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No.20

独りの閑話【レイシス】

独りの閑話【レイシス】
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pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。

お題:イギリス式の笑い声[15m]

 少し大きめのカップに口をつける。ほう、と溜め息を吐いて温かなそれを両手で抱え、レイシスは宙を見上げた。
「美味しいデス」
 ティーバッグで淹れたとはいっても紅茶は紅茶だ。あまり紅茶に詳しくないレイシスにとっては、味も香りも遜色はない。イギリス産云々と書かれているそれは、休憩に飲むには十分に足りる味だ。
 眠気を覚ますならコーヒーが良いが、今日はなんだか紅茶が飲みたい気分だった。砂糖とミルクを少し入れて白く柔らかな色合いに変化したそれは、どこか甘い香りと共に気分を落ち着けてくれる。
 平日の真昼間ということもあって忙しさはない。むしろこの時間帯はマッチングをスキップする人が多く、レイシスがすることはいつもより少ない。
「暇、デスネ……」
 また紅茶を一口飲んで、溜め息一つ。
 今は一人だ。つまぶきも別の仕事をしているようで今はいない。もちろん、雷刀と烈風刀もだ。
 こうやって一人になるのは、とても久しぶりな気がした。いつもならば雷刀と烈風刀がいて、山ほどある仕事を手伝ってくれて。つまぶきも小さな体を精一杯使って補佐してくれて。その忙しさは今がない。コンソールネメシス内のたくさんの画面に映るものも少なく、それが更に寂しさを感じさせる。
 寂しいな。なんて言葉が思わず漏れる。誰もいない、誰もこないのは寂しい。あの忙しさが、騒がしさが恋しくなるようだ。
 忙しくないのが寂しいなんて。
「ワタシらしくありまセンネ」
 ふふ、と笑う。カップからのぼる湯気がふわりと揺れた。

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#レイシス

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