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No.189
カニかま、塩、黄色双子【嬬武器兄弟】
カニかま、塩、黄色双子【嬬武器兄弟】
いい双子の日ということで双子の話。意識したことないけどあれってサイズ関係あるのだろうか。
飯作ってくる嬬武器兄弟の話。
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白の中から黄色がこぼれ落ちる。常は一つだけのその色は、今日は二つボウルに受け止められた。
「おっ」
予期せぬ幸運に雷刀は思わず声を漏らす。なにせ前がいつだったかすら分からないほど久しぶりの出会いである。しかも今回はよりどりサイズの詰め合わせ、その中でも小さめのものを割った結果なのだから尚更だ。写真でも撮ろうかと尻ポケットに手を伸ばすが、すぐさまやめる。うっかりボウルの中に落としてしまうなんてことがあれば大惨事だ。
食卓で話そう。考えつつ、少年は流れるような手付きで小さい卵をもう二つ割る。四つの黄身と盛り上がる卵白に箸を立て、リズミカルに掻き混ぜた。溶き終わったところにカニ風味かまぼこと塩を投入し、油をたっぷり入れたフライパンで手早く焼き上げる。二つ作って皿に移し、並行して作っていた甘酢あんを掛け、仕上げに冷凍の小ネギを散らす。つやめく琥珀をまとった色鮮やかな黄色に緑が咲いた。見た目も味も完璧な――カニは偽物だが――カニ玉の完成だ。小さく鼻を鳴らし、食卓に運ぶ。先に作っておいた中華スープを温め直し、碗に移してこちらにもネギを散らす。事前に作って冷蔵庫に寝かせておいたほうれん草のナムルを小鉢に持ち付ける。今日は中華尽くしだ。主食は白米だけれど。
「運びますね」
「おっ、さんきゅ」
もう夕飯の時間を過ぎたのだろう、いつの間にか烈風刀がやってきていた。自然な足取りで食器と小鉢を運び、すぐさま戻って白米をよそい、また食卓へと戻っていく。雷刀も汁物を持ち、食卓についた。
いただきます、と声が二つ重なる。弟が用意してくれたスプーンを引っ掴み、兄はカニ玉を切り分ける。あんがこぼれるより先に口に運ぶと、甘酸っぱさと塩気、ほんのりと磯の香りが口いっぱいに広がった。行儀が悪いのを承知で米に載せ、また一口。即席の天津飯は、白米の甘さとカニ玉の濃い味が合わさって得も言われぬハーモニーを生み出した。
「そういやさ、今日の卵双子だったんだよ」
ナムルをつつきつつ、雷刀は先ほどの幸運を口にする。双子、と端を握ったところの烈風刀は復唱した。こうやって話してみると、やはり写真を撮っておいた方がよかったかと少しの後悔が足元にまとわりつく。けれども、食事中に携帯端末をいじるのはさすがに憚られる。すぐ見せられないなら別にいいか、とごま油をまとったほうれん草を一口食べた。
「珍しいですね」
「だろ? 目玉焼きにすりゃよかったかなー」
双子の卵というのはやはり視覚的にインパクトがある。それを活かさなかったのはもったいなかったか。卵にはまだ余裕があったのだからそれも一つの手だったのではないかと今更ながら考えた。
「夜に目玉焼きは物足りないですよ」
「明日の朝に回すとか?」
「冷蔵庫に入れるところないでしょう」
全て事実である。そこまでこだわることでもないか、と先ほどまでの思考を取っ払いながら朱はスプーンから箸へと持ち替える。そだな、と軽く応えて白米をかっこんだ。弟もあんをこぼさぬようカニ玉を口にする。
次はいつ出会えるだろうか。今度は目玉焼きにできるよう朝出てほしいのだけれど。そんなことを考えるが、そう簡単に再会できないことなど分かっている。けれども、一度得た物は期待をしてしまうのだ。
すっぱさちょうどいいですね。だろ。他愛も無い言葉を交わしながら食事は進む。琥珀で満たされた白い皿の上はどんどんと元の色を取り戻していった。
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#嬬武器雷刀
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SDVX
2024/11/25(Mon) 23:43
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カニかま、塩、黄色双子【嬬武器兄弟】
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「おっ」
予期せぬ幸運に雷刀は思わず声を漏らす。なにせ前がいつだったかすら分からないほど久しぶりの出会いである。しかも今回はよりどりサイズの詰め合わせ、その中でも小さめのものを割った結果なのだから尚更だ。写真でも撮ろうかと尻ポケットに手を伸ばすが、すぐさまやめる。うっかりボウルの中に落としてしまうなんてことがあれば大惨事だ。
食卓で話そう。考えつつ、少年は流れるような手付きで小さい卵をもう二つ割る。四つの黄身と盛り上がる卵白に箸を立て、リズミカルに掻き混ぜた。溶き終わったところにカニ風味かまぼこと塩を投入し、油をたっぷり入れたフライパンで手早く焼き上げる。二つ作って皿に移し、並行して作っていた甘酢あんを掛け、仕上げに冷凍の小ネギを散らす。つやめく琥珀をまとった色鮮やかな黄色に緑が咲いた。見た目も味も完璧な――カニは偽物だが――カニ玉の完成だ。小さく鼻を鳴らし、食卓に運ぶ。先に作っておいた中華スープを温め直し、碗に移してこちらにもネギを散らす。事前に作って冷蔵庫に寝かせておいたほうれん草のナムルを小鉢に持ち付ける。今日は中華尽くしだ。主食は白米だけれど。
「運びますね」
「おっ、さんきゅ」
もう夕飯の時間を過ぎたのだろう、いつの間にか烈風刀がやってきていた。自然な足取りで食器と小鉢を運び、すぐさま戻って白米をよそい、また食卓へと戻っていく。雷刀も汁物を持ち、食卓についた。
いただきます、と声が二つ重なる。弟が用意してくれたスプーンを引っ掴み、兄はカニ玉を切り分ける。あんがこぼれるより先に口に運ぶと、甘酸っぱさと塩気、ほんのりと磯の香りが口いっぱいに広がった。行儀が悪いのを承知で米に載せ、また一口。即席の天津飯は、白米の甘さとカニ玉の濃い味が合わさって得も言われぬハーモニーを生み出した。
「そういやさ、今日の卵双子だったんだよ」
ナムルをつつきつつ、雷刀は先ほどの幸運を口にする。双子、と端を握ったところの烈風刀は復唱した。こうやって話してみると、やはり写真を撮っておいた方がよかったかと少しの後悔が足元にまとわりつく。けれども、食事中に携帯端末をいじるのはさすがに憚られる。すぐ見せられないなら別にいいか、とごま油をまとったほうれん草を一口食べた。
「珍しいですね」
「だろ? 目玉焼きにすりゃよかったかなー」
双子の卵というのはやはり視覚的にインパクトがある。それを活かさなかったのはもったいなかったか。卵にはまだ余裕があったのだからそれも一つの手だったのではないかと今更ながら考えた。
「夜に目玉焼きは物足りないですよ」
「明日の朝に回すとか?」
「冷蔵庫に入れるところないでしょう」
全て事実である。そこまでこだわることでもないか、と先ほどまでの思考を取っ払いながら朱はスプーンから箸へと持ち替える。そだな、と軽く応えて白米をかっこんだ。弟もあんをこぼさぬようカニ玉を口にする。
次はいつ出会えるだろうか。今度は目玉焼きにできるよう朝出てほしいのだけれど。そんなことを考えるが、そう簡単に再会できないことなど分かっている。けれども、一度得た物は期待をしてしまうのだ。
すっぱさちょうどいいですね。だろ。他愛も無い言葉を交わしながら食事は進む。琥珀で満たされた白い皿の上はどんどんと元の色を取り戻していった。
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