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No.7
例えばのお話【ライレフ】
例えばのお話【ライレフ】
そろそろなんか書かないとなーということで診断メーカーからお題拝借。140字SSのだけど気にしない。
30mで終わらせるつもりが足りず。追加10mで合計40mSS。
貴方はライレフで『たとえばの話』をお題にして140文字SSを書いてください。
http://shindanmaker.com/375517
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「例えば、さ」
背もたれによしかかり、椅子の足を浮かせギコギコと揺らしていた雷刀が口を開く。烈風刀は作業する手を止める様子はない。どうせろくでもない話だ、真面目に聞いても仕方がない。
「オレが頭良かったらどうする?」
「どうもしないでしょう」
ありもしないことを、と烈風刀は続ける。冷たい言葉に雷刀はやる気なく声を上げた。酷くつまらなそうだ。
「例えばだって」
「ありえないことを例えてどうするのです」
「あり得ないことだから例えるんだよ。夢がないなー」
笑う雷刀を不機嫌そうに見る烈風刀。雷刀は気にする様子なく、そのまま天井を指すように指を立てた。
「例えば、冷音がずっと雨降った時の性格だったら」
「……赤志君が苦労しそうですね」
「灯色がキレそうだな。『眠れない』って」
「彼ならどれだけうるさくても眠れるでしょう」
授業中はもちろん、野外でもどこでも眠っている灯色だ。確かに睡眠の邪魔をされた時の彼は酷く不機嫌だが、その程度で起きるほど彼の眠りは浅くない。
「例えば」
「例えば?」
「レイシスが妹だったら」
雷刀の言葉に烈風刀の手がぴたりと止まる。どうしたのだろうと顔を窺うと真剣な表情で自身の指先を見つめていた。声をかけるのもはばかられ、彼が口を開くまで待つことになる。
「…………今も、妹みたいなものでしょう。変わりませんよ」
ようやく答えた声は妙に平坦だ。先ほどの表情と相まって本気で考え導き出した答え――いや、その上でぼかしたような答えにしか聞こえない。それがなんだか面白くなくて、雷刀はからかうように問うた。
「そんなに真剣に考える事か?」
「真剣になんて考えていませんよ。ただ想像してみただけです」
「やらしー」
「何がですか」
烈風刀の声に怒りの色が混じる。少し潔癖症の気がある彼をからかうにはどうも悪かったようだ。ごめんごめん、と謝って雷刀は言葉を続ける。
「例えば」
「……例えば」
「オレたちが双子じゃなかったら」
再び烈風刀の手が止まった。どういう意味だ、と訝しげに雷刀を見るが、彼は普段通りの表情でこちらを見ていた。しばらく彼を見つめた後、烈風刀は机の上の書類に目を戻り言葉を紡ぐ。
「きっと、関わることはなかったでしょうね」
「そうか?」
「貴方と私は成績も性格も真逆でしょう。話す機会はあまりないと思いますし、進路も違っていたでしょう」
雷刀の学力と烈風刀の学力には随分と差がある。この学園は雷刀の学力では難しい部類だったが、兄弟である烈風刀と同じ進学先にしたいと努力した結果入学することができた。もし烈風刀がいなければ、雷刀が自身の学力に見合わないこの学園を選ぶことはなかっただろう。
烈風刀の答えに雷刀は首を傾げ、彼の顔を見る。
「そうか? なんかかんか出会ってそうだけど」
「出会っても、こうやってずっと一緒にいるなんてことはありませんよ」
ただのクラスメイトで終わりです、と烈風刀は言う。雷刀は相変わらず不思議そうな表情でいたが、すぐにいつもの明るい表情に切り替わった。
「双子じゃなけりゃこんなことなってなかったと」
「……こんなことって」
どんなことですか、と問おうとして烈風刀は口を閉ざした。きっと茶化すような答えしか返ってこないだろう――もし行動で示されれば、困るのは自分だ。幸い、雷刀は楽しげに笑うばかりで追及する様子はない。
「やっぱ双子でよかったな」
「そうですね」
補色のように正反対の二人。それを繋ぐのは血縁という名の硬い糸。
その他に彼らを繋げるものはあったのだろうかなんて考えても仕方ないのだ。そう結論付けて雷刀は天井を仰いだ。
ふと、ペンを動かす烈風刀の手が止まった。教室に響いていた音がぱたりと止まり、どうしたのだろうとそちらに目をやると積み重ねられた書類を揃える烈風刀姿があった。
「終わりました。早く提出して帰りましょう」
「おう」
雷刀は反動をつけて椅子から立ち上がる。危ないですよ、と諌める烈風刀の声は聞こえていないようだ。
教室を出ようとする烈風刀の手を雷刀が握る。びくりと烈風刀の体が小さく震えた。
「いこうぜ」
雷刀は楽しげに笑って、握った手を引き廊下を駆けだす。突然のことに烈風刀は声を上げる暇もない。ただただ、彼の速度に合わせて足を動かすばかりだ。
こんなことも、双子でなければやることはなかったのだろうな。そもそも、手を握るなんてこともなかったのだろう。
双子だから。兄弟だから。こうやって繋がっているのだ。
そんなことを考えて烈風刀は小さく笑った。
夕暮れ茜色に染まる廊下に繋がった影が走っていく。
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#嬬武器雷刀
#嬬武器烈風刀
#嬬武器雷刀
#嬬武器烈風刀
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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「例えば、さ」
背もたれによしかかり、椅子の足を浮かせギコギコと揺らしていた雷刀が口を開く。烈風刀は作業する手を止める様子はない。どうせろくでもない話だ、真面目に聞いても仕方がない。
「オレが頭良かったらどうする?」
「どうもしないでしょう」
ありもしないことを、と烈風刀は続ける。冷たい言葉に雷刀はやる気なく声を上げた。酷くつまらなそうだ。
「例えばだって」
「ありえないことを例えてどうするのです」
「あり得ないことだから例えるんだよ。夢がないなー」
笑う雷刀を不機嫌そうに見る烈風刀。雷刀は気にする様子なく、そのまま天井を指すように指を立てた。
「例えば、冷音がずっと雨降った時の性格だったら」
「……赤志君が苦労しそうですね」
「灯色がキレそうだな。『眠れない』って」
「彼ならどれだけうるさくても眠れるでしょう」
授業中はもちろん、野外でもどこでも眠っている灯色だ。確かに睡眠の邪魔をされた時の彼は酷く不機嫌だが、その程度で起きるほど彼の眠りは浅くない。
「例えば」
「例えば?」
「レイシスが妹だったら」
雷刀の言葉に烈風刀の手がぴたりと止まる。どうしたのだろうと顔を窺うと真剣な表情で自身の指先を見つめていた。声をかけるのもはばかられ、彼が口を開くまで待つことになる。
「…………今も、妹みたいなものでしょう。変わりませんよ」
ようやく答えた声は妙に平坦だ。先ほどの表情と相まって本気で考え導き出した答え――いや、その上でぼかしたような答えにしか聞こえない。それがなんだか面白くなくて、雷刀はからかうように問うた。
「そんなに真剣に考える事か?」
「真剣になんて考えていませんよ。ただ想像してみただけです」
「やらしー」
「何がですか」
烈風刀の声に怒りの色が混じる。少し潔癖症の気がある彼をからかうにはどうも悪かったようだ。ごめんごめん、と謝って雷刀は言葉を続ける。
「例えば」
「……例えば」
「オレたちが双子じゃなかったら」
再び烈風刀の手が止まった。どういう意味だ、と訝しげに雷刀を見るが、彼は普段通りの表情でこちらを見ていた。しばらく彼を見つめた後、烈風刀は机の上の書類に目を戻り言葉を紡ぐ。
「きっと、関わることはなかったでしょうね」
「そうか?」
「貴方と私は成績も性格も真逆でしょう。話す機会はあまりないと思いますし、進路も違っていたでしょう」
雷刀の学力と烈風刀の学力には随分と差がある。この学園は雷刀の学力では難しい部類だったが、兄弟である烈風刀と同じ進学先にしたいと努力した結果入学することができた。もし烈風刀がいなければ、雷刀が自身の学力に見合わないこの学園を選ぶことはなかっただろう。
烈風刀の答えに雷刀は首を傾げ、彼の顔を見る。
「そうか? なんかかんか出会ってそうだけど」
「出会っても、こうやってずっと一緒にいるなんてことはありませんよ」
ただのクラスメイトで終わりです、と烈風刀は言う。雷刀は相変わらず不思議そうな表情でいたが、すぐにいつもの明るい表情に切り替わった。
「双子じゃなけりゃこんなことなってなかったと」
「……こんなことって」
どんなことですか、と問おうとして烈風刀は口を閉ざした。きっと茶化すような答えしか返ってこないだろう――もし行動で示されれば、困るのは自分だ。幸い、雷刀は楽しげに笑うばかりで追及する様子はない。
「やっぱ双子でよかったな」
「そうですね」
補色のように正反対の二人。それを繋ぐのは血縁という名の硬い糸。
その他に彼らを繋げるものはあったのだろうかなんて考えても仕方ないのだ。そう結論付けて雷刀は天井を仰いだ。
ふと、ペンを動かす烈風刀の手が止まった。教室に響いていた音がぱたりと止まり、どうしたのだろうとそちらに目をやると積み重ねられた書類を揃える烈風刀姿があった。
「終わりました。早く提出して帰りましょう」
「おう」
雷刀は反動をつけて椅子から立ち上がる。危ないですよ、と諌める烈風刀の声は聞こえていないようだ。
教室を出ようとする烈風刀の手を雷刀が握る。びくりと烈風刀の体が小さく震えた。
「いこうぜ」
雷刀は楽しげに笑って、握った手を引き廊下を駆けだす。突然のことに烈風刀は声を上げる暇もない。ただただ、彼の速度に合わせて足を動かすばかりだ。
こんなことも、双子でなければやることはなかったのだろうな。そもそも、手を握るなんてこともなかったのだろう。
双子だから。兄弟だから。こうやって繋がっているのだ。
そんなことを考えて烈風刀は小さく笑った。
夕暮れ茜色に染まる廊下に繋がった影が走っていく。
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