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No.214

めくるめくめくりめくり【ス腐ラトゥーン】

めくるめくめくりめくり【ス腐ラトゥーン】
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いっぱい着てるの脱がせていくのエロいよね……というヘキが爆発したもの。イカ×イカ。便宜上名前がある。
不服ながらも脱がされるイカ君とウッキウキで脱がすイカ君の話。

 布と肌が擦れる音が己の腹の上から響いてくる。音が鳴るのと同じだけ肌寒さを覚えていった。皮膚の上を服が滑る感覚など、服が脱げる感覚など、肌が晒されていく感覚など、生きていれば毎日味わうものだ。嫌というほど、否、嫌と思う暇すら無いそれだというのに、今ばかりは心拍数を上げていく。跳ねる心臓がそのまま胸部を盛り上がらせてしまうのではないか、なんて馬鹿げた考えが輪郭を失いつつある頭をよぎった。
 服を押し上げる手は胸の下で動きを止めた。布を放り出した手がわざとらしく腹の上をゆっくりと滑っていく。年頃の割には鍛わった腹が一瞬硬くなった。息を吐き損ねた喉が変な音をたてる。
 ハーフパンツのウエストに角張った指が差し込まれる。引っ掻くようなそれに、また身体中の筋肉が強張る。指の主は気にする様子無く、もう片方の手もハーフパンツにかけた。しかと掴んだそれが、バトル中でも食らいついて身体を守る布地を引きずり下ろしていく。外壁の下から現れたのは肌ではない、鮮やかなグリーンの線が走る黒い布地だ。スパッツはまだ持ち主の身体を守ろうと健気に仕事をこなしていた。
「……なぁ」
 こちらを呼んでいるであろう声に、エンは視線で返す。いつの間にか細くなっていた視界の中、恋人であるカラはじぃと腹――というよりも、脱がしたばかりの股ぐらを見つめていた。行為中とはいえあまりにも露骨なそれに、覆い被さるその身体をつま先で軽く蹴る。いてぇって、と微塵も思っていないであろう言葉が飛んできた。
「いっつも思うんだけどさ」
 種族特有の大きな手が、スパッツの丈夫な布越しに太ももを撫でる。一枚の壁があるというのに、熱を持ち始めた肌はやけに鋭敏にその存在を感じとった。擦れる度にぞわぞわと何かが神経を駆け巡っていく。くすぐってぇ、と言葉にして訴えることでその正体を無理矢理確定させた。
「何枚も脱がしてくのってエロいよな」
「……は?」
 降ってきた言葉に、組み伏せられた少年は間抜けそのものの声を漏らす。何を言ってるんだこいつは。懐疑たっぷりの視線でカラの顔を見る。言葉の主は至極真剣な顔で股ぐらを眺め、毛布を品定めするようにスパッツに包まれた足を依然撫でていた。紫の瞳の中、いつもの掴み所のない色は鳴りを潜めている。代わりに、燃え盛るような揺らめきと輝きがあった。手が動いて、擦れた皮膚が神経を通して感覚を脳味噌にぶちこむ。先ほど『くすぐったい』と自ら定義付けたはずなのに、信号を受けとった頭は違うと大声で捲し立てた。
「いやさ、なんか焦らしてく感じでエロいじゃん」
「訳分かんねーこと言ってんじゃねーよ」
 相変わらず理解しがたい理論を並べ立てていくカラに、エンは赤い目をこれでもかというほど眇める。恋人が独自の感性で意味の分からない理論を言い出すのはいつものことだが、ベッドの上では勘弁してほしい。そーゆー雰囲気にしてきたくせに、と心の中でごちる。付き合いは長いが、こういう部分は未だに理解ができないままであった。
 腕をつき、少年はシーツに放り出された――好き放題されていた足を動かして起き上がろうとする。熱でぼやけ始めた思考はすっかりと元のソリッドな輪郭を取り戻していた。こんな状態で続きをするなど無茶だ。はぁ、と呆れにも諦めにも似た溜息を吐くと同時に、肩に何かが触れた。掴まれたのだと気付いた頃には、再びマットレスに身を委ねていた。疑問形の息が薄く開いた口から漏れる。
 たくし上げられたシャツがわだかまる胸を、ほんの数分前に剥き出しにされた腹を、まだ城壁一枚残した足を、やけに温度がある手が撫でていく。熱が移動する度、皮膚が擦れる度、おもちゃのように小さく身体が跳ねる。たったそれだけの刺激で沈めたはずの炎に火が再び灯っていく。
「オモムキがあんじゃん。ワビサビってやつ?」
「意味分かんねーこと言ってんじゃねーよ!」
 触れられていない方の足を曲げ、エンは覆い被さる恋人の腹を力いっぱい蹴っ飛ばす。詰まって濁った音が上から落ちてきた。いってぇ、と震える声が続けて降ってくる。それでも、太ももにかけた手は離れることはない。むしろ支えにするように強く押してくる。それすらも毛羽立つ感情を刺激する。
「ヤる時に言うことかよ!」
「思っちまったからしかたねーだろ!」
「なくねーよ! いい加減口閉じること覚えろ!」
 組み伏せ、組み伏せられた少年たちは互いに引くことなくぎゃあぎゃあと喚き立てる。先ほどまで二人を包んでいたどこか薄暗い、何だか悪いことをしているような、けれども魅力的で甘ったるい空気など、全て粉々になって霧散していった。蜃気楼か何かだったのかと疑うほど、もう欠片一つ残っていない。日常が戻ってきてしまっていた。
 あー、と濁った大声をあげエンは身を起こす。足に半分引っかかっていたボトムスに手を伸ばした。もう一度カラの腹を蹴り飛ばし、空間を作る。少年は狭いスペースの中で器用に履いていく。は、と溜め息にも似た疑問形の音が降ってきた。
「何で着てんの?」
「こんな状態でヤってられっかよ」
 訝しげに、ともすれば咎めるようにカラは言う。棘たっぷりの言葉で返事してやった。はぁ、と半分裏返った声とともに、起こした身が勢いよく倒れていく。何度も重い身体を叩きつけられたマットレスが鈍い抗議の声をあげた。
「ヤれるだろ。ヤんねーと収まんねーよ」
 下品極まりない言葉と正反対、腹立たしくなるような可愛らしくむくれた顔で恋人は告げる。眉を寄せるとほぼ同時に、手を取られ引っ張られる。導かれた先で手のひらに感じたのは、膨れた硬い何かと布越しでもはっきりと分かる熱だ。少年の眉間に刻まれた皺が更に深く、はっきりとしたものになる。
「何で萎えてねーんだよ。馬鹿か?」
「馬鹿はそっちだろ。勝手に終わらせんな」
 正気を疑うと言わんばかりの視線を向ける。刺すようなそれを浴びる当人は、同じように眉を寄せ、カラストンビを剥き出しにした。街中で大きい方の猫を狙う小さい方の猫を彷彿とさせるものだ。つまり、覇気があるようでどこか間抜けだ。
「こうやってさ」
 いたずらげな声とともに、中途半端に履いたボトムスに再びカラの手がかかる。汗が肌を伝うのと同じ速度で指が動いていく。すっかり萎びた中心に引っかかることなく、するすると音をたてて布が剥がされていく。あっという間に足の守護者はスパッツ一枚だけになってしまった。蹴り飛ばしてやろうにも、ボトムスは先ほどと違い足を動かしづらい位置まで引きずり下ろされていた。明らかに故意である。独特の思考を持つ脳味噌にはちゃんと学ぶ機能は備わっているようだ。これ見よがしに舌打ちをした。
 布一枚になった太ももを、また手が這い回っていく。ぞわぞわと肌が粟立って、神経がそわだつ。くすぐってぇっつってんだろ、と己に言い聞かせるように吐くも、頭はこれを待ちわびていたものだと訴えた。気にする様子無く、恋人の手は布の上を我が物顔で這っていく。筋肉の形を確認するように、まだ柔さが残る肉を楽しむように、手は、指は、足を撫で回す。たったそれだけだというのに、腰の周りに、腹の奥底に何かが宿っていく。消し飛んだはずの炎がだんだんと姿を現し、やわい刺激を燃料に燃え盛っていく。ただ呼吸しただけのはずなのに、吐き出した息は不自然なほど短くなってしまった。
 太もも全てを味わっていた手が、するすると上がって腰の辺りで止まる。張り付くスパッツ、そのウエスト部分に指がかけられた。思わず飲み込んだ息が喉に引っかかって変な音をたてる。気にすることなく、カラはゆっくりと布を引きずり下ろしていく。焦らすような、嬲るような動きだった。ゆっくりと、確実に、常に守られて日に焼けていない健康的な肌が、機能美に満ちた――つまりは色気の一つも無い下着が、朱を帯び始めた昼の光の下に晒される。てめぇ、と反射的に悪態を吐く。
「何枚もゆーっくり脱がしていくのってエロいじゃん? これからエロいことすんのが強調されてくっつーか」
 返事はろくなものではなかった。その上、鼻歌でも歌い出しそうなご機嫌な調子である。また一撃加えてやろうとするが、ボトムスとスパッツの二枚で押さえられた状態では蹴り上げることは難しかった。クソが、と鋭く言葉を吐く。
「……知るかよ」
 呟くように、溜め息のように吐き出して、エンは天井を仰ぐ。エロい云々は分からない。ただ、焦らされているのも、これから何が起こるのかを告げてくるのも、全部一連の動きで理解してしまった。理解できてしまった。理解などしたくないのに、情欲の炎に炙られた身体はお行儀良く学んでしまったのだ。クソが、とまた吐き捨てる。今度は先ほどより勢いの無い、どこか切羽詰まった響きをしていた。それが腹立たしくて仕方が無い。聞こえてくる笑声が火に油を注いだ。
 今度から短パンだけにする。エンは心の中で強く宣言する。もう恋人の訳の分からない感性に振り回されるのはごめんだ。こんな焦らしプレイもどきに付き合わされるなど勘弁だ。何より、こんなことを何度もされては着替える時に意識してしまいそうなのが嫌だった。風呂の度にこいつのことを思い出すなど考えたくもない。
 ようやく、下着に――中心にシルエットが浮かびつつある下着に指がかかる。散々嬲られおあずけをされていた脳味噌が快哉を叫ぶのが聞こえた気がした。
畳む

#オリイカ#腐向け

スプラトゥーン


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