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No.68

繋【ライレフ/R-18】

繋【ライレフ/R-18】
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精神的な諸々がそこそこ回復してきたのでリハビリという名の書きたいところだけ手癖で書き殴った性癖の塊。

「……、っ、ぁ」
 堪え噤んでいた口を開くと、声帯が細く掠れた音を奏でた。燃える情欲の炎に揺らめくそれが、背筋をそっとなぞる。駆けてゆく感覚に、熱を孕んだ吐息が漏れ出た。
 羞恥を振り払うように頭を振り、一度頬をシーツに預ける。白の上を泳ぐ碧が視界の端に映る。日常でよくある風景だというのに、今はその二色が妙に艶かしく思えた。
「烈風刀」
 甘い声が己の名を紡ぐ。汗ばんだ頬にわずかに張り付いた髪を退かす手つきは優しい。けれど、その指と声色には『目を逸らすな』と有無を言わせぬ命が乗せられていた。
「れふと」
 甘い甘い声が、再度己を示す音を紡ぐ。柔らかなそれは思考を溶かしていくようだった。否、思考など、それどころか身体も既にぐずぐずに溶かされている。何もかもをとろけさせるようなそれは最早毒と大差ないのではないか、と益体のないことを考える。その甘ったるい毒が全身に回ってしまった自分は、もう救いようなどないのだけれど。
 わずかばかりの抗いを乗せ、緩慢な動きで視線を正面に戻す。見上げた先の朱がどこか寂しそうに見えたのは気のせいか、それとも己の心情が反映されただけか。どちらにしろ、覗き込むその色がこちらを強く求めていることははっきりと見てとれた。
「らいと」
 真似して、毒が回った甘い声で名を呼ぶ。それだけで嬉しそうに頬を緩めるというのだから、彼は単純だ。そして、その笑みを見て安心感を覚える自分も大概である。
 額に口付け一つ。そんなかすかな触れあいだけで脳髄が痺れるのだから、この身体はもう彼に暴かれ、支配しつくされているのがよく分かる。熱に溺れた幼い声を漏らすと、紅玉が昏い光を宿したのが見えた。
 ゆっくりと身体を揺り動かされる。肉と肉が直接擦れるだけで、何故ここまで気持ちが良いのだろうか。度々疑問に思うそれも、腹の奥底から迫り上がる感覚に掻き消される。泣く子を宥め背中を叩くような緩いリズムだというのに、背筋を走り神経を焼く快楽は酷く鋭い。ぴりぴりとしたそれが全身を駆け、体躯を震わせる。反射的に収縮する度、熱に浮かされた内部で抱きしめたそれを強く意識してしまう。
「んっ、…………ぅ、あ……」
 ぐずぐずに溶けた脳味噌が、どろどろになった音をこぼす。己のはしたない声が耳すら犯していく。それは彼も同じなようで、息を呑むかすかな音が聞こえた気がした。抱えられた脚、その膝裏に差し入れられた手が薄い肉に食い込む。そんなわずかな反応でこの胸に喜びが広がるのだから、やはり自分は単純だ。
 身体が動く度、下部から音が響く。深く繋がった場所は、入念に注がれた潤滑油に塗れていた。それはまるで女が悦楽に愛液を溢れさせる様と同じように思えて、背筋がぶるりと震える。びりびりと神経を焦がすそれは、嗜虐の光を灯していた。鋭さを増した刺激に、きゅう、と彼を抱え込む肉洞が狭くなる。突然のそれにか、歯が軋む音が聞こえた。
「ッ……、そんなにイイ?」
 いたずらめいた視線と意地の悪い問いが降ってくる。ハ、とこぼした吐息は笑みにも似ているが、そこには愉快さや余裕など欠片も見えない。あるのは、獣欲に燃え盛る炎の輝きだけだ。
「……わ、るかった、ら……、こんなこと……っ、なる、わ、け……ぁ、ない…………で、しょう」
 そう言って、覆い被さる彼の腰に空いていた片足を絡める。ほんの少し引き寄せただけで繋がりが深くなったように思え、襲う情欲に小さく息を吐いた。安っぽい挑発だが思いの外効いたらしい、光る瞳が苦しげに細められた。
「そーだよな……っ!」
 仕返しと言わんばかりに、いきなり突き上げられる。内壁を勢いよく擦られ、頭を力いっぱい殴られたような快楽に思わず喉が仰け反った。だらしなく開いた口から、悲鳴になり損ねた嬌声があがる。見開いた目から大粒の雫が伝い落ちた。
「ッ……! ぁ、あっ…………、ぅ、あぁっ!」
 快楽を示す信号が脳に叩きつけられ、衝撃に声帯が震える。言葉とは到底言えない音の集合体は、砂糖を煮詰めたように甘ったるい匂いを発していた。恋人を――雄を誘惑する香りだ。
 涙で朧になる彼を求めるように、無意識に手を伸ばす。暗闇の中光を探るようなそれを、温もりが受け止める。手のひらがひたりと重なり合い、指と指とが自然に絡みあう。逃しはしないと言わんばかりに固く結ばれたそれに、心細さに冷えた心が満たされる。内に広がる幸福感に、ふわりと破顔した。
 情欲にとろけきった瞳、閉じることができず端から唾液を漏らす口、溢れた涙がいくつもの道を作るこの顔が酷い有様であることは、鏡を見ずとも容易に分かる。そんな醜い顔を晒すなど普段ならば決してないが、今この場では別だ。目の前の揺らめく朱は『目を逸らすな』と言っているのだから、それに従わねばならない。何より、心より愛する彼が己のあられもない姿に背筋を震わせるその様を見ていたかった。正反対の色をした二対の瞳が交わる。欲望に燃えたそれは、己を見つめる色を切望していた。
「ぅ、あっ…………らい、と……らいと、らいとっ」
「れふと」
 雛鳥が親鳥を呼ぶように愛し人の名を幾度も口にすると、熱を孕んだ声が己の名をなぞる。額に、瞼に、鼻に、頬に、唇に、柔らかな口づけが落とされた。焦がれていた感触に、心が満たされ、すぐさま渇きを覚える。奥底に秘めた獣の本能へと沈みゆくこの身体はどこまでも貪欲だった。より求め、白の海に放り出したままの片腕を彼の首に回す。首筋に顔を寄せ、甘えるように鼻先を擦りつけると、彼の香りと汗の香りが混じった匂いが鼻腔に満ちる。普段よりもずっと濃いそれが脳を揺らした。
「っ……、れ、ふと」
 切羽詰ったような声が鼓膜を震わせる。己が発するのと同じ、求める音に応え、内も外も彼を強く抱きしめた。離れたくないとばかりにしがみつくそこに幾度も熱塊が突き立てられ、その度に喉がとろけきった声を奏でる。淫らな音が薄暗い部屋を満たしていった。
「あっ、ひ、ぅ…………、ぅ、あ……、ぁっ……」
 呼吸と共に溢れる嬌声は、抱えた欲望の焔をはっきりと映し出していた。堪らえようにも、轟々と燃え上がるそれが許してくれない。閉じることなど忘れた口からは、本能がままに発する甘やかな音が漏れるばかりだ。
 れふと、と掠れた声。数瞬の後、肩口に鋭い痛みが走った。痛覚によりわずかにクリアになった思考を、すぐさま強い快感が掻き消す。甘さに溺れた脳味噌は、牙を立てられたことすらきもちのいいことだと認識した。がぶがぶと牙が何度も襲う。甘噛みと言うにはいささか激しいそれは、肌にはっきりとした赤い痕を残していくだろう。後で困るのは自分だというのに、今はそれが嬉しくて堪らなかった。衝動に任せ噛み付くほど興奮している。淫らに乱れた己を見て欲情している。我を忘れるほど激しく求めている。情欲に溺れゆく胸の内に、陰を帯びた焔が灯ったように思えた。
「らいと、らいとっ……!」
 首に回したままの腕を引き寄せる。頭を固定するようなそれは、もっと食らってくれと主張するようだった。獣めいた呻きが聞こえる。被虐を求めるようなそれに煽られたのか、それとも単に息苦しいのか。どちらか定かでないが、繋いだ手にぎゅうと力が込められたのが分かった。牙と共に、硬い欲望が内に突き立てられる。荒々しいそれに苦しさすら覚えるも、溢れ出るのは法悦に満ちた高い声ばかりだ。
 獣欲の底へと沈みゆく意識の端に白が浮かぶ。淡いそれがどんどんと存在を主張し、思考を塗り潰していく。かろうじて明瞭だった部分すら染め上げ、快楽という強い色に上書きしていった。薄暗い部屋の中、視界に細かな星が舞う。水が跳ねるようにぱちぱちと音をたて不規則に明滅するその幻は、頂点が近いということを如実に表していた。
 らいと、と必死に彼の名を呼ぶ。長く行為に及びとろけきった頭の中は、きもちのいいことと彼のことでいっぱいになっていた。
 らいと。れふと。らいと。れふと。存在を確かめ合うように、互いに互いの名前を呼ぶ。たったそれだけで脳髄が痺れた。彼の声が己の名を模る度に、肉の洞は猛る欲望に絡みついた。
 声と声とが重なり、呼吸が重なり、唇が重なる。動く度に溢れる声は、互いの口の中に飲み込まれた。くぐもったそれはシロップのように甘く思えて、ねだるように舌を伸ばした。ぐちぐちと交わった場所から淫猥な水音があがる。鼓膜を通り抜けた響きが、直接思考をぐちゃぐちゃに掻き乱していく。
 ごつん、と鈍い音が聞こえた気がした。
 好む一点を強く抉られた瞬間、目の前に激しく火花が散った。衝撃のあまり目を見開いたというのに、視界は真っ白に塗り潰され何も見えない。ただ、内部に咥え込んだそれの形だけははっきりと分かった。
 ぴぃん、と強く張られた糸のように爪先までまっすぐに硬直する。唯一仰け反った喉から悲鳴になり損なった音が響いた。きゅうぅ、と熱塊を咥え込んだそこが強く締まる。激しく脈打つそれの存在を今一度認識し、受け入れた場所が悦びにきゅうきゅうと抱きついた。
 腹の辺りに生温かいものが散っていることに気づく。果てたのだと理解して、は、と肺の奥底から深く息を吐いた。倦怠感がどっと押し寄せてくる。首に回していた手から力が抜け、ぱたりと皺だらけのシーツの上に落ちた。
「――ぅ、あッ!?」
 落ちるはずだった。
 足を掴んだ彼の手に力が込められる。そのままぐいと体重が掛けられ、押し潰すように腰が押しつけられる。焼けた刃が柔い秘肉を貫く感触に、大きく目を見開いた。一度凪が訪れた身体を暴風が襲う。普段ならばとうに過ぎ去るはずの快感が、絶える事無くどんどんと押し寄せてくる。熱を吐き出したことにより幾分かクリアになったとはいえ、まだ快楽の海に身を委ねた脳味噌では理解が追いつかなかった。
「れふとっ、ご、め……! も、ちょっと、だけ、だからぁ!」
 荒い息の中、必死な音がこぼれ落ちてくる。果てたばかりの身体を今まで以上激しく揺り動かされ、喉が変な音をたてた。ひくつくナカを硬い欲が勢いよく擦り上げていく。柔い肉で必死に抱き止めるそれが、拘束を振り解くように一気に抜かれ、浅い部分から深い部分まで突き進む。好い部分までごりゅごりゅと音をたてて容赦なく擦られ、意識が飛びそうになる。消え行きそうなそれを、快感が無理矢理引き戻す。理解していた以上に凶暴なそれは、ひとりで逃げることなど許してくれなかった。
「あ、ッ……うぁ、あ! ひ、ぃ……やっ、ぁ…………!」
 肉と肉がぶつかりあう度にあがる声は、嬌声と言うよりも悲鳴と表現した方が相応しく思えた。声と共に、先程欲を吐き出し終えたはずの場所からびゅくと雫が幾度も漏れる。押し出されたようなそれが更に腹を白で汚し、にちにちと卑猥な音をたてた。頂点まで登り詰めたはずなのに、情欲は猛るばかりで落ち着く様子は一切見られなかった。果てたはずなのに、果てが見えない。ずっと宙に吊られたままのような感覚に、ぞわりと心が粟立った。
 快楽の荒波に揉まれる中見えた彼は、熱にとろけきった瞳でこちらを見つめていた。瓜二つと評されるそのかんばせは、まるで肉欲の溺れる己を映す鏡のようだった。彼も同じぐらいきもちよくなっているのだという喜びと、許容量を超えそうな快楽への恐怖がぐちゃぐちゃに混じり、胸の内を支配していく。それら全て、内部を我武者羅に突き上げられる衝撃と情動に搔き消された。
 ごめん、と謝罪の言葉をひたすら繰り返すも、その身体は欲望がままに突き動いていた。抱き込むそこがめくれ上がりそうなほど勢いよく引き抜かれ、腹を突き破りそうなほど強く押し込まれる。配慮など全くない、本能に身を任せた――つがいを確実に孕ませんとする動きだった。
 ならば、と首に回した手と腰に絡めた足に力を込める。絶対に離れまいと――注ぎ込まれるであろう子種すべてをこの腹で受け止めようと、覆い被さる彼にしがみついた。しっかりと手入れされた爪が彼の背に刺さる。痕がつく懸念よりも、離れてしまう不安が勝った。傷付けてでも離れない、離れたくないと身勝手な心が叫ぶ。諫める理性などとうに失った身体は、情動がままに動いた。
 快楽を認識した神経が、その信号を脳味噌に叩きつける。受容限界を超えてなお送られるそれは、暴力と言っても差し支えないものだった。声帯がはしたない音を奏でる。みっともないほどぼろぼろと涙がこぼれる。それでも欲しくて、彼が欲する全てを捧げたくて、必死に繋いだ手に握り締めた。
「ぅ、あっ……、ぁ、れふとっ、れふとぉ……!」
 ごん、と鈍い音が響くほど力強く突き上げられた後、腹の奥底に熱いものが勢いよく注ぎ込まれた。臓腑を焼き尽くすようなそれに、しがみついた身体がきゅうと丸く縮こまる。頭の中で膨れ上がった何かが音をたてて弾け、繋がった場所が今一度強く収縮する。幾度目かの絶頂を味わったのだと理解した頃には、腹の中は彼が吐き出した欲望で満たされていた。
 ようやく高みに達した彼が、ゆっくりとのしかかってくる。脱力しきったその身体は重いが、気にする余裕など互いに持ち合わせていなかった。汗ばむ肌が重なるのは不快だろうに、今ばかりは心地良さすら覚えた。痛いほど駆動する心臓の音がふたつ合わさる。合奏のようなそれが安堵で胸を満たしていった。
 れふと、れふと、と何度も呼ぶ声はとろけた甘いものだ。囀りのようなそれに応え、らいと、と名前を呼ぶ。己の声も酷く甘ったるいものだった。
 少しばかり回復したのか、重なった彼が片肘をつき身を持ち上げる。わずかばかりの寒さを覚えるが、求め動こうにも倦怠感が邪魔をした。
「……ご、めん。また、噛んじまって」
 まだ乱れた呼吸の中、眉を八の字に下げ謝る姿は、先程まで肉に食らいついていた様子からは想像できないものだ。うぅ、と呻き声一つ、再び肩口に顔を寄せた彼は、肌に浮かぶ赤を労るように舐めた。浅い傷口に唾液が染みるわずかな痛みと、行為を想起させるように肌を舌がなぞる感覚が、そわりと背筋を撫でる。まるで温和な犬のように思えるが、実態は猛る獣だ。またいつ噛み付くか――スイッチを切り替え、激しい行為に及ぶか分かったものではない。気怠い腕を持ち上げ、朱い頭を後方へと押しやる。抵抗と言うには弱々しいが、従順な彼はすぐに口を離した。うぅ、とまた後悔が色濃く滲んだ呻き声があがる。しゅんと項垂れる姿は、やはり人懐っこい犬のように見えた。
 ちらりと痕に目をやり、仕方がないな、と言いように深く溜め息を吐く。責任の所在はそちらにある、と主張する稚拙な演技だ。責任など、強く抱き締め牙を求めた自分と半々なのに、そう言っては彼はまたもごもごと後悔の言葉を漏らすのだ。事後の甘さを掻き消すような無粋なそれは、面倒くさいの一言に尽きる。ならば、最初から押し付けておく方がいい。
 いいですよ、と、肌に綺麗に並んだ赤をそろりと撫でる。酷くても皮膚が少し破れた程度だ、きちんと薬を塗ればすぐに治るだろう。寂しいなどと思ってしまうことは隠しておく。痕を残されることは嫌いではないが、調子に乗って量を増やされるのは日常生活に差し障る。今ぐらい――全てを知っている自分と彼には見えて、他人には悟られづらいぐらいがちょうどいい。
 んー、と少ししょげた声を漏らし、彼は反対側の首筋に顔を埋めた。肌を呼気が撫でる感触がくすぐったい。仕返しするように、真似して彼の首筋に鼻先を擦り付ける。脳味噌を揺さぶったあの濃い匂いは、いくらか薄れているように感じた。
 じゃれるように擦り付き合う内に、荒い呼吸が徐々に落ち着いていく。相手を求め、あれだけ高ぶり高鳴っていた心が凪いでいくようだった。
 ぬるり、と楔が内部から抜かれる。刺激を与えまいとゆっくり動くそれが愛おしく思え、小さく息を漏らす。彼自身はどんどんと離れていっているというのに、腹の中にはまだその熱が残っていることがどこか不思議に思えた。
 長い時間をかけ、ようやく繋がりが切れる。栓を失った後孔から温かなものがとろりとこぼれた。未だ悦びに浸った頭がもったいない、などと考える。浅ましい、と消え失せていたはずの理性が詰る。全て彼に与えられたものなのだ、失うことなどもったいないに決まっているではないか、と本能が声高に主張した。
 そんなはしたない思考が表に出ていたのか、そっと額に口付けが降ってくる。ぐちゃぐちゃになった己を落ち着かせようとする度、彼は優しく唇で触れるのだ。柔らかな感触と温度に、胸の内に温かなものが広がった。
 繋いだままの手を今一度ゆるく握る。離さないと言うように指と指が絡んでいることが酷く幸せに思え、ふわりと頬が緩むのが分かった。つられたように同じ笑みが返ってくる。目の前の穏やかな朱が愛しくて、浅く開いたままの口から音が二つこぼれ落ちた。

畳む

#ライレフ #腐向け #R18

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