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No.33
比重【咲霊】
比重【咲霊】
咲霊書きたくなったので咲霊。重い話。
糖度調節間違った感が多少ある。
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さくや、と細い声で呼ぶと、なぁに、と柔らかな声が返ってくる。二人きりの時のいつもの甘ったるい色は欠片もなく、それがなんだか寂しい。それを察したのか、咲夜の白く細い指が霊夢の黒く艶のある長い髪を梳いた。慈しむようなその指は、屋敷全体の仕事を指揮し行っているということなど信じられないほど美しい。自分と違ってしっかり手入れをしているのだろうな、とぼんやり考える。
二人きりで会うと約束した時、咲夜は必ずこちらに訪れる。決して霊夢を屋敷に呼ぶことはしない。こちらから向かおうにも先回りして逃がさないように神社に来るのだ。仕事はいいのかと尋ねると、事前にしっかりと許可と休みを貰っていると言われた。公認よ、と楽しげに笑う彼女の顔をまともに見ることができなかったのは記憶に新しい。
けれど、少し不満だ。
感情が顔に出ていたのか、髪を梳く手が止まる。視線を上げると柔らかに笑んだ彼女と目が合う。
「嫌?」
「ちがう」
むしろ好きな部類だ。咲夜の手つきは優しく丁寧で安心する。それを直接言ったことはないが、彼女も分かっているようでそう、と短く返事して霊夢の頭を撫でた。
「咲夜」
「なぁに」
「……次は、あんたのとこじゃ駄目?」
呟くように尋ね、逃げるように彼女の胸に顔を埋めた。
彼女ばかりこちらに訪れるというのは少し面白くない。己の空間に彼女が様々な跡を残していくのは嫌ではない。でも、彼女が自分に跡を残すように、自分も彼女に跡を残したいのだ。
忘れぬように。
無くさぬように。
逃がさぬように。
彼女に、自分を刻み込みたい。
重いなぁ、と自嘲する。霊夢は物に執着する人間ではないが、どうしても手放したくない物もある。咲夜はそれに該当する。同時に独占したいものにも属する。要は、好きなのだ。お茶やお酒とは別の、代替のきかない離したくない離れたくないものだ。
そんな霊夢の考えを知ってかしらでか、咲夜はどこか困ったように笑った。
「ダメ」
「なんでよ」
思わずふてくされたような声で問うと、小さく唸るような声が聞こえた。いつでも冷静で瀟洒に振る舞う彼女にしては珍しい。上目遣いになるような形で見上げると、ゆらゆらと揺れる赤と目が合う。所在なさ気だったそれは意を決したようにこちらを見据え、困ったように笑った。
「貴方が家に来ると、お嬢様が会いたがるでしょう? 二人きりになろうにも、お嬢様から貴方を引き剥がすわけにもいかないし」
独り占めできないじゃない、と呟く声は拗ねた子供のようで、それでいて強い欲が滲み出ていた。
あぁ、咲夜も同じなんだな。安堵して彼女の胸に額を擦りつける。何も言わず咲夜はその背を撫でる。あやすようなその感覚と触れる温かさにとろりと瞼が落ちてくる。
「寝る?」
「ん」
肯定とも否定とも取れる返答をして霊夢は咲夜に身を寄せる。ふふ、と小さな笑い声が降ってきて、自身の背に彼女の両手が回った。そのままぎゅっと抱きしめられる。溶けて混じりあってしまいそうな温度なのに、安心感で胸がいっぱいになる。
一杯のはずなのに、もっともっと欲しくて自らも彼女の背に手を回した。
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#咲霊
#百合
#咲霊
#百合
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東方project
2024/1/31(Wed) 00:00
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さくや、と細い声で呼ぶと、なぁに、と柔らかな声が返ってくる。二人きりの時のいつもの甘ったるい色は欠片もなく、それがなんだか寂しい。それを察したのか、咲夜の白く細い指が霊夢の黒く艶のある長い髪を梳いた。慈しむようなその指は、屋敷全体の仕事を指揮し行っているということなど信じられないほど美しい。自分と違ってしっかり手入れをしているのだろうな、とぼんやり考える。
二人きりで会うと約束した時、咲夜は必ずこちらに訪れる。決して霊夢を屋敷に呼ぶことはしない。こちらから向かおうにも先回りして逃がさないように神社に来るのだ。仕事はいいのかと尋ねると、事前にしっかりと許可と休みを貰っていると言われた。公認よ、と楽しげに笑う彼女の顔をまともに見ることができなかったのは記憶に新しい。
けれど、少し不満だ。
感情が顔に出ていたのか、髪を梳く手が止まる。視線を上げると柔らかに笑んだ彼女と目が合う。
「嫌?」
「ちがう」
むしろ好きな部類だ。咲夜の手つきは優しく丁寧で安心する。それを直接言ったことはないが、彼女も分かっているようでそう、と短く返事して霊夢の頭を撫でた。
「咲夜」
「なぁに」
「……次は、あんたのとこじゃ駄目?」
呟くように尋ね、逃げるように彼女の胸に顔を埋めた。
彼女ばかりこちらに訪れるというのは少し面白くない。己の空間に彼女が様々な跡を残していくのは嫌ではない。でも、彼女が自分に跡を残すように、自分も彼女に跡を残したいのだ。
忘れぬように。
無くさぬように。
逃がさぬように。
彼女に、自分を刻み込みたい。
重いなぁ、と自嘲する。霊夢は物に執着する人間ではないが、どうしても手放したくない物もある。咲夜はそれに該当する。同時に独占したいものにも属する。要は、好きなのだ。お茶やお酒とは別の、代替のきかない離したくない離れたくないものだ。
そんな霊夢の考えを知ってかしらでか、咲夜はどこか困ったように笑った。
「ダメ」
「なんでよ」
思わずふてくされたような声で問うと、小さく唸るような声が聞こえた。いつでも冷静で瀟洒に振る舞う彼女にしては珍しい。上目遣いになるような形で見上げると、ゆらゆらと揺れる赤と目が合う。所在なさ気だったそれは意を決したようにこちらを見据え、困ったように笑った。
「貴方が家に来ると、お嬢様が会いたがるでしょう? 二人きりになろうにも、お嬢様から貴方を引き剥がすわけにもいかないし」
独り占めできないじゃない、と呟く声は拗ねた子供のようで、それでいて強い欲が滲み出ていた。
あぁ、咲夜も同じなんだな。安堵して彼女の胸に額を擦りつける。何も言わず咲夜はその背を撫でる。あやすようなその感覚と触れる温かさにとろりと瞼が落ちてくる。
「寝る?」
「ん」
肯定とも否定とも取れる返答をして霊夢は咲夜に身を寄せる。ふふ、と小さな笑い声が降ってきて、自身の背に彼女の両手が回った。そのままぎゅっと抱きしめられる。溶けて混じりあってしまいそうな温度なのに、安心感で胸がいっぱいになる。
一杯のはずなのに、もっともっと欲しくて自らも彼女の背に手を回した。
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