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No.137
触れて満たして愛して【ライレフ】
触れて満たして愛して【ライレフ】
推しカプちゅっちゅしてくれ~~~~~(いつもの発作)
てな感じで
Dom/Subユニバース
パロライレフ。毎度のごとくリンク先を参考に都合良く捏造しまくってるよ。
ライレフがちゅっちゅするだけ。
本文を読む
双子の弟でありこの世でただ一人の恋人である嬬武器烈風刀は、性に関する行為を苦手としている。
とはいっても、忌避や嫌悪といったマイナス感情を抱えているわけではない。むしろ、興味や好奇心を多分に寄せていることがよく分かる。所謂『恥ずかしがり屋』や『奥手』といった、淑やかで奥ゆかしい性格なのだ。どれだけ興味があっても、どれだけ欲していても、己からそれを求めることを『はしたない』と思い込んでいるのである。可愛らしいものだ。
ほら、今だって。
目の前、バラエティ番組の賑やかな風景が流れるテレビから視線を外し、雷刀はちらりと隣をみやる。拳一つ分空けて座る愛しい人は、鮮やかな液晶画面を眺めていた。澄んだ碧い瞳はどこかぼんやりとしており、画面に対する関心の色は見受けられない。視神経から入力される情報は、彼の心に届いていないようだ。
花緑青が瞬く。丸くつやめく瞳がふぃと動き、映像流れる画面から離れる。なめらかな動きをしたそれが、こちらに向けられた。朱と碧がかち合う。ぶつかることなど互いに予想していなかったのだろう、二色二対の瞳はどちらもぱちりと大きく瞬いた。
びくん、と触れそうなほど近くにある肩が大袈裟なほど大きく跳ねる。布地が擦れる鈍い音とともに、体温が届きそうなほどの距離にあった身体が後退る。指を伸ばせば触れられるほどだった互いの身体は、腕を伸ばしてやっと届くぐらい大きく離れてしまった。
弟は奥手だ。己の欲求を表に出せない恥ずかしがり屋だ。
そんな可愛らしい性格は、Subという支配や庇護を求める第二性と非常に相性が悪かった。生きるために満たさねばならない欲求を、接触を恥じらう意識ばかりが、後ろめたさばかりが先走って無理矢理に押さえつけてしまう。結果、体調不良を引き起こすまで我慢してしまうのだから大問題だ。どれだけ言い聞かせようと、本人がどれだけ理解しようとも、根っこの部分を変えるのは難しいことだ。やはり、我慢を選択してしまうことがほとんどであった。
だから、己がサポートしてやらねばならない。恋人を求めてやまないのに、恥じらって逃げて自身を追い込んでしまう彼をすくい上げて、抱える正当な欲求を発散させて、健やかに過ごせるようにしなければならない。それが、パートナーでありDomである己の役目だ。
「れーふと」
努めて明るく、柔らかな音色で大切な碧色の名を呼ぶ。わざとらしく顔ごと己から視線を逸らした彼は、しばしの躊躇いの末首を動かした。浅葱の頭がぎこちなく動き、伏せた顔がそっと上がる。わずかに眇められた孔雀石には、羞恥と悔恨とほのかな期待がぐちゃりと混ざって浮かんでいた。
「……なんですか」
「オニイチャン、もっとくっつきたいなーって」
ダメかな、と朱はにこやかな笑みで問う。普段と変わらぬおどけた調子だ。あまり恋人らしい、甘やかな雰囲気を押し出しては、彼は尻込みしてしまうに決まっている。あくまでいつも通り、じゃれる程度のものと思わせてやらねばならない。
細くなった藍晶がぱっと開かれ、また強く細められる。軽く伏せられた碧が、うろうろと所在なさげに宙を彷徨う。いつも明朗に話す口は、苦しげに引き結ばれていた。朱は言葉を待ち、碧は言葉を探し、互いに黙する。大袈裟な笑い声が重い沈黙の中に響いた。
ダメじゃないです。コマーシャルに切り替わり、静けさを取り戻した空間に小さな声が落ちる。紛うことなき肯定で、了承だった。やった、とはしゃいだ声をあげる。へにゃりと口元が緩みに緩むのが己でも分かった。
「烈風刀、『おいで』」
居住まいを正し、唯一無二の片割れへと身体を向ける。両の手を大きく広げ、雷刀は言葉を紡いだ。Subを支配する――目の前のパートナーが渇望している『命令』だ。とびきり優しく、とびきり甘い声で、大切なコマンドを紡ぎ出す。Domとして、つがいとして、身体が相手を求めてやまない。それが音となり現れたのだ。
背筋をなぞるような響きに、烈風刀は身を固くする。それもすぐに解け、おずおずと動きを始めた。腕一本ほど離れた距離が拳五つ分ほどになり、三つになり、一つになり。ゆっくり、しかし確実に距離は縮まっていく。半分になったところで、慎ましやかな愛し人は力を抜いたように身体を傾かせる。大きく広げられた朱の腕の中に、碧が倒れ込むように飛び込んだ。ゼロになった距離から、温もりが、愛が広がってゆく。胸に溢れゆくそれをそのまま伝えるように、その鍛えられた身体をぎゅっと抱き締めた。
「ん、『いい子』」
褒美の言葉をいっとう優しい声で与え、胸に押しつけ埋まった形の良い頭をそっと撫でる。ふ、と細く息を吐く感触が布越しに伝わってきた。風呂上がり、綺麗に乾かした指通しの良い髪を硬い指で梳いていく。むずがるように、ねだるように、碧い頭が擦り付いてきた。可愛い、と腕に込める力を強めそうになるのを必死に我慢する。潰してしまっては逃げていくに決まっているではないか。ここは抑えるべき場面である。
ね、烈風刀。幸福にとろけた声で己が腕の中に収まった弟を呼ぶ。なんですか、と随分と柔らかさが増した声が返ってきた。
「キスしたいなー、って」
ダメ、と朱は再び問う。大切なパートナーは触れ合いを求めている――恐らく、その先にある口付けも同じほど求めているはずだ。それをしっかりと与えてやりたかった。押し込めようとする欲求を満たしてやりたかった。何より、己が彼を欲してやまないのだけれど。
空白が二人の間を流れる。テレビ番組の賑やかな音に包まれているはずだというのに、痛いほど静かなように思えた。長くほのかな冷たさを覚えるそれの後、はい、と消え入るような声が部屋に落ちる。胸の内から聞こえたそれは、聞き間違えようがない、確かなものだ。
「烈風刀、『キスしよ』」
ぎゅうと抱き締める腕を緩めて、雷刀は言葉を紡ぐ。胸に額をつけ、完全に埋もれていた若葉色の頭がゆっくりと上がっていく。露わになった整ったかんばせは、澄んだ水に朱を落としたようにふわりと赤く染まっていた。翡翠の双眸が紅玉を射抜く。美しい色の中には、確かな熱が宿っていた。
炎燃える瞳が、健康的に色付いた唇が、ぎゅっと閉じられる。下ろされた瞼も、引き結ばれた唇も、寄せた身体も微かに震えている。しかし、そこには怯える様子も逃げる気配も欠片も無い。大切なパートナーが己を求めているという確かな事実がそこにあった。
己の瞳の色に染まった頬に、優しく手を這わせる。こくりと白い喉が上下する。大丈夫、と安心させるように整ったそこを撫で、静かに顔を近づける。音も無く、二人の距離が縮まっていく。引き結ばれた唇に、己のそれを押しつけるように重ねた。
触れて、離れて。また触れて、離れて。じゃれるようなわずかな触れ合いを幾度も繰り返す。かすかに伝わる温度に、胸が満たされていく。同時に、強い渇きを覚える。もっと欲しい、と贅沢な欲が湧き出て溢れていった。それは片割れも同じなのだろう、熱が離れた瞬間、ぁ、と切なげな音が漏れるのが聞こえた。
「ちゃんとキスできたなー。えらい!」
ぎゅうと目を瞑った愛しい人の頭をぐしゃぐしゃと掻き撫でる。叱責の声が飛んでくる前に掻き乱したそれをさっさっと指で整えていると、下ろされた瞼が震えた。かすかに揺れるそれが、そっと上がっていく。再び姿を現した藍水晶には、未だ熱が宿っていた。まだ、もっと、とねだる声が聞こえてくるようだ。彼本人は絶対に口に出すなんてことはしないのだけれど。
ならば、己が勝手に与えて、勝手に満たしてやるまでだ。
わずかに開いた唇に、もう一度口付けを降らせる。ちゅ、と可愛らしい音が触れ合ったそこからあがった。
「頑張ったごほーび」
ぱちりと瞬く水底色に、ニッと笑いかける。ぱちぱちと瞬きを繰り返す丸いそれが、さらにまあるく見開かれた。ぅえ、とひっくり返った声が筋張った喉から漏れ出るのが眼下に見えた。
「あ、なたが、したいだけでしょう」
「正解」
だからもうちょいさせて、と頬に這わせた指を動かし、まろいそこを撫ぜる。きちんと手入れされたきめ細やかな肌は、熱を孕んでいた。あんなほんの少しの触れ合いでは到底消えそうにない熱だ。己が求めて仕方が無い熱だ。
これでもかと開かれた目がふっと細まる。瞬間、視界が碧に染まった。弧を描く唇に温もり。ちゅ、と可愛らしい音が再び部屋に響いた。
「いいですよ」
突然の感覚に、予想だにしなかった感覚に、兄はぱちくりと目を瞬かせる。すぐ下から愛しい朱を見上げる弟は、満足そうに、どこか意地が悪そうに、幸福そうに口元を綻ばせ言葉を紡ぎ出した。先ほどのつがいに負けじと甘ったるい響きをしていた。
唇を尖らせ、雷刀は喉奥から悔しげな音を漏らす。恥ずかしがり屋の癖に、奥手な癖に、時折こうやって可愛らしい意趣返しをしてくるのだから、この恋人はずるい。ずるくて、可愛くて、愛しくて、愛したくてたまらない。うぅ、と情けない声が己の喉から落ちる。ふふ、と烈風刀は楽しげな笑声を漏らした。
突き出すように寄せた口元をふわりと解き、朱は笑みを浮かべる。端がわずかに吊り上がった、意地悪げな笑みだ。
了承は確かに得た。『もうちょい』と言ったが、明確な時間は示していない。だから、己が満足いくまで、彼が満足いくまで好き放題に口付けてやる。嫌だ、なんて恥ずかしがっても、絶対に逃がしてやらない。互いに満たされるまで、愛してやるのだ。
そんな小ずるいことを考えながら、背に回していた手を空いた頬に添える。美しく整った顔を優しく、逃がさぬように捕らえた。
楽しげに緩んだ口元に、今一度唇を寄せる。ありったけの熱と愛を、柔らかなそれに注ぎ込んだ。
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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ライレフがちゅっちゅするだけ。
双子の弟でありこの世でただ一人の恋人である嬬武器烈風刀は、性に関する行為を苦手としている。
とはいっても、忌避や嫌悪といったマイナス感情を抱えているわけではない。むしろ、興味や好奇心を多分に寄せていることがよく分かる。所謂『恥ずかしがり屋』や『奥手』といった、淑やかで奥ゆかしい性格なのだ。どれだけ興味があっても、どれだけ欲していても、己からそれを求めることを『はしたない』と思い込んでいるのである。可愛らしいものだ。
ほら、今だって。
目の前、バラエティ番組の賑やかな風景が流れるテレビから視線を外し、雷刀はちらりと隣をみやる。拳一つ分空けて座る愛しい人は、鮮やかな液晶画面を眺めていた。澄んだ碧い瞳はどこかぼんやりとしており、画面に対する関心の色は見受けられない。視神経から入力される情報は、彼の心に届いていないようだ。
花緑青が瞬く。丸くつやめく瞳がふぃと動き、映像流れる画面から離れる。なめらかな動きをしたそれが、こちらに向けられた。朱と碧がかち合う。ぶつかることなど互いに予想していなかったのだろう、二色二対の瞳はどちらもぱちりと大きく瞬いた。
びくん、と触れそうなほど近くにある肩が大袈裟なほど大きく跳ねる。布地が擦れる鈍い音とともに、体温が届きそうなほどの距離にあった身体が後退る。指を伸ばせば触れられるほどだった互いの身体は、腕を伸ばしてやっと届くぐらい大きく離れてしまった。
弟は奥手だ。己の欲求を表に出せない恥ずかしがり屋だ。
そんな可愛らしい性格は、Subという支配や庇護を求める第二性と非常に相性が悪かった。生きるために満たさねばならない欲求を、接触を恥じらう意識ばかりが、後ろめたさばかりが先走って無理矢理に押さえつけてしまう。結果、体調不良を引き起こすまで我慢してしまうのだから大問題だ。どれだけ言い聞かせようと、本人がどれだけ理解しようとも、根っこの部分を変えるのは難しいことだ。やはり、我慢を選択してしまうことがほとんどであった。
だから、己がサポートしてやらねばならない。恋人を求めてやまないのに、恥じらって逃げて自身を追い込んでしまう彼をすくい上げて、抱える正当な欲求を発散させて、健やかに過ごせるようにしなければならない。それが、パートナーでありDomである己の役目だ。
「れーふと」
努めて明るく、柔らかな音色で大切な碧色の名を呼ぶ。わざとらしく顔ごと己から視線を逸らした彼は、しばしの躊躇いの末首を動かした。浅葱の頭がぎこちなく動き、伏せた顔がそっと上がる。わずかに眇められた孔雀石には、羞恥と悔恨とほのかな期待がぐちゃりと混ざって浮かんでいた。
「……なんですか」
「オニイチャン、もっとくっつきたいなーって」
ダメかな、と朱はにこやかな笑みで問う。普段と変わらぬおどけた調子だ。あまり恋人らしい、甘やかな雰囲気を押し出しては、彼は尻込みしてしまうに決まっている。あくまでいつも通り、じゃれる程度のものと思わせてやらねばならない。
細くなった藍晶がぱっと開かれ、また強く細められる。軽く伏せられた碧が、うろうろと所在なさげに宙を彷徨う。いつも明朗に話す口は、苦しげに引き結ばれていた。朱は言葉を待ち、碧は言葉を探し、互いに黙する。大袈裟な笑い声が重い沈黙の中に響いた。
ダメじゃないです。コマーシャルに切り替わり、静けさを取り戻した空間に小さな声が落ちる。紛うことなき肯定で、了承だった。やった、とはしゃいだ声をあげる。へにゃりと口元が緩みに緩むのが己でも分かった。
「烈風刀、『おいで』」
居住まいを正し、唯一無二の片割れへと身体を向ける。両の手を大きく広げ、雷刀は言葉を紡いだ。Subを支配する――目の前のパートナーが渇望している『命令』だ。とびきり優しく、とびきり甘い声で、大切なコマンドを紡ぎ出す。Domとして、つがいとして、身体が相手を求めてやまない。それが音となり現れたのだ。
背筋をなぞるような響きに、烈風刀は身を固くする。それもすぐに解け、おずおずと動きを始めた。腕一本ほど離れた距離が拳五つ分ほどになり、三つになり、一つになり。ゆっくり、しかし確実に距離は縮まっていく。半分になったところで、慎ましやかな愛し人は力を抜いたように身体を傾かせる。大きく広げられた朱の腕の中に、碧が倒れ込むように飛び込んだ。ゼロになった距離から、温もりが、愛が広がってゆく。胸に溢れゆくそれをそのまま伝えるように、その鍛えられた身体をぎゅっと抱き締めた。
「ん、『いい子』」
褒美の言葉をいっとう優しい声で与え、胸に押しつけ埋まった形の良い頭をそっと撫でる。ふ、と細く息を吐く感触が布越しに伝わってきた。風呂上がり、綺麗に乾かした指通しの良い髪を硬い指で梳いていく。むずがるように、ねだるように、碧い頭が擦り付いてきた。可愛い、と腕に込める力を強めそうになるのを必死に我慢する。潰してしまっては逃げていくに決まっているではないか。ここは抑えるべき場面である。
ね、烈風刀。幸福にとろけた声で己が腕の中に収まった弟を呼ぶ。なんですか、と随分と柔らかさが増した声が返ってきた。
「キスしたいなー、って」
ダメ、と朱は再び問う。大切なパートナーは触れ合いを求めている――恐らく、その先にある口付けも同じほど求めているはずだ。それをしっかりと与えてやりたかった。押し込めようとする欲求を満たしてやりたかった。何より、己が彼を欲してやまないのだけれど。
空白が二人の間を流れる。テレビ番組の賑やかな音に包まれているはずだというのに、痛いほど静かなように思えた。長くほのかな冷たさを覚えるそれの後、はい、と消え入るような声が部屋に落ちる。胸の内から聞こえたそれは、聞き間違えようがない、確かなものだ。
「烈風刀、『キスしよ』」
ぎゅうと抱き締める腕を緩めて、雷刀は言葉を紡ぐ。胸に額をつけ、完全に埋もれていた若葉色の頭がゆっくりと上がっていく。露わになった整ったかんばせは、澄んだ水に朱を落としたようにふわりと赤く染まっていた。翡翠の双眸が紅玉を射抜く。美しい色の中には、確かな熱が宿っていた。
炎燃える瞳が、健康的に色付いた唇が、ぎゅっと閉じられる。下ろされた瞼も、引き結ばれた唇も、寄せた身体も微かに震えている。しかし、そこには怯える様子も逃げる気配も欠片も無い。大切なパートナーが己を求めているという確かな事実がそこにあった。
己の瞳の色に染まった頬に、優しく手を這わせる。こくりと白い喉が上下する。大丈夫、と安心させるように整ったそこを撫で、静かに顔を近づける。音も無く、二人の距離が縮まっていく。引き結ばれた唇に、己のそれを押しつけるように重ねた。
触れて、離れて。また触れて、離れて。じゃれるようなわずかな触れ合いを幾度も繰り返す。かすかに伝わる温度に、胸が満たされていく。同時に、強い渇きを覚える。もっと欲しい、と贅沢な欲が湧き出て溢れていった。それは片割れも同じなのだろう、熱が離れた瞬間、ぁ、と切なげな音が漏れるのが聞こえた。
「ちゃんとキスできたなー。えらい!」
ぎゅうと目を瞑った愛しい人の頭をぐしゃぐしゃと掻き撫でる。叱責の声が飛んでくる前に掻き乱したそれをさっさっと指で整えていると、下ろされた瞼が震えた。かすかに揺れるそれが、そっと上がっていく。再び姿を現した藍水晶には、未だ熱が宿っていた。まだ、もっと、とねだる声が聞こえてくるようだ。彼本人は絶対に口に出すなんてことはしないのだけれど。
ならば、己が勝手に与えて、勝手に満たしてやるまでだ。
わずかに開いた唇に、もう一度口付けを降らせる。ちゅ、と可愛らしい音が触れ合ったそこからあがった。
「頑張ったごほーび」
ぱちりと瞬く水底色に、ニッと笑いかける。ぱちぱちと瞬きを繰り返す丸いそれが、さらにまあるく見開かれた。ぅえ、とひっくり返った声が筋張った喉から漏れ出るのが眼下に見えた。
「あ、なたが、したいだけでしょう」
「正解」
だからもうちょいさせて、と頬に這わせた指を動かし、まろいそこを撫ぜる。きちんと手入れされたきめ細やかな肌は、熱を孕んでいた。あんなほんの少しの触れ合いでは到底消えそうにない熱だ。己が求めて仕方が無い熱だ。
これでもかと開かれた目がふっと細まる。瞬間、視界が碧に染まった。弧を描く唇に温もり。ちゅ、と可愛らしい音が再び部屋に響いた。
「いいですよ」
突然の感覚に、予想だにしなかった感覚に、兄はぱちくりと目を瞬かせる。すぐ下から愛しい朱を見上げる弟は、満足そうに、どこか意地が悪そうに、幸福そうに口元を綻ばせ言葉を紡ぎ出した。先ほどのつがいに負けじと甘ったるい響きをしていた。
唇を尖らせ、雷刀は喉奥から悔しげな音を漏らす。恥ずかしがり屋の癖に、奥手な癖に、時折こうやって可愛らしい意趣返しをしてくるのだから、この恋人はずるい。ずるくて、可愛くて、愛しくて、愛したくてたまらない。うぅ、と情けない声が己の喉から落ちる。ふふ、と烈風刀は楽しげな笑声を漏らした。
突き出すように寄せた口元をふわりと解き、朱は笑みを浮かべる。端がわずかに吊り上がった、意地悪げな笑みだ。
了承は確かに得た。『もうちょい』と言ったが、明確な時間は示していない。だから、己が満足いくまで、彼が満足いくまで好き放題に口付けてやる。嫌だ、なんて恥ずかしがっても、絶対に逃がしてやらない。互いに満たされるまで、愛してやるのだ。
そんな小ずるいことを考えながら、背に回していた手を空いた頬に添える。美しく整った顔を優しく、逃がさぬように捕らえた。
楽しげに緩んだ口元に、今一度唇を寄せる。ありったけの熱と愛を、柔らかなそれに注ぎ込んだ。
畳む
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