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No.35

味覚と色彩【ライレフ】

味覚と色彩【ライレフ】
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即興二次でNL書いたらその反動かほもが書きたくなったので毎度の如く30mでライレフ。少し修正したけど納得いかないからあとで書き直す。
葵壱へのお題は『大切にしたいと傷付けたいをいったりきたり』です。 http://shindanmaker.com/392860

 ソファに座る弟を見る。相変わらず何か本を読んでいるようだ。見た目より好奇心旺盛な彼は純文学からジャンルも分からないような怪しいものまで何でも読むのだ。
 今度は何だろうか、と好奇心の赴くままにソファの背越しに彼の首に腕を絡め抱き付く。ひくりと驚いたようにその肩が揺れたが、すぐに疎ましげな視線が投げかけられた。最初の頃はかなり驚いていたのだがもう慣れてしまったらしい。やっと触れるのに慣れたことを喜んでいいのやら、初々しさがなくなって寂しいやら。複雑だ、と身勝手なことを考える。
「何の本?」
「料理雑誌ですよ。そろそろレパートリーが尽きてきた気がしますので」
 肩越しに見えるページは色鮮やかで食欲をそそるものばかりだ。優等生な彼はこういうことまで勉強熱心のようだ。烈風刀の作るものなら何でも美味しいのに、と呟くとそういう問題ではないのです、と不服そうな声が返ってきた。すぐ隣にある耳がほんのり色付いていることは指摘しないでおこう。きっと敏い彼も気付いているだろう。
 更に視線を落とす。寒さも和らいだ今では二人とも家の中では薄着になっていた。首元も夏のそれほどではないが肌は露出されている。日に焼けていないそこは、彼の身体の中でも一際白く輝いているように見えた。
 ふと、この白を汚したいと思った。
 この白に口を寄せたら、思い切り噛みついたらどのようになるだろう。白に赤はよく映えるのだからきっと美しい。己の手でこの白に痕を残すのは、きっと支配欲を満たしてくれるだろう。
 けれども、同時に本来の美しさを汚すのはいけないことだと頭の片隅でなにかが主張する。この美しい色に別の何かをぶちまけ壊すことは冒涜にも似た行為だ。美しい者は美しいままが一番であり、それを汚すのは無粋以外の何物でもない。
 昔、一度だけ行為中に首筋に思い切り噛みついたことがある。彼は痛みと驚きに顔を歪め、酷く怯えた悲鳴を上げた。その翌日には今までで一番と言っていいほど怒り、しばらくの間接触を禁止された。それ以来そういう類のことはしていないが、時折欲は湧いてくる。男なのだから仕方ないという言い訳は彼に全く通用しないけれど。
 さてどうするかな、としばし考えて。
 その首筋をべろりと舐めた。
「――っ、ぃ!」
 声にならない悲鳴を上げ、びくりと烈風刀の身体が大きく跳ねる。その拍子に雑誌が彼の手から滑り落ち、音を立てて床に叩きつけられた。
「何するんですか!」
「いやぁ、美味しそうだなーって」
 実際は汗のしょっぱさしかなかった。あんなに美味しそうな色と艶なのだから他の味があるべきではないかなどと思うが、人体にそれを求めるのは無茶だろう。――そのすぐ下を流れる血液ならば話は別だろうが。
「ふざけるのも大概にしてください」
 烈風刀は射殺さんばかりにこちらを睨んだ。この行為はもちろん、読書の邪魔をされたのも腹が立ったのだろう。ごめんごめんと笑って謝るが、その瞳から怒りの色はまだ消える様子がない。
「邪魔をするなら離れてください」
 腕を掴まれ無理矢理引きはがされる。これ以上機嫌を損ねては明日以降が怖い。大人しく引き下がることにしよう。
 自室に向かおうと彼に背を向ける。なんとなく舌を出し、舐めるようにその上に自身の指を滑らせる。先ほどの味はもう残っていない。
 まぁ、あの白を汚すか否かは今晩考えよう。
 そう考えて、彼に気付かれぬよう一人笑った。

畳む

#ライレフ #腐向け

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