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No.147
E:うさみみ【ニア+ノア+嬬武器】
E:うさみみ【ニア+ノア+嬬武器】
8/21はバニーの日!
ということで兎といえばニアノアちゃん。ついでに嬬武器兄弟。たぶんIV時空。
8/2に思いついたけど間に合わなかったのは秘密。
本文を読む
腕に抱えたノートの束、その一番上の一冊がコーティングされた表紙の上を滑って飛び出す。慌てて腕を傾け、胸の内に飛び込ませて受け止めた。もう落とすことはないように、山を少しだけ身体の内側に傾け胸に預ける形にする。束ねた冊数が冊数だけにかすかに圧迫感を覚えるが、ここから職員室まではさほど距離はない。我慢できる範囲だ。早く日直の仕事を済ませようと、烈風刀は提出物のノートたちと廊下を進んだ。
じゃんけんぽん。元気な声が二つ重なって空間に響く。耳慣れたそれは、職員室へと続く階段の方から聞こえた。ぐーりーこっ、と弾んだ掛け声と階段を軽やかに上る足音。聞き慣れた遊びの言葉とよく知る可愛らしい声に、少年は目元を緩めた。
足を進めると、当然ながら声はどんどんと大きく、近くなっていく。じゃんけんぽん、と元気な掛け声がまた重なる。ぱーいーなーつーぷーるっ、と大きく歩を進める言葉、その最後の一音とともに、大きな黄緑のリボンが揺れるのが視界に映った。見知った青と目が合う。可憐な口が大きく開き、頭の上に伸びる長いリボンがぴょんと跳ねた。
「あっ、れふとだー!」
三度目の合図の前に、己の名が挟まる。タッタッタ、と小さな足が軽快な足音を奏でる。えっ、れふと、と下の方からもう一つ声が聞こえた。タンッ、と跳ねるような足音から、一段飛ばしで階段を駆け上がってくるのが分かった。程なくして、青い双子が目の前に揃った。れふとれふとー、と幼い兎たちは囀りのように何度も名を呼んだ。
「懐かしいですね」
「そうなの?」
「今クラスで流行ってるよ」
ねー、とニアとノアは顔を向け合って声を重ねる。確かに、己が彼女らと同じほどの年頃にこうやって遊んでいた覚えがある。階段を上がっていく言葉もそっくりそのまま同じだ。学校課程丸々一つ飛ばすほど時が経っているのに、全く変わっていないというのも不思議なものだ。
ぴょんぴょんと、双子兎は忙しなく青の周りを跳びはねる。まだまだ成長中の小さな足が地を蹴る度、頭に付けたリボンカチューシャが身体と同じく上下に揺れた。腰元に付いたもふもふとした丸い飾りも弾む。軽やかな動きで跳ぶ様も、長い耳のようなリボンが舞う様も、尻尾のような飾りが揺れる様も、兎を彷彿とさせる。小動物そのものの愛らしさに、自然と口元が穏やかな笑みを形作った。
「どしたのれふと?」
「ノアたちのお顔、何かついてる?」
タン、と大きな足音一つと一緒に兎たちの動きが止まる。小さな丸い頭が鏡合わせのように傾いだ。確認するように、長い袖に包まれた手が柔らかな頬をぺたぺたと触る。
「あぁ、いいえ」
ただ遊ぶ姿を眺めていただけのはずだが、彼女らには不審に映ったらしい。相手はまだ幼いとは言えども歴とした女の子だ。無意識とはいえ、不躾に眺めるなど失礼にもほどがある。すみません、とすぐさま謝罪の言葉を紡いだ。
「兎みたいだなぁ、と思いまして」
「よく言われるよ!」
「れふとがくれた靴もウサギさんだしね」
そう言って、ノアは頭上の浅葱から自身の足下に視線をうつす。いつだって力強く、それでいて軽い姿で地を蹴る小さな足は、細い耳と可愛らしい顔模様が付いた鮮やかな黄緑の靴に包まれていた。数年前、あまりに廊下を飛んで自身も周りも危険に身をさらす彼女らを案じてプレゼントしたものだ。気に入ってくれたのか、その日から毎日のように履いて登校しているようだ。靴を贈ってからは、無闇矢鱈と廊下を跳んで回ることは減っていた。年数が経っているのに目立つ汚れがないことから、よく手入れしていることが分かる。随分と大切にしてくれているようだ。悩んだ末贈ってよかった、と歓喜と安堵が胸に広がった。
「ウサギさん、似合ってる?」
靴を見せつけるように片足を上げ、ニアはモデルのように軽くターンをする。つま先と一緒に緑の兎が小さな円を描いた。
「えぇ。とても」
己がプレゼントしたものを褒めるのは何だか自画自賛のようで気が引けるが、マリンブルーに身を染める彼女らにライムグリーンの靴が似合っているのは事実である。心からの賛辞に、少女らは顔を向かい合わせる。にへへー、とはにかみによく似た笑声が二つあがった。
ウサギさん、ウサギさん、と青兎たちは碧の周りを跳びはねて回る。こんな階段の近くではしゃいでは、足を踏み外して転げ落ちてしまうかもしれない。危ないですよ、とそっと窘めた。はーい、と靴が地面を叩く音が止む。素直なのはよいことだ。それでもまだうずうずとしている様子が見えるから気は抜けないのだけれど。
「……ねぇねぇ」
控えめな声とともに、制服の裾が引かれる感覚。見ると、こちらを一心に見上げる瑠璃色と目が合った。つやつやとした丸いそれは常から生命の輝きに満ちている。今は更に輝いて見えた。それも、悪い予感を覚えるような光り方だ。何だ、と少年は身を固くした。
「れふともウサギさん、やってみる?」
「え?」
にこりと笑うノアに、烈風刀は呆けた声を返す。ウサギさんをやる、とは一体どういう意味なのだろう。ウサギは動物であり、やるもなにもない。突然のものということもあってか、少女の言葉の意味が咀嚼できずにいた。
余って垂れるほど長い袖に包まれた手が、形の良い小さな頭に回される。そのまま、彼女は自身の象徴の一つと言っても過言ではないリボンカチューシャを外した。どうしたのだろう。跳ねて回って乱れた髪でも整えるのだろうか。いや、きちんと手入れされつややかな髪は整ったままだ。では、何故。疑問を抱えたまま眺めていると、ずい、とリボンが垂れたそれを目の前に差し出された。
「れふとにも似合うと思うなぁ」
「絶対似合うよ!」
妹兎の言葉に、姉兎も加勢する。ねー、と示し合わせたように顔を合わせた。付けて付けて、とねだる声と高い位置まで跳ぼうとする足音が廊下に響く。
キラキラと目を輝かせはしゃぐ青い双子とは正反対に、碧い少年は困ったような、悩むような表情を浮かべる。いくら懐いてくれている少女らの頼みとはいえど、この歳で、しかも男である己がカチューシャを付けるのには抵抗がある。それに、これは小学生である彼女らにぴったりなサイズの品だ。高校生の自分の頭には小さく、嵌めるのは難しいことは容易に分かる。
そもそも、目に灯った光の様子から、これが彼女らにとって一種のいたずらのような物であることが分かる。本気の頼みではなく、ただのお遊びだ。似合っている、という言葉もただの方便であるに決まっている。
「れふとの髪にすっごく似合うと思うなぁ……」
「ダメ……?」
アズライトの瞳が二対、エメラルドを見上げる。ことりと小首を傾げ、上目遣いで見上げ、弱々しい声で尋ねる姿は小さな子どもらしく可愛らしいものだ。その可愛らしさで全てを誤魔化し押し通そうとしているのだ。どうやら渋い顔を見て作戦を変えたらしい。素直で幼く見えて、こういう部分は妙に頭が回るのだ。
いたずらと分かっていても、頭ごなしに断るのは憚られた。子どもの願いを理由も無く切り捨てるのは良くないことだ。きちんと理由を説明して、納得してもらうのが一番である。
「すみません、僕にはサイズが合わな――」
「烈風刀ー!」
断ろうと切り出したところで、言葉は大声に阻まれた。聞き慣れた声に、三人揃って音の方へと向く。透き通る寒色の瞳三対に、四角いものを掲げて走り寄ってくる朱が鮮やかに映し出された。
「ごめん! オレ出し忘れてた!」
キュ、と靴が地面を擦る音とともに、双子の兄は目の前で止まった。振り上げていたノートを己の胸の内のノートの一番上に載せる。間に合ってよかったー、と少年はへにゃりと笑みをこぼした。
「あれ? 頭のやつ外してるの珍しいな」
己の隣、カチューシャを手に持ったままのノアを見て、雷刀は不思議そうに声を漏らす。言われてみれば、双子兎との付き合いは長いがこの髪飾りを外している姿を見るのは初めてである。本当に珍しい光景だ。女の子はお洒落をこだわりにこだわり突き通すものだと思っていたが、いたずらのために外してしまうあたりがいたずらっ子な彼女ららしい。
「あのねー」
「れふとに付けてー、って言ってたの」
青兎たちの言葉に、ルビーの目がぱちりと瞬く。顎に指を当て、ははぁん、とどこかいたずらげな声を漏らした。八重歯覗く口がにまりと笑みを形作る。
「いーじゃん。それぐらいやったげろよ」
「嫌ですよ」
丸い頭の妹兎から目を外した兄はひらひらと手を振り軽く言う。弟は眉間に皺を寄せて鋭く返した。ただでさえこんなに可愛らしい飾りを付けることに躊躇いを覚えるというのに、それが彼の前となれば尚更だ。少女らと同じぐらいいたずら好きな片割れの前でそんな愉快の姿を見せてはろくなことになるはずがない。
ふぅん、と朱は鼻を慣らす。再び顎に指を当て、何度か頷く。睨むのに近い視線で見やる碧など無視して、少年は依然カチューシャを持ったままの少女に手を差し出した。広げられた大きな手に、藍晶がぱちりと瞬く。にこりと笑みを浮かべ、無言で手の内にある髪飾りを渡した。
嫌な予感が胸を撫でる。静かに逃げようと一歩下がったところで、目の前の片割れは三歩距離を詰めてきた。筋が浮かび始めた手が、カチューシャを持った手が浅葱の頭に伸びる。素早い動きで頭に何かが付けられた。は、と疑問符がたっぷり付いた声が漏れる。今何をした、こいつは。
「おー、似合う似合う」
新たな様子に生まれ変わった弟の姿を前に、兄は呑気な声をあげる。頭部に締め付けるような軽い痛みを覚える。あのカチューシャを付けられたのだ、と気付くのはすぐだった。小学生女子の頭に合わせて作られた物が、高校生男子の頭に綺麗に嵌まるわけがない。無理に押されて入れられたのだ。締め付けを覚えるのは当然だ。
突然の事態とわずかな痛みに困惑している間に、雷刀は白いジャケットのポケットをゴソゴソと漁る。取り出したのは、携帯端末だ。何とか片手で持つことができるサイズのそれが、笑みを浮かべた顔の前で構えられる。カシャ、と電子のシャッター音が廊下に落ちた。
「ッ、なっ、何してるんですか!」
「いや、記念に」
「何の記念ですか!」
言葉の応酬の最中にも、カシャカシャとシャッター音が鳴り響く。こんな姿を、年相応ではないリボンカチューシャを付けた様を何枚も撮られている。羞恥と憤怒に顔が赤らむのが分かった。
やめなさい、と撮影を重ねる手を叩き落とそうとするが、両腕はクラス全員分のノートで塞がれていた。慌てて片手で抱え直し、手を伸ばす。もたついている間に、手が届かない位置まで距離を取られてしまった。ちゃっかりと青い双子も彼の後ろについて、れふと似合ってるー、とはしゃいだ声をあげていた。
「らいともウサギさんするー?」
「おー。やってみっかな」
はい、とニアはさらりとした髪からカチューシャを外し朱に手渡す。両手で丁寧に受け取った彼は、そのまま真紅の頭に小さな髪飾りを差し込んだ。ちょっとちっちぇーな、と苦笑が聞こえた。
スッと姉兎は空になった手を朱い兄に伸ばす。何か通じ合ったのだろう、少年はニィと笑い手にしたままの携帯端末を少女に渡した。そのまま、軽い足取りでこちらに駆けてくる。身構えるより先に、首に腕が回された。肩を掴まれ、ぐっと寄せられる。頬がくっつきそうなほど、顔と顔との距離が縮まった。
「お揃い!」
「おそろいだー」
「ウワギさんだー」
いぇーい、と陽気な声をあげ、雷刀はピースサインを作って双子に向ける。手渡された大きな端末を両の手で横に持ち、青兎はパシャパシャとシャッターを鳴らした。兄弟揃ってこんなふざけた格好をしているところを写真に収められている。それも、小さな子どもの前で。カァ、と顔に熱が一気に集中したのが分かった。
「三人とも!」
はしゃぐ朱と青に、碧は悲鳴めいた声をあげる。肩に回された手を外そうとするが、自由になっている腕はちょうど掴まれている側だ。無理な姿勢なこともあり、振り払うのは容易ではなかった。抜け出そうと身を捩るが、更に腕に力が入り顔が近づくだけだ。
何度シャッター音を聞いただろう、ようやく腕が外される。そのまま、頭に手が伸ばされた。瞬時に締め付けるような痛みから解放される。え、と声を漏らす間に、兄は自身の頭にも手を伸ばし、双子のお揃いのカチューシャを外した。どうやら己のものも外してくれたらしい。
返すなー、と朱い片割れは青兎にそれぞれの髪飾りを手渡す。ありがとー、と受け取って、ニアは代わりに携帯端末を返した。大きな手が小さな手から小型機器を受け取る。そのまま液晶画面を指で操り、満足げに頷いた。
駆け足に近い調子で近づき、背後から端末に手を伸ばす。予測されていたのか、軽く身をひねって躱された。思わず悔しげな声が喉から漏れる。
「消しなさい」
「バックアップ取ってからな」
「馬鹿なこと言っていないで消しなさい!」
「れふと、廊下で大きな声出したらダメだよ」
端末をタップして操る兄に、弟は鋭い声を向ける。諍いの最中、頭二つ下から冷静な声が飛んできた。思わずう、と口を噤む。正論であった。
少年が身を強張らせる間にも、兄は小型機械を操作する。宣言通り、クラウドサービスにアップロードしてバックアップを取っているのだろう。己の悲惨な姿がインターネット上に複製されていく現実に、軽いめまいを覚えた。信じたくない事実である。
「じゃ、ノートよろしく」
「ニアたちも帰るねー」
「れふと、また明日ねー」
三人揃って手を振り、階段を下っていく。タッタッタ、と急いだ調子の足音が三つバラバラに奏でられる。あっという間に人は失せ、少年はノートの束とともに一人取り残された。
はぁ、と重い溜め息を吐く。もういたずらされたのも、そんな姿を見られたのも仕方が無い、取り返しの付かないことだ。問題は写真である。レイシスたちに見られる前に何としても消させなければいけない。そのためにも、早く日直の仕事を済ませねば。碧は急いで階段を下った。
競歩に近い速度で廊下を進み、職員室の扉の前に立つ。自動ドアは音も無く開いた。失礼します、と普段よりもいささか早い調子で言い、古典担当の教師の席へと歩みを進めた。
「すみません、提出が遅くなりました」
「あぁ、気にするな」
謝罪の言葉に、オルトリンデは手を止め薄く笑って返す。こちらです、と渡した何十冊ものノートを片手で軽々と受け取り、彼女はそれを机の端に置いた。教育実習生である彼女は忙しく、早く仕事をこなしたいはずだ。だというのに、遅くなるなど申し訳ないことをしてしまった。それも全てあの双子兎とふざけた兄のせいなのだけれど。
「しかし珍しいな。そなたがそんなに髪を乱しているなんて」
頭を見つめる二色の瞳に、え、と少年は声を漏らす。ようやく自由になった手で、急いで頭を触る。確かに、朝整えたはずの髪は少し乱れていた。原因は言うまでもない。
「……色々ありまして」
「そうか」
気まずげに返す烈風刀に、戦乙女は気にする様子も無く頷く。当番お疲れ様、と労いの言葉が掛けられた。失礼します、と軽く礼をし、少年は早足で職員室を進む。出入り口で再度挨拶と一礼。急いで廊下へと出た。
廊下を早足、否、最早駆け足に近い調子で進んでいく。規律を重んじる彼ならば、普段は決してやらないことだ。『廊下を走ってはいけない』という初歩的なルールが頭から飛んでいくほど、聡明な頭は恥を収めた写真のことでいっぱいになっていた。
早く端末を奪わなければ。軽くなった腕を振り、碧は必死に足を動かした。
畳む
#ニア
#ノア
#嬬武器雷刀
#嬬武器烈風刀
#ニア
#ノア
#嬬武器雷刀
#嬬武器烈風刀
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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E:うさみみ【ニア+ノア+嬬武器】8/21はバニーの日!
ということで兎といえばニアノアちゃん。ついでに嬬武器兄弟。たぶんIV時空。
8/2に思いついたけど間に合わなかったのは秘密。
腕に抱えたノートの束、その一番上の一冊がコーティングされた表紙の上を滑って飛び出す。慌てて腕を傾け、胸の内に飛び込ませて受け止めた。もう落とすことはないように、山を少しだけ身体の内側に傾け胸に預ける形にする。束ねた冊数が冊数だけにかすかに圧迫感を覚えるが、ここから職員室まではさほど距離はない。我慢できる範囲だ。早く日直の仕事を済ませようと、烈風刀は提出物のノートたちと廊下を進んだ。
じゃんけんぽん。元気な声が二つ重なって空間に響く。耳慣れたそれは、職員室へと続く階段の方から聞こえた。ぐーりーこっ、と弾んだ掛け声と階段を軽やかに上る足音。聞き慣れた遊びの言葉とよく知る可愛らしい声に、少年は目元を緩めた。
足を進めると、当然ながら声はどんどんと大きく、近くなっていく。じゃんけんぽん、と元気な掛け声がまた重なる。ぱーいーなーつーぷーるっ、と大きく歩を進める言葉、その最後の一音とともに、大きな黄緑のリボンが揺れるのが視界に映った。見知った青と目が合う。可憐な口が大きく開き、頭の上に伸びる長いリボンがぴょんと跳ねた。
「あっ、れふとだー!」
三度目の合図の前に、己の名が挟まる。タッタッタ、と小さな足が軽快な足音を奏でる。えっ、れふと、と下の方からもう一つ声が聞こえた。タンッ、と跳ねるような足音から、一段飛ばしで階段を駆け上がってくるのが分かった。程なくして、青い双子が目の前に揃った。れふとれふとー、と幼い兎たちは囀りのように何度も名を呼んだ。
「懐かしいですね」
「そうなの?」
「今クラスで流行ってるよ」
ねー、とニアとノアは顔を向け合って声を重ねる。確かに、己が彼女らと同じほどの年頃にこうやって遊んでいた覚えがある。階段を上がっていく言葉もそっくりそのまま同じだ。学校課程丸々一つ飛ばすほど時が経っているのに、全く変わっていないというのも不思議なものだ。
ぴょんぴょんと、双子兎は忙しなく青の周りを跳びはねる。まだまだ成長中の小さな足が地を蹴る度、頭に付けたリボンカチューシャが身体と同じく上下に揺れた。腰元に付いたもふもふとした丸い飾りも弾む。軽やかな動きで跳ぶ様も、長い耳のようなリボンが舞う様も、尻尾のような飾りが揺れる様も、兎を彷彿とさせる。小動物そのものの愛らしさに、自然と口元が穏やかな笑みを形作った。
「どしたのれふと?」
「ノアたちのお顔、何かついてる?」
タン、と大きな足音一つと一緒に兎たちの動きが止まる。小さな丸い頭が鏡合わせのように傾いだ。確認するように、長い袖に包まれた手が柔らかな頬をぺたぺたと触る。
「あぁ、いいえ」
ただ遊ぶ姿を眺めていただけのはずだが、彼女らには不審に映ったらしい。相手はまだ幼いとは言えども歴とした女の子だ。無意識とはいえ、不躾に眺めるなど失礼にもほどがある。すみません、とすぐさま謝罪の言葉を紡いだ。
「兎みたいだなぁ、と思いまして」
「よく言われるよ!」
「れふとがくれた靴もウサギさんだしね」
そう言って、ノアは頭上の浅葱から自身の足下に視線をうつす。いつだって力強く、それでいて軽い姿で地を蹴る小さな足は、細い耳と可愛らしい顔模様が付いた鮮やかな黄緑の靴に包まれていた。数年前、あまりに廊下を飛んで自身も周りも危険に身をさらす彼女らを案じてプレゼントしたものだ。気に入ってくれたのか、その日から毎日のように履いて登校しているようだ。靴を贈ってからは、無闇矢鱈と廊下を跳んで回ることは減っていた。年数が経っているのに目立つ汚れがないことから、よく手入れしていることが分かる。随分と大切にしてくれているようだ。悩んだ末贈ってよかった、と歓喜と安堵が胸に広がった。
「ウサギさん、似合ってる?」
靴を見せつけるように片足を上げ、ニアはモデルのように軽くターンをする。つま先と一緒に緑の兎が小さな円を描いた。
「えぇ。とても」
己がプレゼントしたものを褒めるのは何だか自画自賛のようで気が引けるが、マリンブルーに身を染める彼女らにライムグリーンの靴が似合っているのは事実である。心からの賛辞に、少女らは顔を向かい合わせる。にへへー、とはにかみによく似た笑声が二つあがった。
ウサギさん、ウサギさん、と青兎たちは碧の周りを跳びはねて回る。こんな階段の近くではしゃいでは、足を踏み外して転げ落ちてしまうかもしれない。危ないですよ、とそっと窘めた。はーい、と靴が地面を叩く音が止む。素直なのはよいことだ。それでもまだうずうずとしている様子が見えるから気は抜けないのだけれど。
「……ねぇねぇ」
控えめな声とともに、制服の裾が引かれる感覚。見ると、こちらを一心に見上げる瑠璃色と目が合った。つやつやとした丸いそれは常から生命の輝きに満ちている。今は更に輝いて見えた。それも、悪い予感を覚えるような光り方だ。何だ、と少年は身を固くした。
「れふともウサギさん、やってみる?」
「え?」
にこりと笑うノアに、烈風刀は呆けた声を返す。ウサギさんをやる、とは一体どういう意味なのだろう。ウサギは動物であり、やるもなにもない。突然のものということもあってか、少女の言葉の意味が咀嚼できずにいた。
余って垂れるほど長い袖に包まれた手が、形の良い小さな頭に回される。そのまま、彼女は自身の象徴の一つと言っても過言ではないリボンカチューシャを外した。どうしたのだろう。跳ねて回って乱れた髪でも整えるのだろうか。いや、きちんと手入れされつややかな髪は整ったままだ。では、何故。疑問を抱えたまま眺めていると、ずい、とリボンが垂れたそれを目の前に差し出された。
「れふとにも似合うと思うなぁ」
「絶対似合うよ!」
妹兎の言葉に、姉兎も加勢する。ねー、と示し合わせたように顔を合わせた。付けて付けて、とねだる声と高い位置まで跳ぼうとする足音が廊下に響く。
キラキラと目を輝かせはしゃぐ青い双子とは正反対に、碧い少年は困ったような、悩むような表情を浮かべる。いくら懐いてくれている少女らの頼みとはいえど、この歳で、しかも男である己がカチューシャを付けるのには抵抗がある。それに、これは小学生である彼女らにぴったりなサイズの品だ。高校生の自分の頭には小さく、嵌めるのは難しいことは容易に分かる。
そもそも、目に灯った光の様子から、これが彼女らにとって一種のいたずらのような物であることが分かる。本気の頼みではなく、ただのお遊びだ。似合っている、という言葉もただの方便であるに決まっている。
「れふとの髪にすっごく似合うと思うなぁ……」
「ダメ……?」
アズライトの瞳が二対、エメラルドを見上げる。ことりと小首を傾げ、上目遣いで見上げ、弱々しい声で尋ねる姿は小さな子どもらしく可愛らしいものだ。その可愛らしさで全てを誤魔化し押し通そうとしているのだ。どうやら渋い顔を見て作戦を変えたらしい。素直で幼く見えて、こういう部分は妙に頭が回るのだ。
いたずらと分かっていても、頭ごなしに断るのは憚られた。子どもの願いを理由も無く切り捨てるのは良くないことだ。きちんと理由を説明して、納得してもらうのが一番である。
「すみません、僕にはサイズが合わな――」
「烈風刀ー!」
断ろうと切り出したところで、言葉は大声に阻まれた。聞き慣れた声に、三人揃って音の方へと向く。透き通る寒色の瞳三対に、四角いものを掲げて走り寄ってくる朱が鮮やかに映し出された。
「ごめん! オレ出し忘れてた!」
キュ、と靴が地面を擦る音とともに、双子の兄は目の前で止まった。振り上げていたノートを己の胸の内のノートの一番上に載せる。間に合ってよかったー、と少年はへにゃりと笑みをこぼした。
「あれ? 頭のやつ外してるの珍しいな」
己の隣、カチューシャを手に持ったままのノアを見て、雷刀は不思議そうに声を漏らす。言われてみれば、双子兎との付き合いは長いがこの髪飾りを外している姿を見るのは初めてである。本当に珍しい光景だ。女の子はお洒落をこだわりにこだわり突き通すものだと思っていたが、いたずらのために外してしまうあたりがいたずらっ子な彼女ららしい。
「あのねー」
「れふとに付けてー、って言ってたの」
青兎たちの言葉に、ルビーの目がぱちりと瞬く。顎に指を当て、ははぁん、とどこかいたずらげな声を漏らした。八重歯覗く口がにまりと笑みを形作る。
「いーじゃん。それぐらいやったげろよ」
「嫌ですよ」
丸い頭の妹兎から目を外した兄はひらひらと手を振り軽く言う。弟は眉間に皺を寄せて鋭く返した。ただでさえこんなに可愛らしい飾りを付けることに躊躇いを覚えるというのに、それが彼の前となれば尚更だ。少女らと同じぐらいいたずら好きな片割れの前でそんな愉快の姿を見せてはろくなことになるはずがない。
ふぅん、と朱は鼻を慣らす。再び顎に指を当て、何度か頷く。睨むのに近い視線で見やる碧など無視して、少年は依然カチューシャを持ったままの少女に手を差し出した。広げられた大きな手に、藍晶がぱちりと瞬く。にこりと笑みを浮かべ、無言で手の内にある髪飾りを渡した。
嫌な予感が胸を撫でる。静かに逃げようと一歩下がったところで、目の前の片割れは三歩距離を詰めてきた。筋が浮かび始めた手が、カチューシャを持った手が浅葱の頭に伸びる。素早い動きで頭に何かが付けられた。は、と疑問符がたっぷり付いた声が漏れる。今何をした、こいつは。
「おー、似合う似合う」
新たな様子に生まれ変わった弟の姿を前に、兄は呑気な声をあげる。頭部に締め付けるような軽い痛みを覚える。あのカチューシャを付けられたのだ、と気付くのはすぐだった。小学生女子の頭に合わせて作られた物が、高校生男子の頭に綺麗に嵌まるわけがない。無理に押されて入れられたのだ。締め付けを覚えるのは当然だ。
突然の事態とわずかな痛みに困惑している間に、雷刀は白いジャケットのポケットをゴソゴソと漁る。取り出したのは、携帯端末だ。何とか片手で持つことができるサイズのそれが、笑みを浮かべた顔の前で構えられる。カシャ、と電子のシャッター音が廊下に落ちた。
「ッ、なっ、何してるんですか!」
「いや、記念に」
「何の記念ですか!」
言葉の応酬の最中にも、カシャカシャとシャッター音が鳴り響く。こんな姿を、年相応ではないリボンカチューシャを付けた様を何枚も撮られている。羞恥と憤怒に顔が赤らむのが分かった。
やめなさい、と撮影を重ねる手を叩き落とそうとするが、両腕はクラス全員分のノートで塞がれていた。慌てて片手で抱え直し、手を伸ばす。もたついている間に、手が届かない位置まで距離を取られてしまった。ちゃっかりと青い双子も彼の後ろについて、れふと似合ってるー、とはしゃいだ声をあげていた。
「らいともウサギさんするー?」
「おー。やってみっかな」
はい、とニアはさらりとした髪からカチューシャを外し朱に手渡す。両手で丁寧に受け取った彼は、そのまま真紅の頭に小さな髪飾りを差し込んだ。ちょっとちっちぇーな、と苦笑が聞こえた。
スッと姉兎は空になった手を朱い兄に伸ばす。何か通じ合ったのだろう、少年はニィと笑い手にしたままの携帯端末を少女に渡した。そのまま、軽い足取りでこちらに駆けてくる。身構えるより先に、首に腕が回された。肩を掴まれ、ぐっと寄せられる。頬がくっつきそうなほど、顔と顔との距離が縮まった。
「お揃い!」
「おそろいだー」
「ウワギさんだー」
いぇーい、と陽気な声をあげ、雷刀はピースサインを作って双子に向ける。手渡された大きな端末を両の手で横に持ち、青兎はパシャパシャとシャッターを鳴らした。兄弟揃ってこんなふざけた格好をしているところを写真に収められている。それも、小さな子どもの前で。カァ、と顔に熱が一気に集中したのが分かった。
「三人とも!」
はしゃぐ朱と青に、碧は悲鳴めいた声をあげる。肩に回された手を外そうとするが、自由になっている腕はちょうど掴まれている側だ。無理な姿勢なこともあり、振り払うのは容易ではなかった。抜け出そうと身を捩るが、更に腕に力が入り顔が近づくだけだ。
何度シャッター音を聞いただろう、ようやく腕が外される。そのまま、頭に手が伸ばされた。瞬時に締め付けるような痛みから解放される。え、と声を漏らす間に、兄は自身の頭にも手を伸ばし、双子のお揃いのカチューシャを外した。どうやら己のものも外してくれたらしい。
返すなー、と朱い片割れは青兎にそれぞれの髪飾りを手渡す。ありがとー、と受け取って、ニアは代わりに携帯端末を返した。大きな手が小さな手から小型機器を受け取る。そのまま液晶画面を指で操り、満足げに頷いた。
駆け足に近い調子で近づき、背後から端末に手を伸ばす。予測されていたのか、軽く身をひねって躱された。思わず悔しげな声が喉から漏れる。
「消しなさい」
「バックアップ取ってからな」
「馬鹿なこと言っていないで消しなさい!」
「れふと、廊下で大きな声出したらダメだよ」
端末をタップして操る兄に、弟は鋭い声を向ける。諍いの最中、頭二つ下から冷静な声が飛んできた。思わずう、と口を噤む。正論であった。
少年が身を強張らせる間にも、兄は小型機械を操作する。宣言通り、クラウドサービスにアップロードしてバックアップを取っているのだろう。己の悲惨な姿がインターネット上に複製されていく現実に、軽いめまいを覚えた。信じたくない事実である。
「じゃ、ノートよろしく」
「ニアたちも帰るねー」
「れふと、また明日ねー」
三人揃って手を振り、階段を下っていく。タッタッタ、と急いだ調子の足音が三つバラバラに奏でられる。あっという間に人は失せ、少年はノートの束とともに一人取り残された。
はぁ、と重い溜め息を吐く。もういたずらされたのも、そんな姿を見られたのも仕方が無い、取り返しの付かないことだ。問題は写真である。レイシスたちに見られる前に何としても消させなければいけない。そのためにも、早く日直の仕事を済ませねば。碧は急いで階段を下った。
競歩に近い速度で廊下を進み、職員室の扉の前に立つ。自動ドアは音も無く開いた。失礼します、と普段よりもいささか早い調子で言い、古典担当の教師の席へと歩みを進めた。
「すみません、提出が遅くなりました」
「あぁ、気にするな」
謝罪の言葉に、オルトリンデは手を止め薄く笑って返す。こちらです、と渡した何十冊ものノートを片手で軽々と受け取り、彼女はそれを机の端に置いた。教育実習生である彼女は忙しく、早く仕事をこなしたいはずだ。だというのに、遅くなるなど申し訳ないことをしてしまった。それも全てあの双子兎とふざけた兄のせいなのだけれど。
「しかし珍しいな。そなたがそんなに髪を乱しているなんて」
頭を見つめる二色の瞳に、え、と少年は声を漏らす。ようやく自由になった手で、急いで頭を触る。確かに、朝整えたはずの髪は少し乱れていた。原因は言うまでもない。
「……色々ありまして」
「そうか」
気まずげに返す烈風刀に、戦乙女は気にする様子も無く頷く。当番お疲れ様、と労いの言葉が掛けられた。失礼します、と軽く礼をし、少年は早足で職員室を進む。出入り口で再度挨拶と一礼。急いで廊下へと出た。
廊下を早足、否、最早駆け足に近い調子で進んでいく。規律を重んじる彼ならば、普段は決してやらないことだ。『廊下を走ってはいけない』という初歩的なルールが頭から飛んでいくほど、聡明な頭は恥を収めた写真のことでいっぱいになっていた。
早く端末を奪わなければ。軽くなった腕を振り、碧は必死に足を動かした。
畳む
#ニア #ノア #嬬武器雷刀 #嬬武器烈風刀