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No.21

苛【嬬武器兄弟】

苛【嬬武器兄弟】
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pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。

お題:最弱の慰め[30m]

 ビー、と耳障りな音がコンソールネメシスの中に響く。手元にある画面は赤色に染まっていて、問題があることを強く訴えていた。
 しまった、と慌てて修正する。幸い些細なものだったようで赤い画面はすぐに元の物に戻った。慌ててメインシステムを管理しているレイシスに話しかける。
「すみません。そちら、不具合はありませんか?」
「大丈夫デスヨ」
「こっちもなんにもないぞ」
 レイシスはにっこりと笑い、遠くにいる雷刀も無事を告げる。気にしないでいいと言っているような、彼女の笑顔が痛かった。
「すみません」
 もう一度謝る。それに意味なんてあるのだろうか、などと考えながら烈風刀は作業に戻った。


 ソファに座り床を見つめる。両手で持ったコーヒーはすでに冷めていた。
 今日のミスが気掛かりで仕方ない。すぐに修正できるものだったが、もし取り返しのつかないものだったとしたら。想像しただけでぞっとする。
 レイシスの笑顔が思い浮かぶ。きっと彼女にとってはなんでもないことだったのだろう。けれども、烈風刀にとってはどんなに小さなものでも、重大なミスだった。
 彼女に迷惑をかけてしまった。その事実が、胸を苛む。
「どした?」
 背後から声。知らぬ間に雷刀が戻ってきたようで、立ったままソファーの背もたれに肘をついてこちらを見ていた。
「……なにも」
「ありそうな顔してる」
 雷刀は呆れた顔で烈風刀を見つめる。それがなんだか辛くて、烈風刀はそれから逃げるように手に持ったコーヒーを見つめた。
「どうせ今日のミスのことだろ? 別に何ともなかったじゃん。気にすんなって」
「貴方のように、簡単に忘れることなんてできないのです」
 慰める雷刀の言葉に八つ当たりのような言葉を返してしまう。あぁ、これでは雷刀にまで迷惑をかけているではないか。自分の行為に心底腹が立つ。そして、後悔ばかりが募る。
「烈風刀は完璧主義っつーか頑張りすぎっつーか。気にしすぎても仕方ないって。それで不都合でたら意味ねーじゃん」
 彼の言う通りだ。けれども、すぐに忘れることなどできない。迷惑をかけてしまったという事実を忘れてしまうことなど。
「あれだ、ほうおうもふでのあやまり? ってやつ」
「弘法です」
「なんでもいいや。間違いなんて誰でもあるって。ほら、オレだってよくやってるし」
「流石に貴方と比較されるのは嫌ですね……」
 悪びれる風もなく笑う雷刀に烈風刀は苦々しく顔を歪めた。まぁまぁ、と雷刀は誤魔化すように言葉を続ける。
「こんなオニイチャンをちゃーんとサポートしてくれるようなできる弟が、ちょっとぐらいミスしたって誰も責めないって」
「……誰か、でなく、自分の問題なのです」
 皆が許しても、自分が許せない。皆が気にするなと言っても、自分が気にしてしまう。迷惑をかけたという事実を忘れることなど、自分が許さない。
「烈風刀はよっわいなー」
「は?」
 突然の言葉に烈風刀は間抜けな声を出す。雷刀は気にする様子がなく、話を続けた。
「精神的にもろいっつーか、圧力に弱いっつーか」
「なんですかそれ」
 訳が分からない、と烈風刀は眉間に皺を寄せる。そんな彼の頭を雷刀は優しく撫でた。
「弱い弱い烈風刀君は、もっとオニイチャンやレイシスを頼っていいんだぞ?」
「……うるさい、です」
 精神面が脆いのは自覚している。そして雷刀の言葉は最もだ。
 そんな彼の慰めが辛い。こんなに女々しく弱々しい自分が嫌だ。
 烈風刀はカップの中身を見つめる。黒い湖面には、どこか疲れたような自分の顔が映っていた。

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#嬬武器雷刀 #嬬武器烈風刀

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