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No.50
まどろみと熱【ライレフ】
まどろみと熱【ライレフ】
今書いてる諸々が上手くいかないので息抜きにりりかるほも。
いつぞやTLで見たライレフが可愛かったので。
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温かなものがそっと触れ、熱を味わう間もなく離れる。また柔らかなものが触れ、その感触を求める暇もなく離れる。幾度も繰り返されるそれに、烈風刀はゆっくりと目を開けた。その表情は眠たげで、酷く不機嫌そうに見える。
「雷刀、やめてください」
「んー?」
眠気を孕む声は低く、彼の機嫌の悪さをよく表している。しかし、その原因を作り出す雷刀はとぼけるばかりだ。眠気と恥じらいと苛立ちに、若葉色の瞳がすぃと細められる。宥めるように、言葉を紡ぐそこに熱が触れた。すぐ目の前に輝く紅葉色の瞳は妙に上機嫌で、眠気などかけらも感じられない。終わる気配のないそれに、烈風刀は眉間に深く皺を刻んだ。
寒いから、といきなり押しかけてきた雷刀を拒むのを諦め、大人しく布団に招き入れた結果がこれだ。眠りたいというのに、彼は睡魔の仕事を邪魔するようにこうやって幾度も唇を寄せてくるのだ。与えられる感覚は、普段彼が求めるそれとは違うじゃれるような軽いものだ。それ自体は恥ずかしさを覚えるものの受け入れることはできる。しかし、こう何度も何度も繰り返されるとさすがに嫌気が差すものだ。眠い。恥ずかしい。寝たい。気恥ずかしさと睡眠欲が混ざり、胸の内は表現しがたい感情がぐるぐると渦巻いていた。
顔を合わせているからこうなるのではないか。眠気で鈍る頭が当たり前の事実にやっと気がつく。ならば、と烈風刀は寝返りをうち、雷刀に背を向けた。これならもう何もないだろう。やっと眠れる。小さく息を吐き、彼は静かに瞼を下ろした。忍び寄る睡魔に身を全て委ね、あとは深い無意識の底まで静かに沈んでゆくだけだ。
首筋に何かが触れる感覚。わざと鳴らされた音に、また口づけをされたのだと分かった。
驚きとくすぐったさに、烈風刀は小さく声をあげる。それに気をよくしたのか、雷刀はまたその首筋に唇で触れた。ちゅ、ちゅ、と小さな音と共に少しかさついた唇が首筋をたどる。鼻先で髪を掻き分け生え際に、回り込むように喉元近くに、埋めるように潜り込んで肩口に。熱を孕む彼の唇が、日に焼けていない箇所を滑っていく。時折吐息が肌を撫でてこそばゆい。与えられる感覚に、烈風刀は小さく身じろぎをした。
気がつけば、腹に手が回され後ろから抱きすくめられていた。服越しに触れる手も、うなじをたどる唇も、ほのかにかかる息も、彼の全てが熱い。融かされてしまいそうだ、などと眠気と熱でぼやける頭で考えた。
ん、とかすかに声を上げ、己を包む熱から逃れる。そのままこてんと寝返りを打ち、烈風刀は再度兄と向き合う。その顔は先程と違い、眠気だけでなく恥じらいの色が強く浮かんでいた。あれほど熱っぽく行為を繰り返されれば、さすがに眠気よりも気恥ずかしさの方が勝る。翡翠の瞳は、眠たさだけでなくじわじわと湧き上がる熱に潤んでいた。
「雷刀」
「なに?」
返事の代わりとばかりに、雷刀の唇が己のそれを撫でる。ゆるりと開いた目のすぐ先、紅玉の瞳にも熱が宿りつつある。くすぐったさと気恥ずかしさに、烈風刀は逃げるように俯いた。つっぱねるように彼の胸元に手を添える。その姿は縋り付いているようにも見えた。
「眠いのです。寝かせてください」
「えー」
どこか幼い音へと変わるその声に、雷刀は不満げな声を漏らす。逃がさないと言わんばかりに、その背中に手を回された。唯一無二の片割を抱くその腕は優しいもので、なにもかもじわじわと融かされてしまうような温かさと心地よさに包まれた。
「キスぐらいいいじゃん」
そう言ってまた一つ口づけが降ってくる。浅葱の髪に落ちたそれは、淡雪のようにすぐ溶けて消えた。明確な感覚のないそれを寂しいと思ってしまうことは言わないでおこう、と烈風刀は心地よさに包まれたまま考える。
「さすがにやりすぎですよ」
「ちょっとだけだし」
「『ちょっと』という数ではないでしょう」
このわずかな時間で何度触れ合ったのかなど分からない。確かに言えるのは、二人分の両手でも数えきれないということだけだ。触れては消え、与えられては失う熱は知らぬ間に己が内に蓄積されていく。燻るそれが心を掻き乱す。
「……起きたら、してあげますから」
好きなだけさせてあげますから、寝させてください、と投げやりな声が雷刀の耳をくすぐる。予想だにしない言葉に、彼の動きがぴたりと止まった。その顔には、喜びと戸惑いと猜疑が混じった、形容しがたい色が浮かんでいた。
行為自体が嫌なわけではない。言葉と行動で示さないが、烈風刀自身もその熱を欲しているのだ。好いているものに触れたい、当たり前の欲求である。
そう、求めていることは互いに同じなのだ。ただ、タイミングが悪いだけで。
「……そっか」
じゃあちゃんと寝なきゃな、と雷刀は頬を緩める。とんとんと腕の中の弟の背を優しく叩く姿は保護者のそれで、烈風刀は不服そうに目を細めた。しかし悔しいかな、それがとても心地よい。安心感が身体を包み、とろりと意識が緩やかに溶けていく。
おやすみ、とまた口づけ一つ。最後の温かみとともに、烈風刀は緩やかな眠りの闇に沈んだ。
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#ライレフ
#腐向け
#ライレフ
#腐向け
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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「雷刀、やめてください」
「んー?」
眠気を孕む声は低く、彼の機嫌の悪さをよく表している。しかし、その原因を作り出す雷刀はとぼけるばかりだ。眠気と恥じらいと苛立ちに、若葉色の瞳がすぃと細められる。宥めるように、言葉を紡ぐそこに熱が触れた。すぐ目の前に輝く紅葉色の瞳は妙に上機嫌で、眠気などかけらも感じられない。終わる気配のないそれに、烈風刀は眉間に深く皺を刻んだ。
寒いから、といきなり押しかけてきた雷刀を拒むのを諦め、大人しく布団に招き入れた結果がこれだ。眠りたいというのに、彼は睡魔の仕事を邪魔するようにこうやって幾度も唇を寄せてくるのだ。与えられる感覚は、普段彼が求めるそれとは違うじゃれるような軽いものだ。それ自体は恥ずかしさを覚えるものの受け入れることはできる。しかし、こう何度も何度も繰り返されるとさすがに嫌気が差すものだ。眠い。恥ずかしい。寝たい。気恥ずかしさと睡眠欲が混ざり、胸の内は表現しがたい感情がぐるぐると渦巻いていた。
顔を合わせているからこうなるのではないか。眠気で鈍る頭が当たり前の事実にやっと気がつく。ならば、と烈風刀は寝返りをうち、雷刀に背を向けた。これならもう何もないだろう。やっと眠れる。小さく息を吐き、彼は静かに瞼を下ろした。忍び寄る睡魔に身を全て委ね、あとは深い無意識の底まで静かに沈んでゆくだけだ。
首筋に何かが触れる感覚。わざと鳴らされた音に、また口づけをされたのだと分かった。
驚きとくすぐったさに、烈風刀は小さく声をあげる。それに気をよくしたのか、雷刀はまたその首筋に唇で触れた。ちゅ、ちゅ、と小さな音と共に少しかさついた唇が首筋をたどる。鼻先で髪を掻き分け生え際に、回り込むように喉元近くに、埋めるように潜り込んで肩口に。熱を孕む彼の唇が、日に焼けていない箇所を滑っていく。時折吐息が肌を撫でてこそばゆい。与えられる感覚に、烈風刀は小さく身じろぎをした。
気がつけば、腹に手が回され後ろから抱きすくめられていた。服越しに触れる手も、うなじをたどる唇も、ほのかにかかる息も、彼の全てが熱い。融かされてしまいそうだ、などと眠気と熱でぼやける頭で考えた。
ん、とかすかに声を上げ、己を包む熱から逃れる。そのままこてんと寝返りを打ち、烈風刀は再度兄と向き合う。その顔は先程と違い、眠気だけでなく恥じらいの色が強く浮かんでいた。あれほど熱っぽく行為を繰り返されれば、さすがに眠気よりも気恥ずかしさの方が勝る。翡翠の瞳は、眠たさだけでなくじわじわと湧き上がる熱に潤んでいた。
「雷刀」
「なに?」
返事の代わりとばかりに、雷刀の唇が己のそれを撫でる。ゆるりと開いた目のすぐ先、紅玉の瞳にも熱が宿りつつある。くすぐったさと気恥ずかしさに、烈風刀は逃げるように俯いた。つっぱねるように彼の胸元に手を添える。その姿は縋り付いているようにも見えた。
「眠いのです。寝かせてください」
「えー」
どこか幼い音へと変わるその声に、雷刀は不満げな声を漏らす。逃がさないと言わんばかりに、その背中に手を回された。唯一無二の片割を抱くその腕は優しいもので、なにもかもじわじわと融かされてしまうような温かさと心地よさに包まれた。
「キスぐらいいいじゃん」
そう言ってまた一つ口づけが降ってくる。浅葱の髪に落ちたそれは、淡雪のようにすぐ溶けて消えた。明確な感覚のないそれを寂しいと思ってしまうことは言わないでおこう、と烈風刀は心地よさに包まれたまま考える。
「さすがにやりすぎですよ」
「ちょっとだけだし」
「『ちょっと』という数ではないでしょう」
このわずかな時間で何度触れ合ったのかなど分からない。確かに言えるのは、二人分の両手でも数えきれないということだけだ。触れては消え、与えられては失う熱は知らぬ間に己が内に蓄積されていく。燻るそれが心を掻き乱す。
「……起きたら、してあげますから」
好きなだけさせてあげますから、寝させてください、と投げやりな声が雷刀の耳をくすぐる。予想だにしない言葉に、彼の動きがぴたりと止まった。その顔には、喜びと戸惑いと猜疑が混じった、形容しがたい色が浮かんでいた。
行為自体が嫌なわけではない。言葉と行動で示さないが、烈風刀自身もその熱を欲しているのだ。好いているものに触れたい、当たり前の欲求である。
そう、求めていることは互いに同じなのだ。ただ、タイミングが悪いだけで。
「……そっか」
じゃあちゃんと寝なきゃな、と雷刀は頬を緩める。とんとんと腕の中の弟の背を優しく叩く姿は保護者のそれで、烈風刀は不服そうに目を細めた。しかし悔しいかな、それがとても心地よい。安心感が身体を包み、とろりと意識が緩やかに溶けていく。
おやすみ、とまた口づけ一つ。最後の温かみとともに、烈風刀は緩やかな眠りの闇に沈んだ。
畳む
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