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No.38
伝心【ライレフ】
伝心【ライレフ】
色々やってた息抜きにアナログで書いたの打ち込んで修正。ベッッッッッッッッッタベタな話が書きたかった。
糖度高く糖度高くと念じてたがまだ足りてない感。
葵壱へのお題は『愛の言葉が思い浮かばない』です。
http://shindanmaker.com/392860
本文を読む
夕食の片付けも終わり、一息ついてソファに身を沈める。明日の授業範囲はどのあたりだったか、復習はどの教科から片付けていこうかなどと考えていると、突如正面が暗くなった。予測される行動に烈風刀は密かに顔を顰める。
「れーふと」
真正面から元気の良い能天気な声と少しの衝撃。いつの間にやら近寄ってきた雷刀が抱き付いてきたのだ。元々スキンシップが激しい彼だが最近は拍車がかかっており、近くにいれば必ずと言っていいほど抱き付いてくる。お陰で共に過ごす時間は以前よりもずっと増えた。こうやって甘えられるのは嫌いではないが頻度が高すぎるのは困る。
「なんですか」
「別に」
いつものように呆れたように問うと、いつのものように意味のない答えが返ってくる。雷刀はそのままこちらの首に腕を回し、足を開き跨るようにして烈風刀の膝の上に座った。双子故か彼と自分の体格はほとんど変わらない。男子高校生一人分の体重はなかなかのものだ。重いと訴えるように眉を顰める烈風刀を気にする様子など全くなく、彼は再度名を呼んだ。
「烈風刀」
「だからなんですか」
「好き」
いきなりの言葉に思わず息が詰まる。ひくりとその喉が震えたことに彼は気付いているだろうか。
睦言を交わすような関係になって日は浅くないというのに、未だにこのような言葉に慣れていない。生娘ではあるまいし、とほとほと呆れるがこればかりはまだまだ時間を必要とするようだ。
「すきすきだいすきちょーあいしてる」
「それ、この間私が読んでいた本のタイトルじゃないですか」
話題を逸らすように指摘すると、いい言葉じゃんと彼は笑った。数学の公式や古典文法の一つすら頭に入れないというのにそういうものばかり覚えるのだから、と呆れて小さく溜め息を吐くと、雷刀はこちらの肩に顎を乗せ、更に身を寄せた。ひたりとくっついた身体から伝わる体温は熱いくらいだ。
「烈風刀は?」
「は?」
一体何だと声を上げると、雷刀は首に手を回したまま身を離した。そのまま膝を立て、ニコニコと笑みを浮かべこちらを見下ろす。嫌な予感がする。予測される被害から逃れようにも、彼の腕に囚われた今逃げることなど叶わない。
「烈風刀は俺のこと、好き?」
「いきなり、なにを」
「なぁ、好き?」
彼はこちらを見下ろしたまま小首を傾げる。突飛なことを言い出した彼を怪訝そうに見るが、その鋭い視線はすぐに逸らされた。じっとこちらを見つめ答えを待つ雷刀から視線を外したまま、烈風刀は呟くように言葉を紡いだ。
「……分かっているくせに」
「えー? オニイチャン、ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないなー?」
とぼける声は非常に楽しそうでどこか意地の悪い色を含んでいる。やはり分かっているではないか、と目を眇め彼を見上げる。そんなものに効果がないことなど重々承知だが、それくらいの抵抗は許されるだろう。事実、雷刀は痛くも痒くもないという様子でこちらを見下ろしていた。あぁ、腹が立つ。更に視線が鋭くなるのが自分でも分かる。
「だってオレは好きだーっていっつも言ってるのに烈風刀は何も言わないじゃん? ちゃんと言ってくれないのはオニイチャン寂しいなーって」
あ、疑ってるわけじゃないからな、と雷刀は焦った様子で付け加える。そんなことは普段の様子から分かっている。
雷刀は暇さえあればというぐらい恋慕の情を訴えてくる。学内でのはその類のことを言うなと釘を刺さねばならないほどだ。反してこちらから想いを口にしたことはほとんどない。言われることにも慣れていないが、言うことはもっと慣れていないのだ。彼にとっては何ともない、至極簡単な表現だとしても、自分にとっては非常に重い言葉に思えた。元々このような直接的な語を言うことに強い羞恥を感じてしまう性質ということも大きい。己の内に秘めた感情を全てさらけ出すというのはなかなかに難しいものであった。
けれども、彼の言葉に応えたいと強く思うのも、また本心である。
烈風刀は意を決して顔を上げた。見上げた先の彼は優し気な瞳でこちらを見つめていた。
「あ、の」
伝えようと開いた口から漏れた声は自分でも驚くほど細かった。言葉を続けようとするが、喉からせり上がってくるのは意味のない単音ばかりだ。たった二文字を発するだけだというのに、何故声帯はこうも機能してくれないのか。あまりのふがいなさに思わず顔を歪めた。らいと、とようやく意味を持った音が漏れ出でる。視界に映る雷刀はこちらに手を伸ばし、優しく髪を梳いた。その所作は子供をあやすそれと同じで、情けなさに押し潰されそうになる。
「烈風刀がこんだけつっかえるってめずらしーな」
感心したような顔で雷刀は言う。こちらは真面目に考えて、真剣に胸の内を伝えようとしているというのに、と烈風刀はむくれるように目を細めた。
「オレは途中で何言ってるか分かんなくなることあるけど、烈風刀はなんでもスラスラ話すじゃん。こんだけつまってるのってレアじゃね?」
「貴方はいつも考えなしに話すからですよ」
物珍しげにこちらを見る雷刀に呆れたような声で返す。先ほどまでろくに機能しなかった喉は普段通りの音を発した。こういうことばかりは言えるのか、あまりに身勝手な自分に心底嫌気が差す。反して彼は楽しげに笑った。
「そーそー。オニイチャンは考えなしに思ったことそのまま言うからな」
ふといつもの笑みが消える。慈しむような優しい目がこちらを見下ろし、そのまま倒れこむように抱きしめられた。込められた力は決して強いものではないのに、身体は固まり指先一つ動かすことすらできない。
「烈風刀、好き。愛してる」
柔らかな低音が耳へと直に注ぎ込まれる。温かく優しいそれは強張った身体に、固まった思考に優しく溶け込んだ。その熱に応えるかのように、ゆっくりとその背に腕を回した。
「――わたしも、あい、して、います」
喉の奥に張り付いて取れなかった言葉がようやく音へと形を成し、彼の耳へと想いを届ける。勿論恥ずかしさがあるが、それ以上の安堵感が胸に満ちた。自身の想いを言葉にするのはこんなにも恥ずかしく、難しく、けれども安心するものなのか。
上機嫌な笑い声が耳をくすぐり、更に身を寄せられる。普段ならば苦しいなどと抗議するが、今日はそれを受け入れこちらからも求めた。
「好き」
「私も好きですよ、雷刀」
想いを伝える声は想像よりもずっと甘ったるく、優しくも弾むその音は本当に嬉しそうだ。彼をこんなにも喜ばせたのは自分であるという事実にこちらまで嬉しくなる。烈風刀も静かに笑みを浮かべた。
だいすきです。
彼にだけ聞こえるように呟いて、その肩に頭を預けた。
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#ライレフ
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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夕食の片付けも終わり、一息ついてソファに身を沈める。明日の授業範囲はどのあたりだったか、復習はどの教科から片付けていこうかなどと考えていると、突如正面が暗くなった。予測される行動に烈風刀は密かに顔を顰める。
「れーふと」
真正面から元気の良い能天気な声と少しの衝撃。いつの間にやら近寄ってきた雷刀が抱き付いてきたのだ。元々スキンシップが激しい彼だが最近は拍車がかかっており、近くにいれば必ずと言っていいほど抱き付いてくる。お陰で共に過ごす時間は以前よりもずっと増えた。こうやって甘えられるのは嫌いではないが頻度が高すぎるのは困る。
「なんですか」
「別に」
いつものように呆れたように問うと、いつのものように意味のない答えが返ってくる。雷刀はそのままこちらの首に腕を回し、足を開き跨るようにして烈風刀の膝の上に座った。双子故か彼と自分の体格はほとんど変わらない。男子高校生一人分の体重はなかなかのものだ。重いと訴えるように眉を顰める烈風刀を気にする様子など全くなく、彼は再度名を呼んだ。
「烈風刀」
「だからなんですか」
「好き」
いきなりの言葉に思わず息が詰まる。ひくりとその喉が震えたことに彼は気付いているだろうか。
睦言を交わすような関係になって日は浅くないというのに、未だにこのような言葉に慣れていない。生娘ではあるまいし、とほとほと呆れるがこればかりはまだまだ時間を必要とするようだ。
「すきすきだいすきちょーあいしてる」
「それ、この間私が読んでいた本のタイトルじゃないですか」
話題を逸らすように指摘すると、いい言葉じゃんと彼は笑った。数学の公式や古典文法の一つすら頭に入れないというのにそういうものばかり覚えるのだから、と呆れて小さく溜め息を吐くと、雷刀はこちらの肩に顎を乗せ、更に身を寄せた。ひたりとくっついた身体から伝わる体温は熱いくらいだ。
「烈風刀は?」
「は?」
一体何だと声を上げると、雷刀は首に手を回したまま身を離した。そのまま膝を立て、ニコニコと笑みを浮かべこちらを見下ろす。嫌な予感がする。予測される被害から逃れようにも、彼の腕に囚われた今逃げることなど叶わない。
「烈風刀は俺のこと、好き?」
「いきなり、なにを」
「なぁ、好き?」
彼はこちらを見下ろしたまま小首を傾げる。突飛なことを言い出した彼を怪訝そうに見るが、その鋭い視線はすぐに逸らされた。じっとこちらを見つめ答えを待つ雷刀から視線を外したまま、烈風刀は呟くように言葉を紡いだ。
「……分かっているくせに」
「えー? オニイチャン、ちゃんと言ってくれなきゃ分かんないなー?」
とぼける声は非常に楽しそうでどこか意地の悪い色を含んでいる。やはり分かっているではないか、と目を眇め彼を見上げる。そんなものに効果がないことなど重々承知だが、それくらいの抵抗は許されるだろう。事実、雷刀は痛くも痒くもないという様子でこちらを見下ろしていた。あぁ、腹が立つ。更に視線が鋭くなるのが自分でも分かる。
「だってオレは好きだーっていっつも言ってるのに烈風刀は何も言わないじゃん? ちゃんと言ってくれないのはオニイチャン寂しいなーって」
あ、疑ってるわけじゃないからな、と雷刀は焦った様子で付け加える。そんなことは普段の様子から分かっている。
雷刀は暇さえあればというぐらい恋慕の情を訴えてくる。学内でのはその類のことを言うなと釘を刺さねばならないほどだ。反してこちらから想いを口にしたことはほとんどない。言われることにも慣れていないが、言うことはもっと慣れていないのだ。彼にとっては何ともない、至極簡単な表現だとしても、自分にとっては非常に重い言葉に思えた。元々このような直接的な語を言うことに強い羞恥を感じてしまう性質ということも大きい。己の内に秘めた感情を全てさらけ出すというのはなかなかに難しいものであった。
けれども、彼の言葉に応えたいと強く思うのも、また本心である。
烈風刀は意を決して顔を上げた。見上げた先の彼は優し気な瞳でこちらを見つめていた。
「あ、の」
伝えようと開いた口から漏れた声は自分でも驚くほど細かった。言葉を続けようとするが、喉からせり上がってくるのは意味のない単音ばかりだ。たった二文字を発するだけだというのに、何故声帯はこうも機能してくれないのか。あまりのふがいなさに思わず顔を歪めた。らいと、とようやく意味を持った音が漏れ出でる。視界に映る雷刀はこちらに手を伸ばし、優しく髪を梳いた。その所作は子供をあやすそれと同じで、情けなさに押し潰されそうになる。
「烈風刀がこんだけつっかえるってめずらしーな」
感心したような顔で雷刀は言う。こちらは真面目に考えて、真剣に胸の内を伝えようとしているというのに、と烈風刀はむくれるように目を細めた。
「オレは途中で何言ってるか分かんなくなることあるけど、烈風刀はなんでもスラスラ話すじゃん。こんだけつまってるのってレアじゃね?」
「貴方はいつも考えなしに話すからですよ」
物珍しげにこちらを見る雷刀に呆れたような声で返す。先ほどまでろくに機能しなかった喉は普段通りの音を発した。こういうことばかりは言えるのか、あまりに身勝手な自分に心底嫌気が差す。反して彼は楽しげに笑った。
「そーそー。オニイチャンは考えなしに思ったことそのまま言うからな」
ふといつもの笑みが消える。慈しむような優しい目がこちらを見下ろし、そのまま倒れこむように抱きしめられた。込められた力は決して強いものではないのに、身体は固まり指先一つ動かすことすらできない。
「烈風刀、好き。愛してる」
柔らかな低音が耳へと直に注ぎ込まれる。温かく優しいそれは強張った身体に、固まった思考に優しく溶け込んだ。その熱に応えるかのように、ゆっくりとその背に腕を回した。
「――わたしも、あい、して、います」
喉の奥に張り付いて取れなかった言葉がようやく音へと形を成し、彼の耳へと想いを届ける。勿論恥ずかしさがあるが、それ以上の安堵感が胸に満ちた。自身の想いを言葉にするのはこんなにも恥ずかしく、難しく、けれども安心するものなのか。
上機嫌な笑い声が耳をくすぐり、更に身を寄せられる。普段ならば苦しいなどと抗議するが、今日はそれを受け入れこちらからも求めた。
「好き」
「私も好きですよ、雷刀」
想いを伝える声は想像よりもずっと甘ったるく、優しくも弾むその音は本当に嬉しそうだ。彼をこんなにも喜ばせたのは自分であるという事実にこちらまで嬉しくなる。烈風刀も静かに笑みを浮かべた。
だいすきです。
彼にだけ聞こえるように呟いて、その肩に頭を預けた。
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