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No.115
淫らに溺れて【ライレフ/R-18】
淫らに溺れて【ライレフ/R-18】
オニイチャンに「がんばれ♡がんばれ♡」と言わせたかっただけの話。
あと貞淑ぶってるくせに快楽によわよわな弟君が書きたかっただけの話。
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「ひ、ぁ……あっ、ア」
ぐちゅ、と粘ついた音が二人きりの部屋に響く。耳を塞ぎたくなるようなそれに思わず身を捩ると、またぐちゅ、と淫猥な音が鳴った。当たり前だ、音の発生源は己と恋人が結び合わさった場所なのだ。動けば音が鳴るのは必然である。理解はしているが、それを正常に処理することなど、ピンク色に染まりきった脳味噌では到底不可能だった。
現状から逃げたくて身体を動かす。結合部から淫靡な音が鳴る。剥き出しになった本能が刺激される。淫らな身体が、頭が反応する。きもちがいい、と。
烈風刀にとっては負の連鎖だ。現状では断ち切ることのできない連鎖が、白い身を襲う。逃げることなど到底不可能だった。なにせ、過ぎた快楽で腰は抜けてしまい、足もとうに力が入らなくなっている。震える足を叱咤し立ち上がり、咥え込んだ雄を抜き出し、脱ぎ散らかした服を持って部屋を去るなど、今の身に要求するにはあまりにも高度な動きだった。
「れーふと」
己を呼ぶ声に、少年はびくりと肩を震わせる。ぎこちない動きで音の方へ視線をずらす。快楽と涙で少しぼやけた視界には、困ったように眉端を下げた兄の顔が映った。
労るようにするりと腰を撫でられる。たったそれだけの触れ合いで、脳味噌はきもちがいいものだと誤認した。腰骨から背筋を電流が駆け上がっていく。ぁ、と甘えるような音が開きっぱなしの口から漏れ出た。
動きに反して、その手に優しさなど欠片も無い。実際は真逆だ。早く動け、と催促しているのだ。動かないままでは終わらないぞ、と言外に告げているのだ。分かりきった現実をいちいち突きつけてくるのだ、この男は。
普段ならこの筋張った腰を、肉付きの薄い尻をめいっぱいに鷲掴み、好き勝手に腰を打ち付けるというのに。今日に限ってはただ寝転がっているだけだ。あるとすれば気まぐれに肌を撫で、こちらの欲を煽る程度である。卑怯だ、と叫びたくなる。しかし、この体位――受け入れる側である己が突き入れる側である兄の上に跨り動く騎乗位は、双方合意の上で行われているものである。文句を言うのは何だか憚られた。
組み敷いた彼の腹の上についた手に力を込める。どうにか腰を持ち上げようとするが、力が入らない足では身体を支えることなどできない。動くことなど不可能だった。鍛えられた腕がカクンと崩れ、前のめりになる。そのまま、目の前の胸に倒れ伏した。ずる、と兄自身が勢い良く抜けていく。柔らかな壁を一気に擦り上げられる感覚に、アッ、と上擦った声があがった。
「だいじょぶか?」
崩折れた背に手が触れる。熱いそれが、そろそろと肌の上を這っていく。背から下へ下へとなぞり、トントンとあやすように腰を叩かれる。それだけで脳髄が痺れた。うつ伏せた身体がびくびくと跳ねる。あ、ぁ、と耳を塞ぎたくなるような声が己の口から漏れ出た。
「起きれる? 無理ならもうやめとくけど」
気遣う言葉は、実質脅しだった。ここまでして――入念に愛撫を施し、一度雄を迎え入れる快感を味わわせておいて、『このまま行為を終える』なんて、今の烈風刀にとっては脅迫以外の何でもない。この腹に燻る熱は、雄を咥え込み、子種を与えられなければ晴らすことなどできないのだ。
そんなこと分かりきっているはずなのに。思わず眼下の紅玉を睨めつける。かち合った朱は、苛烈な炎で昏く輝いていた。情欲の焔だ。捕食者の輝きだ。どれもこれも、上に跨ったこの身体を食らい尽くさんとするものだ。お前だって、この薄い腹を穿ち、種を植え付けなければその炎は収まらないだろうに。つくづく意地の悪い男だ。
だいじょうぶです、とどうにか返す。そう返すしかなかった。このまま終わりにされて、無事でいられるわけがないのだから。
組み敷いた兄の脇に手をつき、ゆっくりと身体を起こす。油の切れた機械のように、ぎこちない動きで上体が起こされていく。腕を伸ばし、足に力を入れ、どうにか元の体勢に戻ることができた。倒れ伏した際に抜け落ちた雄茎が、尻の間で存在を主張する。肌を焼くような熱に、ぁ、と情火の灯った声が漏れた。白い腰が無意識に揺らめく。ずりずりと雄の証を肌に擦り付ける姿は、淫らの一言に尽きた。
兄の腹に手をつく。本来ならば体重を預けることに遠慮を覚えるが、今日ばかりは別だ。これぐらいやってやらねば気が済まない。
足と腕に力を込め、ぐっと腰を持ち上げる。天を衝く雄肉を、股の間、秘められた場所へと誘う。つい先ほどまで愛しい熱を咥え込んでいた狭穴は、物欲しげにはくはくと収縮した。白い肌の奥から熟れきった肉の色が覗くのは蠱惑的であった。
はしたなくひくつく淫口に、熱杭を宛がう。ちゅく、と濡れそぼつ孔とカウパーしたたる穂が触れて卑猥な声をあげた。口づけにも似た音に、持ち上がった身がぶるりと震える。きゅうぅと腹の奥が浅ましい鳴き声をあげた。音にならない声が喉奥から漏れ出る。淫欲に焼かれ、熱を孕んでいた。
大きく息を吸って、吐く。足と腕の力を調節しつつ、ゆっくりと腰を下ろしていく。すっかりと綻びきった秘蕾に、肉の楔が打ち込まれていった。切っ先が肉の洞に切り込んでいく度、じゅぐ、と熟れた果実を潰すかのような音があがる。淫猥な響きに、雄を抱き込んだナカがきゅうと縮こまった。
ぐ、と下から低い唸り声が聞こえる。偶然とはいえ、先端を思い切り締め付けられたからだろう。いい気味だ、と内心笑みを浮かべ、腰を進めていく。張り出た部分が柔らかな壁をゴリゴリと擦っていく。何もかも焼き尽くしてしまいそうな熱の塊が、腹の中を支配していく。背筋を甘くやわい何かが撫でた。
「――は、ぁ、あッ、アッ!」
長い長い時間の末、ようやく肉鞘に業物が根本まで全て納められた。張り詰めた先端が、道の突き当りをこつりと小突く。瞬間、凄まじい衝撃が全身を貫いた。頭の奥がビリビリと痺れる。目の前に白い閃光が瞬く。高い嬌声がシーツの海に落ちて消えた。
崩折れそうになるのを、腕に力を入れることでどうにか防ぐ。また倒れ抜け落ち、挿入れ直す事態だけは避けたかった。こんな衝撃を何度も味わっては、脳味噌が使い物にならなくなってしまうことは簡単に想像できた。
ようやく鋭い快楽が波引いていく。淫らなる肚は、侵入者を強く抱き締めて離さない。ぴったりと密着した今なら、浮き出た血管の凹凸さえ分かりそうだ。ドクリ、ドクリ、と肚の内で剛直が脈打つ感覚。己の鼓動と重なり、一つのものになってしまったかのように錯覚する。そんなこと、あり得ないのに。
傅く雄を待ち望んだ内部が蠕動し、主人を更に奥へと誘う。もう行き止まりだというのに、浅ましい身体はもっとと泣き声をあげるのだ。肉襞がぞわぞわと蠢き、逞しい幹を撫で上げる。
「ちゃんと挿入れれたなー。えらいえらい」
楽しげな声とともに、下ろしきった腰を大きな手が撫ぜる。再び鋭い感覚が背筋を駆け、脳髄を焼いた。ひ、と引きつった音が漏れる。甘ったるい、物欲しげな音色をしていた。こちらの思考――何も考えられず本能が声をあげているだけだが――など分かりきっているのだろう、八重歯が覗く口がにまりと歪んだ。
引き締まった腰を、硬い手が往復する。早くしろ、と急かしているのだ。情欲燃え盛る己の身のためにも、さっさと動かねばならない。だのに、伝わる熱に、感触に、脳が焼かれていく。喉からとろけた声が漏れ出るばかりで、身体を動かすことなどできなかった。
「ほら。がんばれ、がんばれー」
茶化すような声とともに、トントンと優しく叩かれる。ふざけた行為を咎めようにも、触れられる度に甘い痺れが身体中に広がっていき、言葉を紡ぐことができない。震える声帯は、耳を塞ぎたくなるような高い音ばかりを作った。
腹についた手に力をこめる。動くから黙れ、という静かなる意思表示だ。伝わったのか、肌を弄んでいた手が離れていく。代わりに、汗ばんだ髪を大きな手が梳かした。硬い指が垂れた若葉色に差し込まれ、毛先へと下りてゆく。こちらを見上げる目は愛おしげに細められていた――その奥には依然炎が燃え盛っているのだけれど。
ぐっと力をこめ、身体を、腰を持ち上げる。熱い刃がゆっくりと内部を擦る感覚に、目の前に光が瞬く。快楽信号に反応した内部が蠢き、肉槍を撫で上げる。ぽってりと腫れた孔は、ひくひくとひっきりなしに収縮を繰り返した。
どうにか雄を半ばまで抜き取る。震える身体を何とか支え、今度は来た道を戻っていく。熱された楔がとろけきった内壁を再び割り開いていく。硬い切っ先が、張り出した傘が、血管浮かぶ幹が、うちがわをゆっくりと擦っていく。絶えず送られてくる快楽信号が、頭を焦がしていく。肉を拓かれていく度、引きつった甘い息が口端から漏れた。
全てを飲み込まぬよう注意し、腰を落としていく。カタカタと震える手足で支える辛さを考えると、腰を下ろしきってしまった方がいいと分かっている。しかし、また張り詰めた硬い先端で奥底を突かれては、この身体が、頭がもつはずがない。思考する理性の削り取られた脳味噌でもそれぐらいは分かった。
カクつく手足をどうにか踏ん張り、再び腰を持ち上げていく。ぐねぐねと肉襞が動き、呑み込んだ肉刀を撫で上げる。ひくつく縁がきゅうきゅうとくびれた部分を締め付ける。ぐち、と肉と肉が交わる淫猥な響きが部屋に落ちた。
は、と八重歯覗く紅い口から呼気が漏れたのが見えた。わずかなそれは、欲望の炎が燃え盛るものだった。かすかな響きが、肌を撫でる。背筋を撫ぜる。脳を揺らす。きゅん、と陰茎を呑み込んだ肉洞が一気に締まった。息を呑む音が二つこぼれる。
「ぅ、あ……、ア、っ、うぁ……」
抜いて、受け入れて、また抜いて、再び咥え込んで。腰を動かす度、ずちゅ、ぬちゅ、と卑猥な音が結合部からあがる。開きっぱなしの口から嬌声がこぼれ落ちていく。脳まで犯されているような気分だ。今すぐにでも耳を塞ぎたい気分だ。けれども、手は兄の腹の上から動かすことができない。再びバランスを崩す恐怖故ではない。今身を投じている快楽から抜け出せないからだ。理性が綺麗に削り取られた脳味噌は、きもちがいいことばかりを選択する。柔らかで敏感な媚肉を硬く猛った雄で開拓される快楽は、何より優先すべきことだと桃色の脳味噌は判断を下した。
緩慢だった動きが、徐々に速度を増していく。肉と肉が擦れ、汁と汁が混ざり、猥雑な音を奏でる。ポロポロと落ちるあられもない声がアクセントになっていた。欲望を煽る協奏曲に、腹上の痴態を見つめる紅玉髄が更なる光を灯す。ギラギラと輝くそれは、視線だけで愛しいつがいを食い尽くしてしまいそうなものだった。
見据える朱いまなこに、白い身がゾクリと震える。食われる恐怖と期待と喜悦が背筋を撫でる。腹に灯った炎が高らかに燃え上がる。薄い肚がはしたない欲望の声をあげて締まった。
ひ、ぅ、と細い艶声が俯き丸まった喉からあがる。振りたくられる腰は上下運動だけでは飽き足らず、くねくねと揺れていた。腹側のイイところを、硬い先端がコツコツと突く。背側のやわい部分を、張り出たエラがゴリゴリと擦る。あまりの快楽に、脳味噌がバチバチと音をたてた。それでも、腰の動きは止まらない。むしろ、快楽を追い求め激しさを増していっていた。
あまりの凄まじさに恐怖すら覚える快楽の波に意識が飲まれる。頭の中がどんどんと靄がかり、視界が狭まっていく。碧い瞳には、鮮烈な朱しか映らない。
過ぎた悦楽は毒でしかないことは、聡明なる烈風刀は学習済みである。やめなければならないはずなのに、本能に忠実な身体は腰をくねらせた。身をよじる度、逞しい雄杭が内部を蹂躙する。狭い隘路を耕し、己の形へと作り変えていく――否、そんなことをしなくとも、とうに雄の味を覚え込んだうちがわは熱された刃をぴったりと納めた。
ぐちゅ、ぷちゅ、と淫靡な音が部屋に落ちては積もっていく。結び合わさった境目には、潤滑油と腸液と先走りの混合物が泡立っていた。いきり勃った剛直と熟れた後孔がしとどに濡れ、薄明かりに照らされる様は淫靡の一言に尽きた。
「――うぁッ!?」
決して下ろしきらぬようにと踏ん張った足、その下に敷かれたシーツが滑る。ずる、と爪先が横に滑る。受け入れきらぬよう浮いていた分の高さが一気に失われた。重力に逆らえない身体は下へと落ちていく――つまり、猛る雄を根本まで一気に呑み込むこととなる。
ごちゅん、と肚の奥底から鈍い音があがるのが聞こえた。
「はッ、ア、ああああああッ!!」
脳内が、視界が、意識が白む。真っ白に染まった世界に、閃光がいくつも瞬く。脳の奥がビリビリと強く痺れる。肉付きの薄い身体が弓なりにしなり、仰け反った喉から高い悲鳴があがった。法悦を高らかに謳い上げた、甘美な音色をしていた。
脳髄に叩き込まれた快楽の電気信号に、狭い内部が収縮し雄を抱きしめる。離れたくない、離さない、と言わんばかりに、うねる襞が蠢き硬い幹に吸い付いた。熟し膨れた狭口が、怒張の根本を強く咥え込む。ぎり、と歯を食いしばる音が落ちた。
勃ち上がった烈風刀自身から、白濁が勢いよく吐き出される。持ち主の腹と組み敷いた雷刀の腹に白が舞い散った。充血した赤い肉竿を白が伝い彩る様は淫らであった。
突然の、しかも脳神経を焼き切るような凄まじい快楽に、全身から力が抜ける。絶えず動いた身体が、過ぎた快感を受け止めきれなかった脳が、限界を訴える。体重を支えていた腕から力が抜ける。引き締まった身が、再び前へと倒れた。
「っ、と」
短い声とともに、崩折れる身体が途中で止まる。片手で身を起こした雷刀が受け止めたのだ。汗ばんだ肌と肌が重なる。熱と熱が触れ合う。激しい運動後のそれは、常ならば不快感を覚えるはずだというのに、今は愛おしく思えた。伝わる温度に、ぁ、ととろけた甘い声を漏らした。
「ちゃんと頑張れたなー。えらいえらい」
褒め称える言葉を耳に流し込まれる。達したばかりの身体は、普段と変わらぬそれすらきもちがいいことだと誤った判断を下した。追撃とばかりに――絶対に意図していないだろうが――トントンとあやすように優しく背を叩かれる。かすかな振動に、脳天が痺れ、視界がチラつく。ぁ、あ、ととろけきった音が声帯から発せられた。
烈風刀ぉ、と己の名を呼ぶ声がする。少しだけ潜められたそれは、明らかに情欲の炎を纏っていた。甘えた低い響きが鼓膜を震わせる。ゾクゾクと背筋を電流が駆け抜けていく。閉じられぬ口からは意味のない音が溢れるばかりで、返答などできない。それを分かっていてか、朱はそのまま言葉を続けた。
「オレ、まだイってねーんだけどさ」
もうちょい頑張れる?
耳に直に注がれた言葉に、碧の身体がビクンと一際大きく跳ねる。引きつった音が喉からあがる。先ほどまでの快楽に浸ったものではない。明確な恐怖を表していた。
頑張れるか、だと。無茶を言うな。この身体はもう限界なのだ。これ以上動くだなんて、これ以上快感を与えられるだなんて、絶対に無理だ。
確かに兄はまだ達しておらず、この肚の中でいきり勃ったままである。自分だけが果ててしまった罪悪感はあるが、限界値を超える淫悦への恐怖が勝る。死んでしまう、だなんて馬鹿な言葉が頭をよぎるほどだ。
精一杯の力を振り絞り、ぎこちない動きで首を横に振る。翡翠の瞳から雫が溢れ、頬に透明な筋を描いた。
「む、り、です……、も、むり……」
「烈風刀は何もしなくていいからさ。ただきもちよくなってるだけでいいから。な?」
おねがい、と柔らかな言葉とともに、耳朶に口づけひとつ。ちゅ、と可愛らしいリップ音に、また雫が伝い落ちる。ふぁ、と甘ったるい声があがり、引き締まった背が反る。まるで電流でも流されているように、びくりびくりと断続的に小さく跳ねた。
きもちよくなってるだけでいい。
きもちよく。
きもちいい。
熱を吐き出し欠片の冷静さを取り戻した脳味噌は、無理だと泣き言を言う。しかし、依然本能に支配された身体はあまりにも正直だ。行為の度に多大な快楽に浸らされ、とうに躾けられた身体は、『きもちいい』という言葉に敏感だった。期待に、薄い肚の中身がきゅうきゅうと収縮し、迎え入れた雄肉を抱き締める。鼓動がとくりとくりと加速していく。精を吐き萎えた自身がひくりと反応を示した。
ぅ、う。濁った音が喉奥から漏れる。苦悩の音だ。理性と本能が戦う音だ――そんなこと、無意味だというのに。
今一度瞬く。潤んだ天河石から涙が溢れ落ちる。呆然と開いていた唾液まみれの口が閉じ、引き結ばれる。しばしの沈黙の末、はい、とか細い声が鍛えられた身体の上を滑った。
あんがと、と口づけが頬に落とされる。少しだけカサついた感触と普段よりも高く感じる温度に、もたれかかった身が震える。少しの触れ合いすら、今の烈風刀にとっては快楽を発生させるものだった。
「起き上がれる?」
「は、い……」
心配げな問いに、なんとか返す。体重を預けていた身体からどうにかして身を起こし、元の体勢に戻る。腹について身体を支える手と跨った足は依然ガクガクと震えていた。これで本当に身体を支えられるのだろうか。不安は、腰を捕らえた手によって解消された。薄い肉に指が食い込むほど力強く鷲掴まれる。絶対に離さない、逃さないという意志が嫌というほど伝わってきた。
退路を塞がれたというのに、藍玉の目には燃え盛る情火が浮かんでいた。小さく開いた口から熱い呼気が漏れ出る。この先の行為――『きもちよくなってるだけ』と言われた行為への期待が、少年の身体を支配していた。淫悦に溺れた瞳は、こちらをまっすぐに射抜く朱を見つめていた。早く、早く、とねだるように。
ぐ、と鷲掴んだ手に力が込められる。鍛え上げられた腕が動き、馬鹿力で高校二年生相当の身体を持ち上げようとする。意図を察し、碧は足に力を入れ腰を浮かせる。開きっぱなしの口から、透明な唾液がおとがいを伝い落ちた。
持ち上がった腰を、一気に引き付けられる。同時に、組み敷かれた朱の腰が跳ね上がる。腰骨と尻肉とがぶつかり合い、高い音があがる。内部でも、硬い切っ先と行き止まりの襞が勢いよくぶつかり、ごん、と腹の奥に鈍い音が響き渡った。
「ぃっ、ア、ァあ!!」
脳味噌に叩き込まれる強大な電気信号に、弟は悦楽に染まりきった悲鳴をあげる。当たり前だ、最大の弱点である奥底を思いっきり突かれて、ただで済むはずがない。過ぎた快楽を逃がすために声をあげるのは、一種の防衛本能だ。
つがいの弱点――つまるところ、一番きもちよくなる場所を知り尽くした兄は、そこを重点的に狙う。『きもちよくなってるだけでいい』という言葉を、しっかりと実行していた。
ばちゅん、ぐちゅん、と淫らな音をたてて肉体がぶつかり合う。猛りきった雄が、ふわふわとしたうちがわを蹂躙する。烈風刀にとっては地獄であり天国であった。脳が受容できないほどの快楽を絶えず叩き込まれるのは、きもちがいいことだけをひたすら与えられるのは、拷問であり褒美だ。
間抜けに開いた赤い口からは、とろとろにとろけた甘ったるい声と、溢れ出る唾液がひっきりなしに漏れていた。奥を突かれる度、理性が抉り取られ、本能が頭を支配する。嬌声を抑えるだなんて理性的な行動ができるはずなどなかった。
「ぃうっ、あ……、やッ……! あ! アァ!」
ごちゅ、どちゅ、と奥底を音をたてて抉られる。切っ先が秘めたる襞をノックする度、視界に光が明滅する。脳髄が痛いほど痺れる。快楽が視界を、思考を、意識を融かしていく。暴力的なまでの性感に、艶めいた声をあげることしかできなかった。
カクン、と腹についた手が折れる。法悦に殴られ続けた身体が限界を迎えたのだ。そのまま、上半身が前に倒れていく。再び目の前の胸に蹲ることとなった。先ほどと違うのは、腰を掴まれていたことにより屹立を咥え込んだままだということだ。
鍛えられた重い身体を受け止めたまま、兄は絶えず掴んだ腰を振り下ろし、己の腰を振りたくる。彼もまた快楽に意識を支配されているのだろう。食いしばった口からは、獣めいた唸りが漏れていた。
倒れたことにより、雄楔が擦る場所が変わる。熟れた先端が、張ったエラが、膨張した茎が、ごりゅごりゅと音をたてて擦っていく。張り出た傘が往復し、ふっくらとした前立腺を刺激する。弱い部分を力強く擦り上げられ、烈風刀はまた悲鳴めいた嬌声をあげる。前立腺と最奥という最大の弱点を一気に責め立てられて、まともな声が出せるはずなどない。
「烈風刀ッ、烈風刀、きもちい?」
容赦の無いピストンの最中、雷刀は蹲った弟に尋ねる。快感に融かされ掠れた音をしていた。
問いに答える声はない。応えることなどできるはずがないのだ。言葉の宛先である碧は、快楽の海に沈んでしまっているのだから。けれども、あがる甘く艶めいた悲鳴が何よりも雄弁に答えを語っていた。
れふと、れふと。淫音響く中、とろけ始めた低い声が己の名をなぞる。たったそれだけで、内壁は悦び蠢いた。柔肉が咥え込んだ雄をぎゅっぎゅっと締め付け絡みつく。兄が腰を掴むのと同じく、弟も逃さないと言わんばかりにナカを締め付けた。
きもちいい。きもちいい。きもちいい。
あー、あー、と意味を成さない音がぼろぼろと口から出ていく。涙声が混じり始めた音は情欲に溶かされドロドロになっていた。雄を煽る響きだ。捕食者を誘う響きだ。うちがわから身体を、頭を蹂躙され、食い散らかされる快楽が少年を支配していた。
ピストン運動が早まっていく。ごちゅ、どちゅ、と最奥を穿つ勢いが増していく。このまま襞をこじ開け、奥の奥まで犯してしまいそうな勢いだ。そうせんとばかりに、朱は腰を打ち付ける。筋肉浮かぶ腹に先端の形が浮かび上がってしまいそうなほどの激しさだ。激烈なまでの律動で揺さぶられる度、碧の声帯は艶めく音を奏で響かせる。それがまた、食らう者の欲望に火を点けた。
ぐちゅん、と湿った音が鳴った。瞬間、最奥の守護者たる襞が、熱塊によってこじ開けられた。先端が奥底へと潜り込む。勢いよく突き込まれたそれが、秘められたる場所を土足で踏み荒らす。
視界がスパークする。凄まじい電気信号が、腰骨を、脊髄を、脳髄を駆け抜けていく。バチン、と頭の中で何かが大きな音をたてて弾けた。
「ぃッ、アっ、あ――――!!」
一際大きな声があがる。嬌声を上げ続け掠れ始めたそれは、途中で音を失った。声を発せなくなるほどの快楽が頭に直接叩き込まれたのだ。大きく開いた口から出るのは、か細い呼吸ばかりだ。
しとどに濡れた碧自身から、再び精が吐き出される。本日二回目のそれは、量も色も薄い。突き上げる雄に押し出されるように、びゅくり、びゅくり、と少量の濁液が断続的に漏れる。性感高まり赤らんだ肌に白が散る様は、卑猥を極めたものだ。
ぎゅう、と蹲った身体が丸まる。縋るように、兄の胸に爪を立てた。果てた内部は、ぞわぞわと侵入者を根元から先端まで撫で上げる。いくつもの襞が侵略者を抱き締める。それでも突き上げる腰が止まることはない。まだ頂点へと辿り着いていない雄は、絡みつく内壁を振りほどき、つがいの身体を貪った。
最奥を雄の象徴が犯す。ぐぷん、ごぷん、と猥雑な音をあげ、秘められるべき場所がどんどんと暴かれていく。奥底を守っていた襞を欲望の証が往復する度、白い身体がビクビクと跳ねる。痙攣という方が正しい姿だった。あまりにも膨大で処理しきれぬ快楽信号に、身体がついていかないのだ。先ほどまでのコケティッシュな声を奏でていた声帯は、己の役目を放棄していた。
パァン、と肉と肉とが強くぶつかり合う。肉欲によってリミッターが外された動きは、痛みを伴うほどの強さだ。痛覚信号と快楽信号を同時に与えられ、脳味噌が二つを紐付ける。マゾヒスティックな快感が、腰から身体へと広がっていった。腰を打ち付けられる度、じくじくとした悦びが背をなぞった。
律動が激しさを増していく。頂点へ向かってのラストスパートだ。ぐちゅぐちゅと結合部が淫猥な音を奏でる。ごぷごぷと腹奥が猥褻な音を打ち鳴らす。音になりきらない嬌声がのしかかった肌の上を滑っていった。
ぐぽん、と鈍い音が身体中に響いた。瞬間、腹の奥の奥、秘めたるべき場所が凄まじい熱をもつ。蹂躙者から欲望が吐き出されたのだ。びゅーびゅーと勢いよく吐き出される濁流が、暴かれてはいけない秘部を白に染め上げていく。凄まじい情欲の熱を以て焼いていく。狭い奥底だけでは受容しきれず、欲望の本流は逆流し、柔襞蠢くうちがわまでも焼いて染めた。
脳を焼く快楽信号に、淫乱なる肚が悦びの声をあげる。待望の子種を与えてくださった主人に、肉洞はきゅうきゅうと抱きついた。襞が根本から撫で上げ、更なる精をねだる。よっぽど効いたのか、ぐぁ、と濁った声が聞こえた。猛る雄からびゅくびゅくと欲望宿る白が絞り出される。
どれほど経ったか、ようやく精の迸りが止んだ。未だ内部をじくじくと焼く熱に、植え付けられた子種に、烈風刀はビクビクと身体を震わせる。ぁ、あ、と久方ぶりに発した声はとろけきった、悦びと幸いに満ち溢れたものだった。長らく待ち望んだものを与えられ、眦がとろりと下がる。口角がゆるりと持ち上がる。水晶石から透明な雫がこぼれ落ちる。快楽を逃がすためのものでない、紛うことなく幸福を謳った雫であった。
「だい、じょーぶ?」
腰を掴んだ手が離れていく。突っ伏した頭に、温かなものが乗せられた。汗ばみ重くなった髪を、硬い指が梳かす。さらさらと撫でる感触に、蹲る身体が小さく跳ねる。未だ快楽の頂に取り残された烈風刀にとって、ほんの些細な触れ合いすら快楽を生み出すものだった。ひぅ、と引きつった甘い音を声帯が奏でた。
「…………だいじょうぶ、な、わけ、ない、で、しょう」
息も絶え絶えに呟いて、顔を上げ頭上の朱を睨む。自覚はあるのか、ぅ、と喉が詰まったような音が聞こえた。それがまた、神経を逆撫でする。形の良い眉が強く寄せられた。
確かにこの行為にも、体位にも、行為の続行にも同意はした。だが、いくら何でもこれはやり過ぎだ。理性を失っていたとはいえ『きもちがいい』なんて言葉に惑わされた自分も自分ではあるが、これほどまでやっていいと誰が言ったのか。手加減というものを覚えるべきだ。
「でも、ちゃんときもちよかっただろ?」
目の前の兄は誤魔化すようにへらりと笑う。今度は烈風刀が言葉に詰まる番だった。ぅ、と気まずげな音を漏らし、まっすぐに睨めつけていた瞳を逸らした。
彼の言う通り、『きもちよかった』のは事実だ。少なくとも、達してなお現実に戻ってこれなかったほどの快楽をこの身に刻まされたのは確かだ。けれども、それを認めることなぞできない。『きもちがよかった』だなんて淫らな言葉を口にすることなど、初心なところがある少年には不可能に近いことだった。
頭を撫でていた手が離れる。硬い輪郭をした手が、背に這わされた。背の窪みを、硬い指先がなぞっていく。ゾクゾクと背筋を何かが駆けていく。ひぅ、と甘えるような声が白い喉からこぼれた。汗ばんだ肌の上を指が、手が滑っていく。腰に到達したそれは、指の赤い痕が浮かぶそこを愛おしげに撫でた。アッ、と高い声が薄暗い部屋を切り裂く。雄の証を抱き込んだままの肉筒がきゅんきゅんと収縮した。ぐ、と苦しげな響きが頭上から降ってくる。
烈風刀。己の名を愛しい声がなぞる。熱が宿った、焔のような音色をしていた。情事の時にしか耳にしない響きに、引き締まった身がふるりと震える。思わず息を呑んだ。
れふと。熱にとろけた声が降ってくる。汗ばんだ手が、薄紅色に色付いた臀部を撫ぜる。確かに背筋を走った快楽に、少年は甘い声を漏らした。腹奥で消えかけていた炎が、また音をたてて燃え上がる。赤く熟れた孔の縁が、ひくひくといやらしくひくついた。走る快感から逃げるように身を捩る。ぐちゅ、と未だ結び合わさった場所から淫らな水音があがった。耳から腹を犯す響きに、背が震える。白い喉が小さく反った。
加減無く揺さぶられた身体は疲れ果てている。快楽信号を叩き込まれ続けた脳味噌も、意識が落ちてしまいそうなほど揺れていた。けれども、肌を撫ぜる温度と熱をもった響きに、もうどうしようもないほど情火が灯ってしまった。なんとはしたないのだろう。なんとふしだらなのだろう。どれほど嫌悪しても、炎が消えることはない。
らいと。舌足らずなとろけた声で、愛しいつがいの名を呼ぶ。返事の代わりに、痕が残る腰に再び手が這わされた。
畳む
#ライレフ
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#腐向け
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THANKS!!
SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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淫らに溺れて【ライレフ/R-18】
淫らに溺れて【ライレフ/R-18】オニイチャンに「がんばれ♡がんばれ♡」と言わせたかっただけの話。
あと貞淑ぶってるくせに快楽によわよわな弟君が書きたかっただけの話。
「ひ、ぁ……あっ、ア」
ぐちゅ、と粘ついた音が二人きりの部屋に響く。耳を塞ぎたくなるようなそれに思わず身を捩ると、またぐちゅ、と淫猥な音が鳴った。当たり前だ、音の発生源は己と恋人が結び合わさった場所なのだ。動けば音が鳴るのは必然である。理解はしているが、それを正常に処理することなど、ピンク色に染まりきった脳味噌では到底不可能だった。
現状から逃げたくて身体を動かす。結合部から淫靡な音が鳴る。剥き出しになった本能が刺激される。淫らな身体が、頭が反応する。きもちがいい、と。
烈風刀にとっては負の連鎖だ。現状では断ち切ることのできない連鎖が、白い身を襲う。逃げることなど到底不可能だった。なにせ、過ぎた快楽で腰は抜けてしまい、足もとうに力が入らなくなっている。震える足を叱咤し立ち上がり、咥え込んだ雄を抜き出し、脱ぎ散らかした服を持って部屋を去るなど、今の身に要求するにはあまりにも高度な動きだった。
「れーふと」
己を呼ぶ声に、少年はびくりと肩を震わせる。ぎこちない動きで音の方へ視線をずらす。快楽と涙で少しぼやけた視界には、困ったように眉端を下げた兄の顔が映った。
労るようにするりと腰を撫でられる。たったそれだけの触れ合いで、脳味噌はきもちがいいものだと誤認した。腰骨から背筋を電流が駆け上がっていく。ぁ、と甘えるような音が開きっぱなしの口から漏れ出た。
動きに反して、その手に優しさなど欠片も無い。実際は真逆だ。早く動け、と催促しているのだ。動かないままでは終わらないぞ、と言外に告げているのだ。分かりきった現実をいちいち突きつけてくるのだ、この男は。
普段ならこの筋張った腰を、肉付きの薄い尻をめいっぱいに鷲掴み、好き勝手に腰を打ち付けるというのに。今日に限ってはただ寝転がっているだけだ。あるとすれば気まぐれに肌を撫で、こちらの欲を煽る程度である。卑怯だ、と叫びたくなる。しかし、この体位――受け入れる側である己が突き入れる側である兄の上に跨り動く騎乗位は、双方合意の上で行われているものである。文句を言うのは何だか憚られた。
組み敷いた彼の腹の上についた手に力を込める。どうにか腰を持ち上げようとするが、力が入らない足では身体を支えることなどできない。動くことなど不可能だった。鍛えられた腕がカクンと崩れ、前のめりになる。そのまま、目の前の胸に倒れ伏した。ずる、と兄自身が勢い良く抜けていく。柔らかな壁を一気に擦り上げられる感覚に、アッ、と上擦った声があがった。
「だいじょぶか?」
崩折れた背に手が触れる。熱いそれが、そろそろと肌の上を這っていく。背から下へ下へとなぞり、トントンとあやすように腰を叩かれる。それだけで脳髄が痺れた。うつ伏せた身体がびくびくと跳ねる。あ、ぁ、と耳を塞ぎたくなるような声が己の口から漏れ出た。
「起きれる? 無理ならもうやめとくけど」
気遣う言葉は、実質脅しだった。ここまでして――入念に愛撫を施し、一度雄を迎え入れる快感を味わわせておいて、『このまま行為を終える』なんて、今の烈風刀にとっては脅迫以外の何でもない。この腹に燻る熱は、雄を咥え込み、子種を与えられなければ晴らすことなどできないのだ。
そんなこと分かりきっているはずなのに。思わず眼下の紅玉を睨めつける。かち合った朱は、苛烈な炎で昏く輝いていた。情欲の焔だ。捕食者の輝きだ。どれもこれも、上に跨ったこの身体を食らい尽くさんとするものだ。お前だって、この薄い腹を穿ち、種を植え付けなければその炎は収まらないだろうに。つくづく意地の悪い男だ。
だいじょうぶです、とどうにか返す。そう返すしかなかった。このまま終わりにされて、無事でいられるわけがないのだから。
組み敷いた兄の脇に手をつき、ゆっくりと身体を起こす。油の切れた機械のように、ぎこちない動きで上体が起こされていく。腕を伸ばし、足に力を入れ、どうにか元の体勢に戻ることができた。倒れ伏した際に抜け落ちた雄茎が、尻の間で存在を主張する。肌を焼くような熱に、ぁ、と情火の灯った声が漏れた。白い腰が無意識に揺らめく。ずりずりと雄の証を肌に擦り付ける姿は、淫らの一言に尽きた。
兄の腹に手をつく。本来ならば体重を預けることに遠慮を覚えるが、今日ばかりは別だ。これぐらいやってやらねば気が済まない。
足と腕に力を込め、ぐっと腰を持ち上げる。天を衝く雄肉を、股の間、秘められた場所へと誘う。つい先ほどまで愛しい熱を咥え込んでいた狭穴は、物欲しげにはくはくと収縮した。白い肌の奥から熟れきった肉の色が覗くのは蠱惑的であった。
はしたなくひくつく淫口に、熱杭を宛がう。ちゅく、と濡れそぼつ孔とカウパーしたたる穂が触れて卑猥な声をあげた。口づけにも似た音に、持ち上がった身がぶるりと震える。きゅうぅと腹の奥が浅ましい鳴き声をあげた。音にならない声が喉奥から漏れ出る。淫欲に焼かれ、熱を孕んでいた。
大きく息を吸って、吐く。足と腕の力を調節しつつ、ゆっくりと腰を下ろしていく。すっかりと綻びきった秘蕾に、肉の楔が打ち込まれていった。切っ先が肉の洞に切り込んでいく度、じゅぐ、と熟れた果実を潰すかのような音があがる。淫猥な響きに、雄を抱き込んだナカがきゅうと縮こまった。
ぐ、と下から低い唸り声が聞こえる。偶然とはいえ、先端を思い切り締め付けられたからだろう。いい気味だ、と内心笑みを浮かべ、腰を進めていく。張り出た部分が柔らかな壁をゴリゴリと擦っていく。何もかも焼き尽くしてしまいそうな熱の塊が、腹の中を支配していく。背筋を甘くやわい何かが撫でた。
「――は、ぁ、あッ、アッ!」
長い長い時間の末、ようやく肉鞘に業物が根本まで全て納められた。張り詰めた先端が、道の突き当りをこつりと小突く。瞬間、凄まじい衝撃が全身を貫いた。頭の奥がビリビリと痺れる。目の前に白い閃光が瞬く。高い嬌声がシーツの海に落ちて消えた。
崩折れそうになるのを、腕に力を入れることでどうにか防ぐ。また倒れ抜け落ち、挿入れ直す事態だけは避けたかった。こんな衝撃を何度も味わっては、脳味噌が使い物にならなくなってしまうことは簡単に想像できた。
ようやく鋭い快楽が波引いていく。淫らなる肚は、侵入者を強く抱き締めて離さない。ぴったりと密着した今なら、浮き出た血管の凹凸さえ分かりそうだ。ドクリ、ドクリ、と肚の内で剛直が脈打つ感覚。己の鼓動と重なり、一つのものになってしまったかのように錯覚する。そんなこと、あり得ないのに。
傅く雄を待ち望んだ内部が蠕動し、主人を更に奥へと誘う。もう行き止まりだというのに、浅ましい身体はもっとと泣き声をあげるのだ。肉襞がぞわぞわと蠢き、逞しい幹を撫で上げる。
「ちゃんと挿入れれたなー。えらいえらい」
楽しげな声とともに、下ろしきった腰を大きな手が撫ぜる。再び鋭い感覚が背筋を駆け、脳髄を焼いた。ひ、と引きつった音が漏れる。甘ったるい、物欲しげな音色をしていた。こちらの思考――何も考えられず本能が声をあげているだけだが――など分かりきっているのだろう、八重歯が覗く口がにまりと歪んだ。
引き締まった腰を、硬い手が往復する。早くしろ、と急かしているのだ。情欲燃え盛る己の身のためにも、さっさと動かねばならない。だのに、伝わる熱に、感触に、脳が焼かれていく。喉からとろけた声が漏れ出るばかりで、身体を動かすことなどできなかった。
「ほら。がんばれ、がんばれー」
茶化すような声とともに、トントンと優しく叩かれる。ふざけた行為を咎めようにも、触れられる度に甘い痺れが身体中に広がっていき、言葉を紡ぐことができない。震える声帯は、耳を塞ぎたくなるような高い音ばかりを作った。
腹についた手に力をこめる。動くから黙れ、という静かなる意思表示だ。伝わったのか、肌を弄んでいた手が離れていく。代わりに、汗ばんだ髪を大きな手が梳かした。硬い指が垂れた若葉色に差し込まれ、毛先へと下りてゆく。こちらを見上げる目は愛おしげに細められていた――その奥には依然炎が燃え盛っているのだけれど。
ぐっと力をこめ、身体を、腰を持ち上げる。熱い刃がゆっくりと内部を擦る感覚に、目の前に光が瞬く。快楽信号に反応した内部が蠢き、肉槍を撫で上げる。ぽってりと腫れた孔は、ひくひくとひっきりなしに収縮を繰り返した。
どうにか雄を半ばまで抜き取る。震える身体を何とか支え、今度は来た道を戻っていく。熱された楔がとろけきった内壁を再び割り開いていく。硬い切っ先が、張り出した傘が、血管浮かぶ幹が、うちがわをゆっくりと擦っていく。絶えず送られてくる快楽信号が、頭を焦がしていく。肉を拓かれていく度、引きつった甘い息が口端から漏れた。
全てを飲み込まぬよう注意し、腰を落としていく。カタカタと震える手足で支える辛さを考えると、腰を下ろしきってしまった方がいいと分かっている。しかし、また張り詰めた硬い先端で奥底を突かれては、この身体が、頭がもつはずがない。思考する理性の削り取られた脳味噌でもそれぐらいは分かった。
カクつく手足をどうにか踏ん張り、再び腰を持ち上げていく。ぐねぐねと肉襞が動き、呑み込んだ肉刀を撫で上げる。ひくつく縁がきゅうきゅうとくびれた部分を締め付ける。ぐち、と肉と肉が交わる淫猥な響きが部屋に落ちた。
は、と八重歯覗く紅い口から呼気が漏れたのが見えた。わずかなそれは、欲望の炎が燃え盛るものだった。かすかな響きが、肌を撫でる。背筋を撫ぜる。脳を揺らす。きゅん、と陰茎を呑み込んだ肉洞が一気に締まった。息を呑む音が二つこぼれる。
「ぅ、あ……、ア、っ、うぁ……」
抜いて、受け入れて、また抜いて、再び咥え込んで。腰を動かす度、ずちゅ、ぬちゅ、と卑猥な音が結合部からあがる。開きっぱなしの口から嬌声がこぼれ落ちていく。脳まで犯されているような気分だ。今すぐにでも耳を塞ぎたい気分だ。けれども、手は兄の腹の上から動かすことができない。再びバランスを崩す恐怖故ではない。今身を投じている快楽から抜け出せないからだ。理性が綺麗に削り取られた脳味噌は、きもちがいいことばかりを選択する。柔らかで敏感な媚肉を硬く猛った雄で開拓される快楽は、何より優先すべきことだと桃色の脳味噌は判断を下した。
緩慢だった動きが、徐々に速度を増していく。肉と肉が擦れ、汁と汁が混ざり、猥雑な音を奏でる。ポロポロと落ちるあられもない声がアクセントになっていた。欲望を煽る協奏曲に、腹上の痴態を見つめる紅玉髄が更なる光を灯す。ギラギラと輝くそれは、視線だけで愛しいつがいを食い尽くしてしまいそうなものだった。
見据える朱いまなこに、白い身がゾクリと震える。食われる恐怖と期待と喜悦が背筋を撫でる。腹に灯った炎が高らかに燃え上がる。薄い肚がはしたない欲望の声をあげて締まった。
ひ、ぅ、と細い艶声が俯き丸まった喉からあがる。振りたくられる腰は上下運動だけでは飽き足らず、くねくねと揺れていた。腹側のイイところを、硬い先端がコツコツと突く。背側のやわい部分を、張り出たエラがゴリゴリと擦る。あまりの快楽に、脳味噌がバチバチと音をたてた。それでも、腰の動きは止まらない。むしろ、快楽を追い求め激しさを増していっていた。
あまりの凄まじさに恐怖すら覚える快楽の波に意識が飲まれる。頭の中がどんどんと靄がかり、視界が狭まっていく。碧い瞳には、鮮烈な朱しか映らない。
過ぎた悦楽は毒でしかないことは、聡明なる烈風刀は学習済みである。やめなければならないはずなのに、本能に忠実な身体は腰をくねらせた。身をよじる度、逞しい雄杭が内部を蹂躙する。狭い隘路を耕し、己の形へと作り変えていく――否、そんなことをしなくとも、とうに雄の味を覚え込んだうちがわは熱された刃をぴったりと納めた。
ぐちゅ、ぷちゅ、と淫靡な音が部屋に落ちては積もっていく。結び合わさった境目には、潤滑油と腸液と先走りの混合物が泡立っていた。いきり勃った剛直と熟れた後孔がしとどに濡れ、薄明かりに照らされる様は淫靡の一言に尽きた。
「――うぁッ!?」
決して下ろしきらぬようにと踏ん張った足、その下に敷かれたシーツが滑る。ずる、と爪先が横に滑る。受け入れきらぬよう浮いていた分の高さが一気に失われた。重力に逆らえない身体は下へと落ちていく――つまり、猛る雄を根本まで一気に呑み込むこととなる。
ごちゅん、と肚の奥底から鈍い音があがるのが聞こえた。
「はッ、ア、ああああああッ!!」
脳内が、視界が、意識が白む。真っ白に染まった世界に、閃光がいくつも瞬く。脳の奥がビリビリと強く痺れる。肉付きの薄い身体が弓なりにしなり、仰け反った喉から高い悲鳴があがった。法悦を高らかに謳い上げた、甘美な音色をしていた。
脳髄に叩き込まれた快楽の電気信号に、狭い内部が収縮し雄を抱きしめる。離れたくない、離さない、と言わんばかりに、うねる襞が蠢き硬い幹に吸い付いた。熟し膨れた狭口が、怒張の根本を強く咥え込む。ぎり、と歯を食いしばる音が落ちた。
勃ち上がった烈風刀自身から、白濁が勢いよく吐き出される。持ち主の腹と組み敷いた雷刀の腹に白が舞い散った。充血した赤い肉竿を白が伝い彩る様は淫らであった。
突然の、しかも脳神経を焼き切るような凄まじい快楽に、全身から力が抜ける。絶えず動いた身体が、過ぎた快感を受け止めきれなかった脳が、限界を訴える。体重を支えていた腕から力が抜ける。引き締まった身が、再び前へと倒れた。
「っ、と」
短い声とともに、崩折れる身体が途中で止まる。片手で身を起こした雷刀が受け止めたのだ。汗ばんだ肌と肌が重なる。熱と熱が触れ合う。激しい運動後のそれは、常ならば不快感を覚えるはずだというのに、今は愛おしく思えた。伝わる温度に、ぁ、ととろけた甘い声を漏らした。
「ちゃんと頑張れたなー。えらいえらい」
褒め称える言葉を耳に流し込まれる。達したばかりの身体は、普段と変わらぬそれすらきもちがいいことだと誤った判断を下した。追撃とばかりに――絶対に意図していないだろうが――トントンとあやすように優しく背を叩かれる。かすかな振動に、脳天が痺れ、視界がチラつく。ぁ、あ、ととろけきった音が声帯から発せられた。
烈風刀ぉ、と己の名を呼ぶ声がする。少しだけ潜められたそれは、明らかに情欲の炎を纏っていた。甘えた低い響きが鼓膜を震わせる。ゾクゾクと背筋を電流が駆け抜けていく。閉じられぬ口からは意味のない音が溢れるばかりで、返答などできない。それを分かっていてか、朱はそのまま言葉を続けた。
「オレ、まだイってねーんだけどさ」
もうちょい頑張れる?
耳に直に注がれた言葉に、碧の身体がビクンと一際大きく跳ねる。引きつった音が喉からあがる。先ほどまでの快楽に浸ったものではない。明確な恐怖を表していた。
頑張れるか、だと。無茶を言うな。この身体はもう限界なのだ。これ以上動くだなんて、これ以上快感を与えられるだなんて、絶対に無理だ。
確かに兄はまだ達しておらず、この肚の中でいきり勃ったままである。自分だけが果ててしまった罪悪感はあるが、限界値を超える淫悦への恐怖が勝る。死んでしまう、だなんて馬鹿な言葉が頭をよぎるほどだ。
精一杯の力を振り絞り、ぎこちない動きで首を横に振る。翡翠の瞳から雫が溢れ、頬に透明な筋を描いた。
「む、り、です……、も、むり……」
「烈風刀は何もしなくていいからさ。ただきもちよくなってるだけでいいから。な?」
おねがい、と柔らかな言葉とともに、耳朶に口づけひとつ。ちゅ、と可愛らしいリップ音に、また雫が伝い落ちる。ふぁ、と甘ったるい声があがり、引き締まった背が反る。まるで電流でも流されているように、びくりびくりと断続的に小さく跳ねた。
きもちよくなってるだけでいい。
きもちよく。
きもちいい。
熱を吐き出し欠片の冷静さを取り戻した脳味噌は、無理だと泣き言を言う。しかし、依然本能に支配された身体はあまりにも正直だ。行為の度に多大な快楽に浸らされ、とうに躾けられた身体は、『きもちいい』という言葉に敏感だった。期待に、薄い肚の中身がきゅうきゅうと収縮し、迎え入れた雄肉を抱き締める。鼓動がとくりとくりと加速していく。精を吐き萎えた自身がひくりと反応を示した。
ぅ、う。濁った音が喉奥から漏れる。苦悩の音だ。理性と本能が戦う音だ――そんなこと、無意味だというのに。
今一度瞬く。潤んだ天河石から涙が溢れ落ちる。呆然と開いていた唾液まみれの口が閉じ、引き結ばれる。しばしの沈黙の末、はい、とか細い声が鍛えられた身体の上を滑った。
あんがと、と口づけが頬に落とされる。少しだけカサついた感触と普段よりも高く感じる温度に、もたれかかった身が震える。少しの触れ合いすら、今の烈風刀にとっては快楽を発生させるものだった。
「起き上がれる?」
「は、い……」
心配げな問いに、なんとか返す。体重を預けていた身体からどうにかして身を起こし、元の体勢に戻る。腹について身体を支える手と跨った足は依然ガクガクと震えていた。これで本当に身体を支えられるのだろうか。不安は、腰を捕らえた手によって解消された。薄い肉に指が食い込むほど力強く鷲掴まれる。絶対に離さない、逃さないという意志が嫌というほど伝わってきた。
退路を塞がれたというのに、藍玉の目には燃え盛る情火が浮かんでいた。小さく開いた口から熱い呼気が漏れ出る。この先の行為――『きもちよくなってるだけ』と言われた行為への期待が、少年の身体を支配していた。淫悦に溺れた瞳は、こちらをまっすぐに射抜く朱を見つめていた。早く、早く、とねだるように。
ぐ、と鷲掴んだ手に力が込められる。鍛え上げられた腕が動き、馬鹿力で高校二年生相当の身体を持ち上げようとする。意図を察し、碧は足に力を入れ腰を浮かせる。開きっぱなしの口から、透明な唾液がおとがいを伝い落ちた。
持ち上がった腰を、一気に引き付けられる。同時に、組み敷かれた朱の腰が跳ね上がる。腰骨と尻肉とがぶつかり合い、高い音があがる。内部でも、硬い切っ先と行き止まりの襞が勢いよくぶつかり、ごん、と腹の奥に鈍い音が響き渡った。
「ぃっ、ア、ァあ!!」
脳味噌に叩き込まれる強大な電気信号に、弟は悦楽に染まりきった悲鳴をあげる。当たり前だ、最大の弱点である奥底を思いっきり突かれて、ただで済むはずがない。過ぎた快楽を逃がすために声をあげるのは、一種の防衛本能だ。
つがいの弱点――つまるところ、一番きもちよくなる場所を知り尽くした兄は、そこを重点的に狙う。『きもちよくなってるだけでいい』という言葉を、しっかりと実行していた。
ばちゅん、ぐちゅん、と淫らな音をたてて肉体がぶつかり合う。猛りきった雄が、ふわふわとしたうちがわを蹂躙する。烈風刀にとっては地獄であり天国であった。脳が受容できないほどの快楽を絶えず叩き込まれるのは、きもちがいいことだけをひたすら与えられるのは、拷問であり褒美だ。
間抜けに開いた赤い口からは、とろとろにとろけた甘ったるい声と、溢れ出る唾液がひっきりなしに漏れていた。奥を突かれる度、理性が抉り取られ、本能が頭を支配する。嬌声を抑えるだなんて理性的な行動ができるはずなどなかった。
「ぃうっ、あ……、やッ……! あ! アァ!」
ごちゅ、どちゅ、と奥底を音をたてて抉られる。切っ先が秘めたる襞をノックする度、視界に光が明滅する。脳髄が痛いほど痺れる。快楽が視界を、思考を、意識を融かしていく。暴力的なまでの性感に、艶めいた声をあげることしかできなかった。
カクン、と腹についた手が折れる。法悦に殴られ続けた身体が限界を迎えたのだ。そのまま、上半身が前に倒れていく。再び目の前の胸に蹲ることとなった。先ほどと違うのは、腰を掴まれていたことにより屹立を咥え込んだままだということだ。
鍛えられた重い身体を受け止めたまま、兄は絶えず掴んだ腰を振り下ろし、己の腰を振りたくる。彼もまた快楽に意識を支配されているのだろう。食いしばった口からは、獣めいた唸りが漏れていた。
倒れたことにより、雄楔が擦る場所が変わる。熟れた先端が、張ったエラが、膨張した茎が、ごりゅごりゅと音をたてて擦っていく。張り出た傘が往復し、ふっくらとした前立腺を刺激する。弱い部分を力強く擦り上げられ、烈風刀はまた悲鳴めいた嬌声をあげる。前立腺と最奥という最大の弱点を一気に責め立てられて、まともな声が出せるはずなどない。
「烈風刀ッ、烈風刀、きもちい?」
容赦の無いピストンの最中、雷刀は蹲った弟に尋ねる。快感に融かされ掠れた音をしていた。
問いに答える声はない。応えることなどできるはずがないのだ。言葉の宛先である碧は、快楽の海に沈んでしまっているのだから。けれども、あがる甘く艶めいた悲鳴が何よりも雄弁に答えを語っていた。
れふと、れふと。淫音響く中、とろけ始めた低い声が己の名をなぞる。たったそれだけで、内壁は悦び蠢いた。柔肉が咥え込んだ雄をぎゅっぎゅっと締め付け絡みつく。兄が腰を掴むのと同じく、弟も逃さないと言わんばかりにナカを締め付けた。
きもちいい。きもちいい。きもちいい。
あー、あー、と意味を成さない音がぼろぼろと口から出ていく。涙声が混じり始めた音は情欲に溶かされドロドロになっていた。雄を煽る響きだ。捕食者を誘う響きだ。うちがわから身体を、頭を蹂躙され、食い散らかされる快楽が少年を支配していた。
ピストン運動が早まっていく。ごちゅ、どちゅ、と最奥を穿つ勢いが増していく。このまま襞をこじ開け、奥の奥まで犯してしまいそうな勢いだ。そうせんとばかりに、朱は腰を打ち付ける。筋肉浮かぶ腹に先端の形が浮かび上がってしまいそうなほどの激しさだ。激烈なまでの律動で揺さぶられる度、碧の声帯は艶めく音を奏で響かせる。それがまた、食らう者の欲望に火を点けた。
ぐちゅん、と湿った音が鳴った。瞬間、最奥の守護者たる襞が、熱塊によってこじ開けられた。先端が奥底へと潜り込む。勢いよく突き込まれたそれが、秘められたる場所を土足で踏み荒らす。
視界がスパークする。凄まじい電気信号が、腰骨を、脊髄を、脳髄を駆け抜けていく。バチン、と頭の中で何かが大きな音をたてて弾けた。
「ぃッ、アっ、あ――――!!」
一際大きな声があがる。嬌声を上げ続け掠れ始めたそれは、途中で音を失った。声を発せなくなるほどの快楽が頭に直接叩き込まれたのだ。大きく開いた口から出るのは、か細い呼吸ばかりだ。
しとどに濡れた碧自身から、再び精が吐き出される。本日二回目のそれは、量も色も薄い。突き上げる雄に押し出されるように、びゅくり、びゅくり、と少量の濁液が断続的に漏れる。性感高まり赤らんだ肌に白が散る様は、卑猥を極めたものだ。
ぎゅう、と蹲った身体が丸まる。縋るように、兄の胸に爪を立てた。果てた内部は、ぞわぞわと侵入者を根元から先端まで撫で上げる。いくつもの襞が侵略者を抱き締める。それでも突き上げる腰が止まることはない。まだ頂点へと辿り着いていない雄は、絡みつく内壁を振りほどき、つがいの身体を貪った。
最奥を雄の象徴が犯す。ぐぷん、ごぷん、と猥雑な音をあげ、秘められるべき場所がどんどんと暴かれていく。奥底を守っていた襞を欲望の証が往復する度、白い身体がビクビクと跳ねる。痙攣という方が正しい姿だった。あまりにも膨大で処理しきれぬ快楽信号に、身体がついていかないのだ。先ほどまでのコケティッシュな声を奏でていた声帯は、己の役目を放棄していた。
パァン、と肉と肉とが強くぶつかり合う。肉欲によってリミッターが外された動きは、痛みを伴うほどの強さだ。痛覚信号と快楽信号を同時に与えられ、脳味噌が二つを紐付ける。マゾヒスティックな快感が、腰から身体へと広がっていった。腰を打ち付けられる度、じくじくとした悦びが背をなぞった。
律動が激しさを増していく。頂点へ向かってのラストスパートだ。ぐちゅぐちゅと結合部が淫猥な音を奏でる。ごぷごぷと腹奥が猥褻な音を打ち鳴らす。音になりきらない嬌声がのしかかった肌の上を滑っていった。
ぐぽん、と鈍い音が身体中に響いた。瞬間、腹の奥の奥、秘めたるべき場所が凄まじい熱をもつ。蹂躙者から欲望が吐き出されたのだ。びゅーびゅーと勢いよく吐き出される濁流が、暴かれてはいけない秘部を白に染め上げていく。凄まじい情欲の熱を以て焼いていく。狭い奥底だけでは受容しきれず、欲望の本流は逆流し、柔襞蠢くうちがわまでも焼いて染めた。
脳を焼く快楽信号に、淫乱なる肚が悦びの声をあげる。待望の子種を与えてくださった主人に、肉洞はきゅうきゅうと抱きついた。襞が根本から撫で上げ、更なる精をねだる。よっぽど効いたのか、ぐぁ、と濁った声が聞こえた。猛る雄からびゅくびゅくと欲望宿る白が絞り出される。
どれほど経ったか、ようやく精の迸りが止んだ。未だ内部をじくじくと焼く熱に、植え付けられた子種に、烈風刀はビクビクと身体を震わせる。ぁ、あ、と久方ぶりに発した声はとろけきった、悦びと幸いに満ち溢れたものだった。長らく待ち望んだものを与えられ、眦がとろりと下がる。口角がゆるりと持ち上がる。水晶石から透明な雫がこぼれ落ちる。快楽を逃がすためのものでない、紛うことなく幸福を謳った雫であった。
「だい、じょーぶ?」
腰を掴んだ手が離れていく。突っ伏した頭に、温かなものが乗せられた。汗ばみ重くなった髪を、硬い指が梳かす。さらさらと撫でる感触に、蹲る身体が小さく跳ねる。未だ快楽の頂に取り残された烈風刀にとって、ほんの些細な触れ合いすら快楽を生み出すものだった。ひぅ、と引きつった甘い音を声帯が奏でた。
「…………だいじょうぶ、な、わけ、ない、で、しょう」
息も絶え絶えに呟いて、顔を上げ頭上の朱を睨む。自覚はあるのか、ぅ、と喉が詰まったような音が聞こえた。それがまた、神経を逆撫でする。形の良い眉が強く寄せられた。
確かにこの行為にも、体位にも、行為の続行にも同意はした。だが、いくら何でもこれはやり過ぎだ。理性を失っていたとはいえ『きもちがいい』なんて言葉に惑わされた自分も自分ではあるが、これほどまでやっていいと誰が言ったのか。手加減というものを覚えるべきだ。
「でも、ちゃんときもちよかっただろ?」
目の前の兄は誤魔化すようにへらりと笑う。今度は烈風刀が言葉に詰まる番だった。ぅ、と気まずげな音を漏らし、まっすぐに睨めつけていた瞳を逸らした。
彼の言う通り、『きもちよかった』のは事実だ。少なくとも、達してなお現実に戻ってこれなかったほどの快楽をこの身に刻まされたのは確かだ。けれども、それを認めることなぞできない。『きもちがよかった』だなんて淫らな言葉を口にすることなど、初心なところがある少年には不可能に近いことだった。
頭を撫でていた手が離れる。硬い輪郭をした手が、背に這わされた。背の窪みを、硬い指先がなぞっていく。ゾクゾクと背筋を何かが駆けていく。ひぅ、と甘えるような声が白い喉からこぼれた。汗ばんだ肌の上を指が、手が滑っていく。腰に到達したそれは、指の赤い痕が浮かぶそこを愛おしげに撫でた。アッ、と高い声が薄暗い部屋を切り裂く。雄の証を抱き込んだままの肉筒がきゅんきゅんと収縮した。ぐ、と苦しげな響きが頭上から降ってくる。
烈風刀。己の名を愛しい声がなぞる。熱が宿った、焔のような音色をしていた。情事の時にしか耳にしない響きに、引き締まった身がふるりと震える。思わず息を呑んだ。
れふと。熱にとろけた声が降ってくる。汗ばんだ手が、薄紅色に色付いた臀部を撫ぜる。確かに背筋を走った快楽に、少年は甘い声を漏らした。腹奥で消えかけていた炎が、また音をたてて燃え上がる。赤く熟れた孔の縁が、ひくひくといやらしくひくついた。走る快感から逃げるように身を捩る。ぐちゅ、と未だ結び合わさった場所から淫らな水音があがった。耳から腹を犯す響きに、背が震える。白い喉が小さく反った。
加減無く揺さぶられた身体は疲れ果てている。快楽信号を叩き込まれ続けた脳味噌も、意識が落ちてしまいそうなほど揺れていた。けれども、肌を撫ぜる温度と熱をもった響きに、もうどうしようもないほど情火が灯ってしまった。なんとはしたないのだろう。なんとふしだらなのだろう。どれほど嫌悪しても、炎が消えることはない。
らいと。舌足らずなとろけた声で、愛しいつがいの名を呼ぶ。返事の代わりに、痕が残る腰に再び手が這わされた。
畳む
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