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No.19
白に染まる【ライレフ】
白に染まる【ライレフ】
pixivで非公開にしていたものをサルベージ。キャプションとか諸々全部当時のままです。
雪降ったらとにかくガチガチに固めた雪玉作るよねって話。雪降ったので放置してたの完成させた。
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学校の広い玄関を出ると、重い灰色に染まった空から白いかけらがゆっくりと宙を舞っていた。空と同じ色をしたコンクリートの地面はうっすらとその白に覆われており、その上にはいくつもの足跡が残されている。空間が白一色に染められていくその光景は、冬だということを改めて実感させた。
「おー、降ってるなー」
遅れて出てきた雷刀がその光景に嬉しそうな声を上げる。反して烈風刀は複雑そうに顔をしかめた。その瞳はどこか恨めし気で、灰色で覆われた空を睨むように見上げていた。
「傘、持ってませんよね」
「置き傘してないな。烈風刀は?」
「ありませんよ」
油断した、と烈風刀は依然渋い顔で暗い雲を睨む。今日の天気予報は曇りのち雨、降水確率は低かったので傘は持ってきていない。せめて折り畳み傘でも持ってくるべきだったと後悔するがもう遅い。
しかし、確かにこの頃冷え込んでいたとはいえまさか雨どころか雪が降るだなんて思っても見なかった。それもこの短時間で積もるほどの勢いだ、明日以降どうなるかと考えるだけで憂鬱になる。
「どうしましょうか……」
「これくらいなら大丈夫じゃね? どうせすぐ止むって」
そう言って雷刀は気にする様子もなく屋根の下から飛び出した。濡れてしまうではないか、と引き留めようともその声は彼に届かない。まだ誰も通らず白いままの場所をわざと踏むように、雷刀はどんどんと雪降る最中を進んでいく。
いくつもの足跡が残る地面を見るとすぐに止むとは思えないが、ここで一人晴れるまで待つのも仕方がない。諦めて烈風刀も重苦しい空の下を歩き出し、先を行く雷刀の隣に並んだ。
「結構積もってるな」
「いつから降っていたのでしょうか」
「さぁ。授業中は降ってなかったよな?」
「……授業中に外なんて見ませんし、どうせ貴方は眠っていたのでしょう」
責めるような目で隣を歩く彼を見ると、すぐさま視線を逸らした。図星のようだ。雷刀の席は自分の後ろなので授業中直接見ることはできないが、普段の様子から容易に想像できる。予想通りとはいえ、日頃注意していることを直そうとしないのはあまりいい思いはしない。
「いい加減授業中に寝るのは止めなさいと言っているでしょう」
「だってつまんねーし」
「そう言ってテスト前にいつも泣きついてくるのはどこの誰でしょうね」
「どうせ聞いてても分かんねーし変わんねーって」
下らない言い訳を重ねる雷刀を見てわざとらしく溜め息を吐く。テスト前は自分だけでも手一杯だというのに教えてくれ、と泣きつかれるのはいい迷惑だ。せめて一教科ぐらい自力で学んでほしいが、この様子では願いが叶うことはないのだろう。
「ここら辺は結構積もってるなー」
烈風刀の刺すような視線から逃れるように雷刀は白い地面を駆けていく。彼が駆け寄った先には他よりも雪が積もっている。道路の隅の方にあるからかまだ誰も踏まれていないようで、透き通った白が輝いていた。そこに屈みこみ、なにやらごそごそと動く雷刀の背を冷めた目で見つめる。彼のことだ、きっとろくなことを考えていない。
「おりゃー!」
屈んでいた彼がいきなり振り向くと同時に、勢いづいた声と白い何かが飛んできた。予想していた通りの行動を一歩横にずれることで回避する。烈風刀の様子に雷刀はいたずらをする子どものように笑った。
「やっぱ避けるか」
「当たり前でしょう。子どもみたいなことをしないでください」
諌める烈風刀の声を無視し、雷刀は新しい雪玉の制作に取り掛かる。より硬くなるよう力を込めて握る姿はどう見ても子どものそれだ。あぁもう、と呆れたように呟いて彼の元へと歩みを進める。
「やめなさいと言っているでしょう」
「ちぇー」
呆れと怒りが混ざった声に、雷刀は手に持っていた雪玉をつまらなそうに放り投げる。硬く作られたはずのそれはぺしゃりと柔らかな音を立てて潰れた。
「ほら、手が真っ赤じゃないですか」
雪が降るほど寒い最中、冷たい雪を直接触った手は紅葉のように赤く染まっていた。両手で包み込むように触れてみると、普段ならば熱いくらいに温かいそれは氷のように冷たい。
「烈風刀の手、あったけーな」
「これだけ冷えていれば何を触ってもそう思いますよ」
けらけらと笑い、雷刀は温かなその手にもう片方の手を重ねた。その冷たさに思わず顔をしかめる。彼は依然あったけー、と笑うだけだ。
「これではしもやけになりますよ」
「大丈夫だって」
心配しすぎ、と雷刀は笑う。なったら騒ぐでしょう、と呆れたように言うと彼はまたへらへらと笑った。誤魔化したつもりのようだ。
「烈風刀」
「なんですか」
「冷たい。寒い」
「……こんな日に雪を触ったのだから当たり前でしょう」
呆れと握る手の冷たさに耐え兼ねて手を離したが、寒い寒いと繰り返す雷刀にすぐに捕らえられてしまう。手のひらと手のひらが擦れる感覚に思わず息を飲んだ。手を触られるのは苦手だ。自分から触るのはまだ平気だが、他者に直接触られるのはどうもくすぐったい。冷たさも相まって早く離してしまいたい気持ちでいっぱいだ。
「冷たいから離してください」
「だって寒いし」
「自業自得です」
身勝手な言葉に眉を寄せる烈風刀を気にする様子もなく、雷刀は何かひらめいたのかこちらを見た。その表情はいたずらを思いついた時のそれだ。一体何を思いついたのだ、と身を固くする。
「よし! このまま手繋いで帰ろうぜ!」
「嫌です」
名案だ、という風に表情を輝かせこちらを見る彼の言葉をバッサリと切り捨てる。なんでだよ、と拗ねた子どものように口を尖らせる雷刀の様子に呆れた調子で言葉を続けた。
「貴方は温かくても、私は冷たいだけじゃないですか」
それよりも、触れられていることとその恥ずかしさが勝っている。手を繋ぐという行為はなんだかくすぐったくて苦手だ。彼はそれを重々承知のはずなのだが、それを気に掛ける様子は全くない。分かってわざとやっているのではないかと疑うほどだ。実際彼ならあり得ると思えるのだから尚更だ。
「まあまあ」
雷刀はいたずらめいた笑みを浮かべ、握っていた手に力を入れた。こうなっては逃げることはできないということを烈風刀は知っている。それでも抵抗するように口を開こうとするが、そのまま強く手を引かれ言葉は飲み込まれてしまった。彼はそのまま雪降る道を走り出す。いきなりの行動についていけず、烈風刀はそのまま引きずられるように歩くしかなかった。
「ちょっ、と、雷刀!」
「風邪引く前に早く帰ろうぜ!」
抗議する声は楽し気な声にかき消された。走り出した彼が止まる様子など微塵もない。こうなっては誰も止められないだろう。それこそ、自分でも。
仕方ないという風に顔をしかめ、追いかけるように烈風刀は足を速めた。走る彼の隣に並び、小さく口を開く。
「家までですからね」
「おう!」
答える雷刀の表情は嬉しそうで、離さぬようにと握る手に更に力がこめられた。それに応えるように黙って手を握り返す。彼は一瞬驚いたような顔をして、その意味を理解したのかふわりと顔を綻ばせた。
あぁ、頬が熱い。それは寒さ故か、それとも羞恥故か。前者だと思ってくれればいいのだけど、と息を吐く。白色のそれは宙に浮かんで消えた。
白銀に染まりゆく世界を駆ける。冷たく小さなかけらが二人を包んでいた。
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#ライレフ
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SDVX
2024/1/31(Wed) 00:00
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白に染まる【ライレフ】
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雪降ったらとにかくガチガチに固めた雪玉作るよねって話。雪降ったので放置してたの完成させた。
学校の広い玄関を出ると、重い灰色に染まった空から白いかけらがゆっくりと宙を舞っていた。空と同じ色をしたコンクリートの地面はうっすらとその白に覆われており、その上にはいくつもの足跡が残されている。空間が白一色に染められていくその光景は、冬だということを改めて実感させた。
「おー、降ってるなー」
遅れて出てきた雷刀がその光景に嬉しそうな声を上げる。反して烈風刀は複雑そうに顔をしかめた。その瞳はどこか恨めし気で、灰色で覆われた空を睨むように見上げていた。
「傘、持ってませんよね」
「置き傘してないな。烈風刀は?」
「ありませんよ」
油断した、と烈風刀は依然渋い顔で暗い雲を睨む。今日の天気予報は曇りのち雨、降水確率は低かったので傘は持ってきていない。せめて折り畳み傘でも持ってくるべきだったと後悔するがもう遅い。
しかし、確かにこの頃冷え込んでいたとはいえまさか雨どころか雪が降るだなんて思っても見なかった。それもこの短時間で積もるほどの勢いだ、明日以降どうなるかと考えるだけで憂鬱になる。
「どうしましょうか……」
「これくらいなら大丈夫じゃね? どうせすぐ止むって」
そう言って雷刀は気にする様子もなく屋根の下から飛び出した。濡れてしまうではないか、と引き留めようともその声は彼に届かない。まだ誰も通らず白いままの場所をわざと踏むように、雷刀はどんどんと雪降る最中を進んでいく。
いくつもの足跡が残る地面を見るとすぐに止むとは思えないが、ここで一人晴れるまで待つのも仕方がない。諦めて烈風刀も重苦しい空の下を歩き出し、先を行く雷刀の隣に並んだ。
「結構積もってるな」
「いつから降っていたのでしょうか」
「さぁ。授業中は降ってなかったよな?」
「……授業中に外なんて見ませんし、どうせ貴方は眠っていたのでしょう」
責めるような目で隣を歩く彼を見ると、すぐさま視線を逸らした。図星のようだ。雷刀の席は自分の後ろなので授業中直接見ることはできないが、普段の様子から容易に想像できる。予想通りとはいえ、日頃注意していることを直そうとしないのはあまりいい思いはしない。
「いい加減授業中に寝るのは止めなさいと言っているでしょう」
「だってつまんねーし」
「そう言ってテスト前にいつも泣きついてくるのはどこの誰でしょうね」
「どうせ聞いてても分かんねーし変わんねーって」
下らない言い訳を重ねる雷刀を見てわざとらしく溜め息を吐く。テスト前は自分だけでも手一杯だというのに教えてくれ、と泣きつかれるのはいい迷惑だ。せめて一教科ぐらい自力で学んでほしいが、この様子では願いが叶うことはないのだろう。
「ここら辺は結構積もってるなー」
烈風刀の刺すような視線から逃れるように雷刀は白い地面を駆けていく。彼が駆け寄った先には他よりも雪が積もっている。道路の隅の方にあるからかまだ誰も踏まれていないようで、透き通った白が輝いていた。そこに屈みこみ、なにやらごそごそと動く雷刀の背を冷めた目で見つめる。彼のことだ、きっとろくなことを考えていない。
「おりゃー!」
屈んでいた彼がいきなり振り向くと同時に、勢いづいた声と白い何かが飛んできた。予想していた通りの行動を一歩横にずれることで回避する。烈風刀の様子に雷刀はいたずらをする子どものように笑った。
「やっぱ避けるか」
「当たり前でしょう。子どもみたいなことをしないでください」
諌める烈風刀の声を無視し、雷刀は新しい雪玉の制作に取り掛かる。より硬くなるよう力を込めて握る姿はどう見ても子どものそれだ。あぁもう、と呆れたように呟いて彼の元へと歩みを進める。
「やめなさいと言っているでしょう」
「ちぇー」
呆れと怒りが混ざった声に、雷刀は手に持っていた雪玉をつまらなそうに放り投げる。硬く作られたはずのそれはぺしゃりと柔らかな音を立てて潰れた。
「ほら、手が真っ赤じゃないですか」
雪が降るほど寒い最中、冷たい雪を直接触った手は紅葉のように赤く染まっていた。両手で包み込むように触れてみると、普段ならば熱いくらいに温かいそれは氷のように冷たい。
「烈風刀の手、あったけーな」
「これだけ冷えていれば何を触ってもそう思いますよ」
けらけらと笑い、雷刀は温かなその手にもう片方の手を重ねた。その冷たさに思わず顔をしかめる。彼は依然あったけー、と笑うだけだ。
「これではしもやけになりますよ」
「大丈夫だって」
心配しすぎ、と雷刀は笑う。なったら騒ぐでしょう、と呆れたように言うと彼はまたへらへらと笑った。誤魔化したつもりのようだ。
「烈風刀」
「なんですか」
「冷たい。寒い」
「……こんな日に雪を触ったのだから当たり前でしょう」
呆れと握る手の冷たさに耐え兼ねて手を離したが、寒い寒いと繰り返す雷刀にすぐに捕らえられてしまう。手のひらと手のひらが擦れる感覚に思わず息を飲んだ。手を触られるのは苦手だ。自分から触るのはまだ平気だが、他者に直接触られるのはどうもくすぐったい。冷たさも相まって早く離してしまいたい気持ちでいっぱいだ。
「冷たいから離してください」
「だって寒いし」
「自業自得です」
身勝手な言葉に眉を寄せる烈風刀を気にする様子もなく、雷刀は何かひらめいたのかこちらを見た。その表情はいたずらを思いついた時のそれだ。一体何を思いついたのだ、と身を固くする。
「よし! このまま手繋いで帰ろうぜ!」
「嫌です」
名案だ、という風に表情を輝かせこちらを見る彼の言葉をバッサリと切り捨てる。なんでだよ、と拗ねた子どものように口を尖らせる雷刀の様子に呆れた調子で言葉を続けた。
「貴方は温かくても、私は冷たいだけじゃないですか」
それよりも、触れられていることとその恥ずかしさが勝っている。手を繋ぐという行為はなんだかくすぐったくて苦手だ。彼はそれを重々承知のはずなのだが、それを気に掛ける様子は全くない。分かってわざとやっているのではないかと疑うほどだ。実際彼ならあり得ると思えるのだから尚更だ。
「まあまあ」
雷刀はいたずらめいた笑みを浮かべ、握っていた手に力を入れた。こうなっては逃げることはできないということを烈風刀は知っている。それでも抵抗するように口を開こうとするが、そのまま強く手を引かれ言葉は飲み込まれてしまった。彼はそのまま雪降る道を走り出す。いきなりの行動についていけず、烈風刀はそのまま引きずられるように歩くしかなかった。
「ちょっ、と、雷刀!」
「風邪引く前に早く帰ろうぜ!」
抗議する声は楽し気な声にかき消された。走り出した彼が止まる様子など微塵もない。こうなっては誰も止められないだろう。それこそ、自分でも。
仕方ないという風に顔をしかめ、追いかけるように烈風刀は足を速めた。走る彼の隣に並び、小さく口を開く。
「家までですからね」
「おう!」
答える雷刀の表情は嬉しそうで、離さぬようにと握る手に更に力がこめられた。それに応えるように黙って手を握り返す。彼は一瞬驚いたような顔をして、その意味を理解したのかふわりと顔を綻ばせた。
あぁ、頬が熱い。それは寒さ故か、それとも羞恥故か。前者だと思ってくれればいいのだけど、と息を吐く。白色のそれは宙に浮かんで消えた。
白銀に染まりゆく世界を駆ける。冷たく小さなかけらが二人を包んでいた。
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