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No.57

白紙対策【ハレルヤ組】

白紙対策【ハレルヤ組】
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pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。

お題:残念な山[30m]

 真っ赤な髪が机の上に散らばる。赤い塊からは潰れたような唸り声が聞こえてくる。声だけ聞けば幽霊か何かかと勘違いしてしまうような沈みっぷりだ。
「雷刀、大丈夫デスカ?」
「大丈夫じゃない……」
 心配そうに問うレイシスに、雷刀は力ない声で返す。はわわ、とレイシスは慌てるが、彼の真後ろに座る烈風刀は心配する必要はありません、と言った。そのままじとり、と冷たい視線を机に伏せた兄の背中に向ける。
「テストが上手くいかなかっただけですよ」
「ヤマが思いっきり外れた……」
 冷めた烈風刀の声に、雷刀は後悔のにじむ声で呻く。どうもヤマを張った部分が全て外れてしまったようで、普段以上に沈んだ声である。あぁ、とレイシスは困ったように笑った。
「まったく、山勘に頼るからこうなるのです」
「やっぱりちゃんと勉強しなきゃだめデスネ」
 呆れる烈風刀の声と優しく諌めるようなレイシスの声に雷刀はうぅ、と唸った。弟の反応はともかく、レイシスにまでこう言われてしまっては辛いものがある。
「レイシスはどうでしたか?」
「ハイ、勉強したところがちゃんと出てきマシタ」
 烈風刀の問いに、レイシスはニコニコと笑みを浮かべ元気よく答えた。普段から勤勉で成績もよい彼女だが、やはり自身で対策を取った部分ができると嬉しいらしい。その笑顔につられるように烈風刀も笑った。
「そうですか。それはよかったですね」
「なぁ、オレと反応違いすぎね?」
 ガバ、とようやく頭を上げ、雷刀は勢いよく振り返り後ろに座る烈風刀を見る。すっと柔らかな笑みが消え、彼は凍てつくような視線で兄を見た。その冷たい緑色の瞳には怒りの色が浮かんでいた。
「日頃勉強した上で対策を取ったレイシスと、全く勉強しないで山勘に頼った貴方とは全く違うでしょう」
 まったくの正論に、雷刀はバツが悪そうに顔をしかめた。それにしてもあまりに違う、とぶつぶつと文句を言うが、烈風刀が聞く様子は全くない。いつものことだ。
「雷刀はいつもヤマが外れマスネ」
「だよなー。なんでだろ」
 不思議そうな二人の声。烈風刀は首を傾げる赤に冷たく指摘した。
「普段から授業を聞いていないのですから、各単元の重要なポイントが分かっていないでしょう。そんな状態で山勘に頼ったところでどうするのですか。せめてレイシスのように傾向を把握した上でヤマを張るべきです」
「……うん」
「……デスネ」
 沈んだ声が重なる。レイシスまで落ち込ませるつもりはなかったのに、と烈風刀は内心慌てた。
「で、でもっ、テストが終わったらもうすぐ夏休みデスヨ! 頑張りまショウ!」
 ぐっと胸の前で両手を握り、励ますように笑うレイシスの言葉に雷刀も笑う。夏休みだ夏休みー、デスー、と嬉しそうに話す二人を見て、烈風刀は頬を緩めた。しかしその顔はどこか暗い。
 二人は忘れているのだろう。夏休みに入れば課題が出ることを。そして、昨年のその量はまるで山のようで、尋常なものではなかったということを。
 今言っても二人とも落ち込むだけだろう。黙っておこう、と烈風刀は口をつぐんだ。
 窓の外に広がる空は青く、陽の光も春のそれに比べ強くなってきている。
 夏はすぐそこだ。

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#レイシス #嬬武器雷刀 #嬬武器烈風刀 #ハレルヤ組

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