小遣い持ってきてるんだから」
ぐっと拳を握りしめ息巻き胸を張る姉に、妹は眉を寄せて返す。眇められたラズベリルには、喜びと申し訳なさと悔しさがない交ぜになった複雑な色が浮かんでいた。
一緒に夏祭りに行きマショウ、と誘ってきたレイシスは、何かにつけてグレイスに物を買い与えようとしてきた。誘った側だからこれぐらいはしたい、と彼女は言うが、絶対にただの建前だ。姉らしく妹を甘やかしたいという彼女の考えは、新たな生を受けたしばらく経った少女にだって分かる。
高校二年生の財力なんてたかがしれている。彼女の懐事情のことも考えて、本来ならば強く拒否するべきだ。けれども、あの鮮やかに咲く花のような笑顔を向けて迫られると、いつも息が詰まってしまい断るのが厳しく思えるのだ。結果、綿菓子と型抜きと水ヨーヨーを買い与えられた今に至る。
せっかく、ちゃんと不自由なく遊べるようにお小遣いを持ってきたのに。躑躅の少女は唇を尖らせる。姉に甘やかされるのが心底嫌だ、と言えば嘘になるが、こんな風に幼い子どものように甘やかされるのはどうにも不服だ。自分は、彼女が思っているほどこどもではないのだから。
対等でありたい。
言葉にするならこうだろうか。過度に甘やかされることなく、互いに思い遣りあって、共に並んで、語り合える。そんな関係を夢見るが、『妹』という認識がまだまだ強い今は難しいだろう。く、と赤い唇が強く噛み締められた。
「……じゃあ、あれ」
わだかまる感情を隠しきれぬ声音で、グレイスは少し先を指差す。数人の子どもがたむろしている屋台には、青に白の波模様が映える布地に『かき氷』と赤い文字で大きく描かれていた。
「かき氷! いいデスネ!」
ぐっと拳を握りしめ、レイシスは楽しげな声をあげる。先ほど彼女が挙げた候補に入っていただけあってか、楽しみにしていたようだ。早く行きマショウ、と手を引かれ、少女らは白熱灯に照らされる屋台の元へと駆けていった。
狭い屋台の中には、大きな電動かき氷器と様々なシロップが並んでいた。赤、緑、青、黄、紫。まるで虹のように鮮やかな色の液体が入った瓶が並んでいる。机には『シロップかけ放題』というポップが飾られていた。どうやら、購入者が己でシロップをかけるのがこの屋台の方針らしい。
「ジャア、二つ分――」
「一つでいいでしょ。私は自分で買うんだから」
指を二本立てたレイシスを尻目に、グレイスは店主に硬貨を差し出す。一つお願い。あいよ。短い言葉と金銭が交わされた。
「買ってあげるノニ」
頬を膨らませ、薔薇の少女は躑躅を見つめる。紅水晶の瞳は、不服そうに細められていた。はぁ、と溜め息をこぼし、あしらうようにひらひらと手を振る。
「自分で買えるんだからいいわよ。で、貴方はどうするの?」
「ワタシも! おじさん、一つお願いしマス!」
手を上げ元気よく言う少女に、店主はちょっと待っててな、と返す。機械は一台しかないのだから、仕方が無いだろう。ハーイ、と桃色は手に持った水ヨーヨーをぷらぷらと揺らして遊んだ。
下部が大きく開かれた機械に、発泡スチロールでできた白い容器がセットされる。年季の入ったボタンが押されると、ガガガ、と大きな躯体が盛大な声をあげ始めた。しばしして、削られた細かな氷がカップの中に降り注いだ。豪快な音とともに、輝く氷が雪のように降り積もっていく。あっという間に、容器には氷の山ができあがった。端に、スプーン状に加工されたストローが豪快に刺される。
「あいよ。シロップはかけ放題だから好きなの選びな」
「あ、ありがとう」
勢いよく片手で渡された器を気圧されながら受け取り、グレイスは数歩横へと足を進める。目の前にずらりと並んだシロップの瓶の群れに、少女はぱちぱちとまあるい瞳を瞬かせた。
いちご、メロン、ブルーハワイ、レモン、グレープ、みぞれ、抹茶、コーラ、カルピス。様々な文字が大きな瓶の前面に貼り付けてある。透明なガラス瓶の中に揺蕩うシロップは、光を受けてつやめいていた。
どれにしよう。カラフルなシロップを目の前に、グレイスは視線を泳がせる。いちごやメロンは、今まで食べてきた菓子のフレーバーから何となく味の想像がつく。コーラやカルピスは、氷にかけて食べた時の味の想像がつかない。ブルーハワイとみぞれに至っては、名前すら知らないものだ。目が醒めるような鮮やかな青と、カラフルな瓶の中で異質な様相をした無色透明が、更に謎を深める。
悩み悩んだ末、少女は『いちご』というラベルが貼られた瓶へと手を伸ばした。大きなそれに差してある長い銀の匙を手に取る。先端に付けられた小さな深いカップに真っ赤な液体が満たされすくわれる。こぼさないように慎重に手を進め、細かな氷の山の頂へとシロップを垂らす。純白の上を、鮮烈な赤が広がっていった。一瞬のそれに、少女は目を丸くする。もう一杯だけ、とまたシロップをすくってかける。白い氷はすっかり真っ赤な蜜に染め上げられた。
「ワタシは何にしマショウ」
よく通る声が隣から聞こえた。随分と弾んだそれに、少女は視線を音の方へと移す。自分の分を手に入れたのか、同じ容器を手にしたレイシスの姿があった。どれにしようカナ、と指先が瓶を指す度、白い花咲く群青の袖が揺れる。楽しげな笑みに満ちあふれた横顔は、少女らしい可愛らしいものだ。
神様の言う通り。飛び跳ねるような声が止むとともに、指の動きも止まる。たおやかな細い指が指し示したのは、『ブルーハワイ』と書かれた瓶だった。ヨシ、とはっきりした言葉をこぼし、薔薇の少女は長い匙を手に取った。真っ青な液体の中に匙を沈め、たっぷりのそれをすくう。明らかに人工的に作られた極彩色に躊躇うことなく、彼女は白い雪山にシロップを降り注がせた。雪原が一瞬にして海色に染められた。どこか冒涜的な映像に、思わず口元が引きつる。一体、あれはどんな味がするのだろう。少なくとも、食べ物の色はしていないのだが。
「サ、邪魔になっちゃいますから行きマショウ」
ありがとうございマシタ、と店主ににこやかな声と表情を投げかけ、レイシスは妹の手を取る。二人の間で揃いの水風船がぶつかって揺れた。
屋台の群れから少し離れた場所に二人で辿り着く。休憩スペースとして開放されているようで、辺りには人がごった返していた。座るのは難しいが、立って食べることぐらいはできるだろう。姉もそう考えたのか、端の方へと歩みを進める。人が少しだけまばらなそこは、二人並んで立つには十分な空間だ。
「サ、食べマショウ。溶けちゃいマス」
繋いだ手を離し、少女は容器に刺されたストローに手をかける。カラフルな縞模様で彩られたそれを引き抜き、丸くスプーン状になった先端部分を青い雪山の頂に入れる。一匙すくい、夜闇でも目立つ青を口に入れた。シャクン、と軽い音の後、ンー、と感嘆の声があがる。桃色の睫に縁取られた目は柔らかな孤を描いていた。
グレイスもストローを手に取る。綺麗な山が崩れてしまわぬようそっと抜き、赤に染められた氷を小さくすくい取る。赤い欠片をおそるおそる口に運ぶ。簡易匙を咥えた瞬間、冷たさと甘さが口いっぱいに広がった。舌の上ですぐに溶けて消えたそれに、少女はぱちりと目を瞬かせる。アザレアの瞳には光がきらめいていた。
冷たい。甘い。美味しい。人混みを歩き続けた身体に、氷の冷たさと人工甘味料の甘さが染み渡っていく。どれも心地の良いものだ。もう一口、もう一口、と躑躅の少女は黙々と匙を動かす。ひんやりとした氷が舌の上で溶けて、涼やかな食感と甘美な味を残して消えていく。先ほどの綿飴とよく似ているが、全く違う楽しさがあった。
何口目かを口に含んだ瞬間、頭に電撃が走り抜けていく。強烈な痛みに、輝くマゼンタの瞳が歪められる。ぅ、とストローを含んだ口から鈍い唸りが漏れ出た。
「いったぁ……」
「急いで食べるからデスヨ」
思わず額を押さえると、クスクスと笑い声がかけられる。見つめる瞳は姉ぶったそれの様相をしていた。
また子ども扱いをされている、と少女は頬を膨らませる。妹の様子を気にすることなく、姉は青をすくったスプーンを咥える。瞬間、アゥ、と短い悲鳴があがった。どうやら彼女の頭にもあの痛みが襲ったようだ。貴方もじゃない、とむくれた声で指摘すると、エヘヘ、とはにかんだ笑声が返された。
「アッ、グレイス。見てくだサイ」
何かを思いついたのか、レイシスは目を輝かせて妹を見る。すると、突然口を大きく開け、べろりと舌を出した。何だ、と疑うより先に、驚愕がグレイスを襲う。尖晶石が心情を強く表すように真ん丸に開かれた。
「えっ、何、それ。えっ?」
目の前に出されたレイシスの舌は、真っ青に染まっていた。明らかに人のそれの色ではない。異常な光景だ。
バグだろうか。いやでもそれにしてはレイシスは慌てていないではないか。というか、何でこんなものを見せつけてきたのだ。様々な疑問がぐるぐると頭を巡る。小さな口が呆然とした様子で開かれた。ぁ、ぅ、と混乱に満ちた声が漏れる。髪と同じ色をした形の良い眉が八の字に下がっていく。
「えっ、大丈夫なの?」
「大丈夫デスヨ。かき氷のシロップの色が移っちゃいマシタ」
エヘヘー、とレイシスは笑う。最初から何も知らない自分を驚かせる気だったのだろう。スプーン片手に浮かべる笑みに、悪びれる様子はなかった。
心配させるんじゃないわよ、と叫びそうになるのをぐっと堪える。こんな些細なことで心配しただなんて言ったら、また子ども扱いされるに決まっている。未だ胸に残る驚愕と不安と安堵がぐちゃりと混ざりあわさって、複雑な色を作り上げる。そう、とぶっきらぼうに言い放ち、グレイスはまた氷をすくって口に運んだ。しゃくりと細かな氷が鳴き声をあげる。
ふと疑問が湧き上がる。青いかき氷を食べたレイシスの舌は鮮やかな青に染まっていた。では、赤いかき氷の食べた自分の舌も、この目に痛いほどの赤に染まっているのだろうか。衝動に身を任せたまま、少女はぺろりと小さく舌を出す。一生懸命視線を下をやっても、己で己の舌を見ることは不可能だった。謎は謎のままだ。
「グレイスはいちごデスカラ……赤いままデスネ」
妹の舌を覗き込み、残念デスネ、と薔薇の少女は眉尻を少し下げる。一連の子どもじみた行動を見られていた羞恥が胸の底からぶわりと湧き起こる。躑躅の少女は急いで舌をしまった。別に、と鋭い声で返し、またかき氷を口に運ぶ。再び鋭い痛みが頭を走っていった。ぅ、と低い唸りがこぼれる。災難は重なるものらしい。うぅ、と喉奥から情けない声が漏れ出た。
「一口食べてみマス?」
ハイ、アーン、とレイシスはストローを差し出した。スプーン状に加工された先には、真っ青に染まった氷が載せられていた。時間がたったそれは、少しだけ水に変わっていた。青い氷と水が、明かりに照らされきらめく。
ふわと丸く柔らかな頬に朱が舞い広がる。白い喉がひくりと揺れた。ストローのスプーンが強く握られ、くしゃりと潰れる。
あーん、なんてされる羞恥と、『ブルーハワイ』という謎のフレーバーに対する興味が胸の内で闘う。しばらくの格闘の末、好奇心旺盛な心は後者に軍配をあげた。
あ、と小さく口を開く。可愛らしい口に、ストローがそっと差し込まれた。舌に触れた瞬間、急いで口を閉じ、匙の上の氷を浚って頭を後ろに引く。柔らかなプラスチックが、赤々とした口から勢いよく引き抜かれた。
口の中に広がったのは、今まで食べていたものとほとんど変わらない甘みだった。心なしか爽やかさを感じるのは、あの目が醒めるような色によるものだろうか。『ブルーハワイ』なんて謎に満ちた名前をしているのにこんな味だなんて、何だか拍子抜けだ。こぶりな唇が少し尖らされた。
「色ついてるかもしれマセンヨ。べーってしてみてくだサイ」
べー、と再び青い舌を出す姉の姿につられ、妹も控えめに舌を出す。ちろりと出されたそれを見て、桃の少女はうーんと難しそうに唸った。
「ついてマセンネ……。一口じゃだめなんデショウカ」
もう一口食べマスカ、とまた匙を差し出すレイシスに、いいわよ、と短く返す。舌が染まる様に興味はあるが、人のものをたくさんもらってまでやることではない。そもそも、自分では見られないのだから意味が無いではないか。
「次は別のを食べてみマショウ? メロンとか色がつきやすいデスヨ!」
「次って……もう入んないわよ。それに冷たいものばっかりじゃ身体に悪いわ」
かき氷はまだ半分ほど残っているが、先ほど綿菓子一つ食べたこともあってか少女の小さな胃はだいぶ膨れていた。火照った身体も、甘ったるい氷のおかげでもうすっかりクールダウンしている。これ以上冷たいものを食べるのは少し難しく思えた。それに、かき氷を二個食べたなんてうっかりこぼしたら、きっとオルトリンデとライオットが窘めてくるだろう。あの二人もレイシスに負けず劣らず過保護なのだ。
「ジャア、来年! 来年も一緒にかき氷食べマショウ!」
妹の言葉に、姉はピンと人差し指を立てて応える。マゼンタを見つめるピンクの瞳には、喜びの輝きと少しの不安が宿っていた。
来年、と飛んできた言葉を小さく復唱する。次。来年。心の中で姉の言葉をなぞる。甘美で温かなそれは、少女の胸にゆっくりと広がり満たしていった。
一年後の未来も、共に在れるのだろうか。こんな自分が、まだこの輝かしい少女の隣に存在することはできるのだろうか。
作り変わった身体はもう定着し、小さな姿に戻ることはなくなった。資格も取り、ナビゲーターとしての腕も磨いてきたつもりだ。今では、共に舞台に立ち、歌と踊りを披露するまで至っている。それでも、まだまだ幼い少女の胸に憂慮がのしかかる。彼女に対するコンプレックスは未だ重く残るものだ。
それでも、それを超える喜びが胸の奥底から湧き上がってくる。共に行こうと言ってくれた。来年も共に在ると言ってくれた。無邪気な姉の言葉は、妹の胸に温かなものをもたらした。
「……えぇ」
するりと肯定の言葉がこぼれ落ちる。音を形取った口の端は緩く持ち上がり、アザレア咲く瞳はゆるりと細められた。胸に湧いて出る幸いがこぼれ落ちたような、そんな優しく甘い笑顔だった。
妹の言葉に、姉は大きな目を真ん丸に見開く。薄く膜張っていた不安の色は、綺麗に消え失せていた。あるのは、めいっぱいの喜びの色だ。
「ハイ! 約束デスヨ!」
弾けるような声とともに、手が差し出される。握った手は、小指だけがピンと立ち上がっていた。ふ、と柔らかな息をこぼし、グレイスも同じ形の手を差し出す。細い小指はすぐに白い指に絡め取られた。小指と小指が絡み合い、ぎゅっと固く結ばれる。指切りげんまん、と弾んだ声が提灯の明かりに照らされた空間に響いた。
「指切ッタ! 約束デス! 絶対デスカラネ!」
「はいはい」
楽しげに息巻くレイシスに、グレイスは呆れたように笑って返す。貴方こそ忘れるんじゃないわよ、と軽口を叩くと、忘れマセンヨ、とむくれた声が返ってきた。丸く柔らかな頬がぷくりと膨れる。まるで手にした水風船のようだ、と考えて、また笑みがこぼれた。
「グレイスとの約束を忘れるわけありマセンカラ!」
真正面から飛んできた力強い言葉に、マゼンタの目が丸くなり、幾度も瞬く。胸の内に広がっていく温かな感情とこそばゆい感覚に、少女はふわりと破顔した。そっと細められた目が、暖色の光を受けてキラキラと輝いた。
「そうね」
「そうデスヨ」
呟くように言うと、また力強い言葉が返される。自信と喜びに満ちあふれたそれは、信頼たり得るものだった――否、最初から信用しているのだ。この純真無垢で、いつだってまっすぐで、何事にも真剣に向き合う少女が、誰かに、自分に嘘なんて吐くはずがないのだから。
もう溶けかけた氷をどうにかすくい取り、躑躅は口に運ぶ。少しぬるい甘みが心地良かった。
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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お祭り騒ぎを君と【レイ+グレ】浴衣グレイスちゃんクルーかわいい~~~~~~レイシスちゃんとお祭り行って遊んで~~~~~~!
となったので書いた話。レイグレ姉妹がお祭りで遊ぶだけ。
おそるおそる目の前の雪色にかじりつく。ふわふわとしたそれは、甘みを残してすぐさま消えた。
初めての感覚に、少女は目を見開く。不思議な感覚を追い求め、もう一口。細い棒にくるくると巻かれた飴の糸は、舌に触れた瞬間しゅわりと解けて消えていく。口内に残る甘さは砂糖の塊らしく強いものだが、不思議としつこさはなかった。
躑躅の瞳をキラキラと輝かせ、グレイスはもそもそと綿飴との格闘を続ける。ふわふわとした柔らかな感触と時折訪れるパリッとした食感に、少女は一瞬にして魅せられていた。
「口の周り、ベタベタになっちゃいマスヨ」
小ぶりな綿菓子が姿を消し始めた頃、隣から優しい声が降ってくる。はっと見上げた先には、穏やかな笑みを浮かべたレイシスがいた。ハイ、と差し出された手には、ウェットティッシュの袋があった。どうやら、夢中になって食べていた様子をずっと見られていたらしい。それも、口の周りを汚すような幼稚な様を。
始終を見られていた羞恥に、少女は頬を赤らめ、笑みから逃げるように視線を下に落とす。ありがと、と呟くように礼を言って一枚受け取る。すぐさま砂糖の残滓が残る口元を強く拭った。
「綿飴食べるのって難しいデスヨネ。すぐにベタベタになっちゃいマス」
ふわりとこぼし、レイシスは手にしたりんご飴を一口かじった。パリッと赤い薄飴が割れる音と、シャクッと硬いりんごが噛み砕かれる音が、雑踏の中に舞って消えた。未だ頬を染めたグレイスも、その色付いた顔を隠すように綿飴にかじりつく。今度は汚さぬように注意し、そっと口に運んだ。白い雲が口内でしゅわっと溶けゆく。何度体験しても面白いものだ。
「あっ、グレイス! アレ! ヨーヨー釣りやりマショウ!」
白い綿菓子と赤いりんご飴が姿を消し、支柱だった割り箸がゴミ箱に放り込まれた頃、はしゃいだ声が己の名をなぞった。返事をするより先に、細く小さな手が強く握られる。そのまま手を引かれ、スピネルの瞳が驚きにぱちりと瞬いた。ちょっと、と制止の声をあげるより先に、妹の手を取った姉は人混みを掻き分け足早に歩みを進める。下駄の軽快な足音が互い違いに響いた。
ひしめく人の間を縫い歩き、少女らは『ヨーヨー釣り』と太い文字が描かれた垂れ幕が下がる屋台へと向かう。辿り着いたそこには、小さなビニールプールが置かれていた。心なしか普通のものより深く見えるそれには、色とりどりの水ヨーヨーが浮かんでいる。いくつもの鮮やかなドットが描かれたもの、夜空を描いたように星が散るもの、流水の中を金魚が泳ぐもの、色とりどりの線が走るもの。様々に彩られた小さな風船が、作られた海の中を漂っていた。
躑躅色が白熱灯に照らされた水風船たちを見つめる。小さな腹いっぱいに水と空気を詰め込んだそれらは、満月のように真ん丸で、ちょうど手のひらに収まるようなサイズが愛らしいものだ。表面に浮かぶ雫が光を受けてキラキラときらめく様は、雨上がりの傘が陽に照らされる様子に似ていた。
二人分お願いしマス、という弾んだ声に、グレイスははっと顔を上げる。急いで向けた視線の先には、にこやかに笑うレイシスがいた。ハイ、という声とともに、細く白い何かが手渡される。反射的に受け取って瞬き数拍、少女はどこか気まずげに礼を述べた。
手渡されたのは、緩くねじられたこよりの先に小さく細いかぎ針が付けられたものだった。一体これをどう使うのだろう。マゼンタの瞳が瞬き、細い首が傾げられる。横目で姉を見やる。購入者である彼女ならば、確実に使い方を知っているだろう。実際に見るのが早い。
桃の少女はこよりの先端を持ち、針の先端をヨーヨーたちが浮かぶプールへそっと沈める。水面に浮かんだ丸いゴム紐に、曲がった針が慎重な様子で通される。そうっと細い釣り竿を持ち上げると、紐の先に繋がった水ヨーヨーが宙に浮かんだ。
ヤッタァ、とはしゃぐレイシスの声と、お嬢ちゃん上手いねぇ、という売り子の声が狭い屋台に響く。薔薇色の少女の手には、白地に緑の縞模様と青い丸が彩られた――学園でよく見かける丸い猫を模したものだ――小さな水ヨーヨーがすっぽりと収められていた。
なるほど、そう使うのか。心の中で頷き、少女も隣で喜ぶ彼女をまねてそっとこよりの先を水に沈める。すすす、と水中をゆっくりと移動し、目当てのものに繋がるゴム紐へと針を引っかけた。きゅ、と紙の釣り竿を持つ手に力が込められる。ゆっくり静かに持ち上げるも、水を吸った頼りない紙紐は音も無く切れてしまった。パシャ、と水風船が水面に落ちる無慈悲な音が大きく響いた。
「もう一回!」
急いで財布から硬貨を取り出し、グレイスは売り子に勢いよく突き出す。はい、と愉快そうな声とともに、頼りなさげな釣り竿と三枚の硬貨が交換された。
真剣な光を宿したアザレアが、水面をじぃと見つめる。先ほどはこよりを水に沈めてから適当に獲物を定めたのが悪かったのだろう。千切れにくくなるよう、水分はなるべく吸わせないのが吉のはずだ。姉のように、取りたいものを選んでからこよりを――否、針部分だけを沈めるのがいいだろう。
色とりどりの水ヨーヨーが浮かぶ海を見渡し、いっとう好みのものを見定める。見初めたそれから伸びるゴム紐は、運悪く多くのそれと交わり紛れてしまっていた。この混線具合では、目的のものをたぐり寄せられるか分からない。一か八かだ。
神経を研ぎ澄ませ、少女はそっと針を水に沈める。刹那の迷いの末、真ん中に浮かぶゴム輪に細いそれを通した。また千切れてしまわぬように、そっと、そうっとこよりを持ち上げる。するすると水面を撫ぜるゴム紐の先には、己が欲していた黒い真ん丸があった。心を落ち着け、ゆっくりと腕を上げていく。今度こそ、透明な海の上から水ヨーヨーが引き上げられた。
こよりが千切れてしまうより先に、店主が小さな風船を器に取り上げる。おめでとう、と差し出されたそれは、水滴をしたたらせキラキラと輝いていた。少女の顔が、同じほどぱぁと輝く。ついに捕まえた愛しの真ん丸を愛おしそうに両の手で包んで受け取った。
「取れた!」
「おめでとうございマス!」
溢れ出る嬉しさのあまり、妹は隣に屈む姉の方へ顔を向ける。妹がこれだけ楽しんでくれたのが嬉しいのだろう、彼女も負けないほど満面の笑顔を咲かせていた。晴れやかなその表情を見て、躑躅ははっと我に返る。なんという反応をしてしまったのだろう。これでは幼い子どものようではないか。湧き上がる羞恥心に、柘榴石の視線は急いで地へと吸い込まれていった。
「お揃いデスネ」
これ以上になく弾んだレイシスの声に、グレイスはぱちぱちと瞬きをする。地面に向けられていた視線が、己の手のひらへと戻っていく。白いたなごころに包まれた水風船は、学園で時折見かける黒く丸い猫を模したもの――姉がつい先ほど吊り上げたそれと色違いのものだ。気づかぬ内に、お揃いのものを選んでしまったらしい。かぁ、と少女の頬に朱が広がっていく。
「……たまたまよ」
「TAMA猫だけにデスカ?」
「違うわよ!」
飛んできた軽口に、勢いよく返す。妹の覇気など気にする様子もなく、姉は楽しげにころころと笑った。無意識にお揃いのものを選んでしまった羞恥と、姉とお揃いのものを手に入れた喜びが、少女の胸をぐるぐると掻き回す。心底楽しげな薔薇に抗うように、躑躅はふん、と鼻を鳴らして顔を背けた。
ありがとうございマシタ、とにこやかな笑みを浮かべた店主に礼を言い、レイシスは浴衣の裾を捌いて立ち上がる。ワンテンポ遅れ、グレイスも立ち上がる。何も言わずとも――言ってもどうしようもないと学習していた――白い手と手が重なった。
「次は何をしマショウカ」
焼きそばニ、たこやきニ、射的ニ、かき氷ニ、とレイシスは指折り数える。食べ物ばっかりじゃない、とのグレイスの指摘に、彼女はえへへとはにかんだ。
「ダッテ、お祭りでしか食べられないじゃないデスカ」
「家で作れるでしょ?」
「お家で作って食べるのと屋台で買って食べるのは違うんデス!」
ぐっと拳を握りしめて力説する少女に、思わず圧倒される。そうなの、と返すのがやっとだった。そうナンデス、と力強く言われては、もう否定する言葉など消え失せてしまった。
「グレイスはどれがいいデスカ? 何でも買ってあげマスヨ!」
「自分で買うわよ。ちゃんとお小遣い持ってきてるんだから」
ぐっと拳を握りしめ息巻き胸を張る姉に、妹は眉を寄せて返す。眇められたラズベリルには、喜びと申し訳なさと悔しさがない交ぜになった複雑な色が浮かんでいた。
一緒に夏祭りに行きマショウ、と誘ってきたレイシスは、何かにつけてグレイスに物を買い与えようとしてきた。誘った側だからこれぐらいはしたい、と彼女は言うが、絶対にただの建前だ。姉らしく妹を甘やかしたいという彼女の考えは、新たな生を受けたしばらく経った少女にだって分かる。
高校二年生の財力なんてたかがしれている。彼女の懐事情のことも考えて、本来ならば強く拒否するべきだ。けれども、あの鮮やかに咲く花のような笑顔を向けて迫られると、いつも息が詰まってしまい断るのが厳しく思えるのだ。結果、綿菓子と型抜きと水ヨーヨーを買い与えられた今に至る。
せっかく、ちゃんと不自由なく遊べるようにお小遣いを持ってきたのに。躑躅の少女は唇を尖らせる。姉に甘やかされるのが心底嫌だ、と言えば嘘になるが、こんな風に幼い子どものように甘やかされるのはどうにも不服だ。自分は、彼女が思っているほどこどもではないのだから。
対等でありたい。
言葉にするならこうだろうか。過度に甘やかされることなく、互いに思い遣りあって、共に並んで、語り合える。そんな関係を夢見るが、『妹』という認識がまだまだ強い今は難しいだろう。く、と赤い唇が強く噛み締められた。
「……じゃあ、あれ」
わだかまる感情を隠しきれぬ声音で、グレイスは少し先を指差す。数人の子どもがたむろしている屋台には、青に白の波模様が映える布地に『かき氷』と赤い文字で大きく描かれていた。
「かき氷! いいデスネ!」
ぐっと拳を握りしめ、レイシスは楽しげな声をあげる。先ほど彼女が挙げた候補に入っていただけあってか、楽しみにしていたようだ。早く行きマショウ、と手を引かれ、少女らは白熱灯に照らされる屋台の元へと駆けていった。
狭い屋台の中には、大きな電動かき氷器と様々なシロップが並んでいた。赤、緑、青、黄、紫。まるで虹のように鮮やかな色の液体が入った瓶が並んでいる。机には『シロップかけ放題』というポップが飾られていた。どうやら、購入者が己でシロップをかけるのがこの屋台の方針らしい。
「ジャア、二つ分――」
「一つでいいでしょ。私は自分で買うんだから」
指を二本立てたレイシスを尻目に、グレイスは店主に硬貨を差し出す。一つお願い。あいよ。短い言葉と金銭が交わされた。
「買ってあげるノニ」
頬を膨らませ、薔薇の少女は躑躅を見つめる。紅水晶の瞳は、不服そうに細められていた。はぁ、と溜め息をこぼし、あしらうようにひらひらと手を振る。
「自分で買えるんだからいいわよ。で、貴方はどうするの?」
「ワタシも! おじさん、一つお願いしマス!」
手を上げ元気よく言う少女に、店主はちょっと待っててな、と返す。機械は一台しかないのだから、仕方が無いだろう。ハーイ、と桃色は手に持った水ヨーヨーをぷらぷらと揺らして遊んだ。
下部が大きく開かれた機械に、発泡スチロールでできた白い容器がセットされる。年季の入ったボタンが押されると、ガガガ、と大きな躯体が盛大な声をあげ始めた。しばしして、削られた細かな氷がカップの中に降り注いだ。豪快な音とともに、輝く氷が雪のように降り積もっていく。あっという間に、容器には氷の山ができあがった。端に、スプーン状に加工されたストローが豪快に刺される。
「あいよ。シロップはかけ放題だから好きなの選びな」
「あ、ありがとう」
勢いよく片手で渡された器を気圧されながら受け取り、グレイスは数歩横へと足を進める。目の前にずらりと並んだシロップの瓶の群れに、少女はぱちぱちとまあるい瞳を瞬かせた。
いちご、メロン、ブルーハワイ、レモン、グレープ、みぞれ、抹茶、コーラ、カルピス。様々な文字が大きな瓶の前面に貼り付けてある。透明なガラス瓶の中に揺蕩うシロップは、光を受けてつやめいていた。
どれにしよう。カラフルなシロップを目の前に、グレイスは視線を泳がせる。いちごやメロンは、今まで食べてきた菓子のフレーバーから何となく味の想像がつく。コーラやカルピスは、氷にかけて食べた時の味の想像がつかない。ブルーハワイとみぞれに至っては、名前すら知らないものだ。目が醒めるような鮮やかな青と、カラフルな瓶の中で異質な様相をした無色透明が、更に謎を深める。
悩み悩んだ末、少女は『いちご』というラベルが貼られた瓶へと手を伸ばした。大きなそれに差してある長い銀の匙を手に取る。先端に付けられた小さな深いカップに真っ赤な液体が満たされすくわれる。こぼさないように慎重に手を進め、細かな氷の山の頂へとシロップを垂らす。純白の上を、鮮烈な赤が広がっていった。一瞬のそれに、少女は目を丸くする。もう一杯だけ、とまたシロップをすくってかける。白い氷はすっかり真っ赤な蜜に染め上げられた。
「ワタシは何にしマショウ」
よく通る声が隣から聞こえた。随分と弾んだそれに、少女は視線を音の方へと移す。自分の分を手に入れたのか、同じ容器を手にしたレイシスの姿があった。どれにしようカナ、と指先が瓶を指す度、白い花咲く群青の袖が揺れる。楽しげな笑みに満ちあふれた横顔は、少女らしい可愛らしいものだ。
神様の言う通り。飛び跳ねるような声が止むとともに、指の動きも止まる。たおやかな細い指が指し示したのは、『ブルーハワイ』と書かれた瓶だった。ヨシ、とはっきりした言葉をこぼし、薔薇の少女は長い匙を手に取った。真っ青な液体の中に匙を沈め、たっぷりのそれをすくう。明らかに人工的に作られた極彩色に躊躇うことなく、彼女は白い雪山にシロップを降り注がせた。雪原が一瞬にして海色に染められた。どこか冒涜的な映像に、思わず口元が引きつる。一体、あれはどんな味がするのだろう。少なくとも、食べ物の色はしていないのだが。
「サ、邪魔になっちゃいますから行きマショウ」
ありがとうございマシタ、と店主ににこやかな声と表情を投げかけ、レイシスは妹の手を取る。二人の間で揃いの水風船がぶつかって揺れた。
屋台の群れから少し離れた場所に二人で辿り着く。休憩スペースとして開放されているようで、辺りには人がごった返していた。座るのは難しいが、立って食べることぐらいはできるだろう。姉もそう考えたのか、端の方へと歩みを進める。人が少しだけまばらなそこは、二人並んで立つには十分な空間だ。
「サ、食べマショウ。溶けちゃいマス」
繋いだ手を離し、少女は容器に刺されたストローに手をかける。カラフルな縞模様で彩られたそれを引き抜き、丸くスプーン状になった先端部分を青い雪山の頂に入れる。一匙すくい、夜闇でも目立つ青を口に入れた。シャクン、と軽い音の後、ンー、と感嘆の声があがる。桃色の睫に縁取られた目は柔らかな孤を描いていた。
グレイスもストローを手に取る。綺麗な山が崩れてしまわぬようそっと抜き、赤に染められた氷を小さくすくい取る。赤い欠片をおそるおそる口に運ぶ。簡易匙を咥えた瞬間、冷たさと甘さが口いっぱいに広がった。舌の上ですぐに溶けて消えたそれに、少女はぱちりと目を瞬かせる。アザレアの瞳には光がきらめいていた。
冷たい。甘い。美味しい。人混みを歩き続けた身体に、氷の冷たさと人工甘味料の甘さが染み渡っていく。どれも心地の良いものだ。もう一口、もう一口、と躑躅の少女は黙々と匙を動かす。ひんやりとした氷が舌の上で溶けて、涼やかな食感と甘美な味を残して消えていく。先ほどの綿飴とよく似ているが、全く違う楽しさがあった。
何口目かを口に含んだ瞬間、頭に電撃が走り抜けていく。強烈な痛みに、輝くマゼンタの瞳が歪められる。ぅ、とストローを含んだ口から鈍い唸りが漏れ出た。
「いったぁ……」
「急いで食べるからデスヨ」
思わず額を押さえると、クスクスと笑い声がかけられる。見つめる瞳は姉ぶったそれの様相をしていた。
また子ども扱いをされている、と少女は頬を膨らませる。妹の様子を気にすることなく、姉は青をすくったスプーンを咥える。瞬間、アゥ、と短い悲鳴があがった。どうやら彼女の頭にもあの痛みが襲ったようだ。貴方もじゃない、とむくれた声で指摘すると、エヘヘ、とはにかんだ笑声が返された。
「アッ、グレイス。見てくだサイ」
何かを思いついたのか、レイシスは目を輝かせて妹を見る。すると、突然口を大きく開け、べろりと舌を出した。何だ、と疑うより先に、驚愕がグレイスを襲う。尖晶石が心情を強く表すように真ん丸に開かれた。
「えっ、何、それ。えっ?」
目の前に出されたレイシスの舌は、真っ青に染まっていた。明らかに人のそれの色ではない。異常な光景だ。
バグだろうか。いやでもそれにしてはレイシスは慌てていないではないか。というか、何でこんなものを見せつけてきたのだ。様々な疑問がぐるぐると頭を巡る。小さな口が呆然とした様子で開かれた。ぁ、ぅ、と混乱に満ちた声が漏れる。髪と同じ色をした形の良い眉が八の字に下がっていく。
「えっ、大丈夫なの?」
「大丈夫デスヨ。かき氷のシロップの色が移っちゃいマシタ」
エヘヘー、とレイシスは笑う。最初から何も知らない自分を驚かせる気だったのだろう。スプーン片手に浮かべる笑みに、悪びれる様子はなかった。
心配させるんじゃないわよ、と叫びそうになるのをぐっと堪える。こんな些細なことで心配しただなんて言ったら、また子ども扱いされるに決まっている。未だ胸に残る驚愕と不安と安堵がぐちゃりと混ざりあわさって、複雑な色を作り上げる。そう、とぶっきらぼうに言い放ち、グレイスはまた氷をすくって口に運んだ。しゃくりと細かな氷が鳴き声をあげる。
ふと疑問が湧き上がる。青いかき氷を食べたレイシスの舌は鮮やかな青に染まっていた。では、赤いかき氷の食べた自分の舌も、この目に痛いほどの赤に染まっているのだろうか。衝動に身を任せたまま、少女はぺろりと小さく舌を出す。一生懸命視線を下をやっても、己で己の舌を見ることは不可能だった。謎は謎のままだ。
「グレイスはいちごデスカラ……赤いままデスネ」
妹の舌を覗き込み、残念デスネ、と薔薇の少女は眉尻を少し下げる。一連の子どもじみた行動を見られていた羞恥が胸の底からぶわりと湧き起こる。躑躅の少女は急いで舌をしまった。別に、と鋭い声で返し、またかき氷を口に運ぶ。再び鋭い痛みが頭を走っていった。ぅ、と低い唸りがこぼれる。災難は重なるものらしい。うぅ、と喉奥から情けない声が漏れ出た。
「一口食べてみマス?」
ハイ、アーン、とレイシスはストローを差し出した。スプーン状に加工された先には、真っ青に染まった氷が載せられていた。時間がたったそれは、少しだけ水に変わっていた。青い氷と水が、明かりに照らされきらめく。
ふわと丸く柔らかな頬に朱が舞い広がる。白い喉がひくりと揺れた。ストローのスプーンが強く握られ、くしゃりと潰れる。
あーん、なんてされる羞恥と、『ブルーハワイ』という謎のフレーバーに対する興味が胸の内で闘う。しばらくの格闘の末、好奇心旺盛な心は後者に軍配をあげた。
あ、と小さく口を開く。可愛らしい口に、ストローがそっと差し込まれた。舌に触れた瞬間、急いで口を閉じ、匙の上の氷を浚って頭を後ろに引く。柔らかなプラスチックが、赤々とした口から勢いよく引き抜かれた。
口の中に広がったのは、今まで食べていたものとほとんど変わらない甘みだった。心なしか爽やかさを感じるのは、あの目が醒めるような色によるものだろうか。『ブルーハワイ』なんて謎に満ちた名前をしているのにこんな味だなんて、何だか拍子抜けだ。こぶりな唇が少し尖らされた。
「色ついてるかもしれマセンヨ。べーってしてみてくだサイ」
べー、と再び青い舌を出す姉の姿につられ、妹も控えめに舌を出す。ちろりと出されたそれを見て、桃の少女はうーんと難しそうに唸った。
「ついてマセンネ……。一口じゃだめなんデショウカ」
もう一口食べマスカ、とまた匙を差し出すレイシスに、いいわよ、と短く返す。舌が染まる様に興味はあるが、人のものをたくさんもらってまでやることではない。そもそも、自分では見られないのだから意味が無いではないか。
「次は別のを食べてみマショウ? メロンとか色がつきやすいデスヨ!」
「次って……もう入んないわよ。それに冷たいものばっかりじゃ身体に悪いわ」
かき氷はまだ半分ほど残っているが、先ほど綿菓子一つ食べたこともあってか少女の小さな胃はだいぶ膨れていた。火照った身体も、甘ったるい氷のおかげでもうすっかりクールダウンしている。これ以上冷たいものを食べるのは少し難しく思えた。それに、かき氷を二個食べたなんてうっかりこぼしたら、きっとオルトリンデとライオットが窘めてくるだろう。あの二人もレイシスに負けず劣らず過保護なのだ。
「ジャア、来年! 来年も一緒にかき氷食べマショウ!」
妹の言葉に、姉はピンと人差し指を立てて応える。マゼンタを見つめるピンクの瞳には、喜びの輝きと少しの不安が宿っていた。
来年、と飛んできた言葉を小さく復唱する。次。来年。心の中で姉の言葉をなぞる。甘美で温かなそれは、少女の胸にゆっくりと広がり満たしていった。
一年後の未来も、共に在れるのだろうか。こんな自分が、まだこの輝かしい少女の隣に存在することはできるのだろうか。
作り変わった身体はもう定着し、小さな姿に戻ることはなくなった。資格も取り、ナビゲーターとしての腕も磨いてきたつもりだ。今では、共に舞台に立ち、歌と踊りを披露するまで至っている。それでも、まだまだ幼い少女の胸に憂慮がのしかかる。彼女に対するコンプレックスは未だ重く残るものだ。
それでも、それを超える喜びが胸の奥底から湧き上がってくる。共に行こうと言ってくれた。来年も共に在ると言ってくれた。無邪気な姉の言葉は、妹の胸に温かなものをもたらした。
「……えぇ」
するりと肯定の言葉がこぼれ落ちる。音を形取った口の端は緩く持ち上がり、アザレア咲く瞳はゆるりと細められた。胸に湧いて出る幸いがこぼれ落ちたような、そんな優しく甘い笑顔だった。
妹の言葉に、姉は大きな目を真ん丸に見開く。薄く膜張っていた不安の色は、綺麗に消え失せていた。あるのは、めいっぱいの喜びの色だ。
「ハイ! 約束デスヨ!」
弾けるような声とともに、手が差し出される。握った手は、小指だけがピンと立ち上がっていた。ふ、と柔らかな息をこぼし、グレイスも同じ形の手を差し出す。細い小指はすぐに白い指に絡め取られた。小指と小指が絡み合い、ぎゅっと固く結ばれる。指切りげんまん、と弾んだ声が提灯の明かりに照らされた空間に響いた。
「指切ッタ! 約束デス! 絶対デスカラネ!」
「はいはい」
楽しげに息巻くレイシスに、グレイスは呆れたように笑って返す。貴方こそ忘れるんじゃないわよ、と軽口を叩くと、忘れマセンヨ、とむくれた声が返ってきた。丸く柔らかな頬がぷくりと膨れる。まるで手にした水風船のようだ、と考えて、また笑みがこぼれた。
「グレイスとの約束を忘れるわけありマセンカラ!」
真正面から飛んできた力強い言葉に、マゼンタの目が丸くなり、幾度も瞬く。胸の内に広がっていく温かな感情とこそばゆい感覚に、少女はふわりと破顔した。そっと細められた目が、暖色の光を受けてキラキラと輝いた。
「そうね」
「そうデスヨ」
呟くように言うと、また力強い言葉が返される。自信と喜びに満ちあふれたそれは、信頼たり得るものだった――否、最初から信用しているのだ。この純真無垢で、いつだってまっすぐで、何事にも真剣に向き合う少女が、誰かに、自分に嘘なんて吐くはずがないのだから。
もう溶けかけた氷をどうにかすくい取り、躑躅は口に運ぶ。少しぬるい甘みが心地良かった。
畳む
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